IPCC:気温4度上昇で世界的食料危機 報告書が警告
IPCC:気温4度上昇で世界的食料危機 報告書が警告
毎日新聞 2014年04月04日 10時04分(最終更新 04月04日 10時26分)
観測されている地球温暖化による影響
国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は3月、横浜市で開いた総会で、地球温暖化の影響と被害軽減策(適応策)について最新の知見を集約した報告書をまとめた。人類の将来を脅かすような影響も全世界で確認され始め、報告書作成に関わった科学者らは、一刻も早い対策を世界の指導者に求めた。
「過去10年で地球温暖化に対する意識が高まっている。今回の報告書には(被害を減らすための)さまざまな選択肢が示された。今こそ、行動に移すときだ」。記者会見で、ラジェンドラ・パチャウリ議長は力強く語った。
新しい報告書は、温暖化の影響や適応策をテーマにする第2作業部会が担当。7年ぶりの改定で、温暖化が食料不足や紛争など人命に直結する問題を引き起こすことを明確に指摘したのが特徴だ。
◇4度上昇で食料難
穀物の収量予測については1090件の研究を分析。気温上昇により、短期的には増収するという分析結果もあるが、今世紀末から22世紀初頭には大幅な減収と予測する研究が多い。また、温帯や熱帯で、その地域の気温が20世紀末より2度高くなると、小麦などの生産量が減少すると予測され、同4度以上の上昇で、世界的な食料危機を招く恐れがあるという。
収量減少の影響が既に始まっているという分析結果も盛り込まれた。国際NGOオックスファム・インターナショナルのティム・ゴア気候変動政策アドバイザーは「食料問題について前回報告書(2007年)は数ページ程度だったが、今回は40ページにも及ぶ。食料危機が既に現実化しているという重要なメッセージだ」と指摘する。
◇10年間で400キロ移動
動植物の適応能力に関する新たな知見も多い。1900~2010年に、海洋生物が生息域をどの程度変えてきたかを調べたところ、植物プランクトンの場合、海水温上昇に伴って10年間に400キロ以上移動していた。
一方、陸上の生物は気温上昇のスピードについていけない種も多い。哺乳類の中には生息可能な場所に移り続け、10年間で何十キロも移動可能な種もある。だが、植物は短期間では分布域を大きくは変えられず、気温上昇幅が大きくなれば、絶滅の恐れもある。
◇地域別対策リスト
報告書は、温暖化に伴う危機的な将来を示すだけでなく、適応策についても具体的に紹介した。