現憲法が無効である理由を記します。From:大礒正美
From:大礒正美
こんにちは。大礒です。
参議院選を間近に控え、
改憲の話が話題に上っています。
しかし実のところ、護憲も改憲も、
結局のところは現憲法を守るという点で
変わるところありません。
これでいいのでしょうか?
日本人としての憲法論議は、
「現憲法はそもそも無効である」
ことへの理解から始める必要があると考えます。
そこできょうは、現憲法が無効である理由を記します。
さあそれでは、きょうも【よむきる】をお楽しみください。
その前に。。。
ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官でもあります。
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国際政策コラム<よむ地球きる世界>No.171
by 大礒正美(国際政治学者、シンクタンク大礒事務所代表)
平成25年6月27日
改憲・護憲両派が触れない根本的違法性
現行の日本国憲法は無効である。それも二重に無効であることを、2003年12月と08年3月の当コラムで解説した。ぜひバックリストの2本(*)を参照されたい。
ここではなぜ二重かという根拠を再説しておきたい。第1は、現在も有効な国際法で、軍事占領した側は占領地に対し、憲法などの重要法規を押しつけてはならない旨が規定されている。
「陸戦の法規慣例に関する条約」(いわゆるハーグ陸戦法規、1910~12年発効)第43条(占領地の法律の尊重)
国の権力が事実上占領者の手に移りたる上は、占領者は、絶対的の支障なき限り、占領地の現行法律を尊重して、なるべく公共の秩序及び生活を回復・確保するため、施し得べき一切の手段を尽くすべし。(一部現代語化)
これは軍事占領があくまで一時的なもので、和平が成立すれば当然撤退するので、戦後の行政を妨げるような法規上の混乱を残すべきでないということである。
実際、旧日本軍はこの戦時国際法を遵守し、香港、シンガポールなどを占領した際、軍票を一部流通させたぐらいで、独自の法律を押しつけるという発想はなかった。
よく知られているように、米国は同じ軍事占領下のドイツ(西独)には憲法を押しつけず、基本法にとどめた。これはドイツが東西に分けられたためとも言えるが、最近のサダム・フセイン相手のイラク戦争のあと、軍事占領下のイラクにも憲法を押しつけず、自主的な国民議会が成立するまで辛抱強く待った。
日本に対して国際法違反の憲法押しつけをやったことを、多少は反省したということだろう。
第2の違法性は、当時からハーグ陸戦法規第43条違反だという自覚はあったと見えて、新憲法を「旧憲法の改正条項に従って改正した」という姑息な正当化を、日本に押しつけたことである。
そのため、新憲法は米軍の押しつけであっても、日本が自主的に、正当に、既存憲法の改正として国会で議決したという形になった。しかし、ここに落とし穴が隠されている。
「大日本帝国憲法」(明治22年2月11日公布)
第73条
将来この憲法の条項を改正する必要があるときは、勅命をもって、議案を帝国議会の議に付すべし。(一部現代語化)
これも一見して分かるように、「条項を改正する」ための規定であって、憲法全体をそっくり別のものに変えることを意味してはいない。それに、帝国憲法は天皇が定めた「欽定憲法」であって、国民が主体の新憲法とは相容れないものである。
つまり、新憲法を日本の国会が自主的に定めるには、まず旧憲法を廃止した上で、新憲法を議決し、それを国民投票で信認(批准)するという手順が必要不可欠であった。
以上、二つとも、極めて分かりやすい不法性ではないだろうか。
この二重の違法性について、護憲派はもちろん知らない振りをして、知っていても国民に気づかせないようにしている。
また改憲派も、同様になるべく触れないようにして60数年を無為に過ごしてきた。その理由は、米国を批判することになるから避けたいということだろう。
7月参院選と、その後の政治の焦点として、戦後はじめて「憲法改正条項の改正」が浮上してきた。
そうすると、奇妙なことに、わずか1条を改正することによって、二重の不法性を持つ欠陥憲法を初めて追認する(不法性が是正される)ことになる。
しかし、次の瞬間に、その改正条項に基づいて、ゼロから起草された新々憲法案が国会で議決されるならば、そういう便法も許されるかもしれない。
そういう手順の目処は全く立たないのだから、多くの欠点を含む現行憲法がそのままずっと生き残ってしまうに違いない。
また護憲派(9条死守)は、引き続き米国を支持して、不法憲法の実質条項を可能な限り維持していくことを目指すことになる。護憲派イコール親米派という位置づけだ。
つまり、安倍総理が打ち出した「96条の先行改正」という政治戦略は、事態を一層複雑にするだけで、普通の国になるための行程から逆に離れていく恐れが強い。
そこで提案だが、むしろ、この「二重の違法性」を国民に広く知らしめることから始めるべきではないか。
そうすれば「それでもいい」とか「独立国家でなかったのか」というように、新たな憲法論議が沸騰するだろう。改憲・護憲双方が共通の「事実」の上に立って議論するのは、これが実に初めてになるかもしれない。
「9条があるから平和が守られる」とか「国軍がなければ国を守れない」というのは、両方とも思想であって「事実」ではない。
事実を公表するのに国会議決は必要ない。閣議決定はあったほうがいいが、総理大臣が自己の責任で記者発表すればいい。それが普通の国になるための第1歩であろう。
米国への批判ではなく感謝の意を十分に込めて語るのが望ましい。
第2歩は、事実に基づいて、現行憲法を国会決議で「暫定憲法」と確認する。そして第3歩として「部分改正」か「米国憲法型の修正別枠方式」か「部分加憲」か「全面書き換え」かといった選択肢の議論へと進めていく。
その行程中に米国と協議を深め、自衛隊の国軍化(法令整備)を急ぐ。3月コラムで述べたように、国家の緊急事態に際しては、憲法の個別条項を乗り越えることが国際法上も許されている。
安倍首相は中韓両国の無法外交に対し、「法の支配」を強く打ち出して対抗している。それならば、国内法の根源である憲法が、こんな状態であっていいはずがない。そこを中韓から衝かれたらどうするつもりだろうか。
総理の熟考を期待する。
(おおいそ・まさよし 2013/06/27)
「国際政策コラム<よむ地球きる世界>No.171」より
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(*)関連リンク
「日本国憲法は『無効』が正解、だが、、」(03/12/25)
「日本は暫定憲法に基づく暫定国家か」(08/03/25)