移民を受け入れる日本社会(の世論)が全体として劣化する
ロシア政治経済ジャーナル No.1044
2014/3/27
★3K移民の大量受け入れで日本はどうなる?(カリスマ社会学者
が解説)
北野です。
著名な社会学者、歴史社会学者・犬飼裕一先生(北海学園大学教授)
が、
「3K移民を大量に受け入れると日本はどうなるのか?」
を解説してくださいました。
(安倍総理は、毎年20万人ずつ移民を入れる意向を示しています。)
(●ちなみに犬飼先生は、超面白い無料メルマガも出されています。
是非ご一読ください。↓
【ここから▼】
北野様
犬飼です
最新号の、【RPE】★安倍内閣、【3K移民】を毎年【20万人】受け入れへ!はなぜ亡国なのか?を拝読いたしました。
(●北野から。まだ読んでない方は、こちら。↓
先著の引用もまじえながら、移民問題について明快な論法に、毎度のことながら感嘆いたしております。
おっしゃるように、「3K移民」が恐ろしいのは、当人たち自身の水準が低いということよりも、移民を受け入れる日本社会(の世論)が全体として劣化することですね。
抽象的な話になりますが、民主主義とナショナリズムというのは双子の兄弟みたいなところがあり、「人は誰でも平等」ということで民主主義を学校でも教わるのですが、ならば、「先進国民の●●人である自分たちは全て平等だ」ということになる。
すると、たとえば、「先進国民の●●人は●●人にふさわしい仕事をして、平等に扱われるべきだ」ということになる。
民主主義の前提で考えると、これに対して表立って反対することはできない。
しかし、実際には公衆トイレ掃除、工事現場や駐車場の交通整理、マンションの管理人、各種の運転手、ソーセージスタンドの店番といった仕事がなくなるわけではない。
すると、そういう程度の低い仕事は程度の低い移民にやらせろということになる。
しかし、実際には多くの人が就きたがるような高給ホワイトカラーの仕事(「先進国民の●●人にふさわしい仕事」)に、誰もが適性をもっているわけではない。
もちろんそんなポストが無限にあるわけもない。
移民にやらせた結果として、「掃除」や「交通整理」や「運転手」や「売り子」の仕事が以前よりも貶められてしまう。
30年も前ならば、「先進国民の●●人」でも、学生バイトなどで普通にやっていた仕事が、世間体が悪くて、危険で、ばかにされる仕事になってしまう。
西ヨーロッパ諸国がそろってはまったのがこの罠でした。
他方で、スマートな職に就くことができなかった一般の人々が、悪性のナショナリズムに走ってしまう。
ネオナチやスキンヘッド、移民に暴行を加えることで、その国の国際的な評価を落としてしまう人々です。
彼らの考えの根拠は、やはり「先進国民の●●人である自分たちは全て平等だ」という前提なのですね。
皮肉ですね。
平等な自分たちを守るために、よそ者を追い出せというわけです。
「3K移民」を制限することで巧くやってきたのが日本でした。
現に、外国人観光客が感動するように、デパートのトイレ掃除のおばちゃんが礼儀正しかったり、駐車場の誘導員のおじさんが満面の笑みで挨拶したりする。
現に私も学生の頃、立体駐車場の受付を東京でやっていました。
また、60歳まで年収600万のサラリーマンだった人が、マンションの管理人のような仕事に戸惑わずに再就職して、別段恥じる様子もない。
これは社会全体としてものすごく良いことなのですね。
現に、日本ではこういう仕事の生産性が上がっています。
世界は広いですが、トイレのハイテク化や工事現場の柵のデザイン化──「オジギビト」など──に熱心に取り組むのは日本だけです。
みんなこういう現場を楽しい場所にし、こういう仕事を楽しくしようと努力している。
そして、このことが社会全体の安全を確保しているともいえる。
欠点は、農作業や建設業のような裾野の広い現場仕事の生産性が、賃金に比して低くなることで、それに応じて物価が高くなることです。
しかし、日本人の大工さんや運転手さんや管理人さんに少し余分に給料を払うことで、社会全体が安全になっているのですから、広く見れば安いものですね。
本当に「3K移民20万人」については考え直して欲しいですね。
むしろ、おっしゃるように大卒技術者や医療関係者を10万人入れて欲しいくらいですね。
2014年3月19日
犬飼裕一
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発行者 北野 幸伯