ミツバチ「消失」 | 日本のお姉さん

ミツバチ「消失」

ミツバチ「消失」でなぜ農作物が危ないの?/木暮太一のやさしい経済ニュース解説
THE PAGE 9月9日(月)11時28分配信
[写真] ミツバチが世界各地で姿を消している/photo by Bob Peterson
ゲリラ豪雨に竜巻。記録的な猛暑など、地球環境の変化を肌で実感するほどになっています。そんな中、虫にも変化が出ています。
かつて2007年から2008年にかけて米国では授粉用に飼育されているミツバチの3割以上が「姿を消した」。そして日本でも同様の現象が起きています。
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被害額は2億8千万円以上
愛知県では昨年、働きバチが巣から消え、2~3カ月後には全滅する現象が確認されました。日本養蜂はちみつ協会によると、こうした現象は昨年、国内の9830のミツバチの群れで起きており、被害額は2億8千万円を超すとのことです。
働きバチが、幼虫や女王バチを残したまま“家出”をし、そのまま戻らなくなる「蜂群崩壊症候群」は1990年代に入ってから世界各地で頻発し、2007年までに、じつに北半球のミツバチの4分の1が消失したとも言われています。
原因として、最近疑われているのが1990年代から世界で急速に普及した農薬(ネオニコチノイド)です。効力が高く、効果が長持ちするため国内では農業の現場だけでなく家庭でも殺虫剤として多用されている成分だそうです。
農薬が散布された畑で蜜を集め、巣に戻る。それをみんなで食べているため、被害が「一族」に広がっているということです。
―――「農薬かぁ……」
ただし、まだ科学的には、これが原因であるという立証はされていません。農薬が原因であれば、以前から(むしろ以前のほうが)大きい被害が出ていておかしくありませんね。また、ハチミツの中から農薬が検出されたという事例はないようです。
とにかく「ミツバチが忽然といなくなった」のは事実で、非常に不気味な現象です。
―――「とにかく、このままではハチミツが取れなくなっちゃう!」
そうですね。1ポンド(453g)のハチミツができるのに、ミツバチは200万回、花に「取りに」行っているようです。距離にして8万キロという調査が出ています。途方も無い作業ですね。そして、ミツバチの数が減れば、当然ハチミツ生産量が減ります。
これも非常に大きな問題ですが、さらに、もっと深刻な影響が起きそうなのです。
100種類近くの農作物が危機に
じつは、世界の農産物の1/3は養蜂家が育てたミツバチに授粉を頼っているのです。そのため専門家からは、「100種類近くの農作物が危機に瀕している」と人間の生活への“実害”を懸念する声も出ています。
―――「そんなにミツバチの影響が大きいの?」
作物によりますが、中にはほとんどの生産をミツバチに頼っているものもあります。
受粉作業の大部分をミツバチに依存している農作物としては、りんごは(90%)、アスパラ(90%)などがあります。またアーモンドにいたっては100%をミツバチの“作業”に依存しているのです。つまり、ミツバチがいなくなったら、アーモンドは生産できない(少なくとも、別の形態で受粉作業を行わなければ育たない)ということになります。
その他にもナシ、アプリコット、メロン、ブロッコリ、ニンニク、タマネギ、ピーマン、トマト、コーヒーも、ハチの受粉に依存しています。これほど多くの農作物がハチを媒介にして育っているのです。
多くの人は実感しませんが、ミツバチから人間は非常に大きな恩恵を受けています。ミツバチがいなくなったとしたら、同じ作業をわたしたち人間が行わなければいけません。もしくは、ミツバチと同等の労働ができるロボットを発明しなければいけません。
これらが非常に困難で、コストが高く付くことは容易に想像できるでしょう。となれば、世界の食料生産量は減り、価格も高騰するでしょう。それは防がなければいけません。
原因究明を急ぐとともに、わたしたちも環境保全により強く意識を向けなければいけません。
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木暮 太一(こぐれ・たいち)
経済ジャーナリスト、(社)教育コミュニケーション協会代表理事。相手の目線に立った伝え方が、「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・大学などで多くの講演活動を行っている。『今までで一番やさしい経済の教科書』、『カイジ「命より重い!」お金の話』など著書36冊、累計80万部。最新刊は『伝え方の教科書』。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130909-00010001-wordleaf-bus_all&p=1