柯隆氏は現実を見た方がいい
柯隆氏の中国研究は甘すぎる
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平井 修一
富士通総研経済研究所主席研究員の柯隆(かりゅう)氏は、日本の中国研究は「結論ありき」になっていないか?と疑問を投げかけている(JBプレス8/25)。
<今の日本の中国研究は深刻な問題を抱えていると思われる。それは、書店の中国関係コーナーを見れば一目瞭然だが、中国脅威論(日本にとっての悲観論)と中国崩壊論(楽観論)に二極化していることである。
いかなる研究も、まず求められるのは客観性である。そのうえ、建設的でなければならない。しかし、今の日本の中国研究の多くはいずれも欠如しているように思われる。
通常、どんな学問でも最終的に明確な結論を示さなければ、研究として完結しない。しかし日本の中国研究論文を読むと、明確な結論のないものが散見される。
一方、マスコミは結論ありきの発言や寄稿を研究者に依頼する傾向がある。「悲観的に書いてほしい」とか「中国を批判するトーンでコメントしてほしい」といった具合である。マスコミは一部の読者の嗜好に迎合して世論をミスリーディングしようとする。そして研究者はそれに応える。これは中国研究に限る話ではないかもしれない。
日中関係が国交回復してから最悪な状況に陥っているとよく指摘されるが、なぜここまで悪化しているのだろうか。その原因の1つは両国関係を健全化する知的創造機能の欠如にある。
すなわち、日中関係を良好に保つための知恵を出すシンクタンク機能がないから、政治が思いつきで間違った方向の政策を決断してしまうのだ。換言すれば、目下の政治は頭脳のない政治と言える>(以上)
釈迦に説法で恐縮するが、柯隆氏は現実を見た方がいい。
1)日中関係の悪化は江沢民以来の反日教育と異様な軍拡という、中共の 一方的な攻撃により始まった。一党独裁体制の危機という中共の内部矛盾 を、外部に敵をつくることで解決しようとしたのだ。
日本も世界も「中共にも自浄力があるだろうから、やがてはそれなりに国際標準に近づくのではないか」と、20年以上も見守ってきたが、中共は対内的にも対外的にもますます凶暴化していった。
「客観的」かつ冷静に見れば、中共はもう暴力団だ、力で封じ込めるしかないだろうと最終的に国際社会が判定したのが今年、2014年である。匙を投げたのだ。「明確な結論」を出したのだ。日本は中共の攻撃にしっかり反撃できるよう準備を進めているだけだ。
日中の良好な関係を建設することは不可能になった。建設を拒否したのは中共である。
2)社会科学院のようなシンクタンク機能を潰したのは習近平である。
言 論の自由も抹殺した。権力闘争で敵を潰そう、個人独裁を目指そうと「思 いつきで間違った方向の政策を決断して頭脳のない政治をしている」のは 習近平だ。中共はもはや矯正できない、更生して国際社会復帰するのは不 可である。
以上の2点は漢族・朝鮮族・アカ以外の世界中が思っていることではないか。プーチンだって中共を警戒しているはずだ。これがリアリズムである。中共との平和友好の時代は終わったのだ。
柯隆氏は「独禁法違反でベンツ、マイクロソフトを調査、外国企業に苛立ちをぶつける中国政府」(同9/9)ではこう書いている。
<中国政府はマイクロソフトやメルセデスベンツなどの多国籍企業が独禁法に違反しているのではないかと大がかりな調査に乗り出している。外国メディアでは、これは外国企業を狙い撃ちにしているとの論評が散見される。
なぜこのタイミングで中国政府が独禁法違反に関する大がかりな調査に乗り出しているのかは明らかではない。中国の景気が減速していることを考えれば、ここで外国企業を懲らしめる選択肢はないはずである。
外国企業は中国の「改革開放」の立役者だったと言って過言ではない。中国ではこの三十余年で奇跡的な経済発展が成し遂げられ、今や世界一の外貨準備を保有し、モノづくりの技術も、世界一流とは言えないものの、「世界の工場」と言われるほどその技術力は大幅に躍進している。
しかし現実的には、中国企業の技術力は高い壁にぶつかっている。中国企業の研究・開発能力は一向に高まらない。特に、エレトロニクスや自動車およびそのキーコンポーネントの技術がほとんど外国企業によって独占されている。中国企業への技術移転は思ったように進んでいない。
習近平政権になってから、中国政府は産業構造の転換と高度化を目標に掲げている。しかし、1年半以上経過しても構造転換は進んでいない。
しかし、構造転換を実現しなければ、中国のサステナブルな経済成長はあり得ない。そこで中国政府は、中国に進出している外国企業を追い落とすという方法を選んだ。ターゲットにされたのが、高付加価値の技術集約型企業である。
今回の一件で明らかになったのは、中国市場では、外資を無条件で優遇する段階が終わったということである。
外国企業としては、中国市場で生き残るために、今まで以上に中国をよく知ることが重要である。中国政府に対して独禁法違反の調査を非難するのではなく、より透明性を高めるよう求めていく必要があるだろう>(以上)
柯隆氏は人が良すぎるか、愛国者なのか、中共の意を呈しているのか。一度帰国してはどうか。朱建栄氏のように豚箱に半年間でも拘束されれば中共の凶暴さを思い知るのではないか。
中共に「透明性を高めるよう求めて」いってもムダである。無視されるか追放されるか、最悪の場合は逮捕されるだけである。世界中が基本的にそう認識している。
理想を掲げても平和にはならない。リアリズムに立って最悪の事態に備えるのが正しい姿勢だ。
裴敏欣(Minxin Pei)クレアモントマッケナ・カレッジの政治学教授がこう書いている(同9/9)。
<トウ小平主義の最大の知的欠陥は、抑制の利かない権力が支配層のエリートの間で強欲と腐敗を醸成する可能性があることを考慮に入れられなかったことだ。その最大の政治的失敗は、そうした権力を制限するために必要な民主的改革に抵抗したことである。
最近、政府のあらゆるレベルで組織的腐敗が明らかになっていることは、中国の長期的な経済的成功に対する最も憂慮すべき脅威が、対抗する者のいない、野放図な一党制国家であることを示している>
これがリアリズムだ。もっとも裴敏欣氏は習近平の虎退治を応援しているのだが。
いずれにしても柯隆氏の中国研究は甘すぎる。(2014/9/10)