中国のシャドーバンクが行き詰まっているようです。 | 日本のお姉さん

中国のシャドーバンクが行き詰まっているようです。

文雄の歴史から読み解くアジアの未来
2014年2月19日号(第12号)
【中国】ついに中国経済の崩壊が始まるか
☆「影の銀行」6社に新たなデフォルト懸念、石炭会社向け融資で
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20140214-00000075-biz_reut-nb
中国のシャドーバンクが行き詰まっているようです。
問題が表面化したのは、経営難の石炭会社、山西聯盛能源に対して国内の信託会社六社が総額50億元(8億2460万ドル)以上を融資していたことが発覚したことからでした。
今年の旧正月明けから、中国のシャドーバンクにおけるデフォルト懸念はささやかれていました。
返済の遅れによるテクニカル・デフォルトはこれまでにも発生していましたが、今回は投資家が損失を強いられる前例となるデフォルトをシャドーバンクが待っている状態だと指摘する人もいます。
こうしたデフォルトが実際に発生すれば、高利回り商品でも国有銀行の暗黙の保証があるという、一般に広まった考え方が覆されることになります。
中国がインフレ対策に乗り出したのは2010年秋からです。温家宝が金融引き締めに動きました。
インフレというのは、市場に流通しているお金が溢れすぎて起きます。インフレを抑えるためには、市場に流通しているお金を減らせばいいので、そのために、まず銀行の金利を上げました。
銀行の金利が上がると、みんな貯金しようとします。こうすれば流通しているお金が銀行に吸収されるわけです。
さらに政府は、銀行融資を減らすように指導し、銀行が吸収したお金が市中に出ないようにしました。
温家宝時代の中国政府は、こうした金融引き締めを2012年の春先まで続けた結果、インフレ率が次第に下がり、2012年10月にはインフレ率が1・7%まで下がりました。
しかし、その一方で、中小企業が潰れ始めたのです。
評論家の石平さんによると、現在の中国経済の6割を支えているのは中小企業だということです。普段でも、中国の銀行はあまり中小企業の面倒を見ずに、銀行のお金は国有企業に優先的に貸し出されますが、金融引き締めによって、これがますます進んでしまったわけです。
資金ショートしてしまっては、中小企業はやっていけません。そこで多くの中小企業経営者は、まだ土地価格が上がっていた時期でしたので不動産投資に走るか、あるいは正規の銀行がお金を貸してくれないので、シャドーバンキングに頼るということをやりはじめたわけです。
シャドーバンキングは温家宝の金融引き締めによって、中国で大流行したのです。
シャドーバンキングは通常の銀行より利率が高いので儲かります。
だから、国有企業も自らシャドーバンキング化するようになりました。国有企業は、金融引き締め政策のさなかでも、優先して銀行からお金を借りることができました。そこで銀行からお金を借りて、本業とは関係のない金貸しに走ったのです。
国自体はインフレを恐れて金融引き締めしているのに、シャドーバンキングによって貸し出された資金が、不動産などに投入されて過剰投資を起こし、インフレや格差問題をさらに拡大する懸念が高まります。そこで、政府はこのシャドーバンキングを規制しようとしています。それが、2013年6月の取り付け騒ぎのときに、政府が銀行の資金注入をせずに傍観した原因とされています。
その一方で、もし経済成長が停滞することにより、シャドーバンキングが潰れたり、債権回収が不能になった場合、当然ながら、その資金の貸し手である銀行も多額の不良債権を抱えることになります。これが、シャドーバンキング問題が「中国版サブプライム問題」だと言われているゆえんです。
このシャドーバンキングの規模は、中国政府ですら把握していないと言われています。推測では8兆元(約125兆円)にものぼるとされています。しかも現在、中国から海外へのキャピタルフライト(資金逃避)が起きているとされています。
ことに「裸官」(本人は中国で汚職に手を染める一方、妻子と不正蓄財を海外に逃す共産党の高級幹部)の資金の流れを把握することは最も難しいとされています。
私が金融専門家から聞いた話では、中国からのキャピタルフライトは、全世界のキャピタルフライトの半分ぐらいを占めているということです。ワシントンDCにある金融機構GFIの数字では、2000~2011年の12年間で約3・4兆ドル(約340兆円)が中国から逃避したとされています。
しかも、こうしたキャピタルフライトの規模は、年々倍増、倍々増しているため、2012年だけでも約150兆円もの額になっているという説もあります。
シャドーバンキングの金も、ブラックマネー(黒金)の一つと数えられていますが、中国で表に出ていない「黒金」がどのくらいになるのか、私は以前、銀行を隠居した長老に教えてもらったことがあります。
彼は、毎年GDPの約40%に相当すると推測していました。ただ、確実な数字は神様でもわからないだろうと言っていました。
中国では、個人に支払われる毎年の総給料収入よりも、銀行預金の全増額分のほうが多いということが通例になっています。中国人は銀行預金よりもタンス預金を好むことが常識であるのにもかかわらずです。
今回の石炭会社への融資によるデフォルトは避けられたとしても、問題が解決されたわけではありません。
もっとも、中国のシャドーバンキングは、アメリカのサブプライム問題と酷似しており、シャドーバンキングに問題が発生しても、中国は日本のバブル崩壊とアメリカのリーマンショックという2つの事例を参考に対処できるだろうという意見もあります。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2013/08/post-3012_2.php
ただし、これは楽観的な意見でしょう。アメリカや日本と中国では経済制度があまりに異なっています。変動相場制も金利の自由化も中国はできていません。そしてもしそれを実現すれば、統制経済は不可能になります。
いまや中国共産党の正当性は、人民を食わせていくこと以外にありません。革命世代もいなくなり、民意で選ばれたわけではない習近平をはじめとする共産党指導部は、人民の不満が爆発しないように舵取りするしかないのです。
シャドーバンキング問題による不良債権の発生と経済の収縮を抑えるためにお札を刷れば、再び中国でインフレが高進し、2011年から豚肉の値段が高騰したときのように、民衆の不満が爆発する可能性があります。
ちなみに、2012年には、豚の飼料のほうが、人間の食事より高価になったという報道もありました。
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=64399
そしてこのような事態に民衆が不満を抱いていた2012年秋に、反日暴動が起きたわけです。
統制経済をやめて、より経済を自由化させていくという方法もありますが、そうなると中国共産党の指導的な立場が危うくなります。
民主主義国なら、経済対策に失敗した政権が下野し、国民は代わりの政権を選ぶということが可能ですが、一党独裁国の場合、民衆の怒りはすべて共産党に向かうことになるのです。
それを回避するために、民衆の怒りを外敵に向かわせる、ということを中国では常に行ってきましたが、それも限界になりつつあります。
押しても引いてもロクな結果にならない、というのが現在の中国の現状でしょう。だから習近平は思想や言論統制を強化する一方、李克強が自由経済を推進するといった、真逆の政策を同時に行うという、ちぐはぐなことをやっているわけです。
中国問題で最も根が深いのは、「権力がすべて」なので、権力闘争が熾烈きわまりないということです。目下、習近平を中心とする太子党と、胡錦濤や李克強の団派(中国共産主義青年団)が力を結集して、上海閥を叩き潰そうとしています。
しかし、それが終われば習近平は徐々に銃口を団派の実力者に向け、やられる前に先に攻撃をしかけるでしょう。
シャドーバンキング問題は、こうした権力闘争と絡みあい、大きな動乱への引き金ともなりかねないのです。
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