外交官としてもっとも忌むべき背徳を、しかも意図してやっていた者がいた | 日本のお姉さん

外交官としてもっとも忌むべき背徳を、しかも意図してやっていた者がいた

個人攻撃?筋違い? 安倍首相「フェイスブック発言」の重大性
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2013/06/19 10:43更新
【阿比留瑠比の極言御免】
安倍晋三首相が交流サイト「フェイスブック」への投稿で、小泉政権時代の田中均元外務審議官による対北朝鮮外交を批判し、「彼に外交を語る資格はありません」と記したことが波紋を広げている。これに民主党の細野豪志幹事長や朝日新聞が「個人攻撃だ」とかみ付き、首相に自制を促すという展開になっている。
18日付朝日社説は、田中氏を擁護しこう書いた。
「この批判は筋違いだ。田中氏は外交官として、政治家が決断するための選択肢を示した…」
◆交渉記録の欠落
だが、細野氏や朝日は首相の投稿の一番重大な部分を、読み落とすか無視するかしているようだ。首相は、「外交を語る資格はない」と書いた直前のセンテンスで、こう指摘している。
「そもそも彼は交渉記録を一部残していません」
首相は、田中氏が主導した北朝鮮との秘密交渉の記録の一部が欠落していることを初めて公にし、その前提の上で田中氏の問題点を問うているのである。
筆者は過去に複数の政府高官から、次のような証言を得ている(平成20年2月9日付産経紙面で既報)。
田中氏が北京などで北朝鮮側の「ミスターX」らと30回近く非公式折衝を実施したうち、14年8月30日に政府が当時の小泉純一郎首相の初訪朝を発表し、9月17日に金正日総書記と日朝首脳会談を行うまでの間の2回分の交渉記録が外務省内に残されていない-というのがその概要である。
通例、外交上の重要な会談・交渉はすべて記録に残して幹部や担当者で情報を共有し、一定期間を経て国民に公開される。そうしないと、外交の継続性や積み上げてきた成果は無に帰するし、どんな密約が交わされていても分からない。
当時、取材に応じた高官の一人は「日朝間で拉致問題や経済協力問題についてどう話し合われたのかが分からない」と困惑し、別の一人は「記録に残すとだれかにとって都合が悪かったということ」と語った。
◆「忌むべき背徳」
田中氏自身は取材に「私は今は外務省にいる人間ではないし、知らない。外務省に聞いてほしい」などと答えた。その後、日朝交渉や拉致問題に関する産経の取材には応じていない。
産経の報道に対し、当時の高村正彦外相はコメントを避けたが、今回、安倍首相が自ら言及した形だ。
外交ジャーナリスト、手嶋龍一氏の小説「ウルトラ・ダラー」には、田中氏がモデルとみられる「瀧澤アジア大洋州局長」が登場し、日朝交渉を取り仕切る。作中で瀧澤が交渉記録を作成していないことに気付いた登場人物が、こう憤るシーンが印象的だった。
「外交官としてもっとも忌むべき背徳を、しかも意図してやっていた者がいた」
首相の指摘は単なる「個人攻撃」や「筋違い」ではない。(政治部編集委員)
阿比留瑠比の【極言御免】