★アメリカがデフォルトすると?~リーマン・ショックの【23倍】の危機が世界を襲う!?
○メールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」
★アメリカがデフォルトすると?~リーマン・ショックの【23倍】
の危機が世界を襲う!?
全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!
北野です。
(●デフォルトの脅威に怯えるアメリカで何が???シリコンバレー在住日本人からのメールは、【おたよりコーナー】で!)
「アメリカがデフォルトするのではないか?」というニュースが報じられています。
世界中の人がびっくりしていますが、昔からのRPE読者の皆さんは驚いていないでしょう。
こういう問題が起こることは、大昔からわかっていたからです。
私が一冊目の著書「ボロボロになった覇権国家」を出したのは、05年です。
現在起こっている問題は、すでにこの本の中で予想されていました。
07年の「中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日」は、
「ユコス問題、旧ソ連圏グルジア、ウクライナ、キルギスの革命に激怒したプーチンが、
仮想敵NO2中国と組むことを選択した。
それによってアメリカの没落は加速する」という内容でした。
実際、その一年度にアメリカ発「100年に1度の経済危機」が起こりました。
08年9月はじめに出した「隷属国家日本の岐路」。
副題は、「今度は中国の天領になるのか?」でした。
内容は、「アメリカの没落は決定的。アメリカは沈み、中国は浮上する。
日本には親中政権が誕生する。
また、尖閣から日中対立が起こる」など。
この本を出した直後に「リーマンショック」が起こり、「タイミングが
すごすぎ!」といわれました。
そして、鳩山・小沢政権が誕生し、日本を中国に売り渡そうとした。
さらに、尖閣から対立が起こり、予測は現実化していったのです。
私は、一冊目の著者から一貫して、「アメリカ・デフォルト」「アメリカ財政危機」の可能性に言及してきました。
ちなみにオバマさんが08年11月大統領選に勝利した数日後、
「オバマはアメリカのゴルバチョフ?」
というメルマガを出しました。
これは、ソ連を崩壊させたゴルバチョフと、オバマさんが「そっくりである」ことを検証した号です。
今読み返しても面白いので、興味がある方は、ご一読ください。
↓
http://archive.mag2.com/0000012950/20081107172511000.html
さて、アメリカ財政危機についてですが、2012年4月の著書
「プーチン最後の聖戦」でも触れています。
そこには、「アメリカの決定的没落」と「その後起こること」が書かれています。
今回は、それを引用してみましょう。
▼アメリカ財政危機で何が起こるか?
【転載ここから▼】
<近い将来、ドル暴落とインフレがアメリカを襲う
プーチンと多極主義陣営の意図的「ドル攻撃」の結果、何が起こるのでしょうか?
そう、「世界的なドル離れ」です。
それは、ドルが「唯一の基軸通貨ではなくなる」ことを意味します。
正確にいうと、ドルはいくつかある基軸通貨の「一つ」にすぎなくなる。
結果、アメリカは普通の借金超大国となり、財政は破綻します。
いつそのときが来るかは誰にもわかりませんが、二〇一五~二〇二〇年が、アメリカにとってもっとも厳しい期間になると思います。
アメリカでは、何が起こるのでしょうか?
ごくごく普通の「財政破綻国家」と同じことが起こります。
つまり、「ドル暴落」と「インフレ」です。
どの程度ドルが下がるのか、どの程度のインフレになるのか?
これもはっきりはわかりません。
しかし私は、一ドル四〇円くらいが適正だろうと思います。
ドルの価値が半分になるということは、アメリカ国民にとって、輸
入品の値段が倍になることを意味しています。
つまり、最悪で年一〇〇%、実際には年数十%のインフレに苦しむことになるでしょう。
(ここから欧州の話なので中略)
さて、アメリカの財政が破綻すると、世界はどうなるのでしょうか?
これまで、世界経済は、アメリカの消費によって支えられてきました。
アメリカ財政が破綻し、ドルが暴落すれば、国内にインフレが起こる。
インフレが起これば、当然アメリカの消費は激減することでしょう。
すると、消費が減るのですから、世界の企業は「モノを作っても売れない」状況になります。
そこで、世界中の企業は生産を縮小する。
生産を縮小すると、人が余るので世界各国で大規模なリストラが行われるでしょう。
アメリカの消費が減り、世界中の企業が生産を縮小すると、企業の売り上げも利益も減少します。
リストラされた人々の所得は「失業手当」だけとなり、リストラを免れた人の所得も減らされることになります。
図にすると、以下のようになります。
アメリカの消費減少→ 世界の企業の生産減少→ 世界の人々の所得減少→ 世界の人々の消費減少→ 世界の企業の生産減少→ 世界の人々の所得減少→ 以下同じプロセスが繰り返される。
要するに、「〇八~〇九年の世界経済危機が、もっと大きな規模で起こる」と考えればわかりやすいでしょう。
では、ロシアはこの危機を乗り切ることができるのでしょうか?
今回の危機翌年の〇九年、GDPマイナス七・九%という数字がすべてを物語っています。
ロシアが、アメリカのさらなる没落に伴う危機を避けるのは不可能です。
ですから、プーチンはこれから、せっせと外貨保有高を増やし、危機の悲劇を和らげる準備をしていくのでしょう。
もちろん、ドルやユーロの暴落リスクを避けるために、いくつかの外貨を分散して持つことになります。
「アメリカがさらに没落するということは、米中覇権争奪戦に勝つのは中国なのでしょうか?」
二〇一〇年代、アメリカは沈み、中国は浮上していく。
そして、誰もが、「中国が次の覇権国家だ!」と思うようになる。
しかし、中国の栄華は案外あっさり終焉を迎えるでしょう。
なぜか?
既述のとおり、中国の国家ライフサイクルを見ると、二〇一〇年代は「成長期後半」にあたります。
それが正しいとすれば、二〇一八年末から二〇二〇年頃に、日本の「バブル崩壊」に相当するできごとが起こるでしょう。
その結果は?
よくて、「高度成長はもうムリ」。
最悪、「共産党一党独裁体制の崩壊」まで行く。
つまり、米中覇権争奪戦は、はっきりした勝者がなく、しばらく「覇権国家不在の時代」が続きます。>
【転載ここまで▲】
歴史を見ると「デフォルト」した国家は、山ほどあります。
たとえば、私が住むロシアは1998年にデフォルトしました。
そういった国では、必ず二つのことが起こっています。
一つは、デフォルトによってその国の信用が失われ、通貨が暴落すること。
今回は「ドル暴落」ということですね。
そうなると、「異次元緩和」も役にたたず、またもや「円高」ということになります。
一方、ドルがすべての通貨に対して下がるわけではなさそうです。
08年、09年の危機の時、「アメリカ発」だったにもかかわらず、ドルは上がり、
新興国通貨は暴落しました。
なぜこのようなことが起こるかというと、新興国からアメリカが資金を引き上げたから。
その時、現地通貨を売り(安)、ドルを買う(ドル高)わけです。
もう一つのポイントは、「通貨暴落」で「インフレが起こる」こと。
ドルが安くなれば、輸入品は高くなり、アメリカでインフレが進みます。
そして最後。
インフレはアメリカの消費を落ち込ませる。
その分、世界の生産は減り、所得は減り。
こうして、危機は全世界に波及していくのです。
私たちは、08~09年の危機で経験済みです。
しかし、実際アメリカがデフォルトすれば、規模はもっとでかい。
どのくらいでかい?
ブルームバーグ10月7日付はこう書いています。
<12兆ドル(約1165兆円)の国債発行残高はリーマンが2008年9月15に連邦破産法11条の適用を申請した際の負債残高(5170億ドル)の23倍。
債務上限の引き上げをめぐり政治家の対立が続く中、バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェット会長兼最高経営責任者(CEO)やゴールドマン・サックス・グループのロイド・ブランクファインCEOは、過度の与野党対立は破滅的だ
と警告している。>
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リーマンショックの23倍(!)の危機が世界を襲う!
▼アメリカの没落と復活まで
「プーチン最後の聖戦」では、「アメリカの復活」についても言及しています。
【転載ここから▼】
<エネルギー革命が起これば、アメリカ復活もでは、没落したアメリカは、その後どうなっていくのでしょうか?
ロシアの例などをみると、だいたい五~六年は沈み続けていくと思います。
しかしその後、再浮上しはじめることでしょう。
では、どういうプロセスでアメリカは復活するのでしょうか?
これも、ごくごく普通の国で起こるプロセスが繰り返されます。
ドルが暴落した。
このことは、世界市場においてアメリカ製品が「安くなること」を意味しています。
つまり、アメリカ製品に「競争力」が戻ってくるのです。
万年貿易赤字国だったアメリカが、貿易黒字国に転換することでしょう。
「安い労働力」を求めて外国に出ていたアメリカ企業は、どう動くでしょうか?
「おい、ドル安だから、アメリカで生産したほうが割安だぞ!」となるでしょう。
さらに、外国企業や投資家は、アメリカのことをどう見るでしょうか?
「おい、ドル安でアメリカの企業、土地なんかは割安だから、どんどん投資しよう!」となるでしょう。
こうして、アメリカは復活の道を歩み始めます。
そして、同国の再生を助けるのが、「オイルシェール」です。
アメリカの石油は、「二〇一六年には枯渇しはじめる」という話をしました。
しかし、「オイルシェール」の復活により、アメリカのエネルギー問題は解決されるでしょう。
オイルシェールとはなんでしょうか?
オイルシェールは、「油母頁岩(ゆぼけつがん)」と訳されます。
簡単にいえば、油を含んだ岩。
大切なのは、オイルシェールは、石油の代替エネルギーになりえる、ということ。
実をいうとオイルシェールは、大昔から使われてきました。
しかし、安価な石油の時代が訪れたことから、ほとんど忘れられた存在になっていたのです。
オイルシェールは現在でも、エストニア、中国、ブラジル、ドイツ、イスラエル、ロシアなどで利用されています。
エストニア、中国、イスラエル、ドイツでは発電にも使われています。
私はいったい何が言いたいのか?
原油価格が高いこと、技術が進歩してきたことで、オイルシェールが採算にあうようになってきた。
世界二位の石油エネルギー企業、ロイヤル・ダッチ・シェルは、「シェール油を抽出する技術により、一バレル三〇ドルから二〇ドルで生産できる」と発表しています。
そして、重要なのはオイルシェールの埋蔵量。
現在、世界の原油埋蔵量は一兆三一七〇億バレルといわれています。
これに対し、オイルシェールの世界全体の推定埋蔵量は、バレル換算で二兆八〇〇〇億~三兆三〇〇〇億バレル。
世界の原油埋蔵量の二~二・五倍はある。
しかも、アメリカの埋蔵量は、世界総埋蔵量の六〇%以上を占めるといわれています。
つまり、オイルシェールが石油の代替エネルギーになれば、アメリカのエネルギー問題は近々解決される。
そうなれば、アメリカは、ソ連崩壊後のロシアが石油・ガスで復活を果たしたように、オイルシェールで再生する可能性が高いのです。
アメリカはこれまで、「ドル体制」を守るため、「石油」を支配するために戦争を繰り返してきました。
しかし、今から一〇年後、すでに「ドル体制」は崩壊し、自国内には石油に替わる資源がありあまっている、ということになる。
そう、アメリカには、もはや戦争する理由がなくなるのです。
では、復活したアメリカは、再び世界の超大国を目指すのでしょうか?
そうはならないでしょう。
アメリカは、没落したイギリス、あるいはロシアがそうであるように、「地域の大国」にはなれます。
しかし、もはや「世界の覇権国家」を狙えるような力は戻ってきません。
こうして、欧米の時代は終焉を迎え、アジアの時代がはじまるのです。>
【転載ここまで▲】
この話も特に新しくありません。
デフォルトしたすべての国で起こることです。(ユーロ圏の場合、事情が違いますが・・・。)
つまり、デフォルトによって、信用がなくなり、通貨が暴落する。
通貨が暴落すると、その国の製品が安くなり、競争力が増す。
また、企業にとって魅力的になり投資が増える。
通貨暴落 → 通貨安による競争力復活 → 再浮上
この一連のプロセス。
ソ連崩壊後のロシアを見ると、だいたい5~6年ぐらいかかるだろうと思うのです。
また、転載の最後に、「欧米の時代が終わり、アジアの時代がはじまる」とあります。
しかし、実際に「アジアの時代」になる前に、一つの大きなイベントを通過しなければいけません。
そう、「中国の民主化」です。
▼2013年10月に起こるとは限らないが
今回アメリカで起こっている危機は、「ニッチもサッチもいかなくなって」というのとは違います。
アメリカは、「借金の上限」を法律で決めます。
しょっちゅう上限を超えてしまうので、その都度「上限をあげる法律」を通さなければならない。
ところが、「ねじれ国会」になっているため、その法律が成立しないのです。
(下院は共和党多数、上院は民主党多数)
ですから、議会が「連邦政府はもっと借金してもいいよ」と決めればそれで済む話。
ただ、2013年10月の危機を乗り切ったとしても、「永遠にこの状態をつづけられる」と思っている人は誰もいません。
やはり、「毎年100兆円借金が増えていく状態」は、いずれ調整されることになるでしょう。
結局、「アメリカ発の巨大危機」は、「起こるか起こらないか?」という問題ではなく、「いつ起こるか?」の問題なのです。
ちなみに今回の話は、「プーチン最後の聖戦」からの転載でした
そもそもなんでアメリカは、こんな悲惨な状態になっちゃったのでしょうか?
知りたい方は、↓をご一読ください。
全部わかります。
↓
「もし、プーチンが日本の首相だったら?」
↓
【4刷決まりました!】
【アマゾン(社会・政治部門)1位!】
●「プーチン最後の聖戦」 (集英社インターナショナル)
(詳細は→ http://tinyurl.com/8y5mya3 )
↑
<プーチン本はいろいろ出ているが、これが独特で面白い。>
(立花隆 「週刊文春」2012年7月12日号)
↓おたよりコーナーへ
★シリコンバレー在住Aさまからおたより
拝復、北野様、
多少なりともお役に立てれば幸いです。
ご質問の財政問題、こちらではGovernment shutdownと言われていますが、密接に関連しているとは言え、二つの個別の問題があります。
(1) 10月1日開始の2014連邦政府会計年度の予算が執行できないこと(財政執行の問題)
(2) 10月17日に行政府に許された債務上限に達すると予想され、こ
れを過ぎると連邦政府の手元に現金が無くなるとされていること
(資金繰り、Cash flowの問題)
株式市場を中心とした経済専門家筋は、(2)の資金繰りの問題を重視しています。
10月17日前後に手元資金が無くなり次第、連邦政府は支払い不能、Default状態に至るからです。
(1)については、主に日常生活に影響を与えるようですが、例えば、せっかく上向きかけた住宅売買で、役所がしまっているので、住宅ローンの政府債務保証が受けられず、買えるはずの家が買えない、などの事例が報道され、個人消費に依存した、やっとこさ上向きかけた米国経済に悪影響が懸念されます。
小生の仕事では、ワシントン近傍で予定されていた政府機関が主催の会合が突然先週金曜日にキャンセルされました。
航空会社は旅程変更料やキャンセル料でもうけたかもしれませんが、ホテルなどは一斉のキャンセルで、閑古鳥が鳴いているかもしれません。
原因は、いわゆるねじれ議会、野党共和党が多数を占める下院にあります。
共和党が予算の執行など国全体に関わる案件を人質にして、医療保険改革実施を一年おくらせろ、という主張をしており、行政府は当然そんな話は筋違いで受け入れられないというにらみ合いが続いて
います。
ただ、このような主張は共和党内のTea Partyという、一部保守派の主張に足を引っ張られているという報道もあります。
何かのお役に立てば幸いです。
RPEジャーナル
北野幸伯
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発行者 北野 幸伯
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