ハフィントン・ポスト日本版の記事―「慰安婦、風俗の英訳がヒドい | 日本のお姉さん

ハフィントン・ポスト日本版の記事―「慰安婦、風俗の英訳がヒドい

橋下代表、特派員に「慰安婦正当化の意図ない」
読売新聞 5月27日(月)13時18分配信

日本外国特派員協会で講演、記者からの質問を待つ日本維新の会共同代表の橋下大阪市長(27日)=上甲鉄撮影

日本維新の会の橋下共同代表は27日、東京都内の日本外国特派員協会で記者会見し、いわゆる従軍慰安婦を「当時は必要だった」などとした自身の発言について「旧日本兵の慰安婦問題を正当化しようという意図は毛頭ない」と説明した。

橋下氏は、「日本は過去の過ちを反省し、慰安婦の方々に謝罪とおわびをしなければならない」と述べた上で、「日本以外の国々の兵士も(戦場で)女性の人権を蹂躙(じゅうりん)した事実に各国も向き合わなければならないと訴えたかった」と語った。慰安婦について、「私が容認していると誤報されてしまった」とも話した。

国家の意思による慰安婦の強制連行があったとの指摘に対しては、「事実と異なる」と強調した。

また、在日米軍に風俗業の活用を提案したことについては「不適切な表現だったので撤回するとともにおわびする」と陳謝した。その上で沖縄での米兵の性犯罪に触れ、「沖縄県民の怒りは沸点に達している。何としてでも改善してもらいたい」と訴えた。
最終更新:5月27日(月)15時1分

橋下徹氏:「私の認識と見解」 日本語版全文
2013年05月26日
橋下徹共同代表=大阪市中央区で2013年4月22日、大西岳彦撮影

私の認識と見解

2013年5月27日

橋下徹

■私の拠(よ)って立つ理念と価値観について

まず、私の政治家としての基本的な理念、そして一人の人間としての価値観について、お話ししたいと思います。

いわゆる「慰安婦」問題に関する私の発言をめぐってなされた一連の報道において、発言の一部が文脈から切り離され、断片のみが伝えられることによって、本来の私の理念や価値観とは正反対の人物像・政治家像が流布してしまっていることが、この上なく残念です。

私は、21世紀の人類が到達した普遍的価値、すなわち、基本的人権、自由と平等、民主主義の理念を最も重視しています。また、憲法の本質は、恣意(しい)に流れがちな国家権力を拘束する法の支配によって、国民の自由と権利を保障することに眼目があると考えており、極めてオーソドックスな立憲主義の立場を採(と)る者です。

大阪府知事及び大阪市長としての行政の実績は、こうした理念と価値観に支えられています。また、私の政治活動に伴って憲法をはじめとする様々(さまざま)なイシューについて公にしてきた私の見解を確認いただければ、今私の申し上げていることを裏付けるものであることをご理解いただけると信じております。今後も、政治家としての行動と発言を通じて、以上のような理念と価値観を体現し続けていくつもりです。

こうした私の思想信条において、女性の尊厳は、基本的人権において欠くべからざる要素であり、これについて私の本意とは正反対の受け止め方、すなわち女性蔑視である等の報道が続いたことは、痛恨の極みであります。私は、疑問の余地なく、女性の尊厳を大切にしています。

■いわゆる「慰安婦」問題に関する発言について

以上の私の理念に照らせば、第二次世界大戦前から大戦中にかけて、日本兵が「慰安婦」を利用したことは、女性の尊厳と人権を蹂躙(じゅうりん)する、決して許されないものであることはいうまでもありません。かつての日本兵が利用した慰安婦には、韓国・朝鮮の方々のみならず、多くの日本人も含まれていました。慰安婦の方々が被った苦痛、そして深く傷つけられた慰安婦の方々のお気持ちは、筆舌につくしがたいものであることを私は認識しております。
日本は過去の過ちを真摯(しんし)に反省し、慰安婦の方々には誠実な謝罪とお詫(わ)びを行うとともに、未来においてこのような悲劇を二度と繰り返さない決意をしなければなりません。

私は、女性の尊厳と人権を今日の世界の普遍的価値の一つとして重視しており、慰安婦の利用を容認したことはこれまで一度もありません。私の発言の一部が切り取られ、私の真意と正反対の意味を持った発言とする報道が世界中を駆け巡ったことは、極めて遺憾です。以下に、私の真意を改めて説明いたします。

かつて日本兵が女性の人権を蹂躙したことについては痛切に反省し、慰安婦の方々には謝罪しなければなりません。同様に、日本以外の少なからぬ国々の兵士も女性の人権を蹂躙した事実について、各国もまた真摯に向き合わなければならないと訴えたかったのです。あたかも日本だけに特有の問題であったかのように日本だけを非難し、日本以外の国々の兵士による女性の尊厳の蹂躙について口を閉ざすのはフェアな態度ではありませんし、女性の人権を尊重する世界をめざすために世界が直視しなければならない過去の過ちを葬り去ることになります。戦場の性の問題は、旧日本軍だけが抱えた問題ではありません。第二次世界大戦中のアメリカ軍、イギリス軍、フランス軍、ドイツ軍、旧ソ連軍その他の軍においても、そして朝鮮戦争やベトナム戦争における韓国軍においても、この問題は存在しました。

このような歴史的文脈において、「戦時においては」「世界各国の軍が」女性を必要としていたのではないかと発言したところ、「私自身が」必要と考える、「私が」容認していると誤報されてしまいました。

戦場において、世界各国の兵士が女性を性の対象として利用してきたことは厳然たる歴史的事実です。女性の人権を尊重する視点では公娼(こうしょう)、私娼(ししょう)、軍の関与の有無は関係ありません。性の対象として女性を利用する行為そのものが女性の尊厳を蹂躙する行為です。また、占領地や紛争地域における兵士による市民に対する強姦(ごうかん)が許されざる蛮行であることは言うまでもありません。

誤解しないで頂きたいのは、旧日本兵の慰安婦問題を相対化しようとか、ましてや正当化しようという意図は毛頭ありません。他国の兵士がどうであろうとも、旧日本兵による女性の尊厳の蹂躙が決して許されるものではないことに変わりありません。
日本は過去の過ちを直視し、徹底して反省しなければなりません。正当化は許されません。それを大前提とした上で、世界各国も、戦場の性の問題について、自らの問題として過去を直視してもらいたいのです。
本年4月にはロンドンにおいてG8外相会合が「紛争下の性的暴力防止に関する閣僚宣言」に合意しました。この成果を基盤として、6月に英国北アイルランドのロック・アーンで開催予定のG8サミットが、旧日本兵を含む世界各国の兵士が性の対象として女性をどのように利用していたのかを検証し、過去の過ちを直視し反省するとともに、理想の未来をめざして、今日の問題解決に協働して取り組む場となることを期待します。

■在日アメリカ軍司令官に対する発言について

また、沖縄にある在日アメリカ軍基地を訪問した際、司令官に対し、在日アメリカ軍兵士の性犯罪を抑止するために風俗営業の利用を進言したという報道もありました。これは私の真意ではありません。私の真意は、一部の在日アメリカ軍兵士による犯罪を抑止し、より強固な日米同盟と日米の信頼関係を築くことです。一部の在日アメリカ軍兵士による犯罪被害に苦しむ沖縄の問題を解決したいとの思いが強すぎて、誤解を招く不適切な発言をしてしまいましたが、私の真意を、以下に説明いたします。

日本の安全保障にとって、米国との同盟関係は最も重要な基盤であり、在日アメリカ軍の多大な貢献には、本当に感謝しています。

しかしながら、多くの在日アメリカ軍基地がある沖縄では、一部の心無いアメリカ軍兵士によって、日本人の女性や子どもに対する性犯罪など重大な犯罪が繰り返されています。こうした事件が起きる度に、在日アメリカ軍では、規律の保持と綱紀粛正が叫ばれ、再発防止策をとることを日本国民に誓いますが、在日アメリカ軍兵士による犯罪は絶えることがありません。同じことの繰り返しです。

私は、日本の外交において日米同盟を重視し、在日アメリカ軍の日本への貢献を大いに評価しています。しかし、人権を蹂躙され続ける沖縄県民の怒りは沸点に達しているのです。在日アメリカ軍兵士による犯罪被害に苦しむ沖縄の現状をアメリカに訴え、何としてでも改善してもらいたい、という強い思いを持っております。

アメリカ軍内部において性暴力が多発し、その統制がとれていないことが最近、アメリカで話題となっています。オバマ大統領もアメリカ軍の自己統制の弱さに相当な危機感を抱き、すぐに効果の出る策はないとしつつ、アメリカ軍に綱紀粛正を徹底するよう指示したとの報道がありました。

このような状況において、私は強い危機感から、在日アメリカ軍司令官に対して、あらゆる対応策の一つとして、「日本で法律上認められている風俗営業」を利用するということも考えるべきではないかと発言しました。すぐに効果の出る策はないとしても、それでも沖縄の現状を放置するわけにはいきません。私の強い危機感から、ありとあらゆる手段を使ってでも、一部の心無い在日アメリカ軍兵士をしっかりとコントロールして欲しい、そのような強い思いを述べる際、「日本で法律上認められている風俗営業」という言葉を使ってしまいました。この表現が翻訳されて、日本の法律で認められていない売春・買春を勧めたとの誤報につながりました。さらに合法であれば道徳的には問題がないというようにも誤解をされました。合法であっても、女性の尊厳を貶(おとし)める可能性もあり、その点については予防しなければならないことはもちろんのことです。

今回の私の発言は、アメリカ軍のみならずアメリカ国民を侮辱することにも繋(つな)がる不適切な表現でしたので、この表現は撤回するとともにお詫び申し上げます。この謝罪をアメリカ軍とアメリカ国民の皆様が受け入れて下さいます事、そして日本とアメリカが今後とも強い信頼関係を築いていけることを願います。

私の真意は、多くの在日アメリカ軍兵士は一生懸命誠実に職務を遂行してくれていますが、一部の心無い兵士の犯罪によって、日米の信頼関係が崩れることのないよう、在日アメリカ軍の綱紀粛正を徹底してもらいたい、という点にあります。その思いが強すぎて、不適切な表現を使ってしまいました。

アメリカは、世界で最も人権意識の高い国の一つです。そして、人権は世界普遍の価値です。アメリカ国民の人権と同じように、沖縄県民の基本的人権が尊重されるよう、アメリカ軍が本気になって沖縄での犯罪抑止のための実効性ある取り組みを開始することを切に望みます。

■日韓関係について
日本と韓国の関係は現在厳しい状況にあると言われています。その根底には、慰安婦問題と竹島をめぐる領土問題があります。

日本と韓国は、自由、民主主義、人権、法の支配などの価値観を共有する隣国として、重要なパートナー関係にあります。日韓の緊密な関係は、東アジアの安定と繁栄のためだけでなく、世界の安定と繁栄のためにも寄与するものと信じています。

現在、元慰安婦の一部の方は、日本政府に対して、国家補償を求めています。

しかし、1965年の日韓基本条約と「日韓請求権並びに経済協力協定」において、日本と韓国の間の法的な請求権(個人的請求権も含めて)の問題は完全かつ最終的に解決されました。

日本は、韓国との間の法的請求権問題が最終解決した後においても、元慰安婦の方々へ責任を果たすために、国民からの寄付を募り1995年に「女性のためのアジア平和国民基金(略称アジア女性基金)」を設立し、元慰安婦の方々に償い金をお渡ししました。

このアジア女性基金を通じた日本の責任を果たす行為は、国際社会でも評価を受けております。国連人権委員会へ提出されたレポートもアジア女性基金を通じての日本の道義的責任を歓迎しています。また国連人権高等弁務官であったメアリーロビンソンさんも基金を評価しています。

しかし、残念ながら、元慰安婦の一部の方は、このアジア女性基金による償い金の受領を拒んでおります。

日本は過去の過ちを直視し、反省とお詫びをしつつも、1965年に請求権問題を最終解決した日韓基本条約と日韓請求権並びに経済協力協定も重視しております。
日韓基本条約と日韓請求権並びに経済協力協定を前提としつつ、元慰安婦の方々の心に響く償いをするにはどのようにすればいいのかは大変難しい問題です。韓国政府は最近、日韓基本条約とともに締結された「日韓請求権並びに経済協力協定」における元慰安婦の日本政府への請求権の存否の解釈が未解決だと主張しております。韓国も法の支配を重んじる国でしょうから、日韓基本条約と日韓請求権並びに経済協力協定という国際ルールの重さを十分に認識して頂いて、それでも納得できないというのであれば、韓国政府自身が日韓請求権並びに経済協力協定の解釈について国際司法裁判所等に訴え出るしかないのではないでしょうか? その際には、竹島をめぐる領土問題も含めて、法の支配に基づき、国際司法裁判所等での解決を望みます。

私は、憎しみと怒りをぶつけ合うだけでは何も解決することはできないと思います。元慰安婦の方の苦しみを理解しつつ、日韓お互いに尊敬と敬意の念を持ちながら、法に基づいた冷静な議論を踏まえ、国際司法裁判所等の法に基づいた解決に委ねるしかないと考えております。

法の支配によって、真に日韓関係が改善されるよう、私も微力を尽くしていきたいと思います。


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橋下氏、風俗発言を謝罪へ=外国特派員協で会見

時事通信 5月27日(月)5時28分配信



日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)は27日午後、東京・有楽町の日本外国特派員協会で記者会見する。橋下氏は、在沖縄米軍に風俗業利用を勧めた自らの発言について「不適切な表現だった」として撤回し、米軍と米国民に謝罪する。一方、戦時下の従軍慰安婦制度に関する「当時は必要だった」との発言は取り消さず、「女性の人権をじゅうりんし、許されないものだ」と訴えて理解を求める。
橋下氏の一連の発言には、内外で厳しい批判が続いている。外国メディアに直接真意を説明し、事態を収拾したい考えで、会見では自らの見解をまとめた文書を英訳版とともに配布する。
橋下氏は26日にまとめた見解文で、慰安婦発言について「世界各国の軍が必要としていたと発言したところ、私が容認していると誤報された」としており、会見でも同様の主張をする見通し。また「世界各国の兵が戦場で女性を利用してきたことは厳然たる事実」と指摘し、海外報道で慰安婦が「セックススレイブ(性奴隷)」と訳されていることにも異を唱える考えだ。



橋下発言の英訳問題で考える海外情報発信とハフィントンへの失望 - 本山 勝寛

アゴラ 5月26日(日)17時0分配信



橋下氏の発言問題が収束しない様相を呈しているなか、同氏発言の英訳問題を材料に、「日本の海外情報発信」について少し考えてみたい。

この英訳問題について提起しているのが、先日開設されたばかりのハフィントン・ポスト日本版の記事―「慰安婦、風俗の英訳がヒドい」(記事に中に入ると“橋下氏の慰安婦発言、風俗発言に米政府は「割り込みたくない」のか”というタイ) 。
5 月20日現在で同サイト内の人気記事1位になっていた。ハフィントン・ポスト
編集部による同エントリーでは、在日ジャーナリストのモーリー・ロバートソン氏の指摘を中心に以下のように紹介している。

『ロバートソン氏は、欧米諸国が「従軍慰安婦」を「sex slave(性の奴隷)」と、また、風俗を「sex industry(性産業)」であったり「prostitutes(売春婦)」と訳していることが、誤解を生んでいると指摘している。
(中略)
米国務省のサキ報道官の回答内容については、英語の原文が、国務省のホームページに出ているのだが、この報道官は、一言も、「sex slavery」や「prostitutes」という言葉は使わず、
「comfort women」という言葉を使っている。にも関わらず、欧米(ワシントン・ポストやBBC)では「sex slave」「sex industry」であったり「prostitutes」という言葉が使って訳されていたのである。』


確かに、「sexual slavery」では強制性が伴う表現となるので、橋下氏が拘っている強制ではなかったという発言の意図が伝わらない。橋下氏の今回の発言は基本的に擁護できるものではないが、発言を正確に伝えるという点では誤訳であり、フェアとはいえない。

先日ブログで紹介した国際的な人権外交の場である、国連人権理事会のUPR(普遍的定期審査)ではどういった英語が使われているか改めて見てみよう。勧告を行っている韓国、中国、オランダも、それに回答している日本側も「sexual
slavery」とは使わず、「comfort women」で用語統一している。唯一「sexual
slavery」と表現しているのは北朝鮮のみだ。ここから考えると、専門的には「comfort women」を使うほうが優勢で、「sexual slavery」は北朝鮮のように意図的に強制性を強調するための表現であることが推測される。

米国務省はこのことを認識してか「comfort women」を使っており、"sexslave"か"comfort women"か?」という記者の質問に対して、明確な定義を避けつつも、「過去もcomfort womenと表現してきた」と回答している(回答原文)。

欧米メディアは意図的なのか無知からなのか、この点については「北朝鮮なみ」ということになる。

とはいえ米下院の慰安婦謝罪要求決議では「sexual slavery」が使われているので、米メディアがこの用語の使用根拠を挙げることができることも同時に留意すべきだ。


橋下発言問題はブロゴスやアゴラなどでもさんざん議論されているが、このことを指摘したのはおそらくハフィントン・ポスト日本語版が初めてだろう。その点で、価値あるエントリーだったと評価したい。しかし、である。せっかく米国発グローバル・ブログメディアの日本版が誕生し、日米間の摩擦の要因の一部を指摘する良記事がエントリーされたのに、英訳記事が米国版に掲載されていないのだ(5月20日付で検索しても見つからない)。

代わりに目立つのは、「Toru Hashimoto, Osaka Mayor, Says Forced Prostitution Of Asian Women During World War II Was Necessary」――「強制売春は必要だった」というタイトルのAP通信の記事だ。ここには1400以上の様々なコメントが寄せられているが、「この記事は彼の発言を正しく伝えていない」というコメントも複数ある。それだけに、ハフィントン日本版で話題になっている英訳問題のエントリーを、ぜひ米国版でも掲載してほしいところだった。

私は日本版開設の折に書いた、「拝啓ハフィントンポスト様、中身はスカスカでしたがその可能性に期待しております。」という記事の中で、以下のようなことを述べた。

『「第1の特徴(米国発グローバル展開のブログメディアであるということ)として、早速日本版開設とその記事が英語やフランス語、スペイン語などで掲載され、米国版ではアリアナさんの投稿に1日で330以上のコメントがついていたこと、日本版編集長の松浦茂樹さんの記事や野田聖子さんの記事も英語で掲載されていたことは率直に喜ばしいことだと思います。日本人の論考が英語や多言語で発信されるメディアはほとんどないので、これについては大きな価値のあることですし、米国からも非欧米圏からの初の参戦を歓迎するコメントがありました。」』

この期待というか注文に対して、見事に応えてくれなかったことになる。まさに、第二の特徴である「朝日新聞との連携」が影響を及ぼしたのかと疑いたくなるほどだ。松浦編集長はメディア人としての気骨があるなら、朝日新聞とハフィントン本社とけんかするくらいの気概で、ハフィントン日本版編集部の同エントリーを米国版掲載までぜひこぎつけていただきたい。

今回の問題は、日本の海外への情報発信力の弱さが露呈した典型的な例だといえよう。そもそもハフィントン・ポストのような海外メディアに期待してしまうのがお門違いで、本来なら日本自身がしっかりと英語で海外に発信できる力をもっておくべきなのだろう。しかし、読売、朝日、毎日とどれも英語サイトはあまり見られていない状況で、発行部数世界トップ3の名が恥じる。加えて、日本政府の海外発信もイマイチで、外務省の英語ツイッターは日本語よりも少ない7,000フォロワーに過ぎない。首相官邸の英語Facebookも18,000likeでは、安倍首相の日本語アカウント34万likeに比べると物足りなさ過ぎる。今回の問題とは関係ないが、JICAの英語発信力も弱く、ツイッターやFacebookの英語アカウントはもっていない。その点でいえば、海外支援の規模が50分の1程である日本財団の方が(褒められるようなものではないが)まだましなくらいだ。JICAの担当者から、税金を使っている以上、どちらかというとドナーである日本国民に説明責任があるという話を聞いたが、本来は受益者である海外の人々にもっと伝えるべきなのではないだろうか。

橋下市長の周りには海外経験も豊富な有能なブレーンが多数いるはずなのだが、今回の発言に対する海外発信戦略はゼロというか極度のマイナスという状態だ。今後はこれまでの主要な全発言を英語、韓国語、中国語で公式発表したうえで、明確な謝罪文を日本語と3ヶ国語で表明すべきだ。それ以上のことはすべきでない。

今回の問題を反面教師として、海外への情報発信という日本のスネをどうにかしてほしいものだ。ソフトバンクモバイルの取締役特別顧問の松本徹三氏が指摘するように、「現在の極めてお祖末な日本の国際情報発信能力を大幅に向上させる為には、気の遠くなるような長い時間が必要」かもしれない。一方で、アルジャジーラは1996年の設立後3年でニューヨークタイムズから高い評価を得ているし、ハフィントン・ポストだって2005年設立だ。既存のNHKをちょこっといじるだけの小手先ではない大胆な取り組みを効果的に行えば、一定の成果を得られるのではないだろうか。クールジャパンで500億円などと言っているくらいなら、同じ予算でアルジャジーラに負けないメディアをつくってほしいものだ。

学びのエバンジェリスト
本山勝寛
http://d.hatena.ne.jp/theternal/

(本山 勝寛)