習近平も温家宝も周永康も、中国共産党と英領バージン諸島との黒い絆
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成26(2014)年1月24日(金曜日)
通巻第4128号 <前日発行>
やっと英国はタックスヘブンという悪の温床にメスを入れるか?
習近平も温家宝も周永康も、中国共産党と英領バージン諸島との黒い絆
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英領バージン諸島はカリブ海に浮かぶリゾート、税金天国。資本金わずか1ドルで会社登記ができる。中国と香港からの会社登記は21300社もある。
だから英紙『ザ・ガーディアン』は書いた(12年11月25日付け)。
「砂の島、海と秘密の英領バージン諸島は世界最大のオフショア市場となった」
同島はちっぽけな観光地。歳入の六割が、この幽霊会社の登記料で成り立っており、なんと登録料収入は2011年度だけでも一億八千万ドルに達した。
世界中から怪しげな逃避資金が、この小島を経由して、世界のどこかへ投資に向かう。スイス銀行が顧客名簿公開に踏み切った今、タックスヘブン地図が激変したために、リヒテンシュタイン、クック島などのタックスヘブンを飛び越えて、英領バージン諸島には怪しげな、誰が経営者かも分からないペーパーカンパニーが盛業中だ。
▼なぜカリブ海の小島なのか?
最初にバージン諸島に「金融の秘密口座取引」「オフショア市場の開拓」に鋭く目を付けたのは英国の法律事務所だった。
1980年代、サッチャー首相の金融緩和政策への舵の切り替えによって英国から自由にカネが動かせるようになったという状況変化が背景がある。
ついで1990年代、それまでオフショア市場の王者でもあったパナマが、ノリエガ逮捕という米国の軍事介入の結果、パナマのタックスヘブンの魅力が薄れ、英領バージン諸島が、その地位を代替する。
そして1997年、英領香港が中国に返還された。香港の富はカナダ、豪州に人間とともに逃げたが、カネだけが逃亡した先は英領バージン諸島だった。
最初のこうした取引斡旋を介入し指導したのは嘗てのボス、つまり英国の法律事務所だった。
「取締役の名前も藪主の名前も公表しなくて良いのです。しかも、これは合法です」という謳い文句は世界の闇資金の持ち主が瞠目するところとなった。
「ペンドラゴン・マネジメント」社はロンドンの代理事務所。この業界の先駆者でもあり、同社名オランダ、ベルギー、ロシアの富豪らのカネを、英領バージン諸島へ持って行くノウハウを教えて手数料をとった。この会社の経営者はオランダ人である。
大手のひとつは「スタンレー・ディビス」社で、ロンドンのイートンにオフィスがある。「フレッチャー・ケネディ」社は、明らかに名家の名前を二つあわせたような社名。この代理店が三番手。これらの代理業は法律知識をふんだんに活用し、いつのまにか英領バージン諸島を世界一のオフショア市場としたのだ。
▼合法的な「抜け穴」を探せ
弁護士事務所に登記された無数の法人は、代理人の名前を登録するだけで、実際の経営者の名前はふせてもいいというのが英領バージン諸島政府(英国人総督がいる)の法律である。
ときに犯罪が絡みそうな企業名は役員の名前を公開する義務があるが、英領バージン諸島政府ができるのは、そこまで。しかも渋々代理人が応じる役員名はドバイやネービス島あるいはバヌアツといった島嶼国家に登記された法人の役員であり、英国と法律協定がなく、公開義務のない抜け道の場所に登記された代理人の名前である。
この秘密性に注目した大量の人々がいた。
中国共産党幹部らである。かれらは英国領だった香港の法律をフルに利用して、香港経由で英領バージン諸島に片っ端から『会社』を登記した。
これらは主として香港の弁護士事務所と組んだ金融機関で、とりわけクレディ・スイス、UBS(ユニオンバンク・オブ・スイスランド),そしてPWC(プライス・ウォーターハウス・クーパー)だった。UBSは、およそ1000社の中国の富豪の会社登記を手伝い、PWCが400社を英領バージン諸島へと誘った。
『ザ・ガーディアン』の予測では、これまでに中国から動いたカネは一兆ドルとも四兆ドルとも言われている(中国の外貨準備が三兆二千億ドル強だから、後者の数字はチト考えにくいが。。。)
さて2014年2月23日、共同は次のニュースを流した。
「英紙ガーディアン(電子版)は21日、中国の習近平国家主席の義兄や、温家宝前首相の息子、温雲松氏を含む中国指導部の親族ら少なくとも十数人が、タックスヘイブン(租税回避地)の英領バージン諸島の企業を資産管理に活用していると報じた。関係書類の分析で判明したという。同紙によると、欧州の金融大手はバージン諸島で、これら親族の資産管理会社の設立を支援。クレディ・スイスは温家宝氏が首相在任中、温雲松氏のためにコンサルタント会社を設立した」。
この英紙ガーディアンの報道はたちまち大きなニュースとして世界に流れ、エルパソ(スペイン)、ルモンド(フランス)、カナダCBC、ドイツの主要紙、豪のグローバルメールなどが追加で大きく報じた。
記者会見した中国外交部スポークスマンは「しらないことは知らないことだが、報道は中国を貶めようとする悪意に満ちており、ただちにネットでのアクセスを遮断した」とした。
すぐに上に列記したメディアへの中国からのアクセスが普通となった。ブルームバールとニューヨークタイムズは以前の温家宝(前首相)一家の不正蓄財を報道したから一貫してアクセスが不能となっている。
▼巨悪の秘密資金は中国の石油閥が蓄えていた
かくして、はからずも中国共産党トップの名前が登場したが、同ニュースが報じていない多数の情報がある。
つまり中国の石油派と太子党の汚職資金が大量に、この英領バージン諸島に集結していたという事実である。
周永康を筆頭に、すでに逮捕された蒋潔敏ら数百の被疑者はことごとくが『ペトロチャイナ』「シノペック」「CNOOC<中国海洋石油>」という三大石油企業のトップら、しかも彼らは無数の子会社、別会社を英領バージン諸島に登記し、インボイスの偽造などで不正資金を送金し秘匿していた。
いま明らかになった数字は氷山の一角に過ぎない。
周近平の義弟は英領バージン諸島に「エクサレント・エフォート・プロパーティ開発会社」を登記し、世界各地で不動産投機を行っていること、温家宝の息子、温雲松は「トレンド・ゴールド・コンサルタント」社を登記しており、ほかに李鵬の長女、李小琳も、幽霊会社を登記していること、合計16名が高級幹部の子弟もしくは親族で、これらだけでも450億ドルを動かした書類がみつかっていると『ザ・ガーディアン』が伝えた。
中国も表向き、不正資金の海外流失を憂慮し、みせしめで国美電気の黄社長を逮捕して、懲役16年とした。
一方、英国キャメロン首相は、こうした不正行為の蔓延る英領バージン諸島の法律改正が必要ではないか、と述べている。
ただし英国には強制力はなく、英領バージン諸島は、それなりの自治が許されているため、規制強化へ踏み切るまでにはまだ時間がかかりそうである。
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日本のアセアン重視への転換は、オバマ政権が打ち出した「ピボット」「リバランス」という戦略シフトの先取りです。
ならば、アセアン十ヶ国での実態、とりわけ日本企業と中国企業との競合状況、あわせて韓国の躍進と現地人の対中、対韓感情の起伏。現地に於ける華僑系新聞は、いったい日本に関して何を書いているか。
昨年一年をかけて筆者はフィリピン、マレーシア、インドネシア、ベトナム、カンボジア、シンガポール、ブルネイ、タイ、ラオス、ミャンマーを八回にわけて取材した総決算にくわえ、インド経済圏(インド、バングラデシュ、スリランカ、ネパール)の現地報告と、これからのアジア経済の予測を書き込んでいます。弊誌メルマガには殆ど掲載されていないレポートです。
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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)日本式の販売方法がアジアで受け入れられていると、22日のNHK夜9時のニュースで取り上げたのはインドネシアのヤクルト。日本式の訪問販売で売上を大きく伸ばしている。
昨年11月のテレビ東京の番組「未来世紀ジパング」ではもっと詳しく取り上げられていましたが、ヤクルト5本パック(約70円)を一日100パック以上売るという女性、月の収入が約4万円、運転手の夫の収入が約2万円と完全に逆転。ヤクルトのお陰で家電・夫のバイクを購入、子供も学校に行かせることができ、上の息子はスイスの四つ星ホテルに就職できたと喜んでいる。
ジャカルタの最低賃金は月額約2万円に対し、ヤクルトレディの平均賃金は約2.8万円。
日本のヤクルトレディは1963年に誕生、乳酸菌の効用を説明しながらの販売だったという。現在のインドネシア、菌といえばバイキンのイメージを持つ人が多い。
そこで腸内の善玉菌・悪玉菌などの知識がないインドネシアの人々むけに小冊子を用意、乳酸菌の有用性を説明しながらの販売です。
ヤクルトは世界33カ国・地域で販売、そのうち12カ国・地域でヤクルトレディが活躍中。メキシコ・ブラジル以外はすべてアジア。中・韓・台湾・インド・タイ・マレーシア・フィリピン・インドネシア・シンガポール・ベトナムですからアセアンとだいぶ被っていますね。
商品をストレートに売るのではなく、まず効能から説明し納得してもらって、おもむろにヤクルトはいかがですか? 番組では「ニッポン式遠まわり」と紹介。ヤクルトは日本では売上
の6割近くが訪問販売だといいますが、ヤクルトレディの採用基準も国によって異なるようです。
インドネシアではまさに地域密着、23~38歳の主婦、3歳以上の子供がいることが条件。子供が小さいとなにかと手が離せないのでNG、子供のためにお金を稼ぎたい主婦の思いがヤクルトの売上アップにつながるという。主婦は家にいるべきとの伝統的な考えとイスラムの家父長制があるためヤクルトレディをスカウトするには夫や父親の承諾が必須。
以前、別の番組でインドのヤクルトレディを取り上げていました。
おもに日系企業を廻っての販売でしたが、若い女性が多かった。ブログで見つけたインド、ニューデリーのヤクルトレディは大学生。在宅の、子供がいる母親向けに訪問販売をしているようです。
「一つの容器の中には65億の善玉菌があり、免疫機能を助け、便秘・下痢・予防に役立つ。会社の用意した冊子を渡す前に、事前にリハーサルをした簡単なセールスピッチ(売り文句)をします。"顧客は消化がよくなったといいます”というヤクルトレディのMeenakshiさん。"得意客が、病気に感染することが滅多になくなりました。”」でもこの売り文句は、ヨーロッパでは規制があり使えないため、ヤクルトはヨーロッパでのマーケティングを断念。
http://ameblo.jp/jacqueline508engcafe/entry-11374276264.html
ヤクルトについては、ブラジルでは乳価が安いため、日本よりも乳成分が濃いという番組も見たことがあります。
韓国では垢すりやマッサージのあとにはヤクルト。ラブホテル兼用の安ホテルの冷蔵庫にもかならずヤクルト。疲労回復に、って精力剤か?
ヤクルト・韓国で検索したら興味深い記事。英国フィナンシャル・タイムズ(FT)の記事としてヤクルトおばさんを紹介。
『ヤクルト社が最初にインドネシアに進出した1990年代は、乳製品への認識が低かった。ヤクルト社は当時、ヤクルトおばさんを営業の第一線に立てた。しかし需要がなくて失敗して、2000年にインドネシアの市場から退いた。以来、市場が成熟するまでに7年余り待った。ヤクルトおばさんたちの高い会社への忠誠心も、ヤクルト社の売上向上を支援している。一例として、ジャカルタで働くヤクルトおばさんの月給は、インセンティブを含めて300万ルピア(約26万6700ウォン)から400万ルピア。最低賃金240万ルピアはもちろん似たような学力レベルの女性よりも給与が高い。現在ヤクルト社はメキシコ、ブラジルなど他の新興国市場に進出している。その前面には「ヤクルトおばさん」がある。
FTは、このような販売ノウハウが地域市場攻略のためのもう一つの「モデル」になっていると評価した。
http://blog.livedoor.jp/oboega/archives/35597309.html
牛丼の吉野家がタイから撤退した時期と重なりますから、アジア通貨危機の影響なのでしょう。
吉野家はバンコク再進出しましたが、今や円安バーツ高で日本よりも値段が高い。日本の外食産業が続々タイ進出するのも納得。今後はデフレで鍛えられた日本企業がアジアでどのような展開をしていくのか興味津々です。
(PB生、千葉)
(宮崎正弘のコメント)小生、インドネシアでそこまでの取材をしておりませんが、ともかく日本製品の評判が良く、これから日本企業最大の問題は「ハレル規制」ですね。イスラムの戒律で、禁止されている成分を配合しない加工食品、菓子、さらにロゴにいたるまで、日本企業がハレル規制クリアのために奮励努力していることは拙著『世界から嫌われる中国と韓国、感謝される日本』(徳間書店)にも縷々述べました。
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(休刊のお知らせ)小誌、海外取材のため1月25日から2月3日まで休刊で
す
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