海上保安庁は、小笠原上空から「ある異変」を確認した。 | 日本のお姉さん

海上保安庁は、小笠原上空から「ある異変」を確認した。

中国漁船の乗組員は平気で海に物を投げている。
歯ブラシやペットボトルを笑いながら捨てる様子を見た。
イルカやクジラを見ても避けることなく、お構いなしに航行するのが中国漁船。
小笠原諸島には約30年前にも苦い経験があった。
台湾漁船が大挙押し寄せ、同じようにサンゴが奪われた。
魚が集まるのはサンゴの周辺。台湾漁船に奪われてしまった結果、周辺海域ではハタやヒメダイなどの根魚が激減した。
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<サンゴ密漁>中国船団の謎 日中首脳会談当日に急減
毎日新聞 11月14日(金)14時30分配信
伊豆諸島・鳥島(左奥)沖で漁をする多くの中国漁船=2014年10月31日、本社機「希望」から小川昌宏撮影
◇17隻(9月15日)→42隻(10月1日)→212隻(10月30日)→141隻(11月10日)
【サンゴ密漁船、週内に撤退か】中国政府が帰港指示
東京都の小笠原諸島周辺などに多数の中国漁船が押し寄せてから2カ月が経過した。突如として現れた大船団に海上保安庁や水産庁はおおわらわだ。「密漁」と呼ぶには大胆すぎる行動の背景に、一体何があるのか。中国サンゴ密漁船団の謎を探った。
10日、日中首脳会談の当日。海上保安庁は、小笠原上空から「ある異変」を確認した。
2日前には200隻を超えていた中国漁船が141隻に減り、しかもうち76隻が小笠原の父島や母島を離れて領海から遠ざかっていたのだ。海保幹部は「積んできた燃料と食料が底を突いたからだろう」としていたが、その後、中国政府が船を割り出し、呼び戻していることが本紙の取材などで明らかになった。
そもそも海保が最初に中国漁船団17隻を上空から確認したのは9月15日だった。その半月後の10月1日には2倍以上の42隻。さらに同30日には伊豆諸島周辺を含めて最多の212隻を確認した。この海域に中国船が数隻で来たことは過去にもあったが、200隻以上の漁船が一度に押し寄せたのは初めてだ。
「中国で赤サンゴは縁起がいいとされ、歴代皇帝の装飾品などに珍重されました。中国では2010年に水産資源を保護するため海島保護法が施行され、サンゴの捕獲やサンゴ礁の破壊が禁止された。その結果、供給が不足し、価格が高騰。一獲千金を夢見る漁民が小笠原諸島まで来るようになった。因果関係は明確です」。中国事情に詳しい遠藤誉・東京福祉大学国際交流センター長がそう解説する。
赤サンゴの価格はここ3、4年で急騰し、日本近海で取れた最高級の深紅のサンゴは1グラム当たり最高1万元(約19万円)と、金の約40倍。昨年、日本近海で赤サンゴを密漁し、2億元(約38億円)分を売り抜けた船長がいるといううわさが中国ではまことしやかに伝えられる。それにしても10月中旬以降の中国密漁船の急増は異常だが……。
遠藤さんは「無罪判決がきっかけになった」とみる。福岡地裁は10月15日、長崎県五島市沖でサンゴを取って外国人漁業規制法違反の罪に問われた中国人船長に対し「日本の領海だと認識していなかった」と無罪を言い渡し、中国国内でも報じられた(判決は確定)。
「中国で捕まれば懲役5年から10年の刑になり、家族の生活が成り立たなくなる。日本では捕まっても無罪、有罪でも罰金刑で釈放される。これでは『泥棒さん日本にいらっしゃい』と言っているようなものです」。だが、小笠原周辺で派手に密漁したサンゴを中国に持ち帰って売りさばけるのだろうか。
遠藤さんが謎解きをする。「福建省、浙江省の信頼できる知人を通して独自に調べたところ、これまで日本近海で取った赤サンゴを漁民たちは海上で密売業者に売り渡していました。携帯電話でサンゴの写真を撮り、それを業者にメールで送り、値段交渉がまとまれば海上で手渡す。サンゴが手元になければ、捕まる可能性は格段に低くなる」
一方、中国などの海洋政策に詳しい山田吉彦・東海大海洋学部教授は「数隻ならともかく200隻以上の密漁船が取ったサンゴ全てを海上で売りさばくことができるのか。どれほどの量、金額か想像もできない」と首をかしげる。
そのうえで船団の目的について大胆な仮説を披露する。「密漁船も数隻は交じっているだろうが、大部分は別の意図を持った船団でしょう。漁民を先兵として使うのは中国の常とう手段です。日本の海保が専従チームを編成して尖閣諸島の守りを固めたため、尖閣以外の海域に密漁船団を送り込み、海保を揺さぶったのではないか。APEC(アジア太平洋経済協力会議)での日中首脳会談を巡る尖閣の交渉で譲歩を引き出す駒にした可能性もある」
政府が尖閣3島を国有化した12年9月以降、尖閣諸島周辺で中国公船による領海侵入が急増し、海保は全国から応援の巡視船を派遣してきた。15年度末までに巡視船12隻、600人体制の尖閣専従チームを編成することが決まり、最初の2隻が10月25日に沖縄県石垣市に就役している。
小笠原では、海保は水産庁の取り締まり船2隻と合わせて5隻程度で密漁船の取り締まりにあたるが、逮捕できた船長は6人。逮捕後も法令に基づき洋上で釈放している。尖閣と小笠原の「二正面作戦」が海保の足を引っ張る。
また、逮捕された中国人船長6人のうち1人は、昨年3月にも沖縄県の宮古島沖でサンゴ密漁中に逮捕され、罰金を払い釈放されている。昨年1年間にサンゴ密漁で海保に逮捕された中国人船長は3人だけだ。山田さんは「偶然にしても不自然でしょう。他にも福建省、浙江省といった広い地域から出てきたはずの漁船が、同じ青色の網を使っているのも不可解です」と中国当局の関与を疑う。
一方、前出の遠藤さんは中国政府の関与説について「何のメリットがあるのか。密漁はどこからみても犯罪行為。おまけに福建省、浙江省は習近平国家主席が治めていた地域です。国際社会の注目を集めるAPECの前に指導者の体面を傷つけるようなことを中国政府がするとは思えない。事実中国は日本に取り締まりの協力を求めている」と反論する。
◇過去の先兵・漁民と違いも
中国政府関与説が一定の説得力を持つのは、中国漁民が「先兵」として使われた前例があるからだ。1978年4月12日未明、中国漁船約200隻が尖閣周辺に集結し、数十隻が領海侵犯を繰り返していると海保から外務省に連絡が入った。当時、外務省中国課で海保からの電話を受けた故杉本信行元上海総領事は著書「大地の咆哮(ほうこう)」で、海保の飛行機や巡視船が中国側の無線を傍受したところ、山東省煙台の人民解放軍基地と福建省アモイの軍港の2カ所から中国漁船に指示が出ていたと明かしている。
だが、今回の小笠原周辺と78年の尖閣の漁船団について宮本アジア研究所代表の宮本雄二・元中国大使は「本質的に異なる」とする。「中国は尖閣で領有権を主張しているが、小笠原では主張していません。これまで中国は、領有権など自らの主張を固めるための行動しか取っていません。今回は現場の漁民の利害関係で動いているとみていいでしょう」と説明する。
78年当時、日中は平和友好条約の締結交渉を続けており、日本側はあえて敏感な尖閣で問題を起こす中国側の真意をはかりかねていた。「あくまで私の仮説だが」と前置きして宮本さんが詳しく解説する。「復権したばかりのトウ小平に不満を持つグループが揺さぶりをかけようとした。中国では指導者に不満を持つグループが、領有権主張など国内的には正しくとも外交的には問題になる行為で揺さぶりをかけるパターンが続いています。今回の小笠原のケースは中国国内でも違法とされる行為。為政者に近い地位にいる人が考える揺さぶりではないでしょう」
中国の政治の透明性はまだ低く、複数の仮説が存在しうる。だが、政府の対中政策は、仮説の検証を待っていられない。89年の天安門事件でも、権力闘争の内幕など真相が明らかになってきたのは最近のことだ。
「当時、私も必死に天安門事件を追いました。現地にスタッフを派遣し、CIA(米中央情報局)やMI6(英秘密情報部)など世界中の情報機関と協力したが、真相は見えてこなかった。だが、政府はその時々の状況判断に基づき政策を立案しなければならない。状況判断を間違えた場合は謙虚に修正していく。対中政策では特に、政策の修正メカニズムを整えていくべきです」
政府関係者によると、外務省と海保は小笠原では中国政府の関与を示す証拠はないと判断し、中国には遺憾を表明し、取り締まり強化を求めるにとどめている。中長期的には罰則強化など国内法改正で対処していく方針だ。中国側も「中国は赤サンゴの違法採取行為を禁止しており、関係部門は法執行を強化していく」(外務省報道官)と歩調を合わせ、福建省、浙江省当局も取り締まりの姿勢を見せる。
だが、台風19号、20号と同時期に北上し、両国の関係改善と合わせるように減少した大漁船団を巡る謎は残されたままだ。13日には再び145隻が確認されている。今後、中国当局が帰港した漁船を摘発するかどうか。小笠原周辺を離れた中国漁船から目が離せなくなってきた。【浦松丈二】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141114-00000059-mai-soci
サンゴ密漁:漁船、週内に撤退か 中国政府が帰港指示
毎日新聞 2014年11月14日 07時10分(最終更新 11月14日 07時32分)
伊豆諸島の鳥島(奥)沖でサンゴを密漁していると見られる中国漁船=本社機「希望」から10月31日、小川昌宏撮影
東京都の小笠原諸島近海などで中国漁船によるサンゴ密漁が横行し、地元漁業に深刻な影響を与えている問題で、中国政府が漁船に帰港を指示していると日本側に通告してきたことが13日、政府関係者への取材でわかった。この海域の中国漁船は最盛期に比べて半減しており、中国側の指示がすでに実行に移されたとみられる。指示が徹底されれば、今週中にも小笠原周辺から中国漁船が姿を消す可能性がある。【佐藤賢二郎】
政府関係者によると、中国政府から、今週末にかけて漁船を福建省や浙江省にある母港に帰港させ、地元の公安当局が捜査を開始すると外交ルートを通じて連絡があったという。当局は多数の漁船を所有するオーナーらに帰港を指示したとされ、これを受け入れた漁船が中国本土に向けて移動を開始した可能性が高い。
この問題を巡っては8日、中国・北京での日中外相会談で岸田文雄外相が対策の強化を求め、王毅外相が「必要な措置を取っている」と応じていた。10日の首脳会談でも安倍晋三首相が習近平国家主席に「前向きな対応」を要請。漁船の拠点とされる福建・浙江両省では当局による取り締まりが強化されている。
中国が領有権を主張する沖縄・尖閣諸島周辺では、中国政府が関与しているとみられる公船や漁船の領海侵入が常態化しているが、今回のような通告をしてきたことはない。これに対し、今回の外交ルートを通じた通告は自国の船の違法操業を認めた形となっており、ある関係者は「小笠原近海でのサンゴ密漁に中国政府が関与していない証拠と捉えることもできる」と分析している。
海上保安庁による上空からの調査では、小笠原諸島周辺などでは先月30日に過去最多の212隻の中国船が確認され、活動海域も伊豆諸島南方まで拡大したが、その後は減少に転じた。日中外相会談後の10日には、141隻と大幅に減少し、約半数が中国本土に向かって西に航行しているのが確認された。12日は117隻で先月末に比べ半減した。
http://mainichi.jp/select/news/20141114k0000m040169000c.html
最終更新:11月14日(金)15時17分
社説:宝石サンゴ密漁 中国の法治は口だけか
毎日新聞 2014年11月05日 02時33分
宝飾品となる宝石サンゴの密漁が目的とみられる中国漁船200隻以上が小笠原諸島や伊豆諸島周辺に集まっている。資源の枯渇が懸念される希少なサンゴだ。世界遺産に指定されている小笠原の貴重な資源の一部でもある。一刻も早く違法な操業を食い止めるべきだ。
日本近海で取れる赤サンゴなどの宝石サンゴは中国で珍重され、高値で取引されている。中国では赤が縁起のいい色とされ、吉祥物として富裕層に人気だ。ここ数年、価格が数倍に高騰し、高級な赤サンゴは1グラム当たり最高1万元(約18万円)にもなるという。
中国政府は赤サンゴをパンダと同じ国家1級重点保護動物に指定し、国内での漁や売買を禁じている。2008年には中国の申し入れで赤サンゴなど4種のサンゴがワシントン条約で輸出入が規制されるリストに加えられた。しかし、摘発されるリスクを冒しても一獲千金を狙う密漁者が後を絶たない。
数年前から沖縄周辺海域や五島列島などにサンゴ密漁の中国漁船が出没していたが、沖縄周辺での取り締まりが強化されたため、良質の赤サンゴの漁場として知られていた小笠原などに移動したのではないかとみられている。
海上保安庁は10月以降、違法操業の中国人船長らを相次いで逮捕している。尖閣諸島周辺の監視活動のため、船や人員が手薄になっているともいわれるが、水産庁などと協力し、引き続き、取り締まりに力を入れてほしい。
一方、密漁に対する日本の罰金(担保金)は最大で1000万円。億単位の収益が得られるケースもあるとされる密漁を抑止するには低すぎるとの指摘もある。捕まれば、利益にならないことを密漁者にはわからせるため、罰金の引き上げも検討対象の一つだろう。
中国政府は日本政府の抗議を受け、「密漁に対する法の執行を引き続き強化していく」(外務省報道官)と、取り締まりを強める方針を示した。自ら保護対象にしているサンゴ資源を自国民が密漁するのを放置していては、「法治の徹底」を目指す習近平政権の本気度が問われる。
取り締まりにとどまらず、漁民に対する教育や指導、密漁品の流通阻止など違法操業を実効的に防止するために動くべきだ。密漁というモラルの欠如が中国の印象を傷つけ、日中関係に悪影響を与えていることにも目を向けてほしい。
日中両国が密漁取り締まりのために協力することも可能だ。古来、サンゴを珍重してきた共通の歴史もある。資源保護で協力できれば、互恵関係につながるだろう。
中国は法律で採取を禁止し、悪質な場合10年以上の懲役刑が科される。だが、執行猶予の付くケースもあり、密漁の歯止めにはなっていない。業界関係者は「日本の赤サンゴは密漁者に根こそぎにされる」と警告する。
太田昭宏国土交通相は31日、「違法操業には厳正に対処する。(中国側には)外交ルートできちんと抗議している」と述べた。だが、小笠原近海で今年、船長が逮捕された中国漁船は6隻、拿捕(だほ)は1隻にすぎず、残りは法令に基づき洋上で釈放しているのが現実だ。
一方、小笠原諸島の警戒強化で警視庁は同日、小笠原署に警察官28人を派遣した。島内パトロールや船員が上陸した場合のトラブルに備える。10月に入り「陸から見える距離に不審船が近づいている」などと住民から不安の声が上がっていた。
http://mainichi.jp/opinion/news/20141105k0000m070151000c.html
サンゴ密漁:価格高騰 罰金払ってまた…中国船歯止めなし
毎日新聞 2014年11月01日 07時00分(最終更新 11月01日 12時23分)
【佐藤賢二郎、宮崎隆、上海・隅俊之】東京・小笠原などでの中国漁船によるサンゴ密漁問題で、過去に別の海域で逮捕された中国人船長が小笠原近海で再び逮捕されていたことが31日、関係者への取材で分かった。船長は罰金を払いながら密漁を繰り返していた。サンゴが中国で億単位で取引されるのに対し、日本での密漁の罰金は最大1000万円。罰金が軽すぎて法で歯止めがかからない実態が浮かんだ。
横浜海上保安部は30日、小笠原諸島・北之島沖で中国サンゴ漁船の船長(45)を漁業法違反(無許可操業)で現行犯逮捕した。海保によると船長は昨年3月、沖縄県の宮古島沖でも逮捕され、罰金を払い釈放された。
海保によると、逮捕歴のある中国人船長が小笠原諸島で逮捕されたのは初めて。海保幹部は「サンゴを求め沖縄から小笠原に移動してきた可能性が高い。中国で良質のサンゴは億単位で取引されているとの情報もあり、担保金(罰金)の額が低すぎる」と話した。
実際、「一獲千金」を狙う中国の密漁船は後を絶たない。海底を根こそぎさらう漁法に、中国の業者も「赤サンゴは日本でも取れなくなるのでは」と懸念している。
中国紙によると、福建省寧徳で2012年5月以降、10以上の密漁団が摘発され、約38キロの赤サンゴが押収されたケースでは、評価額は2240万元(約4億円)に上った。
ある密漁者は出稼ぎ先で技術を学び、仲間数人で密漁を計画。漁船を約100万元(約1800万円)で購入し、赤サンゴを取る大型網を隠せるよう改造し密漁船に仕立てた。密漁先で裏切り者が通報しないよう携帯電話の電波を遮断する機器を付ける船もある。
乗組員の給料や漁船の改造費、燃料費なども含めると投資は約200万元(約3600万円)。それでも密漁が成功すれば見返りは大きく、全財産を投じる者もいる。赤サンゴに詳しい上海の業者によると、以前は台湾の業者が高知県産を中国で販売していたが、ここ数年で日本産の価値に中国漁民が気づき始めたという。
上海の専門店には日本円で数十万円から100万円以上の値札が付いた赤サンゴの宝飾品が並ぶ。日本の赤サンゴは「アカ」、桃色サンゴは「モモ」と日本語で呼ばれる。中でも深紅の「アカ」は人気で、高級品は1グラム1万元(約18万円)以上と5年前の約5倍に高騰しているという。
密漁船の操業場所
東京都の小笠原、伊豆両諸島の周辺海域で横行する中国漁船によるサンゴ密漁は、船団の規模が200隻を超え、地元の漁業に深刻な影響を与えている。なぜ今、船団は押し寄せてきたのか?
密漁船の拠点の一つとされる中国・福建省寧徳(ねいとく)市の漁港を歩くと、一獲千金を狙って日本近海を目指す漁民と、取り締まりを逃れて巧妙にサンゴを売りさばく業者らの姿が浮かんだ。
◇密漁船の拠点で不法横行
「日本で取った赤サンゴだ。8500元(約16万円)でどうだ」。目の前に広大な東シナ海が広がる寧徳市霞浦(かほ)県三沙鎮(さんさちん)の漁港。中年の密売人の男は、カバンの底から小さなビニール袋に入った赤サンゴの宝飾品を大事そうに取り出した。
男はある店先にいた。「赤サンゴを売っているところを知らないか」と声をかけると、最初は「知らない。この辺には売っているところはない」と目をそらしたが、私服の公安関係者ではないと分かると安心したように交渉を始めた。深紅の高級品と比べると色が薄く、値段も安いが、紛れもなく赤サンゴだ。上海などからも業者が買い付けにくるという。
この密売人や地元漁民によると、昨年の終わりごろ、地元の船主が日本近海で取った大量の赤サンゴを2億1000万元(約39億円)で売り抜けたとの話が広がり、この港から沖縄県や小笠原諸島周辺にまで密漁に出る船が急増した。霞浦近辺の漁港には約1000隻の漁船があり、現在は約3分の2の600隻近くが出漁。一部が日本に赤サンゴを取りに行ったまま1?2カ月戻っていないという。密売人は「日本への密漁は燃料費もかかるので多額の投資が必要。密漁団はみんなで1人数十万元(数百万円)を出し合うが、成功すれば見返りは大きい」と話した。
習近平指導部は「法治」の徹底を掲げており、海洋資源の保護でも「法治」をどれだけ実践できるのかが問われている。赤サンゴの密漁問題で中国外務省の洪磊(こうらい)副報道局長は6日、「中国は違法な赤サンゴの採取には反対だ」と述べ、日本側と協力して取り締まる方針を示した。霞浦の三輪タクシー運転手は「密漁をしていた中国漁船の船長が日本で逮捕されたという話は漁師を通じて地元住民はみんな知っている。当局の取り締まりが強化され、今から密漁に出る人は少ないだろう」と話す。
漁港の雑貨店の壁には「最近の遠洋での赤サンゴの密漁と不法取引が我が県(霞浦)のイメージに重大な影響を与えている」として、徹底的に取り締まるとの県の通告文が張られていた。日付は密漁問題が日本で大きく報じられた後の10月29日。サンゴの密漁に関する情報を通報した場合、最大1万元(約19万円)の報奨金を出すとも記されていた。
ただ、密漁の手法は巧妙だ。中国メディアによると、密漁船は船籍を偽装したり、検挙を逃れるために海上で業者と取引したりしているという。密売人の男は「密漁に出ている船も当分は取り締まりを恐れて戻ってこないだろう。以前は店頭でも売っていたが、今は堂々と売る人はいない。私も赤サンゴを持っていることは怖くて友達にも話さない」と明かした。【霞浦(中国・福建省)で隅俊之】
http://mainichi.jp/select/news/20141109k0000m040065000c.html
サンゴ密漁船:警備手薄な海域に集中…海保とイタチごっこ
毎日新聞 2014年11月09日 08時30分
海上保安庁による中国サンゴ漁船検挙状況
赤サンゴの密漁を巡り、中国漁船と日本の警備当局の攻防が続く。日本近海のサンゴ産地では古くから繰り広げられてきた戦いだが、密漁船団が小笠原諸島周辺まで「来襲」したケースは近年ではない。取り締まりの手薄な海域で集中的に操業し、強化されたら移動を繰り返す密漁船団に対し、海上保安庁などは態勢などに限界があって「イタチごっこ」を止められない。政府は対応に追われている。【佐藤賢二郎】
日本近海の主なサンゴ産地は、五島列島(長崎県)、宮古島(沖縄県)、小笠原諸島の周辺と高知県沖。海保は2011?12年に五島列島周辺で3件、13?14年に宮古島周辺で4件、そして今年に入って小笠原周辺で6件、漁業法違反(無許可操業、立ち入り検査忌避など)容疑で中国人船長を逮捕している。
海保関係者は密漁船団の動きについて「今年初めまで沖縄近海が中心だったが、取り締まり強化の結果、一時的に尖閣諸島周辺に移動した。その後、新たな産地を求めて小笠原近海に来た」と分析する。良質のサンゴ産地として知られる高知沖は日本のサンゴ漁船も活発に活動し、警備も厳重なため、密漁船団が高知沖を避けて移動してきたルートが浮かぶ。9月以降、小笠原周辺でも態勢を強化したところ、先月末には100隻を超す中国漁船が伊豆諸島周辺まで北上した。
小笠原周辺へは20年ほど前まで、台湾のサンゴ漁船が数十隻規模で頻繁に密漁に来ていたが、台湾当局の取り締まり強化により途絶えた。だが、10年に中国政府が同国内でのサンゴ漁禁止措置を取ると、サンゴの供給が減少し、宝飾品として珍重される「宝石サンゴ」の価格が高騰。その結果、近場の五島列島や沖縄周辺で密漁を続けていた中国漁船の活動が活発化し、日本の警備当局とのイタチごっこに拍車がかかった。
◇保釈金増額へ法改正を検討
対応に苦慮する政府は、排他的経済水域(EEZ)内で逮捕された船長らが支払う担保金(保釈金)増額のため、「外国人漁業規制法」などを改正する方向で検討を開始。一方、自民党内などからは海上自衛隊の派遣を含む強硬策を求める声が噴出している。海保幹部は「領海内での操業は食い止めており、現状ではこれが限界」と話す。中国サンゴ漁船の操業期間は1カ月前後とみられ、密漁船団が出没した時期から逆算し、今月中には小笠原周辺から撤退すると推測している。
http://mainichi.jp/select/news/20141109k0000m040113000c.html
島が乗っ取られる」中国密漁船に囲まれる小笠原…ゴミ散乱、汚される世界遺産
産経新聞 11月14日(金)9時13分配信
海上保安庁の巡視船「するが」を前に、サンゴ密漁用とみられる網を引き上げる中国漁船の乗組員=9日午前、小笠原諸島・父島南の領海内(大山文兄撮影)(写真:産経新聞)
夜間、父島では異様な光景が広がる。高台から海を望むと、島をぐるりと囲むように中国漁船の光であふれる。光を追う海上保安庁の巡視船のサーチライトも回り続ける。小笠原村総務課長の渋谷正昭さん(57)は「自慢の星空が台無しだよ」と漏らす。
1隻の中国漁船にはおよそ10人が乗っているとみられる。100隻だと単純計算で千人。「父島の人口の半数に匹敵する中国人に囲まれているようなものだ」と住民は口をそろえる。
11月上旬に台風20号が接近した際、中国人の上陸はなかったが、万一の悪天候のときには押し寄せてくる恐れもある。警視庁が応援派遣した28人の機動隊員らがパトカーで頻繁に付近を巡回しているが、住民の不安は尽きない。
長女が生まれたばかりの主婦、佐々木里美さん(38)は「密漁するくらいなので、上陸して犯罪に手を染めないか心配」。飲食店を営む高谷裕一さん(53)は「上陸されれば、島もあっという間に乗っ取られる」と危ぶむ。
小笠原村は再三、政府に対策を求めている。渋谷さんは「何かあってからでは本当に遅い。警備を強化してほしい」と訴える。
■漁具・ペットボトル
異変が、じわりと島にも押し寄せている。海中の美しさで知られる父島の北にある釣浜(つりはま)。「和其…」「百…水」。波打ち際には、海から流れついた中国語のラベルが貼られたペットボトルや漁具などが散乱する。
「中国漁船の乗組員は平気で海に物を投げている。歯ブラシやペットボトルを笑いながら捨てる様子を見た」。地元漁師の石井勝彦さん(62)は証言する。
小笠原諸島は貴重な自然であふれ、世界自然遺産に認定されている。サンゴの密漁が続けば、自然環境や生態系にも影響を与える可能性もあり、主力の観光が打撃を受ける恐れがある。
中国漁船が大挙した10月中旬、観光の目玉でもあるイルカの姿が見られなくなったことがあったという。自然ガイドの竹澤博隆さん(41)は「中国漁船の影響かどうかは不明だが、イルカやクジラを見ても避けることなく、お構いなしに航行するのが中国漁船。悪影響を与えているのは間違いない」と唇をかむ。
現時点で客足に影響はないというが、小笠原村観光協会には観光客から「大丈夫か」との問い合わせもある。同協会の磯部純子さん(40)は「危険という印象で敬遠される風評も懸念される。しかし貴重な海がどうなるのか。自然を壊す行為は一刻も早くやめてほしい」と訴える。
■「すべて台無しに」
小笠原諸島には約30年前にも苦い経験があった。台湾漁船が大挙押し寄せ、同じようにサンゴが奪われた。魚が集まるのはサンゴの周辺。台湾漁船に奪われてしまった結果、周辺海域ではハタやヒメダイなどの根魚が激減した。
途方に暮れた漁師らは、打開策として新たな漁を模索した。独自に発展させた回遊魚のメカジキ漁だ。地元の漁師らが、こぞってメカジキ漁に特化したおかげで、激減した根魚は徐々に増え始め、サンゴも回復する好循環を生んだ。
小笠原島漁協の昨年の水揚げは過去最高の4億円を突破。漁協参事の稲垣直彦さん(56)は「せっかく良くなってきたのに…。すべて台無しにされた。この先、どうなるのか」と頭を抱える。
密漁は取り締まりが難しいとされる。魚やサンゴなどはどこで獲ったものなのかを立証するのが難しく、現場を押えるのが唯一の摘発手段だからだ。だが、中国漁船もレーダーなどを備え、向かってくる巡視船は船影などで確認できて逃げてしまうケースが多い。
結局、中国漁船の違法操業に歯止めはかからず、目の前でサンゴが根こそぎ奪われていく。石井さんは海を前につぶやいた。
「最近、ここは本当に日本の領海なのかと思う。このままでは中国の海になってしまう」(森本充)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141114-00000504-san-soci
2014.11.13 11:09
サンゴ密漁 屈辱の海を見た…薄笑いの中国人密漁者、日本巡視船の前で
【島が危ない】赤サンゴ 迫る群影(1)
東京都の小笠原、伊豆両諸島沖で今秋、中国漁船のサンゴ密漁が問題化した。10月末には計200隻を超え、洋上は無法地帯に。海上保安庁が懸命に捜査と警備にあたるが、「宝石サンゴ」と呼ばれる高価な赤サンゴに迫る中国漁船とのイタチごっこは続く。一獲千金を狙い、公然と島と領海を脅かす船の「群影」。サンゴをめぐる日本、中国での現状を報告する。
小雨がぱらつく9日午前8時、小笠原諸島の父島・二見漁港を漁船「達(たつ)良(りょう)丸(まる)」で出港し、サンゴ密漁の現場に向かった。直後に小笠原島漁協から無線を通じ、天候の連絡が入った。
「小笠原諸島に波浪注意報が引き続き発令中。東の風やや強く、波3メートルの後、2・5メートル。うねりを伴う」
9・7トンの達良丸は荒波にもまれた。甲板には波しぶきが容赦なく降り注ぎ、外に投げ出されそうになる。「こんな日にわざわざ漁に出ようとは思わないね。でも、やつら(中国漁船)はきっといるよ」。船長の金澤多可志さん(39)は言い切る。
仲間の漁船から無線で情報が入った。「父島と母島の間にいたってよ」。父島の南50キロに母島は位置する。金澤さんは進路を南に切った。「やはり、いたね」。父島からわずか16キロの領海内でレーダーが船影を捉えた。「縄場(なわば)」と呼ばれる好漁場だ。
肉眼で確認できるまで近づくと、海保の巡視船「するが」の前で網を回収して逃げようとする中国漁船がいた。「あれが今の小笠原の現実。内地の人にも分かってほしい」。金澤さんは中国漁船をにらみつけた。
小笠原島漁協によると、中国漁船は今年の正月ごろから、小笠原沖に姿を現した。狙うのは水深100~250メートルに生息する赤サンゴ。網を投げ入れ、さらっていく。初めは暗闇に紛れ、網の投げ入れなどの際だけライトを点灯させて、隠れるように密漁をしていた。ところが、6月ごろから増加。10月には100隻を超え、昼夜を問わず堂々と密漁するようになり、手当たり次第に荒らした。
魚がいるのも、サンゴがいる豊かな漁場だ。強化プラスチック製で約10トンの日本漁船に対し、中国漁船は鉄製で15倍の150トン前後。しかも、中国漁船は5~6隻の集団で漁をするケースが多く、日本漁船が割って入れない。
地元漁師の石井勝彦さん(62)は「邪魔だと思うと、地元漁師の網を切ったりする。とても近づけない」と嘆く。結果、漁場は中国漁船に占拠され続け、地元漁師は満足に漁ができない状態が続いている。
石井さんは「年末にかけては魚の値が上がる時期。なのに指をくわえて見ているだけだ」と唇をかむ。
達良丸のレーダーが捉えた船影は巡視船するがと、その先にいた6隻の中国漁船だった。うち5隻は懸命に巡視船から離れようと、一列になって領海の外側に向かっていく。中には、船首に日の丸を付けた船も。日本漁船に偽装したとみられる。
1隻だけはその場を離れない。「網の巻き上げが間に合わなかったんだ」と金澤さん。網を放置すると漁ができず、中国漁船は回収するまで逃げない。
船体には、さびが浮き、船首や船尾に記した所属や船体番号は、すべて分からないよう所々にペンキを塗って隠している。
巡視船は中国語で警告を発するが、甲板にいた雨具姿の中国人船員数人は網を巻き上げる手を止めようとしない。白い歯を見せ、笑みを浮かべながら悠々と作業を続ける船員もいた。荒波で接舷すると危険なのか、巡視船も警告を発するのみで手出しはしない。
約5分後、中国漁船は網を巻き上げ、黒煙を上げながら去っていった。「いったい巡視船は誰を守っているんだろうか」。金澤さんはため息をついた。(森本充)
■中国漁船のサンゴ密漁
東京都の小笠原諸島沖で今年急増。10月30日には伊豆諸島沖を含め計212隻に膨れあがった。密漁対象の赤サンゴは磨くと光沢を放ち、中国で宝飾品として高値取引されている。海上保安庁は10月、小笠原沖で中国人船長5人を漁業主権法違反(無許可操業)などの容疑で相次いで逮捕した。
http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/141113/evt14111311090011-n1.html