秘密保護法でようやく「普通の国」に
秘密保護法でようやく「普通の国」に
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杉浦 正章
安倍政権での報道抑圧はあり得ない
しょせん政権側は秘密を守る習性があり、マスコミはこれを暴く習性があるのだ。特定秘密保護法が施行されたが、同法があろうがなかろうが関係はない。未来永劫にこのいたちごっこの戦いは続くのだ。
マスコミは「取材源が萎縮する」と言うが、法案を口実に萎縮しているのは記者の方ではないか。甘えてはいけない。萎縮しようがしまいが、国民のためにならない情報は公に報道する。これが報道の基本であり、平たく言えば記者根性というものだ。
そもそも特定秘密保護法は欧米でもアジアでも各国が共通して施行している法体系であり、日本がようやく普通の国になっただけのことだ。漏洩への最高刑は米国も中国も死刑だが日本は懲役10年とゆるやかだ。
その死刑があり得る機密漏洩をめぐるマスコミと政権のすさまじい戦いを米国で特派員時代につぶさに見た。71年のペンタゴン・ペーパーズ事件だ。
ニューヨークタイムズがベトナム戦争に関する国防総省の機密文書を連載し始めたのだ。秘密文書作成にかかわったダニエル・エルズバーグから入手したものだ。
事態を重視した大統領ニクソンはペンタゴン・ペーパーズの新聞への掲載を国家安全保障に脅威を与える国家機密文書の漏洩であるとして、記事差し止め命令を求め連邦地方裁判所に提訴した。マスコミと政権の血みどろの戦いが展開されたが、最終的には連邦最高裁判所での上告審で「政府は証明責任を果たしていない」という理由で却下された。
まさに言論の自由が勝利した瞬間であり、以後の判例や、政府の方針決定に大きな影響を与え、米国は結局ベトナム戦に敗北して撤退した。
このように、言論の自由とは基本的にはマスコミと政権の対峙の中から戦い取るものであり、天から与えられるものでもない。秘密保護法があろうがなかろうがこの構図には変わりはない。それに今回の秘密保護法を見れば、とてもこれにより日本が全体主義に陥り、言論活動が抑圧される性格のものとは思えない。
だいいち首相・安倍晋三が「和製ヒットラー」になるとも思えない。安倍自身テレビで「秘密保護法はテロリストやスパイ工作を対象にしたもので、国民とは全く基本的に関係はない。報道が抑圧される例が生ずれば私は辞めますよ」と言明している。
もともと日本は世界の主要国から「スパイ天国」と見られており、昔内調室長が「アメリカですら、信用して情報をくれない。モサド(イスラエル諜報特務庁)からもらう情報が多い」と嘆いていたのを思い出す。それはそうだろう、法律の不整備と公務員の弛緩が原因で数多くの機密軍事情報が日本からソ連や中国に流出したと言われる。
その氷山の一角が7年前に発覚した自衛官によるイージス艦の性能に関する機密漏洩事件だ。国防のトップ機密をよく中国に漏らしたと思われる事件だったが、今中国海軍はイージス艦そっくりの高度なシステム艦を保有して、これ見よがしに演習に繰り出している。
これら軍事情報の流出はまかり間違えば国民の生命、財産を危険にさらすことになりかねない。何十万人もの死者を出す事態が機密漏洩で発生しないとは限らない。例えば迎撃ミサイルに関する情報が中国や北朝鮮などに筒抜けになれば、安全保障戦略が決定的に不利な状況に置かれかねないのだ。
安倍の「辞めます」発言に関して朝日は「要するに政権を信用して欲しいということだろうが、それをうのみにするわけにはいかない」と拒絶反応だ。折から偶然にも選挙期間中に法律が施行される事態となった。ここは安倍が堂々と秘密保護法の必要を説けばよい。おそらく有権者は自民党を圧勝させることにより、「政権を信用」するだろう。
野党や毎日など一部マスコミは選挙中の施行に反発している。民主党幹事長・枝野幸男が「衆院解散により不十分な国会の監視システムすら設けないままの状態で施行するのは問題」と噛みつけば、社民党幹事長の又市征次も「衆院議員が誰もいない中での施行は言語道断」と批判。これこそノーテンキな無知丸出しの事実誤認だ。
昨年12月6日成立、同年12月13日に公布された法律には「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」となっている。そ
れを受けて政府は10月14日の閣議で12月10日施行と決定しただけである。解散風は11月9日から吹き始めたのであり、10月の時点では誰も安倍が解散・総選挙に踏み切るとは思っていなかった。
したがって閣議がこの段階で解散にぶつけようと思って日程を組むことはありえない。おまけに選挙に不利に働きかねない法律の施行を選挙期間中にあわせるなどと言うことはあり得ない。
そもそも法律は成立したのであり、野党が1年たってから噛みついても遅いのだ。黒白は選挙が付ければよい。安倍が原発再稼働、集団的自衛権の行使とともに秘密保護法も「選挙圧勝」で信任を受けることは確実だ。
(政治評論家)
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米国のアジア政策見直し
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Andy Chang
11月4日に米国で選挙があり、オバマと民主党が大敗した。29日には台湾で大型選挙があり、国民党が大敗した。14日には日本で衆議院選挙がある。自民党が優勢を保つことが出来ればアジア情勢は大きく変わり、米国もアジア政策を見直さなくてはならないだろう。
米国の政策見直しより日本がもっと強い国になることを願っている。
投票前に中国は西太平洋で海軍の演習を行うなどで自衛隊のスクランブルが何度も起きた。言うまでもなくアジアの政情は全て中国の覇権強奪行為に対応することである。中国の覇権行為を抑えることが日本と米国の課題である。だから日本が自衛力を持つ事が大切なのである。
オバマは中国に宥和的態度を維持し、日本、台湾、フィリッピンなどの抗議を応援しなかったが、米国で共和党が勝利し、台湾で国民党が敗北したあと、自民党が勝利すれば米国はアジア政策見直しが必要となる。
●米国と中国の覇権闘争
半世紀以来、米国は世界の覇者だったが、中東政策の失敗で米国が衰退し、中国は二極覇権を目指してアジアの覇者を唱えるようになった。中国の度を過ぎた覇権行為はアジア諸国が受け入れない。
米国がアジアにおける影響力を維持するためにはアジア諸国との関係見直しが必要である。アジア諸国の主張をもっと尊重すること、米国の勢力範囲から中国に傾斜せぬよう腐心すべきである。
覇者となる条件は三つある。武力、政治力と経済力である。武力において、米国は朝鮮戦争では勝利したがベトナム戦争では負けた。
中国と戦争して勝てるかといえば勝ち味はない。海と空のバトルでは勝てるがそれ以上ではない。しかも米国は今でも尖閣や南シナ海における中国の覇権進出を抑えていない。
米国は韓国と日本に基地をおいているが、フィリッピンのスービック・ベイ基地を失った。台湾に海軍と空軍基地を置けば日本に対する依頼度を低める事が出来るが中国の反対を恐れて出来ない。馬英九は台湾の防衛力を極度に低下させたので戦う能力はなくなった。
それでも米国は中華民国を支持して台湾独立に反対である。米国はいまこそ台湾政策を改めるときである。
アジアで最も大切なパートナーは日本であり、最も大切な島は台湾である。米国はこれまで日本に冷淡すぎて韓国や中国を優遇し過ぎていたが、これから早急に日本をパートナーとしなければならない。
台湾政策において米国は人民の政治運動を支持して国民党独裁に反対すべきである。国民党を倒せば台湾に基地をおくことが出来る。
●覇権国でなく同盟国を作れ
これまで米国のアジア政策は諸国の防衛と経済援助で軍事政治経済の各方面で親分として振舞ってきた。だが米国のアジア政策は子分を優遇せず敵に軟弱だった。日本が自衛力を持つことに反対、憲法改正にも反対の立場を維持してきた。
中国の経済発展が進み、軍事力が増強するにつれて米国は日本の基地だけではなく日本の軍事力が必要になった。しかし米国の日本に対する高圧的態度は変わっていない。米国ばアジアで最も頼りになる日本に冷淡で、韓国や中国の反応に怯えている。このような政策を早急に改善し、日本が自衛力を持つ同盟国とするアジア政策を取るべきである。
米国が沖縄基地の半分を失ってグアムに移転すれば中国を抑えることができるのは日本の自衛隊だけである。沖縄基地は米国のアジア政策の重要課題である。沖縄の経済は日本政府と米国基地の存在に頼っている。沖縄問題を円満に解決し、日本政府と協力して沖縄住民の基地反対運動の解決に尽力すべきである。
●経済問題と中国依存
トウ小平は共産主義を棄てて独裁資本主義を導入し、中国の安い労賃を利用して30年で大きな経済発展を遂げた。アメリカは輸入大国で台湾や日本は製造大国だったから中国の安い労働力で大いに儲かった。
中国は儲けた金を軍備発展に使って覇権大国となり、諸国に迷惑をかけるようになった。更に中国の労賃が高騰したので各国は製造業をベトナムやインドネシアなどに移転するようになった。
中国投資は政府のコントロールが強く政治的圧力が強い。李登輝、陳水扁の時代は中国投資を抑えていたが、馬英九時代になると中国投資が増えて中国の政治的圧力を受けるようになり、台湾併呑も時間の問題と言われている。アメリカの危機、アジアの危機である。
●米国は間違った外交政策を正すべきだ
日本の選挙の結果がどうであっても、日本は正しい国家として自国防衛が出来る、軍事的に米国のアジア防衛を援助する同盟国になるべきである。アメリカは強い日本を奨励すべきだ。
米国一極覇権の時代は終りに近づいて中国の覇権主張を抑えることが重要課題となった。米国がアジアで影響力を維持するためには日米同盟が必要である。従来の影響力を保つためには安保条約を改定し日本を同盟国として尊重すべきである。「ノーと言える日本」の時代は終わった。これからは「ノーと言う日本」になって欲しい。
台湾問題でも大幅な政策変更が必要である。今回の選挙で国民党が壊滅的な負け方をしたのは台湾人の反中国の証拠である。米国は従来の国民党支持で現状を維持する政策を変更すべきだ。
2012年の総統選挙で米国はダグラス・パールを台湾に派遣して投票前に国民党指示を表明したため、民進党の蔡英文が落選した。明白な政治干渉で米国は台湾人の恨みを買ったのだ。
だが国民党が敗退したので再来年の選挙で米国は国民党を支持することはないと思われるが、米国が反省しないかもしれない。米国は過去において蒋介石を支持、国民党を支持、馬英九を支持したが、これらはみんな米国の間違った選択であった。
日本と台湾は米国の最重要な同盟国である。同盟国に冷淡で敵国に宥和政策を採ってきた米国、民主主義を唱えながら独裁者を支持してきた米国は間違いを正さなければならない。
台湾では既に来年の立法院議員と再来年の総統選挙に向けて活発に動き出している。国民党が敗退すれば今後の中国依存はさらに薄れるだろう。米国の台湾政策も台湾人の反中国と独立志向に注意しなければならない。