脳科学から見た「やる気」UP法
報酬ややりたいことが提示されて快感を得ると、中脳から線条体や前頭葉に向けてドーパミンが分泌されます。これによって『やろう』という意識が起こるのです。ドーパミンは予想外のいいことが起こると多く分泌されるので、豪華なご褒美や目新しいことだと、やる気がわきやすくなります。
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W×R高すぎる目標は禁物!
脳科学から見た「やる気」UP法
2014.04.07
例えばダイエットのやる気スイッチを入れなら、とりあえず体重計に乗ること。微妙な体重の変化まで目で確認することができ、達成状況も客観的に見ることができる
新年度がスタートし、心機一転。やらなくてはいけないことが多いのに、どうにもやる気が出ない。そこで“やる気スイッチ”を入れる方法について、脳科学の視点から探ってみた。答えていただいたのは、玉川大学脳科学研究所教授の松元健二先生。
――先生「やる気」ってそもそも何でしょうか?
「やる気は『外発的動機づけ』と『内発的動機づけ』という、大きく2つに分けられます」
――それぞれどんな違いがあるのですか?
「人は理由があるからやる気が出るのですが、その理由が2種類あるのです。『外発的動機づけ』は、外部からの報酬が理由になる場合。お金でも賞品でもいいのですが、ご褒美がもらえると『またやろう』と思いますよね。たとえば“やらされている感”のある仕事は『外発的動機づけ』によることが多いかもしれません。一方の『内発的動機づけ』は、行動自体が動機になる場合。報酬に関係なく“楽しいからすること”など、自主的に行うイメージです。趣味や習い事は、『内発的動機づけ』によることが多いかも」
――では、どうすればやる気は出るのでしょうか?
「やる気を出すには、脳が学習する必要があります。報酬をもらえたり、行動自体が楽しかったりして快感を覚えると、行動をつかさどる前頭葉と『やろう』と思うときに活動する線条体という部分が作用し、快感と行動を結びつけて記憶。そして、同じ状況に置かれると、当時の快感がよみがえり『やろう』と思うのです」
―― 過去の成功体験や喜びが、やる気を生む素になるわけですね?
「そうですね。報酬ややりたいことが提示されて快感を得ると、中脳から線条体や前頭葉に向けてドーパミンが分泌されます。これによって『やろう』という意識が起こるのです。ドーパミンは予想外のいいことが起こると多く分泌されるので、豪華なご褒美や目新しいことだと、やる気がわきやすくなります。逆に同じ目標や報酬が続くと、脳が飽き、ドーパミンが出にくくなります。低い報酬から始めた方が、やる気を維持しやすいといえますね」
─ 行動によるご褒美と経験の刷り込みが、やる気を生むというわけか。
最後に脳科学の視点でみた見たときの「やる気スイッチを入れにくくするNG例」を5つにまとめてみた。
1)失敗を何度も繰り返す
2)やりたくなるのを待つ
3)できなかったときに罰を設ける
4)無闇にご褒美を設定する
5)睡眠不足で事に挑む
本人としてはやる気を出したのに、それが毎回失敗する。…これを繰り返すと、脳が頑張ることを無駄に感じてしまうので、目標は、手が届く範囲に設定しておくこと。成功したときの自分へのご褒美も、慣れると効果が薄れることに注意しよう。脳がしっかり働ける状態であることが重要なので、常に健康体であることも心がけるべきことのようだ。
監修者プロフィール
松元健二先生
玉川大学脳科学研究所・教授。「人間が自ら主体的に行動できるのはなぜか」という問題を解明するため、意思決定の脳内メカニズムや目標指向行動、動機づけの神経基盤を研究している。著書に『脳の謎に挑む』(サイエンス社)などhttp://r25.yahoo.co.jp/fushigi/wxr_detail/?id=20140407-00035640-r25