動物が過去2年で500匹死亡ーインドネシアのスラバヤ市の動物園の怪
ライオンが首をつる「死の動物園」 いったい何が…過去2年で500匹死亡
産経新聞 1月22日(水)12時15分配信
百獣の王ライオンが首をつった。あり得ないような話だが、インドネシア・ジャワ島東部のスラバヤ動物園で実際に起きた。1月7日、檻(おり)の中で首をつった状態で死亡したライオンが見つかったのだ。動物園側は「事故死」を主張するが、捜査当局は、殺害された可能性があるとみて捜査に乗り出した。欧米メディアが「死の動物園」と呼ぶ同園では2年間で500匹もの動物が死亡。その中には不審死もあるとされる。「死の動物園」でいったい何が起きているのか。(大谷卓)
■「ライオンがこんな死に方をするはずがない」
ジャカルタ・グローブやジャカルタ・ポスト(いずれも電子版)などによると、死んだライオンは1歳半のオスのマイケル。7日朝、管理担当者が巡回中に発見した。広報担当者の説明では、マイケルは、檻の鉄格子の上部に取り付けられた金属製のケーブルに頭部を乗せた状態で死んでいた。
マイケルと別のライオンの計5頭は普段、檻で生活しており、毎朝、展示スペースに連れ出され、来園者に見てもらった後、午後に檻に戻る。ケーブルはこの際、飼育係が自らの手でドアの開閉をしなくて済むような“装置”として取り付けられていたという。
広報担当者はジャカルタ・グローブに対し、マイケルがなぜケーブルに頭部を乗せたかについて調査中だとした上で、こう述べた。
「マイケルは比較的若く、行動的だった。(飛び上がるなどして)遊んでいるうちに、どうにかなって頭が乗ったのではないか」
さらに、飼育係の怠慢などを否定。つまり「事故死」を主張したのだが、捜査当局側がそれを真に受けるはずはなかった。ハッサン林業相はアンタラ通信に対し、「ライオンがこんな死に方をするはずがない。犯人が逮捕されることを望む」と指摘した。
■喫煙するオランウータン、胃にプラスチック塊のキリン…
オランダ統治時代の1916年に開設された同園は、東南アジア最大の規模を誇る。英紙ガーディアン(電子版)によると、約3500の動物が飼育されている。当局側がマイケル殺害容疑で捜査を始めたのには理由がある。スラバヤ動物園には“前科”があった。
フランス通信(AFP)によると、昨年10月、飼育中だった15歳のボルネオオランウータン「ベティ」が病死した。高温続きで肺炎を引き起こし、呼吸困難で死んだのだが、この約2週間前には、12歳のナニックが腸腫瘍と肝機能障害で死亡。ボルネオオランウータンは通常、50~60歳まで生きることが多く、2頭とも早死にしたことになる。
オランウータンをめぐっては、展示スペースで来園者が投げ入れたたばこを吸うことを10年近くも黙認。「たばこを吸うオランウータン」として呼び物にしていたこともある。
また、2012年3月には、同じ檻で13年間飼育されていたキリンのクリウォンが30歳で死亡した。ところが、クリウォンを解剖したところ、胃の中から直径約60センチ、重さ20キロのプラスチックの塊を発見。来園者が長年、柵越しに投げ与えてきた食べ物の包装だとされたが、クリウォンは結核も患っていた。
不審死の事例は枚挙にいとまがない。例えば、スマトラトラが、防腐剤や接着剤などに使われるホルムアルデヒド入りの肉を定期的に食べて死亡。3頭のコモドドラゴンの子供が闇市場での売買目的で盗まれる事件も発生した。10~11年に死亡した飼育動物は500にのぼり、うち数百は肺炎や下痢、栄養不良といった治療可能な疾患で死亡したとされる。
■劣悪な飼育環境と虐待疑惑
10年に経営陣に批判が集まり、林業省が12年に経営陣のライセンスを剥奪し、再出発させたが、動物が次々と死ぬ状況に変わりはなかった。ジャカルタ・グローブは、同園で昨年7~9月の間に死んだ動物は43にのぼると指摘。マイケルが死んだ数日前にはヌーが病死している。まさに「死の動物園」としか言いようがない。
ジャカルタ・グローブは、衛生面が十分でないことや、手狭な檻に入れられるなど劣悪な飼育環境にあると指摘。食事や世話も十分ではなく、さらに虐待も行われ、これらが死亡の原因になっているなどとしている。
関西にも、大阪、京都、神戸と動物園があるが、こんな事態に発展することなどまずあり得ない。
スラバヤ市のホームページにある同園の哲学の一節にはこうある。「地球上の多種多様な動物たちは神の贈り物…」。その贈り物に見合うだけの行為を、人間たちはできているのだろうか。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140122-00000525-san-asia