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国が主権を主張する尖閣問題では一歩も引かないとの原則を示しながら

中国、対日分断政策「二分法」へシフト 政経分離鮮明に
2014.5.24 12:00 (1/3ページ)
18日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合の閉幕後、共同記者会見する各国の閣僚たち。前列中央が中国の高虎城商務相、2列目左端が茂木敏充経済産業相。2人は前日に会談し、高氏は「日本との経済関係を重視しており、協力を発展させたい」と述べた=中国山東省青島市(共同)
日本の尖閣諸島(沖縄県石垣市)国有化や安倍晋三首相(59)の靖国神社参拝などに反発していた中国が、政治問題と経済協力など民間交流を切り離して対日関係の改善を狙う「政経分離」の戦術を鮮明にし始めた。(上海 河崎真澄)
にじむ「危機感」
中国の高(こう)虎(こ)城(じょう)商務相(62)が17日、山東省青島市で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易担当閣僚会合に出席した茂木敏充経済産業相(58)との会談に応じて、「日本との経済関係を重視し、関係安定と発展を望む」と述べたからだ。
昨年12月の安倍首相の靖国参拝後、中国は5カ月近く日本の閣僚との会談には応じてこなかった。高商務相は、中国が主権を主張する尖閣問題では一歩も引かないとの原則を示しながらも、経済では関係打開の糸口を探る姿勢をみせた。
習近正政権が現段階で取りうる最大限の譲歩策を示したと受け止められる。
だが、そこには中国側の事情に基づく“危機感”がにじむ。中国商務省が16日発表した今年1~4月の対中直接投資実行額で、日本からの投資が前年同期比で46・8%も減少したことが分かったからだ。人件費高騰や中国リスクへの冷徹な経営判断が背後にある。
中国は密接な経済関係を築いている対日関係の悪化が、ブーメランのように自国経済にも中長期的なダメージを与えることを理解している。成長の減速が続く中国には、日本企業の“中国離れ”を少しでも食い止めたいのが本音だった。
分断工作で共闘模索
習政権が「政経分離」を明確にした青島での日中閣僚会談からさかのぼること1週間。日中の外交政策ブレーンが上海で10日、「両国関係の難局打開」をテーマに非公開の討論会を行った。その席で中国側の有識者が「少数の軍国主義者と大多数の日本人民を厳格に区分せよ」とする毛沢東時代からの対日政策の「二分法」堅持を習政権に対し提言すると明言していた。
討論会には日本から宮本雄二・元駐中国大使(67)ら、中国から政治協商会議の趙啓正・前外事委員会主任(74)らが出席した。“分断工作”ともいえる「二分法」の提言だが、中国ビジネス拡大に期待を抱く日本企業や、安倍政権に反対する日本国内の勢力に“共闘”を呼びかける戦術に結びついた。
中国の有識者は、「実のところ『二分法』は1972年9月の日中国交正常化の基礎でもあり、中国は原点に戻ったにすぎない」と話した。毛沢東(1893~1976年)や周恩来(1898~76年)など当時の指導者は、日本政府に台湾と断交させ、中国と外交関係を結ぶ政策を急ぐため、中国国内の反日感情を抑制しようと、「戦争責任は日本の一部の軍国主義者にあり、大多数の日本国民はむしろ中国人と同じ被害者だ」と説得した。
ボールは日本側に
本心がどこにあったかは別として、「二分法」を方便として対日強硬派を抑えて、80年代の改革開放路線以後、日本企業の相次ぐ工場進出や雇用創出、技術供与に加え、巨額の政府開発援助(ODA)を引き出して、日中関係が発展する原動力になったのは事実。
いま再び、軍部も含む習政権内部の強硬派の“主戦論”をなだめ、経済面で日本から実利を引き出すためには、毛沢東の名まで引き合いに出す「二分法」による「政経分離」を掲げることが得策との判断が働いたようだ。戦術を理解した上でどう反応すべきか。駆け引きのボールは日本側に投げられている。
二分法
「共通の敵を打倒するため、連合できる諸勢力と共闘する」との毛沢東の理論から、中国共産党が「日本の軍国主義者」とみなす層と「日本の一般国民」を区分して扱った対日外交政策。1972年の日中国交正常化で中国内の反日感情を抑制し、日本からの支援を得るための説明に使われたが、その後、靖国神社にいわゆるA級戦犯が合祀されたことで、「日本の指導者(首脳)による靖国参拝を認めてしまうと中国では72年の国内説明に矛盾が生じる」(中国の有識者)結果となった。過去10年近く、靖国問題を契機に中国では日本の一般国民まで敵視する反日デモが頻発し、対日政策として事実上機能しなくなっていた。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140524/chn14052412000003-n1.htm