頂門の一針「資金がなければ、アジア太平洋に大量の戦力を維持することはできない。」 | 日本のお姉さん

頂門の一針「資金がなければ、アジア太平洋に大量の戦力を維持することはできない。」

日本人はアメリカだけを頼りにはできない時代に入ったことを理解しているのか?

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◎日本を不安にした米高官の「失言」:日本経済新聞編集委員 秋田浩之。
米政府の高官はひんぱんにメディアの質問にさらされる。それだけに、公式答弁をきちんと用意し、失言しないよう入念に準備する。ところが今月初め、米国防総省高官がうっかり口を滑らし、大きな波紋を広げる騒ぎが起きた。
発言の主は、カトリーナ・マクファーランド国防次官補(調達担当)。艦船やミサイル、レーダーといった軍事システムの導入や兵器の調達などについて、大きな影響力をもつ人物だ。
■「もう実行できない」
マクファーランド次官補は3月4日、米バージニア州アーリントンで開かれた国防関係の会議に出席し、こう断言したのだ。
「いま、(米軍によるアジア重視路線は)見直しの対象になっている。率直にいって、もう実行できないからだ」
彼女はその根拠として、国防予算が大幅に削られようとしていることをあげた。資金がなければ、アジア太平洋に大量の戦力を維持することはできない、というわけだ。
この発言はまたたくまに米メディアに伝わり、ワシントンで騒ぎになった。それもそのはずである。彼女が見直しを断言したアジア重視路線は、オバマ政権の金看板ともいえる軍事戦略だからである。
中国軍が急速に台頭するなか、米軍の兵力をアジア太平洋に傾斜して配置しようというものだ。国防総省は同じ4日に発表した「4年ごとの国防戦略見直し(QDR)」で、この路線を堅持する方針をかかげた。
その象徴ともいえるのが、2020年までに米軍艦船の60%を太平洋に集中するという計画。このほか、QDRでは日本やオーストラリア、韓国、フィリピン、タイとの同盟協力の拡大や、在日米海軍の強化も打ち出した。
中国軍の海洋進出に、日本や東南アジアの国々は不安や懸念を深めている。オバマ政権はQDRで、国防予算が削られたとしてもアジア重視路線は続けると強調し、アジア各国の米軍への信頼をつなぎ留めようとした。
ところが、である。その路線を支える立場にあるはずの国防総省高官が、あっさりと「実行できない」と認めてしまったのだ。この発言は米国内だけでなく、日本などアジアでも静かな波紋を広げた。
■修正された発言
あわてたマクファーランド次官補は、ただちに発言を訂正。国防総省報官を通じ、次のようなコメントを出した。
「国防予算について質問され、あのような発言をした。ヘーゲル国防長官も言っているとおり、アジア太平洋に重点を移すには(予算上)革新的で難しい決断が必要になる。いま、まさにそうした努力をしているのであり、アジア重視路線は続く」
同省の首脳から指示され、発言を修正したとみられる。それでも、米安全保障専門家からは「マクファーランド次官補が言ったことは間違っていない。このまま予算が減れば、アジア重視路線は揺らぐ」との声も聞かれる。この騒動、日本にとっても人ごとではない。 (2014/3/14 7:00 日本経済新聞 電子版より採録:宝珠山 昇)