「打倒」には少なくとも数年を要する
「イスラム国」打倒にかかる時間は 各地に忠誠誓う組織
カイロ=翁長忠雄 ワシントン=大島隆 寺西和男、山西厚
2015年2月2日09時20分
「イスラム国」が撤退したシリア北部アインアルアラブ(クルド名コバニ)では30日、建物ががれきと化していた=AP
過激派組織「イスラム国」は、残虐なテロなどで住民を統制する一方、貧しい人たちには施しをするなど、硬軟織り交ぜた戦略が特徴だ。巧みなネット戦略で戦闘員を集め、中東や北アフリカでさらなる勢力拡大を狙う。欧米諸国などは空爆中心の軍事作戦に力を入れるが、「打倒」には少なくとも数年を要する見通しだ。
特集:「イスラム国」
■支配領域拡大が目標
過激派組織「イスラム国」は、反米を掲げている点は国際テロ組織アルカイダなどの他の組織と共通する。だがアルカイダが世界のあらゆる場所で米国とその同盟国の権益を攻撃することに主眼を置いているのに対し、「イスラム国」は、1922年のオスマン帝国崩壊後になくなったカリフ(預言者ムハンマドの代理人)制国家を復活させ実効支配領域を広げることを最大の目標としている。
イスラムの教えを厳格に守ることを目指すと標榜(ひょうぼう)し、ネットを利用した巧みな宣伝で中東や欧米の若者に移住を呼びかけている。残虐性を見せつけて住民を統制する一方で、インフラ整備などの行政機能を担い、貧困者らへ物資を配るといった慈善活動もアピールして支持を得ることも狙っている。
英仏ロシアが引いた国境線をなくし、中東全域と北アフリカまでの版図拡大を狙っているとされる。
それに呼応するように、「イスラム国」に忠誠や支持を表明する過激派組織が各地で出ている。
過激派の動向に詳しいエジプト人ジャーナリストのサラ・ディーン・フセイン氏によると、エジプト、リビア、アルジェリア、ナイジェリア、パキスタン、カザフスタン、イエメンで約10組織が、「イスラム国」への忠誠や支持を示している、と確認されている。
http://www.asahi.com/articles/ASH215199H21UHBI01Q.html?iref=com_rnavi_arank_nr05
米国:地上軍派遣論強まる…「イスラム国」掃討
毎日新聞 2015年02月02日 10時54分(最終更新 02月02日 16時09分)
オバマ米大統領=ワシントンで2015年1月30日、AP
【ワシントン西田進一郎】イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)が人質事件などで米国主導の有志国連合にくさびを打ち込もうとする中、米国内ではIS掃討作戦を強化すべきだとの意見が出ている。オバマ大統領は空爆に加え、イラクやシリアの現地部隊を養成してISの支配地域を奪還させる戦略だが、攻勢に転じるまでには至っていない。大統領に対し、地上部隊の派遣を含めた戦略の見直しを求める圧力が高まっている。
共和党のグラム上院議員は1日、CBSテレビの番組で「大統領の戦略は間違っている。イラク、シリアでも地上部隊が必要だ」と発言し、地上部隊派遣を選択肢から排除してきた大統領を批判した。ブッシュ前政権からオバマ政権の1期目途中まで国防長官を務めたゲーツ氏も、1日のNBCテレビで、「大統領がこれまでに承認してきたやり方では、IS掃討は実現不可能な目標だ」とし、空爆を助けるために数百人規模の特殊部隊を派遣すべきだと語った。
米国が主導する有志国連合はイラクとシリアで2000回を超える空爆を行ってきた。イラク国内ではISを押し返し、一部ではISの支配地域の奪還にも成功。昨年12月に始めたイラク政府軍などへの訓練を進め、攻勢に転じる構えだ。
しかし、シリアでは対立するアサド政権と協力できないため、情報収集や地上からの攻撃ができず、空爆の効果は限定的だ。地上部隊を務めるシリアの穏健な反体制派に対する訓練は今春から始まる予定で、当面あてにできない。
ヘーゲル国防長官やデンプシー統合参謀本部議長は、空爆の精度を高めるために米地上部隊の前線への派遣が必要になる可能性がある、と繰り返し言及してきた。
上院軍事委員会はヘーゲル長官の後任に指名されたカーター前国防副長官の指名承認のための公聴会を4日に開く予定だ。同委のアヨット議員(共和党)は1日のFOXニュースで「戦略が欠けているだけでなく、みんなを一つにまとめていく指導者として信用するにたり得るのかについても誠に懸念がある」と大統領を批判した。
「後藤さん殺害」:「取材する雄姿広めよう」ネットで共有
毎日新聞 2015年02月01日 20時27分(最終更新 02月01日 22時15分)
後藤さんが活躍する写真の共有を呼びかける英ジャーナリストのツイッターの書き込み
「共有するなら後藤さんの功績を」??。フリージャーナリストの後藤健二さん(47)が殺害されたとみられる動画の拡散を自制し、代わりに紛争地で取材する後藤さんの姿を共有する動きがツイッターなどのソーシャルメディアで広がっている。残忍な映像を配信した「イスラム国」(IS)側の狙いに加担しない草の根の意思表示だ。
「あの映像を共有するな。彼らのゲームに加わるな。仕事をしている時のケンジの画像を共有しよう」
後藤さんを殺害したとする映像が配信された日本時間の1日早朝。英国のジャーナリスト、ジェームズ・ロングマンさんがツイッターに英語で書き込んだ。笑顔の子供の横でビデオカメラを手にほほ笑む後藤さんの画像が添付されていた。書き込みを拡散するリツイートは同日夕までに1万回を超え、日本語にも翻訳されて広がりをみせている。
取材に対し、ロングマンさんはメールで「ISはシリアとイラクでは実際に力を持っているが、彼らが(今回のような行為を通じて)望むことは世界に心理的な圧力をかけることだ。私たちは彼らの『代弁者』となってはいけない」と答えた。
後藤さんの中学時代の同級生でITジャーナリストの林信行さん(47)は直後にリツイートし、「彼の生前の素晴らしい活動を広めることにこそ価値がある」といち早く書き込んだ。林さんは「ソーシャルメディアが情報戦の舞台となっており、人の命がISの宣伝に利用されてほしくない、という思いに共感した」と話した。【八田浩輔、石戸諭】