敗戦国が世界から信頼を得るにはどれだけの外交的努力と実績の積み重ねが必要か | 日本のお姉さん

敗戦国が世界から信頼を得るにはどれだけの外交的努力と実績の積み重ねが必要か

2015.3.15 19:47
岡田氏「メルケル氏が」 独は「慰安婦」発言否定
【ベルリン=宮下日出男】メルケル首相の訪日時の歴史問題に関する発言を受け、ドイツ政府は中韓を含む日本の内外の議論に利用されないよう、神経をとがらせている。発言について、日本に歴史問題への対応を促したと受け取る向きもあるが、独側は自国の経験を紹介したという認識で、歴史問題への対処の仕方は各国で異なるとの立場を貫いている。
メルケル氏が岡田克也・民主党代表との会談で、慰安婦問題の解決を促したとされることについて、ザイベルト独政府報道官は13日の記者会見で、「独政府は否定した。私自身が(否定)した」と言明した。
メルケル氏は9、10両日の訪日中、岡田氏との会談のほか、講演や安倍晋三首相との記者会見で「過去の総括が和解の前提の一部だった」とドイツの取り組みを紹介し、フランスなどの「寛容さ」も重要な要因だったと説明。中韓、欧州のメディアは、メルケル氏が安倍首相に「反省」などを促したと報じた。
ただ、メルケル氏は会見で記者の質問に対し、「助言のために日本に来たのではない。ドイツがしたことを伝える以外にできない」と断っており、ドイツの事例の紹介を踏み越えて言及はしなかった。
独メディアはメルケル氏の訪日前、朝日新聞の慰安婦報道の一部記事取り消しなどを踏まえ、歴史問題で「隅に追いやられた(安倍政権に対する)反対派」(南ドイツ新聞)がメルケル氏の言動に期待しているなどと報じていた。
シンクタンク、コンラート・アデナウアー財団の元日本代表のマルクス・ティーテン氏は、独仏などの関係改善には冷戦で西欧がまとまる必要に迫られた事情もあったと指摘。南京事件や慰安婦問題も「国家が政策として民族を抹殺する」ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)と違い、日独の比較は「意味がない」とする。
日中韓それぞれと関係を維持するドイツは、歴史問題の対立には巻き込まれることを避けてきた。約1年前、中国の習近平国家主席の訪独時には、ホロコースト記念施設への訪問の要望を断ったと伝えられた。
今回の首相訪日に関する独政府のホームページでは、歴史問題の部分で「どの国も独自の方法を見つける必要がある」というメルケル氏の発言を見出しに掲げた。日本が中韓との関係を改善することを望むが、ドイツの場合とやり方は異なるとの認識も示した。
2015.3.14 16:55
「慰安婦問題はメルケル氏が持ち出した…」 岡田氏が独首相との会談を説明
民主党の岡田克也代表は14日、三重県四日市市での会合で、10日のメルケル・ドイツ首相との会談をめぐり、同氏から慰安婦問題の解決を促されたと重ねて説明した。「慰安婦問題はメルケル氏が持ち出し『日韓両国は非常に大事な関係だから、この問題を早く解決した方が良い』と(言われた)」と紹介した。
同時に「『日本政府に』とは言っていない。誰がとは言っていないが、解決した方が良いという話だった」と語った。
岡田氏とメルケル氏との会談に関し、菅義偉官房長官は13日の記者会見で「ドイツ側から『メルケル氏が過去の問題で日本政府がどうすべきか発言した事実はない』と説明を受けた」と述べた。
http://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/150314/plt15031416550008-n1.html
メルケル独首相は「中韓ロビーに毒されている」わけではない
2015年03月16日 16時00分 提供:NEWSポストセブン
8月15日の戦後70年に発表するとされる安倍談話は、安倍シンパが「自虐史観」「土下座外交」と批判する日本政府の歴史認識を大きく転換させることを目指している。やや低迷している支持率の浮上を狙う意味もある。
そのために、首相はブレーンである保守派の学者、財界人をメンバーに「20世紀を振り返り21世紀の世界秩序と日本の役割を構想するための有識者懇談会」(21世紀構想懇談会)という私的諮問機関を設置し、安倍談話の作成がスタートした。
それに対し、国際社会ではそれを阻止しようとする包囲網が作られた。キーマンの1人がドイツのメルケル首相だ。メルケル氏はさる3月9日に7年ぶりに来日したが、官邸は彼女の動きに神経を尖らせた。
「メルケル氏には事前に日本の複数の新聞社が講演のオファーを出していたが、彼女が選んだのは読売でも日経でもなく、よりにもよって慰安婦報道の誤報を認めた朝日だった」(外務省筋)からだ(メルケル氏への講演依頼について読売は「そうした件には従来お答えしていない」、日経は「回答を差し控える」とした)。
その朝日新聞主催の講演で、メルケル首相は安倍首相の歴史認識見直しには言及しなかったものの、ドイツの戦後処理を引き合いに出してこう語った。
「ヨーロッパでの戦いが終わった日である1945年5月8日は、解放の日なのです。それは、ナチスの蛮行からの解放であり、ドイツが引き起こした第二次世界大戦の恐怖からの解放であり、そしてホロコーストという文明破壊からの解放でした。私たちドイツ人は、こうした苦しみをヨーロッパへ、世界へと広げたのが私たちの国であったにもかかわらず、私たちに対して和解の手が差しのべられたことを決して忘れません」
さらに岡田克也・民主党代表との会談で、「過去のことについて完全に決着をつけるのは不可能だ。常に過去と向き合っていかなければならない」と語り、慰安婦問題について、「東アジアの状況を考えると、日韓関係は非常に重要だ。きちんと解決した方がいいのではないか」と踏み込んだ。
そうしたメルケル氏の発言について、安倍政権からは反発の声があがった。岸田文雄・外相は「日本とドイツでは先の大戦中に何が起こったか、どういう状況下で戦後処理に取り組んだか、どの国が隣国なのかといった経緯が異なり、両国を単純に比較することは適当ではない」と不快感を露わにした。
大メディアも産経新聞が、「戦前・戦中の日本と独裁者、ヒトラー総統率いるナチス・ドイツとの混同とも受け取れ、問題といえる」と論評し、「欧州各国は韓国のロビー活動に相当影響されている」という外務省幹部の指摘を報じた。
しかし、メルケル氏は“左派”でも、贖罪主義者でもない。党首を務めるドイツ・キリスト教民主同盟(CDU)は伝統的価値観を重視し、政治的には左翼政党との連立を拒否している中道右派政党である。
その一方でドイツ首相として初めてイスラエル議会で演説し、「ショアー(ヘブライ語で「大きな災難」、ホロコーストの意)はドイツ人にとって最大の恥」と述べた。ロシアのウクライナ侵攻では批判の先頭に立ち、ギリシャ経済危機にあたっては国内で「援助すべきではない」という意見が強まる中、経済支援の必要性を唱えるなど国際秩序の安定に貢献してきた。
メルケル氏が朝日新聞社での講演の中で「独仏の和解はフランスの寛容な振る舞いがなかったら、可能ではなかった」と述べていることからも、タカ派がいうように「中韓ロビーに毒されている」という単純な話ではないだろう。
敗戦国が世界から信頼を得るにはどれだけの外交的努力と実績の積み重ねが必要かを説こうとした“元同盟国”のサインは、もう少し真剣に聞いてもいいのではないか。
※週刊ポスト2015年3月27日号
http://news.ameba.jp/20150316-442/