「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 中国経済、次の7年間は5・7%成長の下降期に突入 | 日本のお姉さん

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 中国経済、次の7年間は5・7%成長の下降期に突入

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成25(2013)年6月14日(金曜日)
通巻第3964号


「さようなら保8成長」とゴールドマンサックス
中国経済、次の7年間は5・7%成長の下降期に突入するだろう
*********************

ゴールドマンサックスの中国経済分析予測のストラテジストであるジミー・ハーが予測した。「中国経済は8%成長が難しくなり、ことしは6%、向こう7年間の平均は5・7%になるだろう」。

三月の全人代で温家宝(前首相)が述べたのは「ことしの経済成長目標は7・5%」だった。
しかしGDPの47%が不動産投資という異形な構造のなか、すでに輸出赤字転落、大型の財政出動は不可能、金融政策は目一杯出し尽くした。こういう境遇のなかでは、次ぎに期待するのはたいそう難しい。
「さようなら保八だ」とハーは続けて言った。「保八」は成長率8%死守のスローガンである。中国は8%成長を割り込むと、失業者が1%につき500万人増えるという図式があり、げんに大学新卒予定700万学生の33%しか就職先が内定していない。中国の卒業時期は7月である。

しかしこうした米国証券系の予測はまだまだ甘く「現在の中国経済は、60年代のソ連と構造が酷似してきた。毛沢東の大躍進のパターンと比較する必要がある」と北京大学のミカエル・ペティト教授は発言している(ウォールストリートジャーナル、6月14日)

倉山満『嘘だらけの日中近現代史』(扶桑社新書)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

まだその番組を一度も見たことがないが「そこまで言って委員会」というテレビ討論があるそうだ。その番組名を拝借して本書を論ずるとすれば、まさに同委員会だ。
中国を正規の「近代国家」と誤解するから日本の中国論はすべて誤るのだ、と結論もはっきりしていて、あまりにあっさりと中国の本質を語られてしまうと、これで良いのかナと不思議がる読者もでてくるのではないか。
なるほど、ソコマデイッテイインカイ。
どぎつい批判は、たとえば下記のようである。
孫文が「アジアの大義」を説いた「革命家」という伝説があるが、これは大嘘だと、倉山満氏はばっさり切り捨てて言う。
「日米ソといった大国を天秤に掛けながら、カネをせびり嘘をつき、裏切り、ということの連続です。最晩年の孫文はコミンテルンと手を結びながら、神戸の女子学生の前で『アジア主義演説』をしているくらいですから、褒めるならばマキャベリスト、はっきり言えばインチキ革命家といったところ」
嘘を百回くりかえせば真実になるとヒトラーは言い残したらしいが、中国は三回で良い。南京大虐殺、従軍慰安婦、731,平頂山事件などなど。これらを単純化したスローガンで反復し、無知蒙昧な大衆に嘘を吹き込むことも戦争の一手段、とりわけ中国が重視してきた宣伝戦の一環なのである
中国の歴史の美化された部分の大嘘を、こうやって次々と切りながら本質を暴露してゆく一種歴史教室的手法は新鮮である。

なお、倉山氏は日刊スパの上念司氏との対談の中で「この本を、すべての日本人、そしてマイケル・グリーン(日本に対し対アジア政策において穏健な立場を取るよう提言している米政治学者)日本語で歴史書を読んでもらいたいという思いで書きました」と執筆動機を語っている。
◇◇
(読者の声1)「自衛隊は国防軍 その慣用呼称は国軍にせよ」
昨年12月に発足した第2次安部内閣は、かねてからの自民党の憲法改正構想の一環として、自衛隊を、国防軍に改称する案を鮮明に打ち出した。ところが、遺憾な事に、有識者や文化人はもとより、自民党憲法改正推進委員会の内部にも、「永年にわたり、定着して来た自衛という呼び方を受け入れた自衛軍で良い」という軍事原則を弁えない、安易な意見が、いまだに存在する。
世間の有識者、文化人、軍事評論家の見方も真剣味に欠ける。「自衛隊の英語訳のセルフを除き、日本語の方は、そのままで良い」、「取敢えず、自衛軍にして、次に国防軍にする方が角が立たない」など唯の感情論が存在する。
これに対し、拙論は、軍隊の呼称を定める軍事原則、その国際社会の傾向及び自衛隊という呼称の出来た背景と自衛の意味を明らかにし、国防軍という呼称の妥当性を主張するものである。

◆国軍、国防は古代中国の歴史書に始り、明治期のメデイアに登場

国軍、国防という用語は、日本の発想でなく、その由来は、古代中国に遡る。すなわち、後漢滅亡から200年後の南方朝時代における宋が出した、「後漢書 孔融伝」に「国防」、7世紀の唐の時代に200年前の北朝の歴史を綴った、「北史 王魏伝」に、「国軍」という表現が出ている。国軍は、現代で言えば、地方の権力者の私兵や山賊とは異なる、天子が統べる国家の正統な軍事組織を指していた。
明治10年(1839)の外国事情書に「国軍」、明治23年(1890)の東京日日新聞に「国防」、明治31年(1898)の風俗画報178号に、「国防軍」という用語が登場した。以上の根拠の解明は、漢和辞典及び大日本国語辞典による。

◆「国軍」、「国防」の定義を大正期の兵語辞典が明記

大正10年(1911)に発行された、『大日本兵語辞典:原田政右衛門著』に、軍事一般用語として、「国軍」及び、一般用語、制度の双方の用語としての「国防」の定義が載っている。以下は、原文である。
★「国軍(こくぐん):国家を防衛する見地より建て設けられたる軍隊、陸海軍」
★「国防(こくばう):外敵の侵入を防ぎ自国の安寧を保護するに必要なる兵備を平時より施設すること。但し、止まって、敵の侵入を待たんよりも戦ひに際しては、我より先んじて敵を攻め破り敵国に作戦することが最も完全なる国家の防衛策なりと知るべし」
「国軍」は、国防に任ずる軍隊で、国防軍と同義語であり、先に触れたとおり、大正期に兵語辞典が出る前の明治期に軍事一般用語になっていた。
昭和3年(1928)に制定された、『歩兵操典』には、「かくかくたる伝統を有する国軍は、いよいよ忠君愛国の精神を高揚し」という一文が載っている。
大正期の兵語辞典に載る、「国防」の定義、すなわち国軍の役割は、現在も有効な軍事原則である。それは、2013年に、政府・与党が打ち出した、「自衛隊」の「国防軍」への改称・改編及び「専守防御」の見直しのための有力な考慮事項になる。
要するに、国軍、国防軍が防御専一のただの守備隊では、国家の生存に関わる重大な脅威を破砕する事ができない。現に、我が国と同じ中小先進国である中華民国(台湾)は境外決戦構想及びイスラエルは前方防御縦深戦略を採っている。
今、一部で取り沙汰されている、「自衛隊」の「自衛軍」への改称案は、消極的思考を助長するだけで、国民の国防意識の高揚には結び付かない。(細部、後述)

◆旧軍の正式呼称は格調高い帝国陸海軍

幕末・維新の頃、我が国の指導者は、フランス及びドイツの陸軍、オランダ及び英国の海軍から学び、藩幕体制下の武装組織を近代軍に刷新した。この頃に、西欧から多くの軍事用語を流入したが、先に触れた「国軍」もその一つである。
明治建軍期から第2次大戦までの旧軍は、「大日本帝国陸軍」及び、「大日本帝国海軍」(略称、「帝国陸海軍」)と格調高く、誇り高い正式呼称を有していた。一方、「国軍」、「国防軍」は、軍事一般用語であった。
先述の「大日本帝国陸軍・海軍」は、明治期に中央軍事機構、参謀制度を伝えたドイツの軍隊の呼称、“Kaiserliche Armee"(帝国軍)及び戦術技術、初級士官教育制度をもたらした、フランス軍の呼称、“Armees Francaises"にあやかったようである。

昭和期における戦争指導の主役であった軍部は、逆賊を平定した神武天皇の故知にあやかり、天皇統率下の帝国陸海軍の聖戦を遂行する軍隊としての権威を高める、「皇軍」という呼称を軍民に普及するに努めた。

◆“Armed Forces”(国軍)、“Defence Forces”(国防軍)の由来

多くの現代各国軍の英訳呼称、“Armed Forces" は、1970年代以降の米国防総省用語辞典では、「国家又は国家群が固有する軍隊」と簡明に定義する。 2
ちなみに、この用語は、1707年の、イングランド及びスコットランドの合併に伴い新設された、“Armed Forces of the Kingdom of Great Britain" に始る。 “United States Armed Forces" という現代米軍の呼称は、第2次大戦後における国防総省の創設始め3軍統合の一環として登場した。したがって、戦前、戦中の米国の軍隊は、陸軍及び海軍と呼ばれており、1776年制定の憲法第2条第3節は、「大統領は米国陸軍及び海軍の総司令官」と明記する。

“Defence Forces" という呼称は、1913年に、アイルランドが創設した国防軍、“The Irish Defence Forces" に始る。現在、“Defence Forces" と呼ばれる軍隊は、20世紀後半に建国されたイスラエルなどの中小国に多い。現在、各国の軍隊は、対外的に存在を表明する場合、国際語である英語に換えた呼称を用いる。2013年時点における世界各国を見るに、“Armed Forces" は70コ国軍に対し、“Defense Force"は29コ国軍、これらに類別できず、軍(Militaryなど)と呼ばれるのは62コ国軍、それ以外に、ドイツ連邦軍、人民解放軍など独特の呼称を持つものが幾つか存在する。なお、日本と同様に漢語圏に入る中華民国(台湾)では、軍隊を「中華民国軍」と公称し、「国軍」と略称している。

一方、“Self-Defense Forces"は、何と日本だけである。また、“self-defense" は国防とは似ても似つかない別の意味(後述)に解釈される。今後、我が国の軍隊の呼称は、英語に直した場合にも、軍事原則と国際社会の基準に照らし、合理的で恥ずかしくない表現にすべきである。

◆警察予備隊と保安隊の通称は新国軍、自衛隊は当局の誤訳

1950年秋、政府は、占領軍の指令に応え、朝鮮戦争勃発に伴う、米軍主力出動後の国内治安力強化のため、警察予備隊、“The National Police Reserve"を創設した。 次いで、1952年10月になると、米国の意図する再軍備の布石として、警察予備隊は、保安隊、“The National Safety Force"と改称し、米国提供の兵器と人員の増加により、戦力が逐次、強化される方向を辿っていた。

当時は、近い将来に憲法改正に伴う再軍備も確実という国内の雰囲気から部隊の中では、新国軍という通称が流行し、隊歌の歌詞にも登場した。実のところ、当時の隊員は国軍ないし国防軍の実現を期待していたのである。1953年9月、吉田茂総理始め政界首脳部は、現行憲法も認めると解釈される自衛力の増強のため、保安隊を自衛隊に改めて直接侵略に対処する方針を明らかにし、その1年後の1954年7月に保安庁が防衛庁になり、陸海空自衛隊が発足した。

この頃に、官僚作業により、自衛隊が、“Japan Self-Defense Forces"と誤訳されて現在に至っている。思うに、当時、自衛隊を、“Japan Defense Forces" と訳して置けば、理に適っていた。

◆「国防軍」(Japan Defense Forces) と改称すべき自衛隊

冒頭で触れたとおり、以前から、「自衛隊の隊を、取り敢えず軍に換え、自衛軍にせよ」という論拠に乏しい主張を政官界、学会や文化人、知識人が上げて来た。然るに、「国防軍」こそ、軍事の原理原則に適う選択であり、このため、国際基準に基く英訳呼称は、“Japan Defense Forces" となる。国際社会では、南アフリカだけが、“National Defense Forces"という呼称を用いるが、Nationalをなくして、簡潔な表現にする方が望ましい。
米国防総省用語辞典(2009) による「自衛」の定義は、次のとおりであり、戦術用語に他ならない。 『自衛(self defense): 指揮官が、隷下部隊及び近傍の友軍部隊に及ぼす敵性行動又は、その企図を防ぐために必要な、すべての行為(action) である。』 -
もともと、自衛は、自衛警戒、自衛戦闘のように部隊の人員、装備、施設を防護する手段であり、国家戦略、国防、作戦行動とは別次元の分野に属する。ちなみに、平素、各駐屯地・基地の門前に立つ歩哨及び外柵の巡察は代表的な自衛手段である。1978年当時、栗栖弘臣元統幕議長は、「外遊時に複数の外国の武官から、『貴国の軍隊は自分を守るだけで国を守らないのか?』と詰問され、立つ瀬がなかった」と述懐されていた。
自民党主導の政界では自衛隊合憲論が半世紀以上も横行し、今、漸く国防軍構想が日の目を見たのである。
(高井三郎、軍事評論家、元陸上自衛隊教官 退役一等陸佐)




(読者の声2)「これで新幹線の手抜きがばれた」、という貴誌通巻第3961号の記事に関連して、中国高速鉄道の車両で6月2日に「和諧号」に鳩が衝突しただけで窓ガラスにひび割れという事故がありました。
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/photonews/347775/

設計上は、『CRH380系高速鉄道車両は「超強力防弾ガラス」を採用。国家安全ガラス・石英ガラス品質検査センターの臧曙光・副主任によると、「重さ1キロのアルミの球が速度500キロで衝突してもひびが入るだけで、完全に割れることはない」』とのこと、中国品質を物語っていますね。設計上の品質など誰も問題にしていない。
いかに見栄えのいい製品で中抜し、利益を得るかしか考えていないのでしょう。窓ガラスですらこれほどの低品質、車両の運行に関わる中核部品が中国製造のものなら時速300kmなど、いつ大事故になるかわかりません。
中国の「見た目さえ同じなら」、というのは随所に見られます。北京のホテルの芝生は緑色のペイント、麗江で見たのは遠目にはいかにも中国風の建物ですが、実物を見てがっかり。古いレンガ造りの建物のかわりにブロック塀にレンガ模様を書き込んだもの。
よく言えば映画のセットですが、ほんとうにこんなことまでする中国人にはあきれるやら、さすがに宣伝の天才だけのことはあると認識したものです。
中国人の気質が今後数年で変わるはずもありませんから、中国では今後も見てくれだけは素晴らしい建造物やら記念碑やらが立ち並ぶのかもしれません。
(PB生、千葉)


(宮崎正弘のコメント)緑化事業でも日本の援助で植林して、或る程度育ったら勝手に伐採して木材を売却、そのあとを緑のペンキを山ごと塗ったという例もありました。



(読者の声3) 通巻第3963号で「佐藤守閣下の一言」の件でやり取りがなされておりますが、(ちゅん)様のご意見に全く賛同するものです。
我々、日本人は喧嘩を売られたらそれを上回る気勢でガツーンと返す場面がなさすぎるし、訓練も出来てない。
日本に於いては「誠実」を基本に、外国に対しては相手と同じ土俵でガツーン。二重基準で対処する事が肝要と考えます。喧嘩した方が、後で「真の友人」だと歓迎される話があるのを聞きます。
その点、佐藤守閣下の即応の反応は誠に相応しく、素晴らしい。
(菊千代)

◎◎◎
6月の三島由紀夫研究会「公開講座」
三島由紀夫研究会、六月の「公開講座」は下記の通りです。
日時: 6月17日(月)午後六時半 (18:00開場)
場所: アルカディア市ヶ谷
http://www.jstc.jp/map/kenshu-mapARCADIA.html
講師: 門田隆将氏(かどたりゅうしょう、ジャーナリスト)
http://kadotaryusho.com/profile/index.html
演題: 命がけで闘った日本人
会費: 会員 1千円(一般 2千円)
なお修了後、講師を囲んでの懇親会を予定しております。

(講師プロフィール)昭和33年生まれ。高知県出身。中央大法学部政治学科卒。新潮社勤務を経てジャーナリストとして活躍中。主な著作 「裁判官が日本を亡ぼす」(新潮社)、なぜ君は絶望と闘えたのかー本村洋の3300日」(新潮社)、「この命、義に捧ぐー台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡」(集英社)、「蒼海に消ゆー祖国アメリカに特攻した海軍少尉『松藤大治』の生涯(集英社)、「太平洋戦争 最後の証言」第1部~第3部(小学館)その他多数。
宮崎正弘の最新刊
『2013年後期の中国を予測する 習近平の断末魔の叫びが聞こえる』
(石平氏との対談 ワック 940円)
http://www.amazon.co.jp/dp/489831676X/
『中国の「反日」で日本はよくなる』(徳間書店、1000円 税込み)
http://www.amazon.co.jp/dp/419863579X/
『世界は金本位制に向かっている』(扶桑社新書 720円+税)
http://www.amazon.co.jp/dp/4594067778/
♪♪
『中国を動かす百人』(双葉社 1575円)
http://www.amazon.co.jp/dp/4575304875/
『習近平が仕掛ける尖閣戦争』(並木書房、232p、並製。定価1575円)
http://www.amazon.co.jp/dp/4890632999/

<宮崎正弘のロングセラーズ>
『現代中国 国盗り物語―――かくして反日は続く』(小学館101新書、定価756円)
http://www.amazon.co.jp/dp/4098251450/
『中国権力闘争 共産党三大派閥抗争のいま』(文芸社、1680円)
http://www.amazon.co.jp/dp/4286127214/
『中国が世界経済を破綻させる』(清流出版、1680円)
http://www.amazon.co.jp/dp/4860293851/
『オレ様国家 中国の常識』(新潮社、1470円)
http://www.amazon.co.jp/dp/4103290617/

<宮崎正弘の対談シリーズ>
『2013年の中国を予測する』(石平氏との対談第三弾 ワック、980円)
『猛毒国家に囲まれた日本』(佐藤優氏との対談。海竜社、1575円)
『増長し無限に乱れる欲望大国、中国のいま』(石平氏との第二弾 ワック、945円)
『絶望の大国 中国の真実』(石平氏との対談シリーズ第壱弾。ワック、933円)
『日米安保、五十年』(西部邁氏との対談。海竜社、1680円)
『世界が仰天する中国人の野蛮』(黄文雄氏との対談。徳間書店、1575円)
http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
(C)有限会社宮崎正弘事務所 2013 ◎転送自由。転載の場合、出典を明示