警察に連絡したが、所轄の違いでたらい回しにされた3か月間、犯人は犯行を繰り返し、
「あなたは何も悪くない」、拉致・性被害体験を映画化した【ら】
オルタナ 3月17日(火)14時30分配信
10年前、実際に起こった連続拉致事件被害者である女優の水井真希さんが監督した、事実に基づいた映画【ら】が公開されている。3月20日までは東京・渋谷のアップリンク、4月18日から名古屋シネマスコーレ、同月に大阪第七藝術劇場、その後も初夏に松山、新札幌と全国ロードショーが決まっている。主演は元AKBの加弥乃さん、拉致犯人役は小場賢さんだ。(フリーライター・遠藤一)
夏の夜、アルバイト帰りの少女が突然刃物をつきつけられ、ガムテープで目や口、肢体を巻かれる。車に連れ込まれ、車内で犯人と夜通し過ごす30分ほどが前半の内容だ。
後半は、その後の拉致被害者たちの描写や、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を想起させる森の中での主人公の葛藤などが描かれる。
監督の水井さんは「前半は、現実にあった犯人とのやりとりを可能な限り完全に再現しました」と言う。
主人公は犯人にささいなことでいちいち「ありがとうございました」と伝え、下手に出る。
主人公のリストカット跡を見た犯人は「自分を大事にしなければダメだ!」と怒り出す。
「他の人が描いていない本当の現場はこうなんだよ、と表現したかった。やるかやられるかって状況でも、一晩あると間の抜けた瞬間っていうのもある」(水井さん)
水井さんは女優業を中心に、10年以上映画の仕事に携わってきた。
「映画を撮れる状況が来た時に、自分の中でまとまっていてすぐ撮れると思ったのがこのテーマ。この映画で伝えたいのは、『犯罪はダメ』ということ。全ての加害者になりうる人に見てもらいたい。それと、被害者になってしまった人へ『あなたはなにも悪くない』ということ」
「犯人役の小場さんはイケメンだけれど、私が実際に被害にあったのも、20代前半で身長の高い、ニコニコしたら誰とでも友達になれそうな人。中年のいかにもモテなさそうなオヤジとかじゃなく、どこにでもいそうな。そういうことも証明したかった」
水井さんは解放された翌日、警察に連絡したが、所轄の違いでたらい回しにされ、実際に警察署に行けたのは3カ月後。心療内科でも事実を信じてもらえずショックを受けた。
その間、犯人は犯行を繰り返し、水井さんは「私が現行犯逮捕していれば」「もっと早く動けていれば」と自分を責め続けていた。
予告編のラストには「その被害を訴えでない者も 被害を忘れなさいと諭す者も 被害の発生を知らない者も 現行法の生易しさも みんな性犯罪者の味方だ」という水井さんの言葉がある。
本編を見た後、上記の意味をあらためて考える。この映画は被害者と加害者、そしてその周囲で暮らす人たち全員にメッセージを投げかけているのかもしれない。
【ら】公式サイト http://www.mmizui.com/ra/
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150317-00010000-alterna-soci