「ヒトとは(自ら の)細胞と微生物が集合した超有機体」 | 日本のお姉さん

「ヒトとは(自ら の)細胞と微生物が集合した超有機体」

日仏研究で、乳酸菌の健康維持・腸の老化防止の仕組みが明らかに
2014-03-27 10:25
明治(本社・東京都江東区)は20日、フランスのパスツール研究所との共同研究を通して判明したLB81乳酸菌の「腸管バリア機能」低下を防ぐメカニズムや、その具体的成果についての研究結果を発表した。これまで漠然(ばくぜん)と「腸によい」、「健康によい」と考えられてきた乳酸菌の、健康維持や老化防止に役立つ具体的な仕組みが、次々に解明されているという。(写真左からパスツール研究所「リンパ組織発達」研究ユニット主任研究員のジェラール・エベール博士、明治研究本部食機能研究所乳酸菌研究部の浅見幸雄部長。サーチナ編集部撮影)

■パス ツール研究所との共同研究、腸の老化改善、疾病改善をマウスで確認 まず、テレビ電話システムを利用して、パスツール研究所「リンパ組織発達」研究ユニット主任研究員のジェラール・エベール博士が研究の背景と概要を説明。ルイ・パスツールやロベルト・コッホら病原菌となる微生物を次々に発見した先駆者や、ブルガリア人のヨーグルト摂取と長寿の関係を研究し、「人間の体に有益な微生物がいる」と、いわゆる善玉菌(乳酸菌)の存在と実態の解明に努めたイリヤ・メチニコフの業績を紹介した。

現在の学界における「ヒトとは(自ら の)細胞と微生物が集合した超有機体」との見方にも触れ、宿主(ヒト)と腸内細菌叢(さいきんそう。細菌の集合体)のバランスが健康の鍵となるが、加齢とともにそのバランスは崩れると説明し、LB81乳酸菌を使用したヨーグルトを摂取させつづけたマウスでは、腸内細菌叢が若いマウスのバランスに近い良好な状態を保ったと紹介した。

具体的な一例としては、T細胞やB 細胞といった免疫システムの加齢による遺伝子発現量の減少もLB81乳酸菌の摂取によって抑制されたとの実験結果を得たとして、そのメカニズムについても説明した。

大腸炎を起こさせた老齢マウスにLB81乳酸菌を使用したヨーグルトを摂取させたところ、加齢に伴う腸の疾患を抑制する効果も発見されたという。

■LB81乳酸菌が腸管バリアを維持、ヨーグ ルト1日100グラム相当で 続いて会場で登壇した明治研究本部食機能研究所乳酸菌研究部の浅見幸雄部長は、実験の手法や経緯、解明されたこと、解明されつつあることを改めて紹介。

加齢や不規則な生活、過度のストレスなどに伴って、有害物質や細菌、ウイルスなどを防ぐ腸のガード機能である「腸管バリア機能」の中でも重要な役割を担う「抗菌ペプチド」の発現が減少することで、腸の感染や炎症リスクが増大するメカニズムなどを説明した。

実験では、LB81乳酸菌を与えないマウスでは、腸管で慢性的 な炎症が発生しているが、LB81乳酸菌を使用したヨーグルトを摂取し続けたマウスでは、血液検査からも炎症が抑制されていることが分かった。

さらに、若い時期からLB81乳酸菌を使用したヨーグルトを摂取し続けたマウスは、老齢になっても腸内環境が極めてよく維持されていることや、抗菌ペプチドの発現量が若いマウスと同等、またはそれ以上に上昇したことが判明したと説明した。

浅見部長 よると、マウスに与えたLB81乳酸菌を使ったヨーグルトは、ヒトの場合に換算すれば1日100-200グラム程度で決して多くはないにもかかわらず、長期の投与で投与群・非投与群の間で、はっきりとした違いが生じた。

今回の 研究の結果、LB81乳酸菌は、腸の中に病原体やウィルス、有害物質などの体に害を及ぼすものの侵入を食い止める「抗菌ペプチド」の発現を上昇させ、「腸管バリア機能」を高める可能性が分かったという。

続いて登壇した順 天堂大学の小林弘幸教授は、「たかが便秘・されど便秘」との題で論じた。
小林教授は便秘外来を設け、便秘や大腸の疾患について積極的に取り組んでいる。便秘というと「若い女性」とのイメージが強いが、小林教授によると、便秘は年齢が高くなるにつれて増え、男女の割合はほぼ同じ割合になるという。

小林教授は、便秘と糖尿病、パーキンソン病、うつ病 などは併発する可能性が高いなどとして、「便秘を軽く見ては、痛い目にあう」と強調した。

■腸内環境が悪化すれば、悪い血が全身を巡る 小林教授によると、加齢や便秘 の際に見られる腸管の慢性炎とは、急性の炎症とは異なり、激しい痛みを伴うものではないが、腸の内壁が異常をきたしている状態であり、腸管バリア機能の低下による腸内の抗菌能力の低下、栄養吸収機能の低下、腸の蠕動(ぜんどう)機能の低下など、さまざまな事態が進行しているという。

また便秘は、日本人の死因として極めて多く、さらに増加し つつある大腸がんのリスクを高めることになる。

ただし小林教授によると腸内の環境悪化にともない、腸で発生した悪い血が全身に巡ることが大きな問題という。

小林教授は、「健康とは何か?」という問 題を考えると「いかに、質のよい血液を、十分に、ひとつひとつの細胞まで流すことができるか」ということに帰着すると強調。

腸内の環境を整えることは、全身の健康に直結する問題と説明した。

便秘などによる慢性の腸内炎があると、皮膚のトラブルが出てくることは、そのよい実例という

小林教授は現代社会にあふれるストレスが、腸管運動障害を もたらしていると指摘。

朝食をきちんと取るなど生活習慣の改善や、適度・適切な運動を継続すること、ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌などいわゆる善玉菌や食物繊維、さらに「悪玉菌撃退菌」とみなせる納豆菌を摂取することを、便秘の害を防ぐ方法として挙げた。

また、刺激性の下剤の不用意な使用が、腸の運動に極めて重要な自律神経 系の機能を低下させてしまうと指摘。

「1日に下剤を数瓶も服用していた便秘患者」の例などを示し、適切な治療の大切さを強調した。また今回のLB81乳酸菌の実験で「腸管バリア機能」が向上したことや、腸の慢性炎症が抑えられたという結果にも、今後大きな可能性が広がるとして締めくくった。(編集担当:中山基夫)http://news.searchina.net/id/1528087