65歳定年制 5年多く働いても生涯賃金900万円しか増えぬ例も
65歳になるまえに病気で死んでしまった男性たちはたくさんいる。
取引先の人も友人らが62歳や65歳になって直ぐに死んでしまったので、60歳から年金をもらうことにしたそうだ。
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65歳定年制 5年多く働いても生涯賃金900万円しか増えぬ例も
2013.02.04 07:00
4月から施行される65歳定年制(雇用延長義務づけ)導入で企業の賃金体系見直しが進んでいる。三菱電機などが採用しているのが「定年年齢選択型給料」だ。
社員は55歳の春、会社からサラリーマン人生の大きな決断を求められる。〈給料は現状維持のまま60歳で退職するか、それとも給料ダウンで65歳まで働くか〉──というものだ。
前者の60歳定年を選択すれば、本社勤務のままで給料はカットされないが、雇用延長(再雇用)はない。後者を選べば、56歳で早期退職して子会社に再雇用され、給料(本給)が2割カット、60歳以降はさらに5割に減らされる。年収600万円の55歳サラリーマンの場合、前者を選ぶと、56歳から60歳までの5年間の総額で3000万円になる。
一方、後者を選択すると、65歳までの10年間の総額は3900万円だ。5年間多く働いても生涯賃金の差はわずか900万円にすぎない。
「60歳で退職する人も、65歳まで雇用延長する人も生涯賃金は基本的に変わらないという考えです」と三菱電機広報部は説明している。
※週刊ポスト2013年2月15・22日号
NTT労組幹事「雇用延長でかえって生涯賃金が減る人多い」
2013.02.06 07:00
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この4月から施行される65歳定年制(雇用延長義務づけ)導入で企業の賃金体系見直しが進んでいる。その一つが「定年年齢選択型給料」で55歳時に、給料は現状維持のまま60歳で退職するか、それとも給料ダウンで65歳まで働くかを選択するというものだ。
少しでも増えるならまだいい。雇用延長したために逆に生涯賃金が減るケースもある。
NTTグループは2002年に「50歳」からの雇用選択制度を採用した。電話回線の保守管理など現業部門の社員は60歳退職なら給料水準は変わらないが、雇用延長を選べば、50歳で退職して子会社に再雇用され、給料は勤務地によって東京勤務なら15%、九州や北海道・東北勤務は30%カットされる。60歳以降は契約社員となり、給料は年収200万円程度まで下がる制度だ。
入社同期のAさんとBさん。これまでは給料も出世コースも同じだったが、Aさんは50歳の選択で、「妻に任せている親の介護を早く分担しよう」と60歳のリタイアを選び、Bさんは「子供がまだ小学生で60歳以降も教育費がかかるから」と65歳までの雇用延長を選択した。2人の社員のその後の給料総額がどう変わるかを比較した。
50歳時点で年収700万円だった地方勤務のAさんの収入は50歳からの10年間で7000万円になる。一方、Bさんは5年間多く働いたにもかかわらず5900万円と、約1000万円も下がっているのである。
東日本NTT関連合同労働組合(第2組合)の斎藤隆靖・幹事が語る。
「継続雇用の社員は60歳定年を選んだ社員より10年間で約1000万円から約1900万円、給料が減らされます。60歳からの5年間、年収200万円程度の契約社員で雇用されても5年分の給料総額は1000万円で、雇用延長するとかえって生涯賃金が減る人が多い」
※週刊ポスト2013年2月15・22日号
65歳までの雇用延長制度 50歳代後半の首切り助長する恐れも
2013.02.26 16:00
厚生労働省は今年4月からの<65歳雇用延長制度>の義務化にあたって出した運用指針の中で次のような主旨の項目を入れた。
「60歳以上の雇用者の割合が低い企業は制度の見直しを検討すること」
何のためか。政府は新制度の導入によって、雇用延長の対象になる前の50歳代後半のサラリーマンの大量解雇が行なわれる事態を想定しているからではないか。
中堅メーカー営業職のAさんはいま、「59歳の選択」に迷っている。55歳で役職を離れ、現在の年収は約600万円、退職金は1500万円ほどになるが、会社から退職金2割増し」を条件に早期退職を勧められているからだ。
「60歳前に勧奨退職した方が、失業手当の金額が大きく、受給期間も長くなりますよ」――人事の担当者からはそう説明を受けた。
新制度では、早期退職を断わって60歳まで勤めれば、希望者は65歳まで今の会社で再雇用される。今年夏に60歳を迎えるAさんはその対象だ。仮に、勧奨退職に応じれば再就職先は自分で探さなければならなくなるが、「2割増し」は魅力的にも見える。
果たしてどちらを選ぶべきなのか──。
こうした50歳代後半の社員への肩たたきがこれから増えると予想されている。政府はこの4月から年金の支給開始年齢を61歳に引き上げる(その後、段階的に65歳に引き上げ)。サラリーマンは60歳定年後に給料も年金もない「年金空白期間」が生じることから、高年齢者雇用安定法を改正して企業に対して希望する社員全員の65歳までの雇用継続を義務付けることになった。
しかし、この事実上の「65歳定年制」導入はサラリーマンにとって決して朗報ではない。本誌はこれまで、企業側が雇用延長にあたって増大する人件費を抑制するために、65歳まで働いても60歳定年時代と生涯賃金が変わらないようにする賃金体系の見直しや、退職金の減額という賃下げ路線に拍車をかけている実態を報じた。
今回は「延長義務付けの前にクビを切れ」という50歳代後半の退職攻防である。雇用延長問題に詳しいジャーナリストの溝上憲文氏が指摘する。
「改正高年齢者雇用安定法は、60歳以降の社員の雇用を保護するものですが、逆に59歳以前の社員は守られていない。そこで、企業は社員が60歳になると簡単にクビを切れなくなるため、その前の50歳代後半の社員を勧奨退職のターゲットにしています。これからその攻防が本格化するでしょう」
サラリーマンにとってみれば、60歳以降の「年金空白」を補うはずの雇用延長制度が、逆に定年前のクビ切りを招き、「50歳代後半の収入空白期間」が生じるという事態がふりかかろうとしているのである。
※週刊ポスト2013年3月8日号