◎防衛を巡り同盟国が米国を非難するリスク
◎防衛を巡り同盟国が米国を非難するリスク
バラク・オバマ米大統領が5月28日に行った外交政策に関する演説につい
て奇妙なことは、大統領が言ったことではなく、言わなかったことにある。
オバマ氏は、同氏のことを無気力で無力だと見なす批判の高まりに反論し
た。オバマ氏は同氏の特徴的なテーマになりつつある外交姿勢の中で、新
たな危機が生じるたびに駆けつけるよりも「高い代償を伴う過ち」を避け
る方がいいと述べた。
だが、非軍事的な形の影響力に力点を置いた演説の中で、オバマ氏は自身
が欧州とアジアで交渉している2つの大きな貿易協定には触れなった。一
度に小さくかじりついて新たな領土を素早く手に入れている中国やロシア
といった大国にどのように対処するかについてもほとんど言及しなかった。
大統領は米国の影響力の先行きに関するもう1つの厄介な問題も回避し
た。米国の同盟国は手助けする意欲を持っているのか、という問題だ。
オバマ氏に対する主な批判は、同氏の本能的な用心深さが抑止力を弱めて
おり、同盟国を無防備な状態に置いているというものだ。英エコノミスト
誌の最近の表紙に書かれたように、「米国は何のために戦うのか?」とい
うことだ。
だが、オバマ氏は同盟国に妥当な問いを投げかけられるかもしれない。そ
れほど心配なら、そのことについてなぜもっと手を打たないのか、と。
米国の助けに依存し、国防費を削る同盟国
オバマ氏のリーダーシップを密かに中傷してきた政府の多くは、自分たちがトラブルに巻き込まれた時は米国が救援に駆け付けてくれるという想定の下で、自国の防衛にごくわずかしか支出してこなかった。
これは言うまでもなく、米国と北大西洋条約機構(NATO)の関係における長年続く恨みの種だ。
冷戦時代でさえ、米国政府は欧州諸国のタダ乗りについてよく不満をこぼしていた。
ロバート・ゲーツ氏は2011年に国防長官を退任する直前、欧州に厳しい警告を発した。
欧州の防衛費が回復しなければ、将来の米国の指導者は「NATOに対する米国の投資のリターンが費用に見合わないと考えるかもしれない」と述べたのだ。
ゲーツ氏の言葉はほとんど影響を及ぼさなかった。
米国を除けば、NATO加盟国にとって最低限であるはずの国内総生産(GDP)比2%の防衛費を支出しているのは、英国、エストニア、ギリシャだけだ。
ユーロ危機で、多くの政府が軍事予算の大幅削減に追い込まれた(スペインとハンガリーは昨年11.9%削減した)。現在ロシアの侵略を心配しているバルト諸国の1つ、ラトビアはGDPのわずか0.9%しか防衛費に充てていない。リトアニアは0.8%だ。
いささか驚いたことに、アジアにも同じことが当てはまり、中国の侵略行為について定期的に不満を表す国でさえ防衛費にお金をかけていない。
フィリピンのベニグノ・アキノ大統領は今年、中国をヒトラーになぞらえ、つい先日本紙(英フィナンシャル・タイムズ)に対して、中国政府は「瀬戸際政策という危険なゲーム」を展開していると語った。
だが、フィリピン政府はGDPのわずか1.2%しか防衛費に支出してていない。
これは、防衛費にGDPの1%しか支出していない日本より多い。
ただし日本政府は、自衛隊が西太平洋で米国と一緒に作戦行動を取るのを容易にする困難な政治改革をやり遂げようとしている。
「カモにされる米国」
ハーバード大学のスティーブン・ウォルト教授の言葉を借りれば、米国は
「アンクル・サッカー*1」になる恐れがある。
「本当の問題は、米国がまだアジアにコミットしているかどうかではなく、アジアにおける米国の同盟国がどれくらい手助けする意欲を持っているかだ」と教授は語っている。
よくあることだが、中東は例外だ。サウジアラビアは防衛費にGDPの10%
近くを費やしており、経済規模に対する比率では、世界の他のどの国より
多く防衛費を支出している。だが、中東地域でリーダーシップを発揮する
米国の能力は、ペルシャ湾岸の一部同盟国がほとんど互いに口を聞こうと
しないという事実によって制約されている。
無力であるというオバマ氏に対する見方は、純粋な国内政争の結果ではない。
それは、より不安定な世界において、そして連鎖的に起きる危機の中で同盟国の側に見られる大きな不安も反映している。
しかし、オバマ批判をせっせと煽り立てることで、一部の同盟国は危険なゲームを繰り広げている。
米国は、左派、右派双方の重要な部分が、世界における米国の役割に関する核心的な前提に疑問を投げかける可能性が高い新たな政治サイクルに入りつつある。
今は、米国政府が欺かれているという印象を助長すべき時ではない。
*1=Uncle Sucker、米国政府を指すUncle Samとカモを指すsuckerをかけ
た言葉
2014.06.02(月) Financial Times 【JB Press】 2014.06.02(月)
〔情報収録 - 坂元 誠〕
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みんなアメリカに甘えて自分の国を守るという責任を果たそうとしていない。それで、ロシアとチュウゴクが調子に乗って、アメリカの支配が抜けた部分を自分たちの支配で埋めようとしている。