イスラム国は最初は優しいが急に邪悪な本性を現すそうだ。 | 日本のお姉さん

イスラム国は最初は優しいが急に邪悪な本性を現すそうだ。

2015年2月10日(火)
あの日突然「イスラム国」はやってきた~撃退までの証言
トルコ国境から南に40キロのシリアの町、タルレファト。アサド政権打倒を掲げる反政府勢力が拠点とするこの町に「イスラム国」がやってきたのはおととしのことだった。「ともにアサド政権と戦おう」と言葉巧みに近付き、やがて恐怖の支配で町を乗っ取っていったという。去年1月、住民たちはついに決起。イスラム国を町から撃退することに成功した。「国際報道2015」では、このほど、町が「イスラム国」を追い出す際の戦闘の映像を入手。あわせて、一度は「イスラム国」に加わりながら逃げ出した地元青年の証言も得た。シリアの民主化を求める若者の情熱に付け込み、突如として残忍さをむき出しにする「イスラム国」の事態を、長年現地取材を重ねてきた日本人フリージャーナリストとともに伝える。
出演:遠藤正雄(フリージャーナリスト)
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有馬
「特集です。
今日(10日)は、『イスラム国』の台頭で混迷が一段と深まっているシリアです。」
佐野
「シリアでは、民主化を求める反政府勢力がアサド政権の打倒を掲げ、4年にわたって戦闘が続いています。
一昨年(2013年)、『イスラム国』が台頭して情勢は一変。
反政府勢力は、当初、『アサド政権の打倒』で『イスラム国』と手を組みます。
しかし『イスラム国』の残虐な実態が明らかになるにつれたもとを分かち、いまや、アサド政権と反政府勢力、そして『イスラム国』の3つどもえの内戦となっています。」
有馬
「この3つの勢力のせめぎ合いが続いてきたのが、タルレファト。
今は、反政府勢力の『自由シリア軍』の勢力下にある町です。
この町から『イスラム国』に参加し、半年後に帰還したある若者を取材することができました。
なぜ『イスラム国』に参加したのか、そして、なぜ戻ってきたのでしょうか。」
シリア最新報告 「イスラム国」と闘う市民
激しい戦闘が続くシリア北部。
トルコ国境から南におよそ40キロ、2万5,000人が暮らすタルレファトです。
内戦が始まってすぐに反政府勢力の自由シリア軍が支配するようになり、アサド政権や「イスラム国」との戦闘の最前線となっています。
食堂で働くアフマド・カブソさん、27歳。
一昨年、「イスラム国」に身を投じましたが、半年後に脱退しました。
アフマドさんが加わった当時、「イスラム国」はタルレファトに進出していました。
アサド政権との戦いに苦しんでいた人々は、協力を申し出た「イスラム国」を好意的に受け入れたのです。
アフマドさんもそんな1人でした。
アフマド・カブソさん
「“真のイスラム教国の建設”という理念に共感し、『イスラム国』に参加しました。
そして、対空砲の砲撃手として戦いました。」
しかしその後、「イスラム国」は本性をむき出しにします。
協力を拒む市民を殺害し始めたと、アフマドさんは言います。
アフマド・カブソさん
「最初は、人々の信頼を得ようと友好的ですが、すぐに態度を変えます。
自分たちの考えに同調しない者は、一般市民でも容赦なく虐殺するのです。
イスラム教徒を名乗っていますが、イスラム教とは無縁の連中です。」
今回の取材を行ったのは、アフマドさんの従兄弟で、自由シリア軍を支援する市民ジャーナリストのモハメド・カブソさんです。
モハメド・カブソさん
「市民の支援を受けて、自由シリア軍は支配地域を拡大しています。」
モハメドさんは、混乱が始まった4年前からテレビやインターネットを通じて、現地の実情を伝えてきました。
モハメドさんは、多くの若者が、なぜ「イスラム国」に加わったのか、その動機を探ってきました。
モハメド・カブソさん
「『イスラム国』は、若者たちを洗脳しています。
給料も高く、結婚の面倒まで見てくれるのです。」
去年(2014年)1月、タルレファトの人々は「イスラム国」から町を奪い返そうと決起。
5日間にわたる攻防で25人が犠牲になりましたが、ついに「イスラム国」を掃討しました。
「ついにタルレファトを『イスラム国』から取り戻したぞ!」
「イスラム国」の旗は引きずり下ろされ、町は再び自由シリア軍の手に戻りました。
しかし、「イスラム国」は今もタルレファトからおよそ10キロ先で勢力を保っています。
このため、町への出入りは厳重に監視されています。
アフマドさんも週に4日、自由シリア軍の兵士として警備などにあたっています。
この日の持ち場は、最前線の陣地。

黒い旗がたなびく向こう側の町は「イスラム国」の支配地域です。
「イスラム国」は、昼夜を問わずに攻撃を仕掛けてくると言います。
24時間態勢で攻撃に備えます。
実はアフマドさんの2人の弟は、「イスラム国」に参加し、その後戻ってきていません。
メールで何度も脱退するよう呼びかけたものの、応じる気配はないと言います。
アフマド・カブソさん
「弟たちは社会に不満を持ち、他人との交流を避けていました。
『イスラム国』こそ理想郷だと勘違いしています。
早く真実に気づいてほしいです。」
さらに弟の1人が最近、モハメドさんにボイスメッセージを送りつけてきました。
“『イスラム国』こそが正義だ。
刺客を送り込んだ。
お前たち家族を皆殺しにする。”
モハメド・カブソさん
「イスラム教は、平和を重んじる宗教だと指摘すると、彼らはこちらを背教者と決めつけます。
『イスラム国』を倒すためには、アサド政権も倒さねばなりません。
シリアの民主化にとっては、両方とも敵です。
勝利を信じて戦い続けます。」
シリアの若者たちは、混乱に堪えながら、一日も早く祖国に平和が訪れることを願い続けています。
なぜ「イスラム国」に身を投じるのか?
佐野
「スタジオには、フリージャーナリストの遠藤正雄さんにお越しいただきました。
遠藤さんは、2012年からシリアにも足を運んで内戦の取材を続けてこられ、VTRを撮影したモハメドさんとも交流がおありです。
よろしくお願いします。」
フリージャーナリスト 遠藤正雄さん
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」
有馬
「敵の敵は味方じゃなかった、という話かと思うんですけれども、同じように『イスラム国』に一旦は夢を託した若者たち多かったのでしょうか?」
フリージャーナリスト 遠藤正雄さん
「その背景の1つとして言えることは、長年続いた内戦で自分の住む家を失ったり、または村が崩壊してしまったり、破壊されてしまったり、さらには食料が、援助が届かなかったり、その人たちに食料を与える、それから仕事も与える、お金も与える、ガールフレンドがほしい人にはガールフレンドも与える、結婚したい人は結婚のあっせんもすると。
そういったことで、若い人たちはどんどん勧誘されていくと。
それと、若い人たちは本当にまだ10代の人たちですから、世間も知らないと。
そんなところで、どんどん『イスラム国』の洗脳というか勧誘に、誘惑に負けてしまって、どんどんメンバーとなって入ってしまう。」
有馬
「厳しい暮らしをしている中で理想のイスラム教の国をつくる、これは誘惑になったのですね?」
フリージャーナリスト 遠藤正雄さん
「当初、イスラム法を施行して、みんな平等、そのイスラム法を元に生活をしていくと。
理想をあげて、イスラム法にのっとって国を統治していくと。
それにひかれて『イスラム国』の人たちを受け入れたタルレファトの人たちなんですけれども、結局は、彼らが入ってきて統治を始めたはいいんですけれども、その後、彼らの言ってることとやってることが違うということで、最終的には軍事力を使うわけですけれども、自分たちが持つ軍事力で『イスラム国』を外まで押し出した。」
人々のきずな戻るのか?
佐野
「VTRでは、アフマドさんの弟がまだ『イスラム国』にいて、さらにその弟から脅迫のようなメッセージが来たということで、家族が引き裂かれたような状態になっているということに驚いたんですけれども、『イスラム国』から町を取り戻しても、家族や共同体のきずなというのが取り戻せていない状態なのでしょうか?」
フリージャーナリスト 遠藤正雄さん
「もし内戦が終結したとしますね、それでもこの問題は長く残っていくでしょうね。
これはカブソ家だけの問題ではなくて、この問題はタルレファト、それから地域、また部族ですとか、ひいてはコミュニティ=共同体まで影響しますので、憎しみがまた憎しみを生んで、また報復が報復を生んで、それが家族に残り、町に残り、共同体に残り、ひいてはシリア全体に残ってしまうと。
国づくりが始まっても、そういう復しゅうの報復の連鎖とかいうことが残りかねないと思います。」
“伝えてほしい” 声を届けたい
有馬
「厳しい状況にある現場ですけれども、また現地に取材に行かれますか?」
フリージャーナリスト 遠藤正雄さん
「環境が整えば行きたいと思います。」
有馬
「なぜ行かれるのでしょう?」
フリージャーナリスト 遠藤正雄さん
「やはり現場に行かないと聞こえない声、現場に行かないと見えてこないもの、それと現場にいる人たちが伝えたいこととなると結局、私たちが行かないと、その人たちの声も聞けなければ、現場で何が起きているか、現場の人が何を伝えたいか。
長年、4年間に続く長い内戦の中で疲弊しきっているわけですよね。
多くの難民が国外に逃れて、お金のない人たちだけが避難民として残されていると。
食べ物がない、インフラも破壊されている、仕事もないと。
その中で、唯一の頼みが国際社会なんですね。
その国際社会に訴えていきたいと。
その中に仲介に立つ人間は誰かというと、結果的に我々のようなフリーのジャーナリストということになるのではないでしょうか。」
有馬
「伝えないといけないものが、そこにあるということですね?」
フリージャーナリスト 遠藤正雄さん
「また、彼らも伝えたいと。
マスコミ、確かに疲れているんですね、メディアに疲れてます。
それでも、メディアが何回も何回も来て取材するわけですけれども、事態は変わらないと。
それでも、まだメディアに伝えたいと、彼らは、この現状を見てくれと。
そういうことで、我々もそれに応えたいと。」
有馬
「厳しい判断が問われますね。」
フリージャーナリスト 遠藤正雄さん
「はい。」
http://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2015/02/0210.html