頂門の一針◎実は多様な靖国参拝対応(古森義久) | 日本のお姉さん

頂門の一針◎実は多様な靖国参拝対応(古森義久)

◎実は多様な靖国参拝対応 ワシントン駐在客員特派員・古森義久
リチャード・アーミテージ氏といえば、近年の日米関係では最も広く最も
長く知られてきた人物の一人だろう。その彼に安倍晋三首相の靖国参拝へ
の見解を直接に問う機会を得た。ワシントンで3月下旬に開かれた日米安
全保障についてのセミナーで、だった。
オバマ大統領の訪日をも論じるこの集いでは、同氏は冒頭で「いまの世界
では安倍首相ほど短期間に多くの政策目標を達成した指導者はまずいな
い」と述べ、安倍政権の防衛費増額や国家安全保障会議の設置、特定秘密
保護法の成立などを米側も望んできた日米同盟強化策の「成功」として称
賛した。だが同氏は日本側にオバマ政権の対日防衛誓約への不信が広がっ
たと指摘し、歴史問題での摩擦にも言及した。
その歴史問題の一角の靖国については同氏が国務副長官などを務めたブッ
シュ前政権は小泉純一郎首相が毎年、参拝しても何も述べなかった。それ
どころかアーミテージ氏自身が中国からの参拝反対は日本を政治的、道義
的に抑えつけるための戦略だから屈すべきではないとまで語っていた。だ
が最近の日本の一部メディアには同氏も首相の参拝を批判したような報道
があった。だからその点を問いただしてみた。
「私は靖国は歴史関連案件のなかでも問題にしていない。日本の国民も首
相も信仰として靖国を参拝する権利があると思う。安倍首相の場合、選挙
の公約であり、中曽根、橋本、小泉氏ら歴代の保守派首相の先例もあり、
参拝自体を論議の対象にすることもない」
アーミテージ氏のこんな答えは以前のスタンスと変わらなかった。彼はさ
らに言葉を重ねた。
「靖国参拝はあくまで日本の問題であり、他の国が日本の首相に参拝する
な、と迫れば、日本側ではそれまで靖国にそれほど熱心でなかった人たち
までが逆に動くという反応を呼ぶだろう。ただし首相の参拝が中国外交を
利さないようには注意すべきだ」
この最後の言葉だけを拡大すれば、「アーミテージ氏も参拝を批判」とい
う解釈をも描けるのだろう。だが同氏がオバマ政権の「失望」表明とは見
解を異にすることは明白である。この点、同じ共和党ブッシュ前政権の国
務、国防両省でアジア担当の高官を務めたランディ・シュライバー氏の主
張はもっと辛辣(しんらつ)だった。ワシントンでの同時期の別の討論会
での発言だった。
「靖国などについてはオバマ大統領は安倍首相を公式の場で叱りつける
『失望』表明のようなことを避け、あくまで非公式の議論をすべきだ。ケ
リー国務、ヘーゲル国防両長官が東京の代替墓所(千鳥ケ淵戦没者墓苑)
を訪れたのも、小利口な行動だ。これこそが正しい戦没者追悼だと誇示し
たのだろうが、日本側は追悼の方法を自分たちで決める能力を完全に持っ
ている」
シュライバー氏はさらに語った。
「そもそも中国が提起する歴史問題というのは歴史の真実や正確性とは関係ない。日本を自国に服従させ、米国から離反させ、国内向けの宣伝をも目的とする政策なのだ。中国の博物館の歴史展示のひどさをみればよい」
日米間のこうした課題への米国の対応は実は多様なのである。【産経
ニュース】 2014.3.30
〔情報収録 - 坂元 誠〕