学習障害とはーアスペルガー症候群とはーADHDとはー
学習障害とは、知能には大きな問題がなく、目も見え、耳も聞こえているのに、「聞く」、「話す」、
「読む」、「書く」、「計算する」、「推論する」のいずれか1 つ以上がうまくできない状態をいいます。
英語では「Learning Disorders」といい、これを略した「LD(エルディー)」という呼び方もよく使われます。
「聞く」ことの問題:
話された言葉が単語レベル、文章レベルで理解できない(文字で示されると理解できる)、複雑な文章の聞き取りができない、単語の聞き誤りが多い、などの状態です。
「話す」ことの問題:
筋道立てて話すことができない、まとまった文章で話すことができない、余分なことが混じった文章を話す、同じ内容を違う言い回しで話せない、などの状態です。
「読む」ことの問題:
文字は単語を発音できない、あるいは誤った発音をする、文章の文字や単語を抜かして読む、などの状態です。
「書く」ことの問題:
文字や単語が書けない、あるいは誤った文字を書く、単語の中に誤った文字が混じる、
単純な文章しか書けない、文法的な誤りの多い文章を書く、などの状態です。
「計算する」ことの問題:
数値の位や繰り上がり・繰り下がりが理解できない、九九を暗記しても計算に使えない、縦の筆算でないと計算できない、暗算ができない、などの状態です。
「推論する」ことの問題:
算数の応用問題・証明問題・図形問題が苦手、因果関係の理解・説明が苦手、長文読解 が苦手、そこに直接示されていないことを推測するのが苦手、などの状態です。
学習障害には脳の発達特性が関係しています。学習障害の子どもたちが学習に困難をきたすのは、本人の努力が足りないせいではありません。
こうした子どもたちは自分ができないことに目が向きやすく、自尊心が低くなりがちです。自尊心を育てるためには、学習面での能力向上や達成感と同時に、得意なことを活かして力を発揮できる場をみつけることも重要です。
学習障害なのかどうか診断を確実に
学習障害に似た状態はいくつかありますが、原因によって対応法は変わります。
学習法を工夫
本人の得意な面からアプローチするなど学習法を工夫することで能力を伸ばせる可能性があります。やみくもに練習させるだけでは、かえって自信を失い逆効果になる場合もあります。
ときには道具を使って
症状によってはパソコン(ワープロソフトなど)や計算機の練習を積極的に取り入れたほうがよいこともあります。
学校の先生の協力を得る
授業の仕方や教材、子どもへの接し方を工夫してもらうことで、理解度ややる気が向上します。
好きなこと、得意なことをみつける
勉強以外に好きなことや得意なことをみつけて、その能力を育てることも大切です。
努力して成功した体験を積み重ねることで自信を得ることができます。
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アスペルガー症候群とは、自閉症的な特徴(特定の物事に対するこだわりが強い一方、興味のないことには無関心、他人の気持ちを読み取ることが苦手、不器用、独特の話し方をするなど)があり、知能障害と話し言葉の遅れがない状態のことをいいます。発達障害のひとつであり、育て方やしつけが原因となることはありません。
対人関係の形成が苦手
他人と楽しみを共有しない、友達づきあいが下手、相手の感情や状況が読めないなどの特徴がみられます。言ってはいけないことや言うべきではない場面などの暗黙のルールが理解できず、思ったことをストレートに言葉に出してしまいます。
コミュニケーション手段の理解・使用が苦手
抽象的な言い方が理解できず、言葉や会話の含みをくみ取ることが苦手です。また、話し方が独特であったり(大人のような話し方をする)、人の話を聞かないといった特徴もみられます。
想像したり空想したりすることが苦手
目の前にない物を考える、実際にない事柄を考えることが苦手で、概念や抽象的・象徴的な事柄の理解が困難です。また会話の中で省略された事柄や示されていない事柄を推測することが苦手であるため、常識や基本的ルールがわからないと言われがちです。
姿勢のくずれ、多動や不器用
猫背などの姿勢のくずれが多くみられます。また、集中力がなく、一時もじっとしていられないなど多動の傾向がみられることもあります。スプーンや箸が上手に使えない、ボタンかけが上手にならないといった不器用さが目立つ場合もあります。
アスペルガー症候群の子どもたちは、対人関係の問題をもちながら、知能が正常で人とのやりとりも一見普通にできるため、発達の問題があることに気づかれにくいのです。これまでこうした子どもたちは「わがままで自分勝手」であるとか、「親の育て方の問題」などと言われ、つらい思いをしてきました。アスペルガー症候群の特徴は、性格の特徴ともいえます。しかしこの特徴が著しく、集団生活を営む上で本人や保護者の方、周りの人が困っている、あるいはつらい思いをしているならば、適切に行動できるよう支援することが必要となります。
ADHDや学習障害と間違えないで
アスペルガー症候群はADHDや学習障害といった他の発達障害と間違われがちです。対応策はそれぞれ異なりますので、まずは現状をきちんと把握することが大切です。
視覚的なアプローチでわかりやすい対応を
アスペルガー症候群の子どもたちは、想像力を働かせることや、耳で聞く言葉や会話を理解することが苦手です。そのため、広くて自由な空間では混乱してしまったり、目に見えない「時間」の感覚が理解しにくかったり、言葉での指示がわかりにくかったりします。家の中などのスペースは細分化して、「ここは○○をするところ」と 決めてあげると安心してすごすことができます。また、「いつ」、「何をする」といった 一日のスケジュールや、物事の手順や指示などの伝えたいことは、絵カードにして見せたり、よく見えるところに貼り付けてみましょう。何をするのかがわかるようになり、見通しがたって生活しやすくなります。
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ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder:注意欠如・多動性障害)とは、年齢や発達に不つりあいな不注意さや衝動性、多動性を特徴とする発達障害で、日常活動や学習に支障をきたす状態をいいます。
これらの症状のあらわれ方は人によってさまざまですが、そのあらわれ方の違いから「不注意が目立つタイプ」、「多動性・衝動性が目立つタイプ」、「混合タイプ」の3つに分けられます。
不注意 集中力が続かない、気が散りやすい、忘れっぽい
多動性 じっとしていることが苦手で、落ち着きがない
衝動性 思いついた行動について、行ってもよいか考える前に実行してしまう
主な症状
不注意が目立つタイプの特徴
●忘れ物が多く、物をなくしやすい
●気が散りやすく、集中力が続かない
●興味があるものには集中しすぎてしまい、切り替え
が難しい
●ボーっとしていて、話を聞いていないように見える
●行動が他の子よりワンテンポ遅れる
●字が乱れる
● 不器用(縄跳びなどが苦手)
●片付けられない
●あまり目立たないためADHDであることに気づかれ
にくい
●女の子に多い傾向がある
多動性・衝動性が目立つ
タイプの特徴
●落ち着きがなく、授業中立ち歩く
● 体を動かすことがやめられない
● 衝動性が抑えられず、ささいなことで手を
出してしまったり、大声を出したりする
● 乱暴な子、反抗的、という目で見られや
すい
●男の子に多い傾向がある
●ADHD全体の割合からすると少数
混合タイプの特徴
● 不注意と、多動性・衝動性の両方の特徴をもつ
●忘れ物が多く、物をなくしやすい
●落ち着きがなく、じっとしていられない
● 衝動が抑えられず、順番が守れなかったり、ルールが守れなかったりする
●小児のADHDの8割がこのタイプといわれる
● 不注意、多動性、衝動性のあらわれ方の度合いは人によって違う
ADHDには生まれつきの脳の発達の偏りが関係していると考えられており、育て方やしつけによって起こるものではありません。ADHDの症状が強くて社会的生活を送るのが難しい子どもたちには、その子の発達特性にあった正しいサポートが必要です。ADHDの特性を理解しないままに、ただしつけを厳しくしても、症状を改善することはできません。
治療的対応法には「教育・療育的支援(環境調整、ペアレント・トレーニング、ソーシャルスキル・トレーニングなど)」と「お薬による治療」があります。治療の目標は、ADHDの子ども本人が自分の特性を理解し、自分の行動をコントロールできるようになることによって、その子の生きにくさが改善されること、友達に受け入れられ、他の子どもたちのように充実した生活が送れるようになることです。『扱いやすい子』にすることが治療の目的ではありません。
ADHDへの対応
環境調整
子どもの生活環境から不要な感覚刺激を減らし、目的や課題に集中しやすい空間をつくります。
ペアレント・トレーニング
保護者の方のためのプログラムで、保護者の方がADHDをもつ子どもへの理解を深め、家族間の悪循環を絶ち、より円滑に日常生活を送ることができるように具体的な対処法を手に入れるためのものです。
ソーシャルスキル・トレーニング
ADHDの子どもが必要なソーシャルスキル(集団参加行動、言語的・非言語的コミュニケーション、自己コントロール、自己・他者認知などのスキル)を学ぶプログラムです。
お薬による治療
アトモキセチン、塩酸メチルフェニデートといった不注意、多動性、衝動性の改善に役立つお薬が使われることもあります。
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