「NEET株式会社(仮称)」は、今月21日の登記を目指す。 | 日本のお姉さん

「NEET株式会社(仮称)」は、今月21日の登記を目指す。

ニート170人超「全員が取締役」今月会社を設立へ
THE PAGE 11月6日(水)12時45分配信
押印した会社定款の委任状を前に意気込むニートたち
「ニート」全員が取締役となり、会社を立ち上げるというプロジェクトが進行している。会社名は「NEET株式会社(仮称)」。彼らは全員、現在は職に就いていない、いわゆるニートだ。10月30日には、会社定款の委任状に立ち上げメンバーが押印した。取締役として参加するニートは170人超。11月21日に登記して正式な会社発足を目指す。
自分の名前を確認して委任状に押印する女性メンバー
数メートルに及ぶ委任状
10月30日、東京の国立オリンピック記念青少年総合センター。
この日は、会社定款の委任状と取締役就任の承諾書に、発起人メンバーのニートたちが押印するために集まった。会場には、数メートルに及ぶ委任状にメンバーの名前がずらりと記されていた。委任状は発起人の人数分の割り印が必要で、通常の形式の書面では人数が多すぎて全員が印鑑を押せないので、巻き物状の委任状になったという。発起人は135人だが、最終的に取締役に名を連ねるのは175人になる。
押印をすませた発起人メンバーの男性は「会社がうまくいくかどうかはわからない。でも仕事を与えてもらう感じではない。とりあえず自分で動かなきゃ」と前向きに語った。
今年6月に説明会
この構想は、今年1月に、NPO法人「中小企業共和国」理事長の安田佳生さんが、人材組織コンサルタントの若新雄純(わかしん・ゆうじゅん)さんに話を持ちかけたことから始まった。安田さんは、倒産した人材コンサルティング会社ワイキューブの元経営者。このプロジェクトの設立までの準備資金は安田さんが支援したが、新会社では経営には関わらず、外部から顧問という形でサポートする。
6月に開いた説明会にはネット参加も含めると全国で3000人以上が視聴した。それ以降、リアルに集まっての会合やスカイプで会社や事業内容などについて議論を重ね、最終的には取締役に就任予定の170人超が残った。取締役は、1人6000円ずつ出資して株主となり、資本金は計105万円になる。全員が対等だが、形式上、若新さんが代表取締役になる。
すでに30程度の「事業」案
「社内」では、すでにグループに分かれて、思い思いの「事業」を考え、進めている。事業案は現在、30案くらい生まれているという。ゲームやTシャツ、いろいろな場所の空気を入れた缶詰の作成や、ニート問題を解決するための「ニート総研」というプランまである。仲間たちでTシャツを作成していた男性に話を聞くと、「Tシャツはきょう記念すべき第1作が完成した。ロゴは自分たちのデザイン。売れたらいいけど、作りたいから作った」という。
だれがどの「事業」に参加するかは各自の判断に委ねられている。まだ現段階では、自分がどの「事業」に参加するか決めかね、様子見しているメンバーもいれば、いわゆるお金を稼ぐ「事業」には参加せず、会社の「運営事務」を希望するメンバーもいる。とにかく自分がやりたいことを無理せずやる、ということがコンセプトのようだ。全員が対等で、組織としての「リーダー」を置かない方針のため、普通の会社のように「辞令」で動くようなことはないというわけだ。
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ニート170人超「全員が取締役」今月会社を設立へ
「誰も雇われない」環境を作りたかったと語る安田佳生さん
誰も「雇われていない」環境
そもそも、どうしてニートによる会社を作ろうと思ったのか。
立案者の安田さんは「ニートが好きなことをやって、それによって生まれた利益を分配すれば、うまく機能するのではないかと思った」と語る。なぜ全員が取締役なのか、という問いに対しては「雇う人も雇われる人もいない。つまり、誰も『雇われない』を環境を作るために、全員を取締役にした」のだという。そして「この会社で利益が出て普通のサラリーマンより稼ぐようなことがあったら『革命』。いま日本に約60万人以上いるニート全員が加わってくれるのを目指す」と展望を語る。
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ニート170人超「全員が取締役」今月会社を設立へ
ニートの潜在能力は高いと語る若新雄純さん
ニートの「潜在能力は高い」
現場でニートたちの相談役としてプロジェクトを進める若新さんは、どう考えているのか。
若新さんは、ニートたちの潜在能力の高さを指摘する。「例えばネットスキルとか、非常に高い能力を持っている人もいる。彼個人では、世間的には『マイナス』かもしれないし、1人では社会でやっていけないかもしれない。しかし、何人かで集まって組み合わさることで、彼の『プラス』の能力を発揮できる環境が生まれることがある。今の社会はマジョリティにしか手を差し伸べない。確かに彼は1人で満員電車に乗れないかもしれないが、そこはみんなでうまく補い合う社会があってもいいんじゃないか」。
そしてニートたちの活動を、幕末の脱藩浪士に重ねあわせる。「ニートたちに対する普通のアプローチは会社生活に戻らせようとするもの。だけど、もう『脱藩』したんだからもう『藩』には戻りたくないはず。就職じゃない方法で彼らの能力を引き出したい」。
ただ、それにはニート自身の発想の転換も必要で、「脱藩したんだから『刀(普通の会社の方法論)はどうするんですか?』と僕らに聞いていてはいけない」という。若新さんは、新しい発想が生まれる環境を重視。そのために「指示命令系統をつくらない」「明確なルールをつくらない」という方法論を徹底している。彼らのアイデアの幅を制限したくないからだという。
「ニート株式会社」は成功するのか
しかし、この異例のプロジェクトは成功するのだろうか。
若新さんは「『作物』が育つかはやってみないとわからない。まったく新しい作物が生まれる可能性もある」。自身が代表取締役を務める約束になっている期間は1年。「アイデアの事業化はしていけると思う。その1年間のうちに、いろいろ走り出せれば」と見通しを語る。
「NEET株式会社(仮称)」は、今月21日の登記を目指す。認められれば「仮称」が取れ、晴れて「NEET株式会社」として、175人の「取締役」たちが走りだす。
【用語】ニート(NEET)
「Not in education, employment, or training 」の略。厚生労働省によると、総務省が行っている労働力調査において、15歳から34歳で家事も通学もしていない人を、いわゆるニートと定義し、2009年時点で約63万人いる。NEET株式会社(仮称)では、この定義に準じた形でニートが集まっているという。
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