頂門の一針-渡部 亮次郎 | 日本のお姉さん

頂門の一針-渡部 亮次郎

わたなべ りやうじらうのメイル・マガジン「頂門の一針」3454号
2014(平成26)年10月12日(日)
孤立覚悟で周囲見えてない」
━━━━━━━━━━━━━
渡部 亮次郎
夕刊フジが掲題の見出しを掲げて「検察の暴挙許した朴大統領、その心理を分析」と言う記事を11日に発売した。
優れた記事だと判断するので、以下紹介する。
韓国のソウル中央地検が、産経新聞の加藤達也前ソウル支局長(48)を情報通信網法の名誉毀損(きそん)で在宅起訴した問題が世界に波紋を広げている。
検察当局が、民主主義社会の根幹をなす「言論の自由」を踏みにじった背景には、朴槿恵(パク・クネ)大統領(62)の意向が強く働いていたとされる。
米政府が外交ルートを通じて韓国側に照会するなど、国際的批判が噴出するなか、朴氏の心理を専門家が分析した。
「国民を代表する大統領に対する冒涜的な発言の度が過ぎる」
朴氏は先月16日、青瓦台(大統領府)での閣議でこう声を荒らげた。
続けて、「(大統領への冒涜は)国民への冒涜であり、国家の立場を傷つけ、外交関係にも悪影響を与えかねない」と不快感をあらわにした。
朴氏が「冒涜」と指摘したのは、野党が言及した自身のプライベートに関する噂だ。
旅客船「セウォル号」が沈没した4月16日に男性と会っていたというもので、加藤前支局長は8月3日、韓国紙「朝鮮日報」の報道などを紹介したコラムを発表し、検察が名誉毀損容疑で捜査していた。
この朴発言から22日後の今月8日、検察は加藤前支局長の在宅起訴に踏み切った。
韓国の名誉毀損の要件には「被害者の意思」があるため、検察が朴氏の意向をくみ取り、判断したものとみられる。
権力による言論弾圧ともいえる暴挙に、米国務省のサキ報道官は「韓国の法律に懸念を有していることは既に明らかにしている」と発言。
国連のステファン・ドゥジャリク事務総長報道官も、「われわれは普遍的な人権を擁護するため、報道の自由を尊重する側に立っている」と強い懸念を示すなど、世界中から批判が集まっている。
それにしても、朴氏はなぜ過敏な反応をみせたのか。
新潟青陵大大学院の碓井真史教授(社会心理学)は、「今回の件に関しては、国際社会のみならず韓国メディアからも批判を浴びている。
『周囲から孤立してもいい』という覚悟があっての判断なのだろう。
まじめ過ぎる性格の人がとりやすい反応だ。
そういう人は余裕がない状況に追い込まれると、周囲が見えなくなってやり過ぎてしまう」と分析する。
朴氏は、朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領の娘として、エリート一家に育った。
自叙伝『絶望は私を鍛え、希望は私を動かす』(晩聲社)などによると、名門の聖心女子中学校で禁欲的な寮生活を送り、研究者を目指してミッション系私立大学の西江大で電子工学を専攻した。
自ら「勉強の虫」を自称し、成績は常にトップクラス。
大学を首席で卒業するなど、模範的な学生だった。
正義感が強く、頑固な一面から「話が通じない」という意味で「不通(プルトン)」と皮肉まじりの呼称もある。
ことあるごとに手帳にメモを取ることから、「手帳姫」とも呼ばれている。
壮絶な悲劇も経験している。フランス留学中の1974年に母の陸英修(ユク・ヨンス)氏が、79年には父が暗殺された。
母を暗殺した犯人は大阪で生まれ育った在日韓国人。こうした特異な性格や気質、「反日」姿勢に影響しているのか。
韓国事情に詳しい『コリア・レポート』編集長の辺真一氏は「朴氏を語るうえで、もう1つ、欠かせないキーワードが『自己犠牲』だ。
大統領の令嬢ということで、女学生時代からアンタッチャブルな存在で、厳しい逆風にさらされたことがなかった。
それゆえに、理想主義的な正義感をいまだに持ち続けている。
生涯独身を貫いているのは、『自分は国家と結婚した』という意識ゆえだろう」と語る。
朴氏が政治活動をスタートさせたのは、アジア通貨危機が起きた1997年。
その時の心境を自叙伝に「私は『政治家朴槿恵』の道を行くことに決めた。
大韓民国発展のため、自分の生活を全てささげる覚悟を固めた」とつづっている。
そんな朴氏だけに、自身が選挙で選ばれた大統領(公人)であり、その論評は「報道の自由」の範囲内であるのが世界の常識だとしても、前出のような噂に触れられるのは、我慢できなかったのか。
先の碓井氏は「国に身をささげるという思いが強すぎるがため、自身の私生活の話題が出たことに過剰な反応をしてしまったのではないか。
女学生のようなメンタリティーがあるのだろう。
朴氏は、自分自身に『韓国民の理想的な母親像』や『聖母像』を投影している。
そのイメージを傷つけられたのが、何より許せなかったのかもしれない」と分析する。
朴氏は自叙伝で、こんな本音もみせていた。
「誰もがしている合コンにも一度も行けず、友人たちと一緒に夜遅くまで街中を歩くこともない」「思えば、私の人生に恋愛らしきものは一度もなかった」
祖国のために、自らを犠牲にしてきた朴氏には頭が下がる。
ただ、今回の在宅起訴によって、その愛する祖国が、世界中から「言論弾圧国家」「まともな民主主義国家ではない」とみられているのも事実だ。
夕刊フジ 2014.10.11
韓国 感情優先、国として成熟せず
━━━━━━━━━━━━━━━━
溝口 敦
長年暴力団を取材してきたが、「もうこれ以上書くな」と相手から脅されることがある。
書くのをやめないと次には暴力に訴えてくる。
暴力的な威力で自分の表現が葬られるのは我慢がならないから書き続けてきた。
言論の自由の大切さを皮膚感覚で学んできた。
実際、過去には暴力団員と思われる男に刃物で刺されたこともある。
事件後は、後ろから他人の足音が近づいてくるだけでおびえて後ろを振り返ることも少なくなかった。
だが、ここで書くのをやめたら、暴力に効果があったと思われるのが、僕にとって、しゃくなことだった。
その後も暴力団関連の記事を掲載した雑誌の副編集長や息子が襲われた。
2人とも不幸中の幸いで軽傷で済んだが申し訳ない気持ちでいっぱいだった。それでも、暴力で来るのなら言論でやり返すという思いを強く持ち続けてきた。
加藤達也前産経ソウル支局長(現東京本社社会部編集委員)の記事は、基本的に韓国メディアを引用したものだ。
それが、朴槿恵大統領への名誉毀損に当たるとして、ソウル中央地検が在宅起訴に踏み切ったことは異常で、韓国は国として成熟していないと思う。公人は批判を甘んじて受けないといけない宿命にある。
笑って見過ごせば、どうってことはなかった。
その方が、大統領が男と会っていたのではないかという噂話まで日本で広く知られることもなかった。「日本憎し」の感情が先立ってしまったのだろう。
そうした特異な状況下での判断なので、韓国国内で言論の自由が消滅したり、海外メディアの報道が萎縮したりといった懸念される事態にまでこじれることはないと思う。
韓国もそのあたりは分かっているのでないか。
韓国司法当局はすぐにでも加藤前支局長を無罪放免にすべきだ。
証拠隠滅の可能性もない中、長期にわたる出国禁止措置は嫌がらせ以外の何物でもない。
現状では表立って交渉しても韓国サイドも引っ込みがつかないので、日本政府は、非公式な形で交渉して早期に問題解決に向けて努力すべきだ。
(談)
みぞぐち・あつし
昭和17年、東京・浅草生まれ。72歳。早大政経学部卒。出版社勤務などを
経てフリーに。平成15年、「食肉の帝王 巨富をつかんだ男 浅田満」で
第25回講談社ノンフィクション賞を受賞。長年にわたり暴力団の取材を続
け、第一人者として活躍を続ける。著書は「血と抗争 山口組三代目」
「ドキュメント 五代目山口組」など多数。
産経ニュース【韓国に問う】2014.10.11
これでは北朝鮮並み
━━━━━━━━━
黒田 勝弘
北朝鮮が近年、韓国に対し最も強く抗議しているのが、韓国の脱北者団体などが大型の風船で送り込む北朝鮮非難の宣伝ビラだ。
これには金正恩第1書記をはじめ世襲3代の指導者の私生活を含む“悪行”が書かれているからだ
。北はこうした指導者非難を「“最高尊厳”に対する冒涜」だといって軍事的報復さえにおわす。
北はまた韓国マスコミの金正恩批判報道に対しても同じように非難し、韓国政府に対し「何とかしろ!」つまり「やめさせろ!」と要求する。
しかしこれに対し韓国政府は「わが国には言論の自由があるので政府がああし
ろ、こうしろとはいえない」といって抗議を拒否してきた。
だから産経新聞の報道を韓国の検察が「国家元首に対する名誉毀損(きそん)」として捜査に乗り出したとき、「これでは今後、北からの抗議には反論できなくなるよ」と皮肉り、検察の態度を「恥ずかしい」として「国益を害するもの」とする警告も出ていた。
朝鮮日報社系の『週刊朝鮮』で崔●碩植編集長が先ごろ書いた堂々たる正論だが、この警告通り今回の起訴は「いまなお外国人記者の報道に法的処罰を加える国」として確実に国益を損ないつつある。
「国家元首への冒涜」といって外国メディアを弾圧したのでは北朝鮮並み
になってしまいます。
●=俊のにんべんを土に
産経【外信コラム】ソウルからヨボセヨ2014・10・11
~~~~~~~