プーチンの本質は「ウソつき」。
プーチンの本質は「ウソつき」。ロシアは昔からずっと日本に対して「ウソつき」であった。
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北方領土交渉に影を落とすウクライナ情勢
ロシア訪問を重ねる安倍首相、決意は実るのか
2014.03.06(木) 筆坂 秀世
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40108
ロシアのソチで行われた冬季オリンピック開会式に、アメリカのオバマ大統領、フランスのオランド大統領、イギリスのキャメロン首相、ドイツのメルケル首相など、G8首脳クラスが相次いで欠席した。
理由は、2013年6月、ロシアで制定された「同性愛宣伝禁止法」だ。この法律では、未成年者に対し、同性愛への興味を持たせる言動や宣伝行為を禁じ、違反した場合には、罰金刑などを科すことができると定められている。これに反発したためだ。
そんな中で日本の安倍晋三首相は、開会式に参加し、翌日にはプーチン大統領と通算5回目の首脳会談を行った。
G8首脳の多くが欠席する中で安倍首相が出席を決断したのは、これまで築いてきたプーチン大統領との信頼関係を損ないたくないという思いとともに、北方領土問題の解決に道筋をつけたいという強い思いがあったからであろう。
プーチン大統領もこれを高く評価し、大統領公邸に安倍首相を招き、2013年に秋田県知事から贈られた秋田犬とともに迎える歓迎ぶりであった。
人権問題も重要ではあるが、だからと言って日ロ間の領土問題交渉を手控える必要はない。安倍首相は当然の決断をしたまでである。
安倍首相の決意は本物
安倍首相がソチに向けて出発するその日に、都内で北方領土返還要求全国大会が行われた。その挨拶で安倍首相は、「私は、日ロ関係全体の発展を図りつつ、日露間に残された最大の懸案である北方領土問題を最終的に解決し、ロシアとの間で平和条約を締結すべく、交渉に粘り強く取り組んでまいる決意であります」と述べた。
この挨拶について、北方領土問題の解決に長年取り組んできた鈴木宗男新党大地代表は、次のように解説している。
「ポイントは『日露関係全体の発展を図りつつ』という部分だ。ここは従来であれば『四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する』という定型句を言うべきところだったが、安倍総理はあえて『四島』という言葉を避けることで、現実的な北方領土交渉を進めようというシグナルを送ったのだ」(『月刊日本』2013年3月号)
首脳会談の冒頭でプーチン大統領が、「2国間で最も難しい問題解決の良い環境ができている」と発言したのは、その返答であるというのが鈴木氏の見立てである。
ソチから帰国した安倍首相は、2月13日の衆院予算委員会で「私の総理の時代に何とか解決していかなければならないと決意している」と答弁した。この安倍首相の決意は、本物だと思う。
着々と進むロシアの実効支配
北方領土が旧ソ連によって奪われたのは、日本が戦争に負けたからだ。本来、領土を取り戻そうとするのなら戦争によって勝つしかない。しかし、そのような選択肢が取り得ないことはあまりにも自明である。
同時に、領土問題で難しいのは相手国との交渉だけではない。ある意味では、国内対応の方がはるかに難しいとも言える。依然として日本国内の保守派の一部からは、4島一括返還論が叫ばれている。しかし、これまでの旧ソ連、ロシアとの交渉を振り返っても、ロシアがこれに同意することはあり得ない。
「慌てることはない。こちらから譲歩すべきではない」という意見もある。だがそうだろうか。日本が国後(くなしり)、択捉(えとろふ)などを実効支配してきたのは日露和親条約(日露通好条約)が締結された1855年から1945年までの約90年間である。ロシアは1945年から今日まですでに69年間実効支配をしている。この間、投資と開発が進み、中国や韓国の企業が進出し、日本人だけがいない島になりつつある。日本は不当に占拠されたという立場を取っているため、「ビザなし交流」ということでしか4島には行っていないのである。
こんな状態を前にして、のんびりと身構えているだけでは済まされない。保守派・安倍首相の政治決断が求められる。
私の立場は、本来は4島どころか千島(ちしま)列島全体と歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)の返還である。当時の大原則であった「領土不拡大」の原則に従えば、これが本筋の要求である。
しかし、日本はサンフランシスコ平和条約で千島を放棄させられてしまった。この中には、南千島である国後、択捉も含まれている。自民党政府は、後になって「国後、択捉は千島ではない」と言って、歯舞、色丹を含めた4島返還論を形成してきた。しかし、当時の吉田茂首相の発言でも国後、択捉が南千島にあたることは明確に認めている。また歯舞、色丹は日本が放棄した千島ではなく、北海道の一部である。条約上だけで言えば、日本は歯舞、色丹の返還しか要求できないのである。
ただ国後、択捉もスターリンの領土拡張主義によって、「領土不拡大」の原則を破って奪われたものである。ヤルタ会談で、これに英米両国もお墨付きを与えてしまった。
しかし、現実にはこんな要求をロシア側が飲むわけがない。プーチン大統領は、かつて「引き分け」と述べたことがある。話し合いで領土問題を解決しようという以上、双方が妥協するしかない。どちらの国にとっても100%の要求が通ることなどあり得ない。そのためには4島一括返還などという非現実的な立場に拘泥してはならない。
ただ、「妥協」ということになれば、過激な保守派は受け入れを拒否するであろう。だからこそ保守派に人気と信頼がある安倍首相の政治決断が不可欠である。
領土問題に影を落とすウクライナ情勢
だが、ここにきて厄介な問題が勃発した。ウクライナ問題だ。
親ロシア政権が崩壊したウクライナで、ロシアが軍事介入を進めている。プーチン大統領にとって、ウクライナは、ロシアを中心とした経済共同体のメンバーとしてどうしてもロシア陣営に確保しておきたい国である。
プーチン大統領はオバマ大統領に対し、「ウクライナ東部やクリミア半島で、ロシアは自らの国益とロシア語を話す住民を守る権利がある」と伝えたという。これに対し、アメリカのケリー国務長官は、ロシアの軍事介入は「信じがたい侵略行為」であり、「ソチのサミットは開かれないし、この状態が続けばロシアはG8に残れないだろう」とまで述べている。
プーチン大統領と5回もの首脳会談を持ち、今年中にあと2回会談を予定していた安倍首相の対ロ外交も、大きな変更を迫られる可能性が高まっている。
ロシアがこのような強硬姿勢を取れるのは、ヨーロッパへの天然ガス供給という切り札を持っているからである。だからヨーロッパの国々もロシアを批判はするが、ロシアとウクライナが決裂することは望んでいないと言われている。アメリカも厳しい批判はするが、2008年のグルジア紛争の時のように、武器を供与して支援する余裕はないと言われている。
米ロが対決する「新冷戦」などという指摘もあるが、これは早計であろう。「冷戦」というのは明確に資本主義陣営対社会主義陣営という構図であり、イデオロギー対決という側面を持っていた。ロシアが自由と民主主義の国とは言えない現状にあることは事実であり、また発達した資本主義国とは言えないが、資本主義国であることには変わりはない。
秋にもプーチン大統領の訪日を予定している安倍政権は、これまでのところ抑制的な批判にとどめている。しかし、たとえどんな理由をつけても今回のロシアの行動を擁護することはできない。ウクライナ自体、深刻な財政危機に直面し、債務不履行の危険もあるという。国内も複雑で、親ロシア勢力、親欧米勢力が存在し、親欧米勢力の中には親イスラム勢力やネオナチもいるという。ヤヌコビッチ政権を見ても明らかなように汚職や腐敗が蔓延している。欧米諸国も、ロシアも、この混乱が波及することを恐れている。
ロシアがこれ以上強硬な軍事行動を起こすことは、ロシアにとっても国益につながらない。日本にできることがあるとすれば、そのことをプーチン政権に理解させることであろう。
そして北方領土問題の解決に向けて、この問題が大きな影響を与えることにならないよう念願するのみである。