オバマはどっちつかずなんです。
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成26(2014)年6月16日(月曜日)
通巻第4267号
ILIC(イラク・レバントのイスラム国)の武装蜂起で漁夫の利
クルド族が大油田地帯を掌握、自治区編入の動きへ
****************
キルクークはイラクの大油田地帯。トルコとパイプラインが繋がった。
ここ数日、シリア国境から出撃して突如、モスルを占拠した武装組織は、電光石火の下リア作戦を展開し南進を開始した。
スンニ派がネットに流している情報によれば、すでにスンニ派民間人1700名が処刑されているという(ウォールストリートジャーナル、6月15日)。
イラク政府は反攻作戦にのりだし、攻撃機などを動員し、武装勢力の拠点を襲撃した。
このなかには間違えてクルドの拠点を誤爆、7名が死亡したともいう。
イラク政府は、武装勢力の南下を食い止めるのに必死である。このイラク政府を支援するのがイラン、そして米国も条件付きで支援を表明し、空母「ジョージ・ブッシュ」をイラク沖へ派遣し、オバマは「数日以内にいかなる軍事作戦の介入をするか決める」と発言している。
クルド族がおさえたキルクークには旧サダムフセイン政権時代のバース党の残党も混在しており、日頃からクルドとは仲が悪いものの両者はILICを当面「共通の敵」として共同戦線、マリキ政権もこの動きを見て見ぬふりをしている。そればかりか政府軍はキルクー九の武器庫をクルドに明け渡して逃げた。
突然の軍事衝突によって周章狼狽するイラク政府、どう介入するか態度を決めかねる米国。北からILIC拠点を空爆するシリア、そしてせっかく開通させたパイプラインの安全を懸念するトルコという構造の中、もっか、最大の漁夫の利をえたのはクルドということになる。
ともかく中東情勢、一寸先は闇。
○
♪
鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
@@@@@@@@@@@@
<中国空軍の恥さらし>
***********
「よく喋るオウムは飛ぶのがうまくありません」とは飛行機を発明したライト兄弟の言葉だ。ライト兄弟は後年、スピーチを依頼されることが多かったらしく、こう言って自らの口下手を詫びたという。つまり「自分達は空を飛ぶ自信はあるが、おしゃべりの自信はない」ということである。
実はこの言葉は飛行機乗りにとって普遍の真理を含んでいる。飛行機乗り、特に戦闘機乗りは実に孤独な職業であって、大空にあって基本的に一人なのである。勿論、通信による会話は可能だが、お喋りに打ち興ずるパイロットは余り褒められたものではない。
従って日本の航空自衛隊を含めて世界の優秀な空軍は皆、無口であるのを美徳とする。戦闘機乗りは黙々と緊急発進し、偵察機は黙々と情報収集し、レーダーは黙々と空域を監視し、必要最低限の指令と報告しかないのが、空軍の世界なのである。
ところが中国空軍の最近のお喋り振りときたら、世界中の空軍関係者の失笑を買うのに十分な程である。「こんなに喋る中国空軍はきっと飛ぶのはうまくないだろうな」という訳である。
5月24日に中国軍戦闘機が自衛隊機に異常接近した。日本は危険行為として抗議したが、中国国防省は翌日、あろうことか日本の抗議に反論したのである。もし中国が自ら主張する防空識別圏を確保しているなら、反論の必要はない筈である。ただ黙々と防空識別圏の確保維持に努めるだけであろう。つまり防空識別圏を確保していないと自ら認めている様なものであり、空軍としてはこんな声明を出すのは本来恥ずかしい事なのだ。しかも6月11日にも中国戦闘機は自衛隊機に異常接近し、翌日、日本の抗議に反論する形で日本の主力戦闘機F15の飛行映像を公開した。
この映像はおそらく中国軍の偵察機が撮影したものであろう。こうした映像を黙々と撮影し、情報部で黙々と分析し情報を蓄積していくのが世界の空軍の常識であって、それをすぐさま公開されたら、情報収集の意味はなくなってしまう。私が中国空軍の軍人ならこんな国防省広報官は直ちに、たたき斬られているだろう。
しかもその映像のF15の飛行の見事な事、まるで航空自衛隊の質の高さを宣伝しているプロモーションビデオかと思われる程である。プロの飛行機乗りは相手の飛行を一目見るだけでもその技量を見抜く。おそらく世界中の空軍関係者は空自の技量の高さに改めて感嘆したであろう。
それに引き換え自衛隊機に異常接近してきた中国戦闘機の飛行振りときたら、自衛官が呆れる程の技量であったらしい。日本が危険だと抗議したのは捏造でも誇張でもない。隊員は心底、危険を感じたのである。中国空軍軍人に告ぐ。こんなアホな広報官は一刻も早くクビにして、もっとまじめに訓練に励め!
◇ ◇
♪
(読者の声1)貴誌前号にて『孫子の兵法』に関する分析を伺いました。
『自滅する中国―なぜ世界帝国になれないか』(芙蓉書房出版 )の筆者で戦略思想家のエドワード・N・ルトワックは、「今日の中国が抱えている外交的諸問題は彼らがきちんとした大戦略を有していないために生じている。ここには“逆説的論理(ある行動―この場合には国力の増大だが―は反作用を引きおこし、この作用は元の行動を止めるわけでは無いのだが、それでも単純かつ線的なベクトルの物事の進行を阻止する)”が顕著に作動しているからだ」と解説しています。
私にはこれが安倍首相の「地球儀外交」に符合しているようにみえます。
さらにルトワックは「孫子の兵法というのが問題で、外国より自国のほうが優れているという孫子の教えが大きな誤解を中国の指導者におよぼしている。中国の歴史は長い敗北の歴史であるのが事実だが、指導者たちはそれに気付いていないで兵法書に心酔している。兵法書の述べている策略や画策はどれも同じ文化の中(ルネッサンス時代のイタリアも同一文化内、同じ民族間での戦いであったらしい)なら効果があるものの、異文化間ではうまく機能しない。過去1000年間において中国人(漢民族)が中国全土を支配した期間の合計は、過去千年のうち三分の一を僅か超えるだけである」
と書いています。
しかし何よりも私が一番興味を引かれるのはルトワックが安倍首相と面談したことがあるということです。
(足立生)
(宮崎正弘のコメント)ルトワック氏とは小生も二回会っておりますから当然、安倍さんとも何回か会談しているでしょうね。ルトワックのすごいところは『孫子』はそれほど価値のある戦略指南書ではない、と断言しているあたりです。
♪
(読者の声2)外国の宗教団体の日本侵入についての感想です。「日本人の宗教的無警戒」
昨日、イスラム教徒の学生が浅草寺の仏像を何体か破損したというニュースがあった。異教を滅ぼす宗教的確信犯だ。イスラムの聖戦(ジハード)が日本に及びだしたのである。
これはわれわれ日本人の異教徒にたいする不用心を示すものである。
マスコミも悪い。常に対立を避け、世界皆兄弟のような非現実的で不健全な妄想を振りまくからだ。
イスラムは、戦闘宗教である。片手にコラーン、片手に剣と言うが、本当だ。中東でイスラム教徒同士の残酷な戦闘がつづいている状況を見ると、イスラム教が平和を第一とする宗教ではない事が分かるだろう。
イスラムの平和とは異教(仏教、神道、ユダヤ教、キリスト教)と異端(イスラムの宗派)を根絶やしにした時に始めて達成されるのだ。
日本の解決はイスラムなど異教徒を日本に入れない事である。
イスラム教徒に住みやすい国を作ってはならない。イスラムが嫌う豚肉は魔除けになるだろう。異教徒には日本人の理屈も約束も通じない。イスラム教徒は契約はアッラーとしかしない。人間との契約書は紙に過ぎないとまで言う。全く価値観も慣習も違うのだ。
神道は他の宗教に対する寛大さを自慢してはならない。なぜなら日本人の世界の宗教に対する無知によるものだからだ。「神道が外国の宗教に寛容でも、外国の宗教は神道には寛容ではない」。
(東海子)
(宮崎正弘のコメント)イスラムは砂漠の民の「血と祈りの大地」(村松剛)の信仰です。大川周明はイスラムを理解していました。戦前の日本の知識人はイスラムへの偏見がすくないですね。いまテロに突っ走るセクトは、イスラムの解釈を勝手に解釈しているカルトで、一般民衆が信仰するイスラムの神とはほとんど無縁のものです。
敬虔なイスラム教徒とカルトは峻別したいと思います。
♪
(読者の声3)大統領の権限について、Presidential War Powerが米国憲法で定められている。
http://www.libertyclassroom.com/warpowers/
米国人は単に「戦争を決定できる大統領の特権」としている。米上院安全保障委員会(マケインは重鎮)は、この戦争権をオバマから剥奪する動きが出ている。
この男が軍を嫌っていて、米軍の派遣には全て反対か消極的だった。いわゆる、ピースニックですね。日本なら鳩山の「友愛の海」です(笑)。
戦争が好きな人間は少ないが、これほど戦争を忌み嫌う米国大統領は歴史にない。宮崎先生の分析に賛成です。安倍さんもことチャイナだとぶれない。だがね、オバマはどっちつかずなんです。ヒラリーの忠告さえも聞かなかった。ミシェルはそのチャイナに政府専用機で出かけて豪遊した。嗚呼!というしかないです。
(伊勢ルイジアナ)
♪
(読者の声4)きたる6月17日(火)6時より憲政記念館にて、呉竹会フォーラムが開催され、西村眞悟先生が、掲記のテーマで講演されます。皆様のご参加をおすすめする次第です。
今回は、憂国の政治家である西村眞悟先生をお招きし、今後の日本をどのように牽引するおつもりであるか伺ってみたい、そのよう思いで企画を致しました。昨今話題となっております日本維新の会石原派への合流に関しまして、是非ともお話を頂戴したいところでございます。当日は、西村眞悟後援会会長代行であり、呉竹会顧問でもあります外交評論家の加瀬英明氏にも御挨拶を頂戴することも決定致しました。是非とも多くの皆様にご参集いただきたく、お知り合いの方をお誘い合わせの上ご参加願いたく存じます。
記
日時:6月17日(火) 開場17時30分 講演開始18時00分
会場:憲政記念館(東京都千代田区永田町1-1-1)
半蔵門線/有楽町線/南北線 永田町駅2番出口より徒歩5分
会費:大人2,000円/学生無料
講師:西村眞悟(衆議院議員)
演題:「日本再興論~甦れ日本精神~」
参加申込ページ:http://j.mp/asia_41
♪
(読者の声5)第16回 家村中佐の兵法講座「楠(くすのき)流兵法と武士道精神」
今から約680年前、後醍醐天皇の討幕挙兵にいちはやく出陣した大楠公・楠木正成は、天才的な兵法(戦略・戦術・戦法)で鎌倉幕府を滅亡に追い込みました。こうした大楠公の活躍を描いた古典『太平記』の「軍事解説書」である『太平記秘伝理尽鈔』は、日本の兵法史上第一級の書物であり、江戸時代の天才兵法家・山鹿素行が最も愛読し、影響を受けた名著でもあります。
本講座では、この『太平記秘伝理尽鈔』の中から「千早城」や「湊川」など、大楠公の代表的な合戦を抜粋し、その戦略・戦術・戦法について、図解を交えて分かりやすく紹介いたします。
今回は、山間隘路からの分進合撃や泣き男の奇策など、大楠公の智謀を最大に発揮して足利尊氏から京都を奪還した建武三年正月二十七日合戦と、兵庫までの追撃戦について解説いたします。
『太平記秘伝理尽鈔』を読む(その5:京都奪還作戦)
記
日時: 6月21日(土)12:30開場、13:00開演(15:30終了予定)
場所: 靖国会館 2階 田安の間
参加費:1,000円(会員は500円、高校生以下無料)
お申込:MAIL info@heiho-ken.sakura.ne.jp
FAX 03-3389-6278
件名「兵法講座」とご連絡ください。資料準備のため事前申込みをお願いします。
◇ ◇ ◇
♪
宮崎正弘『「中国の時代」は終わった』(海竜社、定価1080円)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
――高度成長で世界が瞠目し、日本企業も中国進出がめざましかった。しかし中国は経済力をつけるや軍事力増強を背景に横暴にして傲慢となって世界中から嫌われ始めた。米国はアジア・シフトへ移行し、アセアンは反中国で結束した。
http://www.amazon.co.jp/dp/4759313761/
♪♪
『中国共産党、三年以内に崩壊する!?』(海竜社、1080円)
――中国の支配政党の独裁システム崩壊シナリオを七つの視点から予測
http://www.amazon.co.jp/dp/4759313494/
♪♪♪
『中国バブル崩壊が始まった』(海竜社、1080円)
――中国のバブル崩壊を予測した先駆作 斯界騒然の話題作!
http://www.amazon.co.jp/dp/4759313303/
(上記三冊で「中国終焉シリーズ三部作」です)
<宮崎正弘のロングセラーズ>
『世界から嫌われる中国と韓国。感謝される日本』(徳間書店、1026円)
http://www.amazon.co.jp/dp/4198637385/
『中国を動かす百人』(双葉社 1620円)
http://www.amazon.co.jp/dp/4575304875/
『習近平が仕掛ける尖閣戦争』(並木書房、1620円)
http://www.amazon.co.jp/dp/4890632999/
< 宮崎正弘の対談シリーズ >
宮崎正弘 vs 川口マーン惠美
『なぜ、中国人とドイツ人は馬が合うのか?』(ワック、972円)
Http://www.amazon.co.jp/dp/4898316964/
『2014年の中国を予測する―中国大陸から次々と逃げ出すヒトとカネ』(ワック)
石平氏との対談第五弾
http://www.amazon.co.jp/dp/4898316891/
♪
『2013年後期の中国を予測する』(石平氏との対談第4弾 ワック)
『2013年の中国を予測する』(石平氏との対談第3弾 ワック)
『増長し無限に乱れる欲望大国、中国のいま』(石平氏との第2弾 ワック)
『絶望の大国 中国の真実』(石平氏との対談シリーズ第1弾。ワック)
『猛毒国家に囲まれた日本』(佐藤優氏との対談。海竜社)
『日米安保、五十年』(西部邁氏との対談。海竜社)
『世界が仰天する中国人の野蛮』(黄文雄氏との対談。徳間書店)
◎◎ ◎ ◎◎
宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
(C)有限会社宮崎正弘事務所 2014 ◎転送自由。転載の場合、出典を明示