今や放射線問題は政治的だ。そして「美味しんぼ」は政治的だ。それは何ら責められる事柄ではない。 | 日本のお姉さん

今や放射線問題は政治的だ。そして「美味しんぼ」は政治的だ。それは何ら責められる事柄ではない。

「美味しんぼ問題」の原因は政治の機能不全にある
小野昌弘 | イギリス在住の免疫学者・医師
2014年5月18日 4時37分
コメントを見る(6件)
週刊ビッグコミックスピリッツ連載の「美味しんぼ」で、東京電力福島第一原発事故をめぐり、主人公が鼻血を出す描写があったことについて、安倍内閣の閣僚が13日午前の記者会見で相次いで批判したとのことである。この問題では福島の自民・民主も抗議声明を出している。
それにしても、「美味しんぼ」という1漫画に鼻血を書かれたくらいで、政治家から地方自治体までうろたえるほど福島の状況に自信がないというこの現状は根本的におかしいのではないかと思う。
そもそも冷静に考えて、読者が(科学の専門家ではない作者がかいた)漫画の内容を鵜呑にするのではないかと慌てふためくほうがおかしい。放射線のことは放射線専門家の言うことに耳を傾ければよいわけなのだから。もし科学について、科学の専門家が言うことよりも非専門家の書いた漫画のほうを信じるとしたら、それは病的な事態だ。
もっとも、こうした漫画のほうを重要視する人がいても、その背景がないわけではなかろう。たとえば、「美味しんぼ」の出版を受けて、福島選出の根本匠復興相が、放射能の不安をぬぐい去るための「リスク・コミュニケーション」(リスク教育)の充実を求めたというが、リスク・コミュニケーションの目的が「放射能の不安をぬぐい去る」になっている時点で、科学的には安全だという結論ありきな姿勢が透けて見える。つまり大臣がこうした言葉を軽々しく言っているならば、そのリスク・コミュニケーションは既に失敗していると言わざるを得ない。
もし「美味しんぼ」が、(批判しているひとたちが言うような)「不適切な」効果・「風評被害」につながるのだとしたら、それは福島における放射線管理・政策・リスクコミュニケーションがうまくいっていないからだ。こう考えたとき、安倍政権の閣僚たちが過剰とも言える反応を示したことは皮肉的である。
ところで、漫画家を含む作家は、現実に存在するのに言葉になっていないことを語るの大事な役割がある。福島で鼻血の話は、私の持っている基本的な医学知識からは考えにくい(参照)。だが、3.11以来被爆にまつわるそうした健康上の恐怖が巷にあったことは確かだ(ネットを使う人ならばこうした不安が囁かれるのを誰しも一度は見たことだろう)。それならば、人々が持っていたその恐怖が漫画に描かれることに何の問題があるだろうか。公的空間から切り離されたところで、こそこそと自らの信じる「真実」を囁き合い不安を助長し合う状況があるならば、それこそ不健全である。こうした不安や恐怖が存在しているならば、それを表の空間に引っ張りだして来て、関係する様々な人々(利害関係者)が集まって科学的見地を入れて話し合い、やがては政治交渉(negotiation)によって(調査、問題の対応といった)現地での政策に反映していくべきではないか。
言葉で語られて初めて議論もできる。言葉に語られないものは存在しないも同然である。存在しないものを巡る政治交渉はありえない。つまり、言葉で語られないものは政治的に解決できない。そしてこうした真空空間が大きく存在することで社会の活力が削がれていることこそが、言論の自由に制限がある国の特徴だろう。
本来言論人は、こうした言論の真空空間を狭めるために努力し続けるべき存在だ。特に表現形式に自由がある漫画や小説などの作家がタブーに挑戦するべき理由はそこにある。そして福島における放射線問題はタブーにすらなりかけている。それゆえに全国に流通する媒体を使って、問題を表に引っ張り出すること自体は大事なことだと思う。
今や放射線問題は政治的だ。そして「美味しんぼ」は政治的だ。それは何ら責められる事柄ではなく、問題を議論の俎上にのせてより広い人々の政治的合意にむけた政治交渉を進める契機になるならば賞賛されるべきことだろう。忘れてはいけないのは、「放射能の不安をぬぐい去る」ための作品は同じくらいに政治的であるし、もっと重要なことは、これまでも政治的な漫画作品が、特定の政党(自民党)の政策にそぐうようにはるかに組織的に「原発推進」のために大量に作られて来た事実だ。しかもこちらは血税に由来する金を使って、である。
個人の作家が信念に基づいて(強い政治権力をもっている側を)批判することに目くじらをたてて、特定の政党が多量の税金を使用して組織的に国民に偏った情報を流し続けることのほうは気にならないのだとしたら、その感覚は民主社会に生きる者としては何かが大きく欠如している。
小野昌弘
イギリス在住の免疫学者・医師
現職ユニバーシティカレッジロンドン上席主任研究員。専門は、システム免疫学・ゲノム科学・多次元解析。関心領域は、医学研究の政治・社会的側面、ピアノ。京大医学部卒業後、皮膚科研修、京大・阪大助教を経て、2009年より同大学へ移籍。札幌市生まれ。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/onomasahiro/20140518-00035425/
福岡の子供、福島の8倍も鼻血を出す? 小児科医が調査、理由は「わからない」
2014/5/13 18:52
http://www.j-cast.com/2014/05/13204626.html?p=1
小学1年生の子供が鼻血を出す割合は、福岡が26%、福島は3.4%――。東京都内の小児科医が、こんな調査結果をテレビで明かして話題だ。「美味しんぼ」の鼻血描写が物議を醸す中で、なぜ福岡の方が高いのかということだ。
調査は、「子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」代表の山田真さんが震災直後の2011年3~10月にかけて行った。
「鼻血は、子供の3人に1人は出るもの」
山田さんによると、調査したのは、子供が鼻血を出して心配だという相談がたくさん寄せられたためだ。比較するため、福島のほか、福岡と北海道も含め、小学校の保健室にいる養護教員に調査を依頼した。
この3道県で計2700人以上の子供を調べてもらったところ、福岡と福島では前出の結果になり、北海道では、小樽が18%、岩見沢が7%になった。
調査結果は、TBS系ニュースが14年5月12日に報じ、ネット上では、福岡の方が福島の8倍近くも高いことに驚きの声が上がった。「PM2.5のせいなの?」「福岡の子供荒れてるな」「放射能ってマジで健康になるやんw」と勝手な憶測まで流れたほどだ。
山田さんは、福岡が高くなった理由について、分からないとしながらも、こう言う。
「鼻血は、子供の3人に1人は出るものです。ですから、福岡ぐらいの割合になっても当たり前だとも言えます。それも、アレルギー性鼻炎による部分がかなりあるのではないかと思います。福島の方は、意外に少なかったですね。理由は分かりませんが、調査した年の6月から小児科医の仲間と福島に行ったところ、現地の人たちは、鼻血はそれほど多いわけではないと言っていました」
北海道も割合が比較的低くなったが、こちらは鼻血につながる花粉症の発症が少ないことや気圧の変化が大きくないことなどが考えられるという。
美味しんぼが原発事故の影響で鼻血が増えたとしていることについては、描写には行き過ぎた部分があるとみる。
福島県教委「鼻血の相談は上がってない」
「大阪でのがれき処理が原因で鼻血を出す人が続出したら、福島の人たちはみな大変なことになってしまいます。きちんと調査してデータを取ってみないと、原発事故の影響か分からないと思いますよ。チェルノブイリの子供たちが日本に来て鼻血が出なくなったのも、転地してアレルギー性鼻炎がよくなっただけの可能性があるわけですから」
ただ、山田真さんは、漫画が問題提起したことには一定の意義があるとした。
「福島のことをタブー視して、マスコミが取り上げようとしません。それで解決したと思われてしまいますが、全然そんなことはないです。現地の人たちは、何もしてくれないとあきらめています。それは、決していいことではありませんね」
鼻血を出す割合については、文科省や厚労省によると、都道府県ごとなどの調査結果はないという。小学1年生が花粉症やアレルギー性鼻炎などの疾患にかかった割合は、文科省が2013年に行った調査では、福岡14.4%、福島18.2%、北海道12.0%だった。これは山田さんの調査結果と、関連性は見られないことになる。千葉が20.7%もあり、福島が特別高いわけでもなかった。
福島県教委の健康教育課では、「震災直後に鼻血の人が増えたとのうわさが流れたことはありますが、これまでに学校から鼻血が出るという健康異常の相談は上がってきていません」と言っている。
福島県双葉町で鼻血「有意に多い」調査 「避難生活か、被ばくによって起きた」
2014/5/16 19:18
http://www.j-cast.com/2014/05/16204959.html?p=1
福島県双葉町では、鼻血などの症状の統計が有意に多かった――。岡山大などの研究グループが町の依頼で健康調査したところ、こんな結果が出ていたことが分かった。一体どうなっているのか。
健康調査は、岡山大、広島大、熊本学園大のグループが、「美味しんぼ」で鼻血の症状を訴えた井戸川克隆町長時代の2012年11月に実施した。全町民にアンケート用紙を配って調査したため、町に配布などの協力を依頼した。
体がだるい、頭痛、めまい、目のかすみ、鼻血、吐き気…
その中間報告が載ったのは、熊本学園大の中地重晴教授が13年11月に学術雑誌に発表した論文だ。「水俣学の視点からみた福島原発事故と津波による環境汚染」の論文によると、住民には原発事故による健康不安が募っていることから、放射線被ばくや避難生活によるものかを確かめるために疫学による調査を行った。
比較するために、双葉町のほか、福島県境にあり放射線汚染地域でもある宮城県丸森町筆甫地区、さらに原発から離れた滋賀県長浜市木之本町でも調査した。その結果、双葉町と丸森町は、体がだるい、頭痛、めまい、目のかすみ、鼻血、吐き気、疲れやすいなどの症状で、木之本町よりも有意に多かった。
特に、両町では、鼻血が特に多く、オッズ比を取ると、双葉町が3.8、丸森町が3.5もあった。双葉町では、ほかに肥満、うつ病など様々な症状がオッズ比3以上の高い値を示し、両町では、消化器系の病気や神経精神的症状も多かった。
論文では、「これら症状や疾病の増加が、原子力発電所の事故による避難生活又は放射線被ばくによって起きたものだと思われる」としており、事故の影響であることを明確に認めている。今後は、双葉町が行った住民の動向調査から、被ばくとの関係をも調べる予定だとしている。
この内容については、原発事故の取材を続けているライターの木野龍逸さんが14年5月13日にツイッターで紹介し、ネット上で話題になった。
双葉町の抗議文と食い違っている?
「美味しんぼ」の鼻血描写を巡り、双葉町は2014年5月7日、「現在、原因不明の鼻血等の症状を町役場に訴える町民が大勢いるという事実はありません」と小学館に抗議している。
ところが、岡山大などが町に協力を依頼した今回の調査では、鼻血の症状が有意に多いとの結果が出ているのだ。これに対し、木野龍逸さんは、自らのツイートをまとめた「togetter」上で、「なんだか、双葉町の抗議文と食い違ってないですか?」と疑問を投げかけた。
論文で調査結果を紹介している熊本学園大の中地重晴教授は、取材に対し、「調査結果は、昨年8月に双葉町に報告しています。町側は、そのことを忘れているのではないですか」と指摘した。最終報告については、岡山大が中心になって論文にまとめる予定だとしたが、双葉町が鼻血の症状は多くないと主張しているため、「被ばくとの関係については発表できないのではないか」ともした。
一方、岡山大大学院の津田敏秀教授は、最終報告については、まだメドが立っていない状況だと取材に話した。ただ、「鼻血と被ばくは関係ないと政府が言っていることは、科学的な根拠がありません。チェルノブイリでも報告があるわけですから。美味しんぼの騒ぎは、重要な問題だとは思っていないですね」と言っている。
双葉町の健康福祉課では、取材に対し、町が岡山大などに調査を依頼し、調査結果の報告も受けたことは認めた。報告を受けたのは、現職の伊澤史朗町長のときになってからだが、なぜ美味しんぼ側に抗議したのか。こうした点などを聞こうとしたが、「担当者が退職するなどしており、詳しくは当時の書類を調べないと分からない」とし、5月16日夕までに回答はなかった。
町の秘書広報課では、「鼻血を出す人がそんなに大勢いないことは、保健所の聞き取り調査で分かっています。岡山大などからの報告を受けたわけではありませんが、町民の健康管理については今後検討していきます」と話している。
~~~~~
「美味しんぼ」表現問題 閣僚の発言相次ぐ
< 2014年5月13日 17:55 >
漫画「美味しんぼ」の中の福島第一原発事故に関する描写をめぐって閣僚からは発言が相次いだ。
問題となっているのは小学館が発行する「週刊ビッグコミックスピリッツ」の漫画「美味しんぼ」の中で、福島第一原発を訪れた主人公らが、鼻血を出し、福島県双葉町の前町長も登場して原因について、「被ばくしたからですよ」と話す描写があるもの。
石原環境相「(専門家から)こういうような因果関係はないとお話を聞かせていただき、それが医学界の通説として定着している中で、なぜこのような事が起きるのか。福島県民のみなさまの思いを思いますと、大変遺憾な事だと言わざるを得ない」
根本復興相「漫画とはいえ地元の方々の不安や、風評被害を招きかねない内容が描写されている。私は誠に遺憾な事だと言わざるを得ません」
森消費者相「漫画というのは子供も読みますので、その影響力の大きさを考えると大変残念だなと思います」
小学館は「因果関係を断定するものではない」としていて、19日発売の次号などで、様々な意見をまとめた特集記事を掲載するという。
http://www.news24.jp/articles/2014/05/13/07251049.html
美味しんぼ描写、批判を受け止める~編集部
< 2014年5月17日 12:06 >
雑誌に掲載されている漫画「美味しんぼ」の中で、福島第一原発事故に関する描写が批判を受けている問題で、来週発売の最新号で「批判を受け止める」などとした出版元の小学館編集部の見解などが掲載されていることがわかった。
この問題は、小学館が発行する「週刊ビッグコミックスピリッツ」の漫画「美味しんぼ」の中で、福島第一原発を訪れた主人公らが鼻血を出すなどの描写が批判を受けているもの。日本テレビが入手した来週発売の最新号には「編集部の見解」という欄が設けられていて、「ご批判、お叱りは真摯(しんし)に受け止め、表現のあり方について今一度見直していく」などとするコメントが掲載されている。
また、有識者13人の賛否の意見や、福島県や双葉町から送られた抗議文も公表されている。その上で、「美味しんぼ」の連載を当初の予定通り、次の号からしばらく休止することが明らかにされている。
http://www.news24.jp/articles/2014/05/17/07251308.html