中国「内向きメンツ外交」の核心―うまいこと言う!
中国「内向きメンツ外交」の核心
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石 平
中国「内向きメンツ外交」の核心 「習外遊」人民日報?大々報道?の理由
先月15日から23 \日にかけ、中国の習近平国家主席はオーストラリ ア、ニュージーランド、フィジーの3カ国を公式訪問し、いくつかの国際 会議に出席した。その期間中、人民日報の報道は実に興味深いものであった。
訪問開始の15日、まず1面で習主席の現地入りを報じ、主席がオース トラリアの新聞紙で発表した文章を掲載した。16日、1、2面の約7割 のペースを使って習主席の20カ国・地域(G20)首脳会合出席を大々 的に報じ、会議での主席講話を全文掲載。17、18日、1、2面はまた もや習主席によって埋め尽くされた。
それ以来、22日まで習主席が人民日報の1面を完全占領。23日には 1、2面を丸ごと習主席報道に充てた。
中国最大の官製メディア人民日報が、習主席の外遊報道にどれほどの熱を上げているかがよく分かるが、それは人民日報だけでなく、中国全メディアの傾向である。
よく考えてみれば、それは実に不思議なことだ。主席の外遊はそもそも、外国の指導者や国民に働きかけるための外交活動のはずだが、人民日報の報道は諸外国を対象としたものではない。
外国の指導者や国民にしても、人民日報を自宅でとっているわけでもない。報道はどう考えても、中国国内の読者だけを強く意識したものであろう。
主席の外遊活動を自国民に大々的に報道しなければならない理由は一体どこにあるのか。それを説明してくれたのは、ほかならぬ習主席自身である。
このような異質な中国流の外交理念は、中国外交の危険性を増すと同時にその最大の弱点にもなろう。体制維持のために常に国民に向けて「強い中国」を演じなければならないから、中国外交は柔軟性を欠いて冒険的な強硬姿勢に走ることが多い。
一方、「外交的勝利」に焦って暴走した結果、中国自身の外交的孤立を招くことも往々にしてある。中国外交は決して、よく言われるような老練、老獪(ろうかい)な側面だけではないのである。
日本としては、中国外交のこうした特異性をきちんと認識した上で、さまざまな駆け引きの場面で、彼らのメンツや焦りを冷静に見極め、うまく利用すればよいのである。
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【プロフィル】石平
せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、
神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活
動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。
産経ニュース【石平のChina Watch】2014.12.11