フランスでは暴徒がユダヤ系店舗を襲撃するなど、ユダヤ人らの不安が高まっている。
2015.1.12 22:22
追悼デモ「自由の国」団結に試練…不安高まるユダヤ系
仏紙銃撃テロ
【パリ=宮下日出男】フランスの風刺週刊紙シャルリー・エブド銃撃など一連のテロ事件を受けたデモが11日、仏全土で行われ、参加者が最大で計370万人に上った。「仏史上最大規模」(仏メディア)のデモは国民が「自由の国」の原点を確認し、その実現を誓う機会となった。ただ、国民団結の道のりは険しく、厳しい視線も向けられた。
パリでは世界各国首脳らが加わったデモをはじめ、市内各地でデモが行われ、内務省の推計では最大160万人が参加した。仏紙リベラシオン(電子版)は「歴史的な反テロのデモ行進」と伝えた。
「私たちは一緒に暮らせる。『自由、平等、博愛』という価値を共有するからだ」。あるユダヤ人の男性がフランス建国の理念を訴えると、イスラム教徒の男性が「その通りだ」ときっぱりと答えた。
フランスは世界の民主主義や人権の歴史に大きな影響を与えた。「国民の誇りである『自由』対する誓いへの試練」(AP通信)として海外メディアもデモを大きく伝え、米CNNは「フランスは目覚める」と報じた。
一方、現状を冷静にみつめるまなざしもある。
ロイター通信によると、フランスを訪れてデモに加わったイスラエルのネタニヤフ首相は11日、フランスに住むユダヤ人らに「イスラエルはあなた方が祈りを捧(ささ)げる国であるだけでなく、あなた方の家でもある」と述べ、移住を支援する意向を表明した。
フランスでは昨年、イスラエルのパレスチナ自治区ガザ地区への軍事行動に対する抗議デモで暴徒がユダヤ系店舗を襲撃するなど、ユダヤ人らの不安が高まっている。イスラエルに移住するユダヤ人は昨年、前年の3300人から7千人に倍増し、今年は1万人になるとも予測される。
イスラエル紙ハアレツはユダヤ系食料品店の襲撃を受け、「私はユダヤ人」というスローガンがみられなかったことを「説明しがたい」と指摘。あるラビ(ユダヤ教指導者)は「フランスは何かが変わらなくてはならない」と訴えた。
一方、デモには多くのイスラム教徒も参加したが、モスク(礼拝所)への襲撃など反イスラム感情の高まりも懸念されている。デモに参加したトルコのダウトオール首相は、「反イスラムに対しても同じ繊細さを期待したい」と語った。
http://www.iza.ne.jp/kiji/world/news/150112/wor15011222220038-n1.html