ストーカー惨殺事件は、警察のミスによる人災 | 日本のお姉さん

ストーカー惨殺事件は、警察のミスによる人災

ストーカー惨殺事件は、警察のミスによる人災
東洋経済オンライン 10月10日(木)8時0分配信
■ 被害者をたらいまわしにする警察の体質
先日、痛ましい事件が発生して、まだ高校生である鈴木沙彩さんがストーカーに惨殺された。若干18歳にして命を落とした鈴木さんの冥福を、心よりお祈り申し上げたい。
それにしても果たして何回同じような事件が発生するのだろう。一定の確率で頭のおかしいストーカーは発生するのでその発生自体は防げないのだが、今回のように、“警察に相談したのに警察が動かずに結局殺される”という事件が果てしなく繰り返されるのは防げたはずだ。これはストーカーによる惨殺のみならず、警察の不作為による人災ともいえるだろう。
鈴木さんは惨殺される前も、担当教師を通じ、警察にストーカー被害を相談していたという。これに対し「三鷹署に相談すれば」などとたらいまわしにされていた様子がうかがい知れる。私もその昔、日本の警察に相談したことがあるのだが、「その事件の管轄エリアはうちじゃないので・・・」と、緊急を要する事件でもとにかく「管轄はあちら」と、何かとたらいまわしにして働きたがらなかった様子を、鮮明に覚えている。
最初に鈴木さんから相談を受けた杉並署は、三鷹署に回す以外に緊急措置をとれなかったのだろうか。杉並署は三鷹署に、鈴木さんの相談内容の取り次ぎすらしていなかったのは、今まで繰り返されてきたストーカー相談と初動ミスによる殺人事件の教訓が、何ら活かされていないことを示している。
■ 守ってもらえなかった高校生の無念
被害者の鈴木さんが惨殺された当日、相談された警官がやったことはなんとそのストーカーに電話をして、三回かけたがつながらず、なんと留守番電話に警察としてメッセージを残したという。こんな中途半端な介入では、犯人が激高して過激行為に走る可能性が十分考えられるが、それに対し警視庁生活安全総務課の山口寛峰課長は、記者団の取材に「警察の対応が十分だったかは、時間はかかるが事実確認をしていきたい」などと極めて呑気な説明をしている。
この鈴木さんのケースでは数日前に”殺す“という脅迫のメールが送られており、その時点で相談を受けた学校の教師も、教え子に迫る危険から守ってあげることはできなかったのだろうか。
この手の殺人事件が何度も何度も繰り返し報道されているだけに、あと何人いたいけな女性が犠牲になれば警察が本当に変わるのか、納税者として警察の働きに不安と怒りを感じている人は多いはずだ。
■ 効果に疑問の残る、警察の捜査マニュアル
 私は以前より、警察の仕事の仕方に疑問を感じることが少なくなかった。私はその昔、東京に住んでいたのだが不幸にして留守中に空き巣に入られ、ドアを破壊され部屋の中から金品を大量に盗まれたことがある。部屋に帰ってきてドアが壊されており、引き出しが全てあけられていて中身が散乱している部屋を見るのは大変ショックなのだが、驚いたのはその時相談した警察官の対応であった。
 まず彼らにゆっくりゆっくりと書類に色々書かされて、続いて部屋にやってきてなにやら丁寧に部屋の間取り図を書いている。ベッドの位置、お風呂の位置、キッチンの位置、テーブルの位置・・・。これをこれまた正確に書いているのだが、その間にきっと泥棒はどんどん遠くに逃げ去っていることであろう。
 その丁寧で完璧な、そして犯人逮捕に何の役にたつのか不明な私の部屋の見取り図を書くのに何時間か使ったあと、私が相談した警官は部屋の押し入れを空けて「ひでぇな、これは蛇頭(当時中国から来ている窃盗団としてマスコミに騒がれていた)の仕業だな」などと、根拠もなく適当なことをつぶやいていた。
 そしてあろうことか、変な白い粉を床にまいて、足跡をとって、「これは大柄の男性の足跡だな」とかいって、私のスリッパの痕跡を私に見せてきたときは、本当に日本の治安がどう守られているのか、心底不安になったものである。
■ 世界各国に共通する、警察の惰性的対応
 思えば私がスペインのバルセロナで窃盗に会った時に訪れた現地の警察も同じように無意味に長い書類に私の両親の本籍地や生年月日を書かせて待たせるだけ待たして、何カ所も書類にサインをさせて別に何もしてくれなかった覚えがある。
 つい先日もパリで携帯電話を盗まれた時にダメ元で警察にいったのだが、そこでも私の両親の出身地や誕生日など家族の歴史をひたすら書かされ、「犯人を捕まえたら連絡する」と、犯人ではなく私の家族の歴史だけ捜査されて憤慨したものだ。
 ここに浮かび上がるのは、警察は公務員でかつ競合相手もいないので、適切にモニタリングしないと官僚的で無意味な仕事に終始する、という構造的問題である。もちろん私は志高く市民の安全を守るために全力で危険を顧みずに勤務してくださっている警官の皆さんには敬意を抱いているが、そうは到底見えない警官が少なくないのも事実ではなかろうか。
■ 警察の組織的な問題点を教えてほしい
 警察に相談してはたらい回しにされ、初動捜査が遅れに遅れて、人が死んでも別に自分が厳しく罰せられるわけでもない警察行政の在り方を、今回も署長かなにかの謝罪会見だけですませてよいはずがない。
 また犯人を取り調べ“トラブルになった経緯を調べる”などという誰でも出来ることに時間を使い、税金で散々時間を使ったのちに、「警視庁捜査1課は交際をめぐり不満を募らせ、強い殺意を持って鈴木さんを刺したとみている」などのどうでもいい発表で、何か社会の治安を守れているのだろうか。
 きっと警察官の方も、今の警察の資質、内部の実態、組織でおかしいと思う点が多いことだろう。たとえば警官になる人の資質からして、銃を預かり市民の命を守る重要極まりない仕事にも関わらず、決して資質が厳選されているとはいえない、と嘆く声も少なくない
現役の方でも引退された方でも結構なので、ぜひこちらまで、警察官として見た警察行政の問題点についてお送りいただければ幸いだ。またかつてストーカー被害に限らず警察に相談された方で、その対応に疑問を持たれた方もこちらに体験談を送っていただければ、私が最後に全てまとめてその改善案を皆様と共有させていただく所存である。 繰り返されるストーカー殺人と警察の初動捜査の不備といった問題に抜本的なメスが入らなければならない。たとえ愉快犯が現れようと、警察は過剰なまでの対応をすべきだ。警察官は唯一、税金で市民から銃を託されているという責任の重みを噛みしめ、ストーカー犯罪から女性の命を守ってほしいものである。
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ムーギー・キム
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131010-00021377-toyo-bus_all&p=1