欧米紙は「安倍首相への信任」と個性を前面に出して報じている
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成25(2013)年7月22日(月曜日)
通巻第3987号
「自民圧勝、ねじれ解消」と日本のメディアは書いているが
欧米紙は「安倍首相への信任」と個性を前面に出して報じている
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英紙フィナンシャルタイムズは「安倍信任によって国家主義的なアジェンダが出てくるだろう」と警戒的な報道ぶり。
米紙のリベラル代表ニューヨークタイムズは「過去十年でもっとも変革的体質をもった安倍首相が勝利」と書いた。
同ワシントンポストは「世界第三位の経済力の回復をめざした安倍の野心が信任された」
米国の保守層を代弁するウォールストリートジャーナルは「経済政策で安倍の自民党が勝利したが、日本経済の先行きは不透明だ」と分析した。
こうして彼我の差が報道姿勢にでた。つまり、「自民圧勝、ねじれ解消」と日本のメディアは書いているが、欧米紙は「安倍首相への信任」と個性を前面に出して報じている
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◆書評 ◇しょひょう ▼ブックレビュー☆
キリシタン伴天連の亡霊が二百年後に蘇って江戸を騒がせた
ご存じ頭山の金さん、その協力者らが警察のシステムの不備を補って
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谺雄一郎『醇堂影御用『道を尋ねた女』(小学館文庫)
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娯楽小説だが、時代考証がしっかりしていて、いきなりタイム・カプセルで江戸後期に読者は誘われる。
シリーズ第三弾、ますます脂がのりきった作者、この作品では歴史の闇に潜む邪教、淫祠密教の強盗集団に挑む。まるでテレビの時代劇のように多彩な登場人物がそれぞれの彩りを持ち、その配役を適宜こなしながら、大立ち回りにドンデン返し、ベテランの時代小説作家の面目躍如というところか。
波瀾万丈の筋立てと早い筆運びの妙味は、作品に当たってもらうほうがいい。
物語はその時点から二百年前の「天草四郎の乱」(島原の乱ともいう)で滅ぼされた反逆者らの怨念、執念が怪しげな薬による妄執に化け、まるで怨霊のような集団が徳川政権にテロルの戦争を挑むという、現代的な事実が折り重なるように仕組まれていて、影御用をつとめる主人公らと忍びの戦争が繰り返される。『影御用』はご存じ桜吹雪の遠山の金さんの捜査を影で協力する御家人兼忍者と侠客らの共同作戦、大江戸大捜査網である。
はじまりは貴種流離譚。大阪城落城で死んだはずの秀頼が、じつは西国に落ち延び薩摩に匿われ、その係累が天草四郎となった。表面的に、あの内乱は耶蘇教を信じる信徒らの反乱ということになっているが、いくつかの謎が残っている。
第一に耶蘇教信者だけなら、戦争は素人のはず。ところが小西浪人と食いっぱぐれ武士が大量に加わって江戸幕府軍をきりきり舞いさせている。
第二に軍資金が意外の豊富だったうえ、弾薬武器も潤沢だったこと。つまり表向きのキリシタン伴天連の反乱と定義してしまうのは正確ではなく、戦争のプロが「第三の大阪の陣」をねらい、あわよくば幕府倒壊を企図していた。だから軍資金は豊臣の隠し財宝であり、幕府の致命的な危機になると認識した江戸幕府は、最初の司令官板倉戦死のあと、松平伊豆守が鎮圧責任者として派遣され、九州の諸大名を総動員したばかりか、最後はオランダ船に頼んで、その火力で島原城を攻撃し、殲滅したのである。
こうして歴史の背景がしっかりと書き込まれているあたり、並みの時代小説群とは趣が歴然と異なっている。
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 939】
――この道は、いつか来た道
「産経新聞」(7月18日)の「共産党内分裂の兆し」(「石平のChina Watch」)
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!)6月下旬の政治局会議での習近平総書記の指示は、現在の党中央内部に思想的・行動的に亀裂が生じていることを物語る。?「国内の一部改革志向の知識人」の提唱する「憲政」=「憲法に基づく国づくり」は、憲法を党の上に置き、憲法によって共産党独裁を制限することを目指す。「それは今や知識人階層のコンセンサスになりつつある」。?自らを掣肘する如何なる権威・権力の存在も認めない共産党は、系列メディアを動員して憲政は党転覆を企図するとのキャンペーンを張る。だが、党上層の一部に憲政に同調する動きがみられる。?憲政をめぐっての党内対立は、いずれ「体制そのものの崩壊につながるのではないか」――と論旨を整理して、なにやら清朝末期の変法自疆(強)運動が想起された。
1840年に勃発したアヘン戦争は単に清朝がイギリスに破れただけない。“絶対無謬の存在”である天の意思を地上に実現する使命を持つゆえに、天子=皇帝が地上の一切を支配することは当然であり、皇帝が地上のすべての秩序の頂点に立つことは天によって定められた絶対の真理・摂理である。
天の意思を体した皇帝こそが地上の一切に優先する――という清朝が拠って立ってきた中華帝国の秩序・支配の正統理念をも粉砕してしまったのだ。
ここで天を共産党が掲げる人民に、皇帝を党中央に置き換えてみたらどうだろう。絶対の存在である人民の意思を体現しているがゆえに、党中央(具体的には総書記)が中国世界の一切を差配し地上のすべてに優先する。
こう考えれば、中華帝国の支配論理と共産党の主張が重なってくるだろう。ならば共産党は中華王朝の焼き直し、亜流といえそうだ。
そこで変法自疆運動に戻る。
アヘン戦争敗北の原因を経済的貧困と軍事的脆弱性に求めた清朝官僚や知識人は、清朝の近代化を達成し富強を実現すれば、外国から侮られなることはなく、侵略は防げ、中華帝国の再興は可能と考えた。そこで19世紀半ば以降、さまざまな野心的近代化政策が推し進められたのだが、ことごとくが失敗に終わる。
かくて19世紀末、少壮改革派は憲法を定め、変法(議会を設立し、皇帝を絶対とする旧来からの中華帝国式統治制度を抜本的に改革)することで近代国家を建設し、自疆(清朝の富強)を達成しようという大構想を描いた。これが変法自疆運動である。
だが、この動きに西太后を頂点とする保守派が猛反発した。彼らは皇帝を絶対視する支配構造に寄生して諸々の特権を享受していたゆえに、皇帝の上に憲法や議会を置かれたら、皇帝権力は著しく制限されてしまう。
ならば断じて許し難い。チッポケな人間(憲法、議会)が至上・至聖の皇帝(天)を差配するなどは以ての外、という理屈を持ち出した。
両者の対立が表面化するが、事は一瞬にして決着する。少壮改革派には資金も武力も不足、いやゼロに近かったからだ。だが勝利したとはいえ、保守派政権では清朝の退勢を挽回することは不可能だった。
かくて1911年に勃発した辛亥革命を機に清朝は崩壊する。
ここで現在の憲政派を変法自疆勢力に、習近平を頂点とする党中央を清朝保守派に重ね合わせて考えたい。
資金・武力は、明らかに後者が圧倒している。ならば憲政派対党中央の戦いの帰趨は自ずから定まってくるだろう。そこでカギを握るのが人民解放軍ということになるわけだが、解放軍上層も習近平政権が唱える「中国の夢」路線に異を唱えることはないにように思う。現に享受している緒特権を、ムザムザと手放すわけはないからだ。
そこで知りたくなるのが解放軍内の憲政派の有無である。昨今のエジプト政変劇を見るまでもなく、やはり毛沢東が喝破したように「政権は鉄砲から生まれる」。であればこそ共産党政治の動向は、政権の内実がどうであれ、漢民族の政治的振る舞いの歴史を踏まえながら、長い眼で見ておくことが肝要だと思う。それにしても、である。なぜ漢民族の政治は、同じようなことの繰り返しなのだろうか。
悠久の文明?・・・永遠のナゾ!
《QED》
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「加瀬英明のコラム」
韓国がひた隠しする韓国軍「慰安婦」関連資料
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橋下大阪市長の「慰安婦」をめぐる発言が、内外で大きな波紋をつくった。いつものように、韓国の反日世論が涌き立った。ことあるごとに、日本に悪態をついて快感に浸たる。なぜ、韓国はこのようにいじけているのかと思う。
だが困ったことに、アメリカでも日本の慰安婦問題となると、中国、韓国の多年にわたる工作によって、日本が先の大戦中に無辜のアジア女性を拉致して、軍の「性奴隷(セックス・スレイブ)」となるのを強いたと、ひろく信じられている。河野官房長官による慰安婦についての談話、日本が前大戦に当たってアジアを侵略したという村山首相談話を否定することには、アメリカの国内世論から強い反発を招くことになるので、オバマ政権も日本のなかでそのような動きがあることに、反撥している。
日本の官憲が人攫いのように、女性の意志に抗って慰安婦となることを強制したようなことは、ありえない。
慰安婦であれ、前大戦で侵略を働いたというのであれ、南京事件であれ、事実無根であるが、民主主義国で一国の政府がまったく虚偽の事実を、公的に認めるような奇想天外なことは、ありえないことだ。そのうえ、謝罪している。全世界が事実だと信じ込んでいるのも当然だ。
それだけに河野、村山談話の罪は重い。日本が国家の安全を守るのに当たって、日本の汚名を清ぐことを急がねばならない。日本の名誉を回復することが、日本の価値を高め、日本外交に力を与えることになる。
どの国であっても、軍隊が外地で戦う場合には、将兵が性病にかかることがないように、兵士の性欲の処理にかかわって、管理するものだ。日本軍も例外ではなかった。日本軍の場合には、売春宿を経営する業者に女性を募らせて、慰安所を設けた。
いったい、韓国には、軍人のための慰安婦がいなかったのだろうか?
私は日韓国交樹立の前年に、韓国をジャーナリストとして訪れてから、足繁く通ったが、『東亜日報(ドンアイルボ)』をはじめとする韓国の主要新聞に、米軍のための「慰安婦(ウイアンプ)」を募集する広告を、よく目にした。「慰安婦」という言葉は、旧日本時代から引き継いでいた。韓国における「慰安婦」について、韓国の学者グループによる研究があるが、2年前に『軍隊と性暴力』(現代史料出版)として訳出刊行された。
同書は、「慰安婦」が朝鮮戦争の勃発から、国連軍(米軍)と韓国政府がかかわって管理されたことが、克明に検証している。
韓国では、米兵相手の「慰安婦」を、「洋公主(ヤンゴンジユ)」(外人向け王女)、「洋(ヤン)ガルボ」(外人向け売春婦)、「国連婦人(ユーエヌマダム)」、「国連婦人(ミセス・ユーエヌ)」と呼んでいたという。米軍向けの売春地区は、「基地村(キジチヨン)」と呼ばれた。「慰安婦」の「目的は、第一に一般女性を保護するため、第二に韓国政府から米軍兵士に感謝の意を示すため、第三に兵士の士気高揚」のためと、述べている。
韓国軍にも、慰安婦がいた。「『慰安婦』として働くことになった女性たちは、『自発的動機』がほとんどなかった。」「ある日、韓国軍情報機関員たちにより拉致され、1日で韓国軍『慰安婦』へと転落した。」
「国家の立場からみれば公娼であっても、女性たちの立場からみれば、韓国軍『慰安婦』制度はあくまでも軍による性奴隷制度であり、女性自身は性奴隷(ソンノーエ)であった」と、論じている。2002年に韓国陸軍の「慰安婦」についての研究が発表された直後に、「韓国の国防部資料室にあった韓国軍『慰安婦』関連資料の閲覧が禁止された。(略)『日本軍「慰安婦」問題でもないのに‥‥』と言葉を濁らせた」という。
ソウルの国会と、アメリカ大使館前にも、慰安婦像を設置することになるのだろうか。
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(読者の声1)貴誌前号にでた貴見の「ラオスとカンボジアは地政学的にベトナムと対決する構造、そのうえ歴史の経緯から両国民はベトナムが嫌い、そのため外交的には「遠交近攻」策によって中国に異常接近しているのである」
とありましたが、細かい指摘ではありますが、ラオスとベトナムは友好国です。ご指摘はカンボジアには当てはまると思いますが、ラオスにはどうかなと思います。
ラオスに新首相が就任すれば最初にハノイ詣でをします。昔、日本の首相が「ワシントン詣で」をしたように。またラオスにはベトナム人が多くいますが、反ベトナム感情を私は見受けませんでした。なかにはそういう勢力もあるのでしょうが、マジョリティではありません。カンボジアについてはご指摘の通りです。
(R生、ハノイ)
(宮崎正弘のコメント)外交上の動きはたしかにそうですね。しかし小生は街を歩いての印象、現地の人々との何気ない会話から、もっとも友好的なのはタイであろうと推定しました。ラオス人はベトナムが嫌いですが、その前に、カンボジアが嫌いなのです。そのためにベトナムへはにこにこ顔をしていると見ました。
もう一つ、ビエンチャンにチャイナタウンは他のアジアの国々のそれに比べると、あまりにも見窄らしく、また華字紙が許可になっていません。
ラオスのチャイニーズはどことなく堅苦しい、生活にも息苦しさが感得できました。
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(読者の声2) 貴誌前号のコメントに尾崎士郎記念館のことがでておりました。来年が尾崎士郎先生没後50年ということで西尾市挙げて取り組みがあります。
その鏑矢が今年二月十一日岡崎市での建国記念日奉祝会(380名参加)で元記念館館長、吉良町教育長鈴木一雄先生のお話(演題 吉良の男前 尾崎士郎)が開催されました。
母校岡崎中学出身の大作家・尾崎士郎の人生がテーマでしたので参加された皆さん興味津々。成功裏に会が終わりました。
十二月十五日には西尾市で、市主催、演じてくださった石坂浩二氏をお迎えして講演会が開催されることになっています。
(KS生、愛知)
(宮崎正弘のコメント)なるほど。日取りも討ち入りの翌日ですね。
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宮崎正弘の独演会のお知らせ
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来る8月21日(水曜日)午後六時半より大手町産経プラザにおいて「正論を聞く会」が開催されます。宮崎が講師、演題は「中国経済 バブル崩壊が始まった」(仮題)。二時間の独演会です。
入場料はおひとり1500円。当日は宮崎の新刊サイン入り販売もおこなわれる予定です。ふるってご参加下さい。
詳細は8月1日発売の『正論』の広告ページに
宮崎正弘の最新刊
『2013年後期の中国を予測する 習近平の断末魔の叫びが聞こえる』
(石平氏との対談 ワック 940円)
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『中国の「反日」で日本はよくなる』(徳間書店、1000円 税込み)
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『世界は金本位制に向かっている』(扶桑社新書 720円+税)
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『中国を動かす百人』(双葉社 1575円)
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『習近平が仕掛ける尖閣戦争』(並木書房、232p、並製。定価1575円)
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<宮崎正弘のロングセラーズ>
『現代中国 国盗り物語―――かくして反日は続く』(小学館101新書、定価756円)
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『中国権力闘争 共産党三大派閥抗争のいま』(文芸社、1680円)
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『中国が世界経済を破綻させる』(清流出版、1680円)
http://www.amazon.co.jp/dp/4860293851/
『オレ様国家 中国の常識』(新潮社、1470円)
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<宮崎正弘の対談シリーズ>
『2013年の中国を予測する』(石平氏との対談第三弾 ワック、980円)
『猛毒国家に囲まれた日本』(佐藤優氏との対談。海竜社、1575円)
『増長し無限に乱れる欲望大国、中国のいま』(石平氏との第二弾 ワック、945円)
『絶望の大国 中国の真実』(石平氏との対談シリーズ第壱弾。ワック、933円)
『日米安保、五十年』(西部邁氏との対談。海竜社、1680円)
『世界が仰天する中国人の野蛮』(黄文雄氏との対談。徳間書店、1575円)
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