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ろくでなし子さん逮捕――「わいせつとアート」の境界線は誰がどう決める?
シェアしたくなる法律相談所 2014/12/10 11:33
女性器をモチーフにしたアート作品で知られる「ろくでなし子」さんが、2014年12月3日、わいせつ電磁的記録頒布などの疑いで警視庁により再逮捕されました。
この逮捕をめぐっては、「表現の自由と規制」、「わいせつと芸術」の観点から議論がなされています。そこで、今回はこの事件について、わいせつ事件や性風俗産業に詳しい聖マグダラ法律事務所の小西一郎先生に聞いてみました。
●今回問題となった「わいせつ電磁的記録頒布罪」とは?
「日本の法律では『わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料に処し…』と規定し、わいせつな電磁的記録を電気通信の送信により頒布した場合、処罰することを定めています。
つまり、電磁的記録それ自体わいせつとはいえなくても、電子計算機等によってわいせつ物を作成できる記録を頒布したものとして処罰する規定であり、当該電磁的記録に基づき、3Dの女性器を模した造形が作成されるため立件されたものと思われます。」
警視庁は、記録によって作成される、女性器を模した造形がわいせつ物と考えているようです。
●芸術品ならわいせつ物にならない?
「『わいせつ』とは、判例によれば、徒に性欲を興奮又は刺激せしめ且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反することとされます。この要件からは、社会の変遷とともに基準が変遷していくようにも見えます。したがって、芸術性が高いものに対しては、わいせつには当たらない可能性があります。公衆の性的感情を保護法益ととらえれば、単なる純粋なポルノを除けばかなりの範囲でわいせつとはいえないものが観念できると考えられます。」
●芸術品とわいせつ物の区別は?
「ポルノとアートのメルクマールはかなりデリケートな問題となります。 ヌードデッサンなどは、芸術性が極めて高く、これが性的な描写があるからといっても、わいせつとみることはかなり難しいものと考えられます。
また、18歳未満は見ることのできない頒布等であれば、その価値から考えて、処罰する必要のない作品が多々あると考えられます。AVなどでも芸術性が高い作品群等もあり、例え局部の露出等があってもわいせつ性を払しょくできる場合があると私見でありますが考えられます。」
それでは、AVでも芸術品になる場合があるとすれば、その区別はとても難しそうですが、誰が判断するのでしょうか。
「まず、第一次的には行政による判断がなされます。この場合、直ちに刑事立件されるわけではなく、行政上の警告などがなされる場合が想定されます。しかし、このような場合、憲法で保障された表現の自由への委縮効果が著しいものと考えられ、違憲の評価は免れないものでしょう。
そして、刑事訴追されれば、裁判官が判断します。しかし、上記に記したように、わいせつの概念は社会の変遷とともに変遷していくものですが、裁判官に社会の変遷に応じた判断を期待することは困難かも知れません。裁判員など民間の声が反映されてこそ判断されるべき事柄と考えられます。」
●今回の逮捕が日本に及ぼす影響は大きい
今回の逮捕は、表現の自由を大きく侵害すると言われていますが、何が問題なのでしょうか。
「憲法の保障する表現の自由は、民主主義の根幹をなす権利であり、これを制限することは民主主義の崩壊を意味します。たとえ、性的表現の規制であっても、この制限を大幅に可能とすることは、国家がその判断をすることになり、性的という部分からなし崩し的に表現の自由が保障されなくなるおそれがあります。
性器の3Dの電磁的記録がアートといえるかは賛否両論あるでしょうが、このような行政の行為は間違いなく委縮効果を及ぼしており、これは性産業に従事する者たちだけの問題ではありません。『なんでもアートといえば許されると思うな』という当局の気持ちはあるかもしれませんが、お上の機嫌で取り締まりがなされるようでは民主主義は危ういでしょう。」
私達がわいせつだと思っていなくても、国家の判断によっては、犯罪となってしまう可能性があり、さらに、国家の判断により、性的なものではなくても、文章、絵、発言など、様々な表現活動もできなくなっていく可能性すらあるようです。社会全体にとって、今回の逮捕は思っているよりも重大な問題なのかもしれません。
*取材協力弁護士: 小西一郎(聖マグダラ法律事務所。風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律を専門分野とする風俗弁護士として全国を飛び回る。)
http://news.merumo.ne.jp/article/genre/2316441