中国 7%成長でも大不況の理由
2014.10.23 11:05
「首脳会談」ぶれぬ日本 追い込まれているのは中国のほうだ
【阿比留瑠比の極言御免】
11月に北京で催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の場で、安倍晋三首相と中国の習近平国家主席による初の首脳会談が実現するとの期待が高まってきた。日中双方で「機は熟している」(自民党の高村正彦副総裁)、「APECは重要なチャンスだ」(程永華駐日大使)などと前向きな言葉が飛び交っているのもその表れだ。
首相自身が臨時国会の所信表明演説で、これまで日中関係であえて使わなかった「友好」という言葉を用いた。一定の手応えを感じているからこそ、次のように述べたのだろう。
「日中両国が安定的な友好関係を築いていくために、首脳会談を早期に実現し、対話を通じて『戦略的互恵関係』をさらに発展させていきたい」
首相はもともと「日中友好」の4文字が対中外交戦略の選択肢を狭めてきたと考えてきた。例えば平成20年6月の都内での講演では、「友好は手段であって目的ではない」と強調してこう説いていた。
「日中外交はいわば日中友好至上主義といってもいい。だんだん、友好に反することは全然だめだという雰囲気が醸し出されてきた。友好に反することは何かは中国側が専ら決める」
首相が第1次政権時に戦略的互恵関係を提唱したのも、ウエットな日中友好至上主義は排し、もっとクールに相手の必要性を認め合って付き合っていこうという発想からだった。
中国側も以前とは対応を変えてきている。16日にイタリア・ミラノで李克強首相と握手を交わした際の反応について、安倍首相は周囲に「李氏はニコニコしていてこれまでと態度は違った」と語っている。
一方、所信表明演説での韓国への言及は「関係改善に向け、一歩一歩努力を重ねてまいります」とあっさりしたものだ。安倍政権が韓国に向ける視線の厳しさが如実に反映されている。
もちろん、外務省内にも「尖閣諸島(沖縄県石垣市)問題もあり、首脳会談があるかどうかは五分五分だろう。中国は自分たちの事情で会談ができなくなった場合でも、平気で日本のせいにしてくる国だから」(幹部)との見方もあり、予断は許さない。
ともあれ、日中首脳会談が実現すれば、東アジア地域の安定化や日中間の経済活動の円滑化のほかにも外交上、大きな意味がある。
尖閣諸島の領有権問題の存在を認めることや、首相の靖国神社不参拝の確約など、中国が会談の条件としてきた一方的な要求に一切譲歩することなく会談が行われれば、対中外交でよき前例となるからである。
実は第1次安倍政権時代の19年6月にも、日中間で同様の駆け引きがあった。当時、中国の胡錦濤国家主席は、台湾の李登輝元総統訪日を理由に首相との会談をいったん拒否してきた。ところが、日本側が中国が示した会談のための諸条件をことごとく突っぱねた結果、「条件はつけない。ぜひ会談を行いたい」と折れてきたのだった。
北京を訪問した首相に習氏が会おうとしなかったら、「中国は国際的に失礼な国となる」(政府高官)のも事実だろう。
「こっちが譲らなかった結果、首脳会談ができなくてもかまわないという姿勢で臨んでいる」
首相は周囲にもこう語る。国際会議の議長国という晴れ舞台を前に、追い込まれているのは中国の方のようだ。(政治部編集委員)
http://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/141023/plt14102311050004-n1.html
日中首脳3年ぶり会談 安倍首相「戦略的互恵関係の原点に立ち戻る第一歩」
産経新聞 11月10日(月)13時38分配信
【北京=阿比留瑠比】安倍晋三首相は10日昼(現地時間同)、北京市内で中国の習近平国家主席と初会談を行った。日中両首脳の会談は平成23年12月以来約3年ぶり。尖閣諸島(沖縄県石垣市)国有化や歴史問題をめぐり「凍結」していた日中関係が、改善に向けて一歩動き出した。
会談で両首脳は、7日に双方で発表した戦略的互恵関係を引き続き発展させていくことや、危機管理メカニズム構築による不測の事態回避などを明記した合意文書を確認したものとみられる。
首相は会談終了後、記者団に、「戦略的互恵関係の原点に立ち戻る第一歩になった」と述べ、会談の意義を強調した。
日中間の戦略的互恵関係は18年10月、第1次安倍政権当時の首相が打ち出した基本方針であり、「原点に立ち返った」(首相周辺)といえる。
中国側はこれまで、首脳会談を行う条件として日本側に(1)靖国神社不参拝の確約(2)尖閣諸島をめぐり領有権問題があることを認める-などを要求していた。ただし、7日の合意文書には「靖国」の文字はなく、尖閣諸島に関しても「異なる見解」への認識は示されたものの「領有権」そのものへの言及はない。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141110-00000528-san-pol
2014.11.1 20:38
対日関係を改善したい中国 7%成長でも大不況の理由
【お金は知っている】中国政府は7~9月期の実質経済成長率が前年比7・3%だったと発表した。日米欧で実質成長率が7%台なら、トンデモナイ高水準で好景気に沸き立っているはずなのに、中国ではかなりの不況だという。経済専門紙の日経新聞を含めメディアは説明してくれないが、なぜそうなのか、解明しよう。
中国の国内総生産(GDP)統計が信憑(しんぴょう)性に欠けることは、ほかならぬ中国の李克強首相が遼寧省の党書記時代の2007年に米国の駐中国大使に言明した。李氏が信用する経済統計は鉄道貨物輸送量と銀行融資の動向だという。
筆者はそこで、中国経済動向を分析するとき、GDPと鉄道貨物輸送量の増減率を照合することにしている。銀行融資も参考にはするが、中国の場合、金融は党中央の指令次第で大きく変化するので、党中央の政治的裁量を加味しなければならない。その点、鉄道貨物輸送量は運賃収入をもとに算出し、人為的操作の余地は少なく、実際のモノの動きをそのまま反映する。
グラフを見よう。左軸に実質成長率、右軸に鉄道貨物輸送量の前年比をとり、実質成長率8%と鉄道輸送量の伸びゼロ%をそろえた。すると、成長率が8%以下に沈むときはほんの一時期を除いて、輸送量がマイナスの伸びに落ち込んでいることが読み取れる。
農漁業と工業部門、つまりモノの生産がGDPの5割を占める中国では、物流の動きが経済活動に大きく反映する。そこで、鉄道貨物輸送量の伸びが実体経済、つまり実質経済成長率だと解釈すれば、北京当局発表の実質経済成長率7%台の伸びは、経済実体からすれば、マイナス成長の状態だといえそうだ。現実の中国経済は今、かなり深刻な景気後退期にあると、筆者はみる。現在とリーマン・ショック当時を比較してみるとよい。リーマン後、当局発表の実質成長率は6%台に落ち込み、鉄道貨物輸送量はマイナス5・9%になった。北京の大号令で銀行は融資を3倍以上も増やして景気を再浮上させたが、不動産バブルが膨張し、12年秋にはバブル崩壊不安が起き、実質成長率は8%ラインを割り込んだ。鉄道貨物の伸びは急降下し、リーマン後の下落幅をしのぐ。13年の秋には持ち直したものの、ことしは再び前年比マイナスだ。
頼みは米欧向けの輸出回復だが、米国景気は力強さに欠けるし、欧州ではデフレ圧力が高まっている。
内需のほうは、不動産価格の下落が全土に広がり、不動産に投資し、不動産価格上昇を当てにしてきた中間層以上のフトコロを直撃している。自動車や家電の過剰生産は慢性化し、中国の内需を当て込んできた外資の中には縮小、撤退を検討する動きも目立つ。
家電やスマホでは中国メーカーが安値攻勢を強めており、韓国のサムスンなどが打撃を受ける。他方で、中国は日本の高付加価値の製品技術獲得のために、対日関係を改善したい。焦る北京は日中首脳会談開催に前のめりなのだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)
http://www.iza.ne.jp/kiji/economy/news/141101/ecn14110120380030-n1.html
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成26年(2014)11月8日(土曜日)
通巻第4387号
中国の新幹線、メキシコ進出が白紙に
ペニャニエト大統領、中国鉄建の入札を蹴飛ばす
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中国の新幹線海外輸出プロジェクト第一号として注目されたメキシコとの商談は、日本勢、カナダ、欧州勢、合計16社が入り乱れての競争が予測されたが、けっきょく応札したのは中国国有企業の中国鉄建だけだった。
このメキシコ新幹線プロジェクトはメキシコ・シティとケレタロ間210キロを結び、最高時速300キロ。一時間で走る。
中国がいったん受注した額面は44億ドルとされた。
メキシコ側は「応札したのが中国一社だけというのは不透明性への疑惑が生じるので白紙に戻す」としたが、収賄容疑も囁かれる中、しかもAPECで北京にいく直前のペニャニエト大統領が「撤回」を表明したことになる。
他方、中国人民銀行は九月と十月に7000億元の資金供給をしたとされていたが、7日にこれを「上方修正」し、じつは「7695元(邦貨換算14兆5000億円)だった」と発表した。
これは裏付けのない資金供給、つまり銀行救済のための緊急的な「つなぎ融資」である。
中国人民銀行はこの資金供給の論拠を「中期貸出制度」としている。「中期貸出制度」?。とってつけたような理由は、供給直前につくられた新規約が法的根拠。しかも九月に一方的に制定し、利息を3・5%としたのだが、俄か作りの理由付けで、不透明このうえない。
銀行は不良債権の顕在化を目前に最後のあがきというところだろう。
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1151回】
――「日本人始メテ上海二遊来也」(峯6)
峯潔「清国上海見聞録」(『幕末明治中国見聞録集成』ゆまに書房 平成九年)
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「現ニ上海ノ陣屋ニ到テ其兵卒ヲ見ルニ」というから、中国軍の兵舎でも訪れたのだろう。そこで目にした中国兵が着ていた軍服はボロボロ、顔は垢だらけ、裸足、頭を防備する鉄兜もない、そのうえ手には武器もない。「皆乞食ノ如ク一人ノ勇アルヲ見ス」。こんな奴らじゃ、俺1人で5人でも相手にできる。1万騎の武士が打ち揃って押し寄せたら、広い大陸を縦横無尽に暴れて見せようぞ――峯の心は高鳴るばかり。
そもそも「豹ノ一班ヲ見テ其ノ全体ヲ見サレハ固ヨリ其美ヲ知ルコト能ハス」。だから上海だけ見たのでは清国全体についてとやかくはいえないだろう。だが名医というものは脈を診ただけで病名から治療法までたちどころに判断するものだといいながら、峯は「清国ノ病」を診断してみせた。
「病ハ特ニ腹心ニアルノミナラス、面目ニアラワレ、四躰ニアフレ、一指一膚モ痛マサル所ナキナリ」。つまり、もう国を挙げてガタガタですね、という見立てだ。太平天国軍の猛攻に為すすべなく、国の防衛と治安を外国勢力に頼るしかないばかりか、貿易関税業務も英仏両国思うが儘。「運上税銀スラ自ラ取ルコト能ハス」、つまり課税収入も全て英仏両国に取り上げられてしまっている有様だ。上海を例に全土を“診断”すれば、もはや救国は不可能であり、亡国は必至である。兵士が不足しているから、上海防衛の任務は英仏両国に委ねるしかない。学校は英国兵の駐屯地となり、「影形モナク実ニ哀ナル形勢」だ。
上海の最高指揮官である「道台」を表敬訪問した際には、ともかくも「送迎共ニ甚タ礼有ルカ如シ」だが、その実、「其属官有司等瑣細野鄙ナルコト見ニ忍ヒス」といった状態。たとえば日本側の出達に興味津々。着物を触って値段を尋ねたり、互いにヒソヒソと評定を繰り返したり、「其見識賎ム可シ」。加えて一般の人々も日本側一行を取り巻いてジロジロジロジロ。中国側役人が制してもお構いなし。日本側一行を見送るために道台が出てきたところで、道を開けるわけでもない。「其形勢、実ニ法ナキカ如シ」であった。
また道台が日本側を表敬訪問した時のことだが、敵意を持っていないことを見せるために道台は丸腰となった。すると道台の家来、つまり「刀ヲ持チ門外ニ待居ル者」が肝心の刀を峯たちに見せて、「自ラ其鈍刀ナルヲ嗤笑ス」。かくて「道台ノ権威ナキコト此一事ヲ以テ察知スヘシ」となった。権威もへったくれもない。先ずは素にして野だが卑でもある、といったところだろう。時代が中国人をそうしてしまったのか。それとも混乱の社会だからこそ、人としての地というものが露わになってくるのか。
「清国十八省ノ内、稍靜ナルモノハ僅ニ五省ニテ余十三省ハ殆ド清国ノ所領ニアラス」ということは、既に亡国と云った状態だ。上海には四方から難民が逃げ込み、高騰するのは米価のみならず、諸物価も同じ。かくて「下賎ノ者ハ米或牛豕ヲ食スル能ワス」。人々は困窮するばかり。日本側が雇った人夫をみても「餓鬼ノ如ク骨ト皮斗リニテ一人モ支〔肢〕ノ肥タルヲ見ス」である。そこで峯は、「近日餓死スルモノ多カラン」と記す。
上海を流れる申江をみても、上海にやって来る難民の小舟で川面はギッシリと埋まっている。これは蘇州からの難民だそうだが、その数は10万人余。通常は一石三、四千銭の米価が今や九千銭。これじゃあどうにもならない。そこで峯は中国側と筆談だ。「銭尽如何」と問うと、「撫可如何」。
峯が「官府亦無可如何乎」と続けると、答えは「官府難弁」。つまり当局には打つ手がない。かくて峯は憤慨する。
昔から「仁者有勇」というが、10万人もの難民が明日の命もままならない惨状を前にしながら「憤発シテ」救おうという者もいなければ、「是ヲ哀シム」わけでもない。
英仏両国などは「清国ヲ助」けようとするが、すべてがソロバン勘定で「真ノ仁心ニアラス」。
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(読者の声1)貴紙第4382号、「小笠原で珊瑚を密漁する中国漁船団の本当の目的は第二列島線突破だ」について。
宮崎先生の仰言る通りだと思います。私には中国によるもう一つの目的を感じます。近々の問題として、漁船団の目的はAPEC会議に関係していると思っています。つまり安倍総理に対する恫喝です。
日中首脳会談開催では両者には大きな隔たりがあります。中国側は尖閣、靖国を持ち出し、安倍総理を力ずくで抑えようとしています。
しかし安倍総理は無条件による会談を主張しています。中国側の主張を安倍総理に呑ませ、首脳会談を習近平主導で行うための恫喝外交です。これによってAPEC開催国としての中国と習近平の面子は保たれ、東南アジア諸国に対して中国の威信を表示出来ます。
同時に日本の面子を潰し、日本外交の影響力を阻害出来ます。この結果次第では、韓国の事大主義にも影響が出るのではないでしょうか?
(SS生)
(宮崎正弘のコメント)恫喝か、どうかは別として、輻輳した戦術を行使していることは事実でしょう。しかし中国海軍で、この作戦を主導しているのは呉勝利なので、習近平との間に意思の疎通がうまく行っていないようにも思われます。