中国漁船、東シナ海食い尽くす 横取り乱獲「泣き寝入りしかない」2013/08/05 | 日本のお姉さん

中国漁船、東シナ海食い尽くす 横取り乱獲「泣き寝入りしかない」2013/08/05

中国漁船、東シナ海食い尽くす 横取り乱獲「泣き寝入りしかない」
配信元:産経新聞2013/08/05 11:36更新
【新帝国時代】第5部 膨張する欲望(4)―(1)
五島列島・奈良尾港(長崎県新上五島町)から出港した遠洋巻き網漁船「第28野村丸」(135トン)の魚影探知機が大きな魚群を捉えた。
「よし、このあたりだ。集魚灯をつけろ!」
昨秋、漁労長の吉本洋一郎(66)がこう命ずると、5隻の船団は巻き網漁の陣形を整え、集魚灯が漆黒の海面を照らした。
「これは大漁だ…」
吉本がそう思った直後、レーダーに別の船団が近づいてくるのが映った。
「虎網の連中だ!」
まもなく400トン以上もある大型漁船が野村丸の数メートル先にまで接近してきた。ぶつかればこちらの損害も大きい。吉本はせっかく見つけた漁場をあきらめざるを得なかった。中国漁船は魚群を自力で探そうとはしない。漁場をよく知る日本漁船が集魚灯をつけたのを見計らって横取りするのが、常套手段なのだ。
しかも「虎網漁」と呼ばれる新手の漁法を編み出した。400~500トンの大型漁船が強力な集魚灯で魚群を集め、長さ1キロ以上の袋状の大型網に魚群を追い込んでホースで根こそぎ吸い上げる。一回の漁に要する時間はわずか1時間余り。乱暴なやり方なので魚は傷むが、巻き網漁の数分の1の人手で数倍の漁獲量を見込める。網を広げた時に袋状の部分がトラの顔のように見えることからその名が付いたという。
野村丸が被害を受けたのは1度や2度ではない。吉本は憤りを隠さない。
「とにかくむちゃくちゃさ。他の船が漁を始めたら接近しないという漁師の常識がまったく通用しないわけよ。『どうせ日本の漁船は逃げるだろう』と図に乗ってるんじゃろ。ケンカしたら国際問題になるし、船が損傷したら大変なんで悔しいけど泣き寝入りしかないわけよ…」
東シナ海でのサバ・アジの良好な漁場は、日中両国の排他的経済水域(EEZ)が重なり合う「日中中間水域」にある。日中漁業協定により、両国の漁船が自由に出入りできることになっており、どんな乱暴な操業をしようと日本側が一方的に摘発できない。
ここで中国漁船が虎網漁を始めたのは4、5年前から。年々その数は増え、昨年1年間だけで、水産庁は約280隻の虎網漁船を確認した。その多くが福建省や浙江省を拠点にしているとみられる。
これに対して、この海域を漁場とする日本の漁船はわずか10船団50隻余り。しかも日本は過去の乱獲への反省から、巻き網漁船の集魚灯の強さや網目の大きさ、漁獲可能量などを厳しく規制している。
中国にはそんな規制はない。というより、中国当局は虎網漁船の操業実態をきちんと把握していないとみられている虎網の網目は小さく稚魚や小魚まで吸い取るため、東シナ海の水産資源はすさまじい勢いで枯渇しつつある。
虎網漁船がさほどいなかった平成21年の長崎県のサバの漁獲量は9万1千トンだったが、24年は6万8千トンに激減した。アジの漁獲量も21年の5万2千トンから24年は4万6千トンに減った。
15歳から船に乗り、東シナ海の漁場を知り尽くしている吉本は、魚群がかつてないほど少なくなったと感じている。
「虎網のせいとしか考えられん。連中には子や孫の代まで資源を守るという考えはないので稚魚も関係なく捕っていく。今もうかればいいんじゃろ。彼らが集まる海にはもう行かんよ…」 (敬称略)

五島列島に中国漁船の大群 「陸から十数メートル…すごい威圧感」
配信元:2013/08/05 12:34更新
【新帝国時代】第5部 膨張する欲望(4)―(2)
東シナ海の日中中間水域で操業する遠洋漁業者が迷惑する中国漁船。昨年7月には五島列島の住民にも脅威を感じさせる出来事が起きた。
東シナ海に台風が接近した7月18日未明、操業中の虎網漁船や底引き漁船が、五島市の玉之浦湾に避難してきた。事前連絡があれば緊急避難を受け入れることは、日中漁業協定で取り決められているので、これ自体は問題ない。住民を驚かせたのは、船数が106隻に達したことだ。
五島市玉之浦地区は人口約1500人の農漁村。その静かな入り江に整然と並んだ船は、五島沖にはどれだけ多くの中国漁船がいるのか、住民に実感させるのに十分な数だった。
この後も8月下旬までに3回にわたり中国漁船が緊急避難し、4回で計268隻に達した。今年はまだ1回も来ていないが、住民らには忘れられない光景となっている。
船の大きさも衝撃的だった。過去にも中国漁船が避難してきたことはあるが、30~50トン級だったという。五島市役所玉之浦支所の男性職員は「乗組員が陸に上がってくることはないとはいえ、陸から十数メートル先に大型船がずらりと並んだ様子はすごい威圧感でした」と語る。
入り江の目の前で食料品店を経営する登本タヤ子(81)も驚きを超えて脅えさえ感じたという。
「昔の中国漁船は小さなおんぼろ船だったのに、きれいで大きくてびっくりした。しかも一晩中ドンドコとエンジン音が聞こえ、窓からは船の明かりも見えて。なんだか恐ろしくて誰か店に訪ねてきても扉を開けんかったよ…」
虎網漁船急増の背景には、経済成長に伴う中国での魚介類の需要増がある。
中国国内での魚介類消費量は2009年に4236万トンに達した。1989年は1254万トンだったので3倍以上に増えている。中国沿岸部では乱獲のために漁獲量が減ってしまい東シナ海の日中中間水域に漁場を移してきたとみられる。
日本側も指をくわえて見ているわけではない。水産庁は漁業取締船12隻を東シナ海に投入し、監視活動を続けている。大型取締船「白鴎丸」(499トン)は2月20日、五島列島・女島沖155キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内で操業している虎網漁船を発見。逃げ回る船を2時間以上追跡した末、漁業主権法違反容疑で摘発した。
調べに対し、船長(34)は「虎網漁はもうかるという話を聞いて昨年7月、虎網漁船を購入した。中間水域では思ったほど魚が捕れなかったので、日本側に入ればもっと捕れると思った」と供述した。
摘発できるのは日本のEEZ内だけ。日中中間水域での操業には手を出せない。日本政府は昨年4月、日中漁業共同委員会で虎網漁による乱獲について問題提起した。
中国農業省漁業局は昨年夏、虎網漁船の新造を認めない通達を出したというが、どこまで実効性があるかは疑わしい。人口13億人の胃袋を満たすために中国漁船は今後、東シナ海だけでなく太平洋にまで活動範囲を広げる公算は大きい。
一方、日本の漁業従事者は減るばかり。五島列島・奈良尾港は30年前まで20船団100隻以上が所属する全国屈指の遠洋巻き網漁業基地だったが、今は野村丸など2船団10隻に減った。野村丸を運航する「まるの漁業」の社長、野村俊郎(63)はこう嘆いた。
「私たちは日本の安全保障上も重要な役割があると自負してきましたが、トラブルを抱えてまで漁は続けられない。中国漁船の横暴を何とかしないと、そのうち日本漁船はいなくなってしまいます。それでいいんですか?」 (敬称略)

韓国のイシモチ漁師の悲鳴 「あっという間に海が奪われた」
配信元:産経新聞
2013/08/05 16:58更新
【新帝国時代】第5部 膨張する欲望(4)-(3)
「西(黄)海はもう、韓国の海じゃない。中国の海だ」
韓国南西部全羅南道(チョルラナムド)の漁港、霊光(ヨングァン)のイシモチ漁師、姜聲範(カン・ソンボム)は日焼けした顔をゆがめた。中学卒業後にイシモチ漁師になって38年。3隻の漁船を運営するベテラン漁師は、中国漁船の傍若無人ぶりを知り尽くす。
「中国漁船はまず、韓国の海に侵入し、いまでは領海でわが物顔で違法操業を繰り返している。やつらは次に必ず日本の海に行く。そんなに時間はない。私らの海が奪われたのもあっという間だった」
霊光は温暖な気候と豊富な海産物でグルメをうならせる漁業の町。なかでも「世界一高級でうまい干物」と韓国が誇るのがイシモチを塩漬けにした干物のクルビだ。10尾70万ウォン(約6万円)の高額品もある。だが、そのイシモチが中国漁船の違法操業によって枯渇の危機に直面している。
中韓漁業協定により、韓国の排他的経済水域(EEZ)で操業が許される中国漁船の漁獲量は6万トンに制限されているが、中国の漁民はルールを無視し操業を続けているという。
韓国の農林省によると、01年の中韓漁業協定で当初、中国に許可した漁獲割り当ては漁船2796隻。乱獲の懸念から、12年には1650隻に削減した。
だが、漁業行政の関係者の話では、実際の違法操業漁船は9千隻を超えて1万隻に迫る。韓国漁船は漁場はおろか領海内の安全な通行さえままならない状況になっているという。取り締まり件数も07年の70件から毎年増加し、11年には171件に達している。
中国側の違法操業について、韓国の海洋水産省に取材を試みたが「この問題は韓国と中国の問題であり、なぜ第三者である日本(のメディア)が取材しなければならないのか疑問だ。漁業問題は(6月下旬の)韓中首脳会談でも扱われた微妙な問題だ」(同省指導交渉課)と、拒否された。
中韓両政府は7月25日、「第3回漁業問題協力会議」を開いたが、操業秩序の改善や不法操業の取り締まりなどについて、協議を継続していくことにとどまった。韓国政府の対中漁業政策には国内からも不満の声が強い。ある韓国人漁民はこう批判した。
「政府は中国に海を売り渡したのではないか」 (敬称略)
日本が築いた農業王国ブラジル… 供給先は「爆食」中国に
配信元:産経新聞
2013/08/06 10:37更新
【新帝国時代】第5部 膨張する欲望(5)-(1)
畜産の飼料だけでなく、食用油、食品の原料に広く使われるコーンスターチなど暮らしを支える商品の生産に影響しかねない問題が今年、表面化した。原因は世界有数の穀倉地帯、ブラジルで起きた異常事態だ。
同国南部のサントス港。内陸から港に至る幹線道路は、穀物を満載にした大型トラックが100キロもの渋滞を作り、港の沖合では、おびただしい数の穀物運搬船が待たされていた。
穀物の増産で90年代後半から飛躍的に輸出を伸ばし、農業大国の地位に躍り出たブラジル。その意外な弱点をあぶり出したのが、昨年の米国の穀物不作だった。調達先をブラジルに移す動きが広がったが、インフラの整備が追い付かず、主要な穀物輸出港が大混乱に陥ったのだ。
「普通なら1週間程度で穀物を積み込むのを40日も待たされた」(関係者)。日本の商社は早めに穀物を確保し切り抜けたが、「予想以上に船が滞り危うく供給が途切れそうになった」と商社関係者は明かす。
混乱の背景には「爆食」中国の存在がある。穀物運搬船の多くが向かう先は中国で、6万トンを運べるパナマックス級(全長約230メートル)なら、大豆だけで年間400隻ほどが太平洋を渡る計算だ。
「中国は大豆の自給をあきらめた。今や世界各国の総輸入量の6割以上を中国一国が占める。安定供給基地としてブラジルに目をつけ、ブラジルも中国の需要に積極的に対応してきた」
資源・食糧問題研究所代表の柴田明夫(62)はこう語る。勢いを増す爆食の受け皿国はブラジルしかなく、その存在がなければ中国の食は破綻していた。そして、ブラジルを農業大国に押し上げたのは日本の国際協力だった。
× × ×
栄養分が抜け落ちた強酸性の「出がらし土壌」が広がり、見捨てられていたブラジルの熱帯サバンナ「セラード」。日本の国土の5・5倍にも及ぶ不毛の大地は1970年代以降の革新的なプロジェクトで豊潤な大地へと変貌を遂げた。
「ブラジル緑の革命」などと称賛されるセラード農業開発は、日本政府と民間が資金面や技術面で支えた政府開発援助(ODA)の代表的な事業だ。セラードに集団入植した日系人の血のにじむ労苦があった。20年間も事業に携わり、「セラードの生き字引」と呼ばれる国際協力機構(JICA)客員専門員、本郷豊(65)は強調する。
「セラード開発には人々の努力はもちろん技術的、制度的イノベーションがあり、日系人の優秀な農家がいた。制度がなければ新しく作ってやろうという気概を持つ人たちも続々と出てきた。だからこそこれだけのことが成し遂げられた」
協力事業は2001年に終了した。ベテラン商社マンは「先人が苦労を重ね、がんばった歴史が日本人への信頼となってわれわれの仕事のなかにも生きてきているのを感じる」と話す。
ただ、別の商社マンは日本の存在感が急速に薄れつつあると感じる。その間隙に入り込もうとするのが中国だ。(敬称略)

“食糧安保”中国、日本に挑戦状 ブラジル港湾投資へ虎視眈々…
配信元:産経新聞
2013/08/06 16:11更新
【新帝国時代】第5部 膨張する欲望(5)-(2)
畜産の飼料だけでなく、食用油、食品の原料に広く使われるコーンスターチなど暮らしを支える商品の生産に影響しかねない問題が今年、表面化した。原因は世界有数の穀倉地帯、ブラジルで起きた異常事態だ。
同国南東部のサントス港。内陸から港に至る幹線道路は、穀物を満載にした大型トラックが100キロもの渋滞を作り、港の沖合では、おびただしい数の穀物運搬船が待たされていた。
穀物の増産で1990年代後半から飛躍的に輸出を伸ばし、農業大国の地位に躍り出たブラジル。その意外な弱点をあぶり出したのが、昨年の米国の穀物不作だった。調達先をブラジルに移す動きが広がったが、インフラの整備が追い付かず、主要な穀物輸出港が大混乱に陥ったのだ。
◆混乱の背景に中国
「普通なら1週間程度で穀物を積み込むのを40日も待たされた」(関係者)。日本の商社は早めに穀物を確保し切り抜けたが、「予想以上に船が滞り危うく供給が途切れそうになった」と商社関係者は明かす。
混乱の背景には「爆食」中国の存在がある。穀物運搬船の多くが向かう先は中国で、6万トンを運べるパナマックス級(全長約230メートル)なら、大豆だけで年間400隻ほどが太平洋を渡る計算だ。
「中国は大豆の自給をあきらめた。今や世界各国の総輸入量の6割以上を中国一国が占める。安定供給基地としてブラジルに目をつけ、ブラジルも中国の需要に積極的に対応してきた」
資源・食糧問題研究所代表の柴田明夫(62)はこう語る。勢いを増す爆食の受け皿国はブラジルしかなく、その存在がなければ中国の食は破綻していた。そしてブラジルを農業大国に押し上げたのは日本だった。
◆日本が育てた大地
栄養分が抜け落ちた強酸性の「出がらし土壌」が広がり、見捨てられていたブラジルの熱帯サバンナ「セラード」。日本の国土の5・5倍にも及ぶ不毛の大地は70年代以降の革新的なプロジェクトで豊潤な大地へと変貌を遂げた。
「ブラジル緑の革命」などと称賛されるセラード農業開発は、日本政府と民間が資金面や技術面で支えた政府開発援助(ODA)の代表的な事業だ。セラードに集団入植した日系人の血のにじむ労苦もあった。20年間も事業に携わり、「セラードの生き字引」と呼ばれる国際協力機構(JICA)客員専門員、本郷豊(65)は強調する。
「セラード開発には人々の努力はもちろん技術的、制度的イノベーションがあり、日系人の優秀な農家がいた。制度がなければ新しく作ってやろうという気概を持つ人たちも続々と出てきた。だからこそこれだけのことが成し遂げられた」
協力事業は2001年に終了した。ベテラン商社マンは「先人が苦労を重ね、がんばった歴史が日本人への信頼となってわれわれの仕事のなかにも生きているのを感じる」と話す。
ただ、別の商社マンは日本の存在感が急速に薄れつつあると感じる。その間隙(かんげき)に入り込もうとするのが中国だ。
■“食糧安保”日本に挑戦状
「日本にダメージを与えられることはすべてやる。中国お得意の窓口規制じゃないのか…」
こんな疑念が穀物業界に広がっていた。
総合商社の丸紅が昨年5月、米国穀物集荷3位のガビロンを約2800億円で買収すると発表し、昨年9月に終えるはずだった買収手続きが7月上旬、ようやく完了した。冒頭の疑念は、自国の市場に影響が及ぶ合併などを審査する中国独禁当局が、尖閣諸島(沖縄県石垣市)国有化への報復として審査を遅らせた、という周囲の見方だ。
◆大豆にこだわる理由
「中国で独禁法の申請案件が増え、独禁当局の人手が不足していると考えている。当局から出された買収の条件も、2社の間にファイアウオール(仕切り)を作りなさいと言っているだけで、マイナスにはならないと会社として判断した」
丸紅穀物第一部副部長、福田幸司(41)はそうした見方を否定した。年間の穀物取扱高の見通しが一気に5500万トンを超え、日本勢初の穀物メジャー入りが決まった今回の買収。独禁当局が突きつけた「中国向け大豆の輸出・販売業務は2社が独立して行う」との条件は、大豆輸入市場をコントロールされるのを嫌ったため、との受け止め方も根強い。
中国が大豆にこだわるのはなぜか。政府が恐れるのは国民が不満を募らせやすい生活必需品の高騰だ。その一つが食用油であり、原料になるのが大豆なのだ。
「中国政府は、大豆の値段がどれだけ上がっても、食用油の値上げをしてはいけないという意識が強い。大豆価格の上昇で経営が苦しい中国内の搾油メーカーが値上げしようと申請しても、難癖をつけて止めさせようとする」。業界関係者はこう話す。
商社にとって中国はパートナーでもある。日本の大豆の輸入量は年間200万トン台なのに対し、中国は6千万トン以上に拡大。巨大な需要を取り込み、穀物の取扱量を増やせば、売り手への交渉力(バイイングパワー)が増すためだ。ただ、中国企業が本格的な商社機能を持つようになり、ブラジルで拠点を構えるとなれば話は別。「うかうかすると買うものがなくなってしまう」と商社幹部が言うように、脅威に転じるのだ。
「ブラジルの港湾の投資に中国企業が興味を示している情報も聞く。間違いなくサプライチェーンの上流を狙おうとしている」。商社の中堅幹部は断言する。
アフリカでは中国が農地買収を加速して国際問題に発展。ブラジルでも大規模な農地争奪の動きをみせたため、警戒したブラジルは近年、農地の外資規制に踏み切った。露骨な手法は取れないが、穀物トレーダーの引き抜き、搾油メーカーの現地事務所設置、政府や民間の使節団派遣などで進出の機会をうかがう。
こうした動きに先手を打つため、日本の食糧調達を担う商社は、ブラジルや米国などの集荷会社の買収の動きを活発化させる。
「物流」の投資を進める丸紅はガビロン買収に先立ち、ブラジルで港湾会社を完全子会社化。主体的にコントロールできる穀物輸出港を確保した。三菱商事はブラジルの大手集荷会社を買収することを決め、米国でも集荷会社を買収した。
三井物産はブラジルの穀物会社を傘下に収めた。東京都の半分の面積にあたる約12万ヘクタールで商社初の穀物の直接生産に乗り出し、調達力を高める。同社マルチグレイン推進室長の角(道かくどう)高明(49)は「農業生産は、天候リスクもあって無謀だと言われることもあったが、日本の食糧安定供給の使命もあり、挑戦を続ける」と話した。
◆経済力の維持が鍵
中国は大豆に続きトウモロコシも2009年に輸入に転じ、その量は早くも約500万トンに膨張。約1500万トンを輸入する日本を近い将来追い抜き、最大輸入国になるのは確実だ。世界的に増産が追い付かなければ、本格的な穀物争奪戦に突入する。
食は国家を支える根幹だ。穀物調達の最前線にいる商社マンはこう話した。
世界は、金を持っているところだけが食糧を買えるという段階にすでに入った。日本の食糧安全保障を強くするには、買う力を強くするという一点に尽きる。中国の爆食の影響をどれだけ少なくできるかは、日本の経済力を維持拡大できるかにかかっている」(敬称略)=第5部おわり
この企画は有元隆志、上原すみ子、岡部伸、加藤達也、河崎真澄、蕎麦谷里志、田北真樹子、田中一世、徳永潔、松浦肇、矢板明夫が担当しました。