つづき | 日本のお姉さん

つづき

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★築山さまからのおたより


北野様、こんにちは。


「今、モスクワでは日本とロシアの新しい関係構築に向けての
会談が終わり、共同記者会見が行われたところです。」

・・・・・・・・とメディアは報じていましたね。


私も日本とロシアの関係が、大きく変わるのではないかと期待
を込めて見ていました。

今回は今までとは、何かが違うぞ!・・・・と。


安倍首相とプーチン大統領の間で行われたトップ会談

ここにきて、日本とロシアの関係構築は、領土問題を挟んでみ
ても、非常にタイミングよく行われたものでしょう。


● ロシアの事情

ロシアでは、資源生産で得られるエネルギー輸出による割合
がGDP換算でおおよそ30パーセント。

石油・天然ガスの収入が国家予算の基幹となっていますが、
近年、欧州向け石油・天然ガスの割合が、アメリカ産シェール
ガス革命による影響で減少、

それまでの潤沢に資源をバックに強気の資源外交を展開し
ていたロシアは、ここにきて政策変更を迫られ始めたのでしょ
う。



そしてプーチンが取った策の一環が、東アジアへのパラダイムシフト。

資源を欧州から、成長著しいアジア極東方面に向け、日本や中国、
アジア地域の発展に関与していく方向転換。

経済の発展とともに、ロシアには安全保障面での危惧もあります。

ロシアの人口分布は、本土の西側に多く、極東・シベリア地域は少
ないため、台頭著しい中国に対する安全保障上の脅威も増すばか
りです。

事実、中国はウラジオストクを自国の領土だと主張し始めている。

そのため、日本との関係改善による発展を実現させることで、経済
面、安全保障面、双方で大きなメリットがあると考えているのでしょう。


ロシアが日本と経済のパイプを太くする上で、それが安全保障上の
役割まで担う関係を望んでいるのは、日本側も同じ。

尖閣諸島や竹島の領有権問題で、中国は対日包囲網を構築する
メディア戦略に出てきていますが、ここでロシアと密接な友好関係を
刻むことが出来れば、対中カウンタープレゼンスの意味も込めて、
日ロの関係は、東アジア全体の平和と発展にも大きく影響するはず
です。


ロシアは中国との貿易がトップ、日本は第8位ですが、今後、貿易
量を二倍以上に増やし、極東での経済、医療、安全保障の関係を
長期的視野に立って発展させていく関係が、今回の安倍首相・プー
チン大統領の会談で実現するでしょう。



● 懸案の北方領土問題

日ロ関係は、地政学的には近いけれど外交関係はどこか遠いもの
でした。

その要因は、北方領土問題です。

北方領土の経緯は、第二次大戦中、アメリカが対日戦線にロシア
を引きこもうと千島列島沿いの島々を当時のソ連に渡す確約をし
たところから拗れるのですが、

4島返還の原則、2島返還論、共同管理後期限付きでない返還な
どの案が出ては消え・・・の状態でした。


日本側の立場から言えば、ロシアの不法占拠を改め領土返還を
迫りたいところですが、交渉は相手があって始まるものですから、
過去の経緯を踏まえ、交渉の落とし所を模索する必要性もあるの
ではないでしょうか?

今までどおり、4島返還の原則論で押し通し、日ロ関係を停滞さ
せ中国の台頭を許すか?

それとも経済的連携を深め日ロ間の絆を強くし、中国と渡り合う
ためのパートナーとしてロシアを迎え入れ歴史の大転換を図るか?

両国が経済的利益を実現させることが、結果的に安全保障上の
利益にも寄与する政策、その様な関係構築を取って貰える方がよ
ほど重要ではないかと、思えてくるのですが・・・。



● 中国に脅威が、共通認識

今回、120名の経済人を引き連れての大訪問団にプーチン大統領
の高く評価されています。

経済的な両国の新たな結びつきは、21世紀に「新しいロシアとの関
係」を作る最初の1歩。

中国の経済・軍事的脅威が増す中、両国が共通認識として「対中戦
略」を政策の最重要課題として捉え始めていることがよく理解できます。

極東の安全保障はロシアにとっても死活問題。

4000キロに及ぶ国境線を接する中国に対しては、当然ながら潜在
的脅威と考えるでしょう。

中国との関係は、適度なバランスを保ちつつ進めていく必要があり
ますから、日本との関係がここで生きてくる。

資源外交を展開する上でも、アジアの平和と安定はロシアも望んで
いる。

ロシアが変わりつつある「今」、日本も変わる必要があるのではな
いでしょうか?

今後共、よろしくです。


★編集後記
前号編集後記で、「久しぶりにセカチューを見た」と書きました。
http://www.youtube.com/watch?v=ya5Vjvi7Tqw

そして、シンプルなストーリーなのに感情を強烈に揺さぶる
ドラマ、映画は日本人にしかとれないと。

書き終わった後、なんとなくあの映画を思い出しました。

イタリア映画ですが、やはり強烈です。

モリコーネの音楽がすばらしい。

http://www.youtube.com/watch?v=9RYmWNWmKT4


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北野幸伯
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