脂肪率40%以上の生クリーム200ミリリットルからバター約80グラム
クリスマス前なのに…バター消えた 昨夏の猛暑で生乳生産減、洋菓子業界悲鳴
産経新聞 11月26日(水)7時55分配信
11月に入ってバターの入荷が減り、買い占めを防ぐため、1個ずつしか陳列しないという=東京都江東区のサンケイスーパー(日野稚子撮影)(写真:産経新聞)
ケーキ作りなどでバターの需要が高まるクリスマスを前に、小売店で国産バターの売り切れが頻発。大量のバターを使う洋菓子店でも仕入れが困難になっている。主な原因は去年の夏の猛暑による生乳生産量の減少だ。農林水産省は「今年度分は追加輸入で確保できた」とするが、洋菓子業界では「どこにバターがあるのか」と悲鳴が上がる。
今年のバター不足は深刻だ。スーパーの乳製品売り場で棚に空きができたり、「バター風」などと表示されたマーガリンが棚を占めたりしている。
「陳列棚に複数個並べると買い占める人が出る。当面は1個ずつしか陳列しない」と話すのは東京都江東区のサンケイスーパーの水野竜宏社長(50)だ。11月に入って入荷が減り、多くの客に渡るよう苦肉の策を講じた。
業務用も供給不足が続く。「知り合いの店では、マーガリンで代用できる菓子にバターを使うのをやめた。うちは何とか確保できている分、まだ良い方」
東京都武蔵野市の老舗洋菓子店「パティスリーティアレ」の海道昭彦社長(47)は諦め顔だ。今月の国産バターの仕入れ値は1本(450グラム)当たり前年同月に比べ13%も値上がり。納入業者から前年同月比3割カットの制限を夏以降、受けている。「制限はしばらく続くといわれている」
バター不足は原料となる生乳の生産量が酪農家の離農などで減っていたことに加え、昨夏の猛暑が引き金。体力が落ちて乳房炎を起こす乳牛が増え、生産量が前年比約3%減となる月が昨秋から続いた。生乳は牛乳や生クリームに優先供給され、保存性の高いバターは後回しになり、昨年11月から今年6月までのバターの月間生産量は前年同月比10~23・5%減に。
一方、バターの輸入には国内の酪農家保護のため高い関税がかけられ、毎年一定量に限り低い関税で輸入する関税割当制が取られている。国産の不足を受け、国は5月に7千トンの緊急輸入を決定。さらに9月に3千トンの追加を決め、年度内に計1万トンとした。ただ、需給の調整は難しく、来年度以降、安定的に供給されるかは不透明だ。
全日本洋菓子工業会副理事長を務める東京都北区の洋菓子店「シエルボン」の鎌田明彦社長(73)は「こんなバター不足は初めてだ。生乳生産量の回復には数年かかるだろう」と供給量の確保を求めている。(日野稚子)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141126-00000087-san-bus_all
2014.11.1 11:20
.「バター」はどこへ?棚は空っぽ…牛乳はあるのに
【暮らしのハテナ】
いつも利用しているスーパーでこの秋、一時、バターが店頭から姿を消した。お菓子やパンのレシピには必ずといっていいほど材料に含まれているバター、買えないと困ってしまう。どうしてこんなことが起こるのだろうか。(加納裕子)
◆牛乳が優先
「バターの十分な品揃えができておりません。おわび申し上げます」
わが家の近くのスーパーの店頭に、こんな表示が掲げられていた。驚いて別のスーパーに駆けつけると「お1人様1点限りでのご購入をお願いいたします」と書いてある。1点だけ買おうにも、商品棚は空っぽだ。どうやらバターが品薄になっているらしい。
牛乳はいつも通り並んでいるのに、牛乳から作られるバターが品薄になるのはなぜか、農林水産省牛乳乳製品課に聞いてみた。
「国内で生産された加工前の『生乳』はまず、日持ちがせず、輸入もできない牛乳に向けられます」と担当者。残った生乳から加工されるバターは、生乳の生産減の影響をダイレクトに受けるのだという。酪農家の離農が進んで飼育頭数が減っているのに加え、前年の猛暑で生産量が落ちているのだとか。
バターの今年4~8月の生産量は前年同期比11・9%も減少。同省は5月に7千トン、9月に3千トンの追加輸入を決めた。バターの最需要期となるクリスマスに向けて順次輸入され、業務用のバターの需要をカバーするという。
◆毎年値上げ
そもそもバターはどうやって作られるのか。雪印メグミルク(東京都新宿区)によると、生乳を脱脂粉乳とクリームに分離し、クリームの方を殺菌、熟成させた上で激しく攪(かく)拌(はん)すればバターになる。同社では北海道産生乳のみを使用しており、1箱(200グラム)に4リットル以上の生乳が使われる。
「雪印北海道バター(200グラム)」の希望小売価格(税抜)はかつて325円だったが生乳の価格が上がり、平成20年に350円に。以後毎年のように値上げが続き、今年7月には393円になった。菓子やパンに使う「食塩不使用」は20年までは355円だったが、今では434円だ。
同社によると、このころから品薄も何度か起きている。20年は輸入バターの価格が高騰したため製菓・製パン業者も家庭用国産バターを買い求めるようになり、品薄に。23年にも前年の猛暑が響き、手に入りにくくなった。
◆選択肢知って
今年だけの問題ではなさそうだ。手に入らない場合、どうすればいいのか。
「生クリームから手作りすることもできます」と同社の広報担当者。脂肪率40%以上の生クリーム200ミリリットルを広口のふた付き容器に入れてよく冷やし、10~20分程度よく振れば、バター約80グラムができるという。ただ、市販品とは異なり日持ちがしないので、すぐに使用しなければならない。
マーガリンを使うのも手だが、意外なものも代わりになる。ABCクッキングスタジオでは今月、バターではなくプルーンを使うパンの教室を開催。プルーンが生地に保水性を与え、しっとりもちもちした食感になるという。毎週末にパンを焼くのにバターが手に入りにくくて困っていたという大阪府八尾市の主婦、多田智子さん(31)は「バターも砂糖も使っていないのに、プルーンでしっかり発酵したので驚きました。カロリーが低くなるのも魅力的」と話していた。
クリームチーズも代用になるといい、白パンのレシピをもらって私も作ってみた。クリームチーズの風味がおいしかったが、子供はバター入りの方が好きなよう。できればバターを使いたいが、さまざまな選択肢を知っておくのもよいかもしれない。
http://www.iza.ne.jp/kiji/life/news/141101/lif14110111200008-n1.html