■ 徒労に終わった中国の「日本包囲作戦」(その4)
~誰よりも中国を知る男が、日本人のために伝える中国人考~
石平(せきへい)のチャイナウォッチ http://www.seki-hei.com
■ 徒労に終わった中国の「日本包囲作戦」(その4)
米国の本音を読み間違えた中国
ここではまず、米国の本音に対する中国政府の大いなる誤読があったことを指摘しておこう。
なるほど、安倍首相の靖国参拝直後に、米国政府は確かに大使館を通して「失望した」という前代未聞の声明を出して、安倍首相の行動を批判した。
しかしそれは決して、中国に同調するような批判でもなければ、中国に日米同盟の離間を図るチャンスを与えるような批判でもない。
まさしくハーフ副報道官の指摘した通り、それは単に、日本と中国・韓国などの近隣諸国との関係悪化を憂慮しての懸念表明であって、それ以上でもそれ以下でもないのである。
そして米国は一体なぜ、日本との近隣諸国との関係悪化を憂慮しなければならないのかというと、それこそ日本国内外の多くの有識者たちが指摘しているように、山積する国内問題やシリア問題への対応で精一杯のオバマ政権は今、東アジアで緊張が高まり衝突が起きるような事態を何よりも恐れているからである。
つまり、東アジアの安定を望むその思いこそ、米国政府の日本に対する「失望声明」の根底にあるものであろう。
しかしよく考えてみれば、まさにこの思いと同じ理由から、オバマ政権は決して、日本との関係悪化も望まないはずである。
というのも、もし両国関係が悪化して日米同盟が動揺してしまうような事態となれば、それこそがアジア地域の安定を脅かす最大の不安要素となるからだ。
したがってオバマ政権は、いわゆる「靖国問題」の一件で日本との同盟関係に亀裂を生じさせるような愚行に及ぶようなことはしないだろう。
逆に、日米関係を動揺させるような誤解が広がる事態となれば、むしろ米国政府が急いでそれを解消し、日本との同盟関係を正常の軌道に乗せていかなければならない。
前述のハーフ副報道官の発言は、まさにオバマ政権のこうした努力の一環であると理解すべきであろう。
しかし一方の中国はまるきり、オバマ政権の本音を読み間違ったようである。
米国政府の「失望声明」をチャンスだと思い込み、それに乗じて日米同盟の離間に重点をおいた「日本包囲作戦」を展開することになったわけだが、誤った状況判断と思い込みの上で策定した代物であるが故に、最初から成功する見込みはないのである。