レイプ事件がインドの観光産業に大打撃、経済損失は約6500億円か | 日本のお姉さん

レイプ事件がインドの観光産業に大打撃、経済損失は約6500億円か

レイプ事件がインドの観光産業に大打撃、経済損失は約6500億円か
DMMニュース 2015/3/25 15:50
今年3月5日、インド北東部に位置するナガランド州でレイプ容疑で逮捕された男が、群衆に収容施設から引きずり出されたうえ、私刑を受けて殺害されるという事件が発生した。また、昨年11月から今年2月にかけて、日本人女性2人もインドでレイプの被害に遭ったことが判明した。
連日のようにレイプ事件の報道が相次いでいるため、インドでは最近になってレイプ事件が急増しているような印象を受けるが、実は、男性優位・女性蔑視の価値観が根強いインドではもともとレイプ事件が多発していた。
インドのレイプ問題が世界的に注目されるようになったのは2013年以降のことである。2012年12月、首都ニューデリーでバスに乗っていた女子学生が運転手や乗客に集団レイプされて死亡するという凄惨な事件が発生。この事件をきっかけに反レイプデモがインド各地で展開され、国内外のメディアもインドで発生する凶悪なレイプ事件を相次いで報道するようになった。メディアによる報道が増えたことで、インドではレイプ事件が急増しているとの印象が強まったと考えられる。
急増しているわけではないが、インドでレイプ事件が多発していることは間違いのない事実であり、この問題が世界的に注目されることで、インド国内で巨額の経済損失が発生しているとみられる。
レイプ問題がクローズアップされると、外国人女性がインドへの観光旅行を控えるという動きが広まり、それによってインドの観光収入にマイナスの影響が出てくるだろう。すでに一部の国では、インドへの女性の一人旅を薦めなくなっている。
世界各国の女性たちの間でインド観光を手控える動きが広がれば、観光立国を目指すインドにとっては大きな痛手だ。
2000年代に入ってから、インドは国を挙げて外国人観光客の取り込みに力を入れてきた。たとえば、インド観光省は、観光地としてのインドの魅力を伝えるために、2003年から2008年にかけて「Incredible India(驚きのインド)」のキャ
ンペーンを大々的に行った。このキャンペーンは、それまで観光地ごとにバラバラで統一感のなかった観光誘致のコンセプトを「Incredible India」のキャッチコピーで統一し、他の観光立国との差別化
を意識しつつ、あらゆる媒体に広告を打ち出していくという戦略だ。「Incredible
India」キャンペーンに合わせて、更新頻度の高いWEBサイトも立ち上げた。キャンペーンのための広告・宣伝費用は年間2000万ドル以上と、相当な額に上る。
この広告は、2008年に開催された第55回カンヌ国際広告祭(南フランスのカンヌ市で開催される国際的な広告コンクール)で見事、銅賞に輝いた。2008年に中国の上海で開催された「ワールドトラベルアワード2008」においても、インド観光省がアジア地域最優秀観光地賞を受賞した。インド政府は、「Incredible India」キャンペーンの一環として、高速道路や空港、ホテルな
どといった観光基盤の整備にも注力している。
レイプだけでなくルピー安でダブル打撃
こうした地道な努力が実って、2000年代後半からインドの観光収入は大幅に拡大するようになった。しかし、レイプ問題がクローズアップされるようになった2013年以降、観光収入にはマイナスの影響が出始めている。
そこで、定量的な手法を使って、レイプ事件がクローズアップされることによってインドにどれだけの経済損失が発生しているのか試算してみよう。試算の方法は下記のとおり。
まず、「インドの観光収入(USドル建て)」を被説明変数、「ルピー・ドル為替レート」と「世界実質GDP」、「レイプ・ダミー(レイプ問題がクローズアップされることがなかった2012年までを「0」、レイプ問題がクローズアップされるようになった2013年以降を「1」を説明変数とする関数を推計する。
各説明変数のパラメーターが有意であることを確認したうえで、「レイプ・ダミー」に「0」を入れた場合の推計値と「レイプ・ダミー」に「1」を入れた場合の推計値の差から、2014年の観光収入がレイプ事件の影響によってどれだけ押し下げられたかを計算する。
試算の結果、レイプ事件の影響によって、2014年のインドの観光収入には約6598億円の下押し圧力がかかったとみられる。実際の2014年の観光収入は前年比6.6%の増加となっているが、これは外国為替市場でルピー安が進んだことの影響が大きく、もしレイプ事件の影響がなければ、実際の観光収入はさらに大幅に伸びていたと考えられる。
インドが観光立国として躍進するには、法律の厳格化などの措置によって国内で頻発するレイプ事件の問題を早急に解決し、女性の不安を解消する必要があるだろう。
著者プロフィール
エコノミスト
門倉貴史
1971年、神奈川県横須賀市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、銀行系シンクタンク、生保系シンクタンク主任エコノミストを経て、BRICs経済研究所代表に。雑誌・テレビなどメディア出演多数。『ホンマでっか!?』(CX系)でレギュラー評論家として人気を博している。近著に『出世はヨイショが9割』(朝日新聞出版)
公式サイト/門倉貴史のBRICs経済研究所

集団レイプ被告人の非道な言い分
ニューズウィーク日本版 3月20日(金)12時26分配信
12年にインドで23歳の女性がバスの車内で集団レイプされ死亡した事件は、世界に大きな衝撃を与えた。先週、この事件を題材にしたBBCのドキュメンタリー映画『インドの娘』がイギリスで放映された。
このドキュメンタリーでは、事件で死刑判決を受けた男の1人、ムケシュ・シン(控訴中)が刑務所内で取材に応じている。シンは、監督のレスリー・アドウィンに数々の仰天発言をした。
「きちんとした女の子は、夜の9時に外をほっつき歩いたりはしない。レイプ事件で責任があるのは、男より圧倒的に女のほうだ。女の子の役割は家事をすること。夜にディスコやバーに繰り出し、悪い服装をして悪いことをすることではない」
「レイプ中に、抵抗すべきでなかった。おとなしく、受け入れればよかった。そうすれば、済んだ後は降ろしてやったのに」
ラジナト・シン内相は、この発言を「女性の尊厳を侮辱するもの」と非難する一方で、BBCが刑務所での取材許可の条件に違反したと批判(BBC側はこれを否定)。「不幸な出来事を金儲けのために利用することは許さない」と述べた。
インドの裁判所は先週、社会に混乱を招くとの理由で『インドの娘』の国内での放映を差し止める判断を下した。
放映差し止めの動きに対しては、抗議の声も上がっている。「男がインタビューで述べたことは、この国の多くの男たちが考えていることでもある」と、インドの女性実業家で上院議員のアヌ・アガは言う。「映画の放映を差し止めても問題の解決にはならない。インドの男たちが女性を尊重していないという現実を直視すべきだ。レイプ事件があると、いつも女性の責任にされる
監督のアドウィンはインドのテレビ番組で語った。このドキュメンタリーでは、「レイプ犯だけが病根なのではなく、(インドの)社会全体が病んでいることを訴えたかった」、と。
[2015.3.17号掲載]
スタブ・ジブ
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150320-00145986-newsweek-int