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マイナンバー法案のポイント

「共通番号」特需狙うIT企業 整備費用は1兆円規模に

SankeiBiz 5月10日(金)8時15分配信




国民一人一人に番号を割り当て、年金や納税の情報を1つの番号で一元的に管理する「共通番号(マイナンバー)」制度の関連法案が9日、衆院本会議で可決された。

法案は参院に送付され、今国会で成立する公算が大きくなった。
法案が成立すれば、政府は2015年秋ごろから各個人に番号を通知し、16年1月から利用を始める。

制度を支える情報システムの整備にかかる費用は数千億円から1兆円規模にのぼるとされ、IT関連企業は新制度がもたらす特需を取り込もうと動き出し始めた。


「(システムの)調達段階になれば、住民基本台帳ネットワークを作った強みを生かし、積極的に売り込みたい」。
ITサービス大手、NTTデータの岩本敏男社長は8日の決算会見で、共通番号制度関連のシステム受注に並々ならぬ意欲を示した。

富士通やNECなど官庁のシステムで納入実績のあるメーカーだけでなく、「千載一遇のチャンス」(ソフトバンク幹部)を逃すまいと、新規参入を狙うIT企業や外資系企業も少なくない。


もっとも、システムの総額に関する確定的な試算はない。
基幹となる個人情報表示機能と情報提供ネットワーク、情報保護監視システムの整備費について、所管する内閣官房は民主党政権時代に最大3000億円と見積もったが、「機能をどこまで含めるか明確ではなかった」(社会保障改革担当室)という。


政権交代後、政府CIO(最高情報責任者)室がコストを洗い直した結果、基幹部分の整備費は190億円と試算され、10分の1以下に縮減された。

とはいえ、全国で1700余りに上る市町村が持つシステムの改修やネットワーク接続、スマートフォン(高機能携帯電話)など携帯端末向けのサービスといった機能拡充を含めれば、市場規模は1兆円を優に超えるとみられる。IT業界が特需に目の色を変えるのも当然だ。


総務省によると、中央官庁の情報システムは約1500件あり、運営コストは年間5000億円かかっている。

省庁が個別に導入してきたことで縦割りの情報システムが乱立する結果を招いてきた。

省庁間のシステムを連携させるといった抜本改革が急務となるが、「スムーズにいくと考えるのは楽観的過ぎる」(同省幹部)といい、技術面も含めて課題を抱えているのが実情だ。


共通番号制度では申請した個人に番号や氏名、住所、顔写真などを記載したICカードを交付。

個人番号の利用範囲は当初、社会保障と税、災害対策に限定し、施行から3年後をめどに利用範囲拡大を検討する。


行政サービスを受けるための申請手続きが簡単になるメリットがある一方、個人情報の流出を懸念する声も少なくない。

失敗が許されない巨大システムの構築に向け、政府はコストを重視した従来の調達制度を見直し、納入企業の技術力や信頼性の高さを考慮に入れる構えだ。

NTTデータと大手電機系のIT企業は既に、省庁間のシステム連携に関する情報交換に乗りだしたとみられ、基幹システムの受注をめぐるつばぜり合いも水面下で始まっている。(芳賀由明)





なにが問題? 紆余曲折が予想される共通番号制度 (1/4ページ)



2013.4.22 05:00





マイナンバー法案のポイント



【ビジネスアイコラム】

3月1日に社会保障と税番号に関する法案(マイナンバー法案)が国会に提出された。早ければ2015年秋にも導入される。


マイナンバー制度(共通番号制度)は、国民に年金、医療、税務など6分野に共通する番号を割り振り、年金や医療サービスの利用実績、納税実態など個人の社会保障給付と所得の両面を一体管理する制度。


住民基本台帳ネットワークをベースに、国民一人一人に番号を付けたうえで、自治体が書面で住民に通知する。
また、健康保険証や年金手帳、介護保険証の機能をまとめたICカードの配布も計画されている。


まさに国民一人一人がマイナンバーを持つことで、いろいろな個人情報が一元的に管理・把握でき、効率的な行政サービスが受けられるという代物だ。




例えば、世帯が医療や介護、保育などでいくら負担しているかが簡単に合算できる。

また、確定申告など税務に使う番号も共通化されることから、世帯所得も同時に分かり、低所得世帯の負担合計に上限を設ける「総合合算制度」(仮称)も導入しやすくなる。


政府にとっては、消費税率を引き上げる際、低所得者の不満を解消するために「税の還付や税額控除」といった負担軽減策が導入しやすくなるというわけだ。


さらに、個人が保有する金融資産の損益が一目で分かることから金融庁が税制改正で要望している「金融商品の損益通算範囲の拡大」と合わせると、税の低減も期待できる。


これだけみれば願ったり、かなったりの制度のように映るが、ことはそう簡単ではないようだ。なにより導入までには越えなければならない高いハードルが存在する。


最大の障害は個人事業主や農業従事者などの反発であろう。

そもそも共通番号は、財務省がかねて準備してきた「納税者番号」が前身。

納税者に番号を割り振り、所得や資産、納税を一元的に把握するのが狙いだったが、国民の反発でお蔵入りになった。


さらに遡(さかのぼ)れば、1980年代に検討されたグリーンカード(少額貯蓄等利用者カード)に行きつく。

これも税務当局による所得捕捉に対し、個人事業者などが強く反発して、導入直前で撤回された。


さらに、所得や資産だけでなく病気など個人のプライバシーに係る情報まで国に管理されることに対する国民のアレルギーもある。


このため、共通番号の検討では、個人情報を保護するための第三者機関を首相の下に設置することや、行政機関職員などによる共通番号の不正使用について罰則を設けるほか、医療分野でも個人情報保護の特別法の整備を計画している。


それでも「東日本大震災の被災者にとって共通番号があれば、預貯金の確認や補償の履行、既往症の把握による適切な治療などが迅速に行えたはず」(被災自治体)との声は、マイナンバーの導入を後押しする。

はたして共通番号制度は三度目の正直になるだろうか。

(ジャーナリスト 森岡英樹)