福島第一原発では、一日400トンのペースで汚染水が増え続けています。
綱渡りの汚染水管理
4月11日 0時30分
「事故は収束していない」。そのことを実感させる出来事が東京電力福島第一原子力発電所でありました。
増え続ける汚染水を保管する重要な設備の地下の貯水槽で、今月5日以降、相次いで水漏れが見つかったのです。
福島第一原発では、先月から今月にかけて使用済み燃料プールの冷却システムが止まるなどのトラブルも相次いでいます。
事故から2年、今、現場で何が起きているのか。
今後の廃炉作業は大丈夫なのか。
科学文化部の根元良弘デスクが解説します。
相次ぐ貯水槽の水漏れ
今月5日深夜、東京電力から1通のメールが届きました。
深夜、早朝に福島第一原発でトラブルなどがあったときの緊急連絡で、そこには汚染水を保管している、地下に設置した貯水槽の1つ「2号貯水槽」から周辺の地盤に放射性物質を含む水が漏れていると書かれていました。
1時間半後に開かれた緊急の記者会見。
東京電力は謝罪するとともに、貯水槽にたまっている1万3000トンの汚染水を隣にある別の貯水槽に移すとともに、漏れた原因や環境への影響の調査を急ぐ考えを明らかにしました。
ところが貯水槽の水漏れはそれだけにとどまりませんでした。
その後も「3号貯水槽」で水漏れが発覚。
9日には、最初に水漏れが見つかった「2号貯水槽」から水を移し替えていた「1号貯水槽」でも水漏れが起きていることが分かりました。
これまでに水漏れが確認されたのは、7つある貯水槽のうち3か所、貯水槽の信頼性が大きく揺らいだのです。
貯水槽水漏れの衝撃
福島第一原発では、原子炉建屋の壊れた壁などから地下水が流れ込み、今も一日400トンのペースで汚染水が増え続けています。
これらの汚染水は、廃炉作業を進める作業員の被ばくを減らすうえでも、海などへの流出を防ぐ意味でもしっかりと管理する必要があり、東京電力は敷地内に貯蔵用のタンクを次々に設置して、増え続ける汚染水に対応してきました。
これまでに設置されたタンクは大小合わせて900以上。
敷地に所狭しとタンクが並び、設置に適した場所は少なくなってきています。
こうした中で、地下の貯水槽は東京電力にとって、大量に汚染水をためることのできる重要な施設でした。
7つ合わせた貯蔵容量は実に5万8000トン分に上り、これは単純計算で一日に発生する汚染水の145日分、およそ5か月分に相当します。
水漏れが発覚したとき、すでに2万7000トンの汚染水が保管され、今後も順次、汚染水をためることになっていました。
貯水槽の水漏れは、東京電力にとって大きな誤算で、汚染水の保管計画を抜本的に見直す必要に迫られたのです。
破綻する汚染水保管計画
水漏れの原因は今も分かっていません。
同じ構造を持つ貯水槽は、どれも漏れ続けるおそれがあります。
しかし、9日、東京電力が示した対応は、一部の貯水槽については監視を続けながら当面使うというものでした。
水漏れのリスクがあるのになぜ使い続けようというのか。
現在、汚染水を保管できるタンクなどの容量は32万トン余りですが、すでにその8割を超える27万トン分が埋まっています。
残りの5万トン余りのうち、半分以上は貯水槽の分で、もし貯水槽すべてを使えないとなると、地上のタンクでは賄えきれないからです。
ところが、この方針は一夜にして変更になります。
東京電力は10日、廣瀬直己社長が記者会見し、貯水槽に保管されている汚染水すべてを地上のタンクに移すなどして、今後、貯水槽は使わない方針を明らかにしました。
この考えについては、茂木経済産業大臣も10日午前の衆議院経済産業委員会で示していました。
汚染水の海への流出を懸念する地元の自治体や住民から強い不安の声が示されるなか、地下の貯水槽を使い続けるという選択肢は取りえなかったのです。
東京電力はタンクの増設計画を前倒して保管容量を増やすとともに、海への流出がないか監視を強めるとして、貯水槽の周辺や海側に5メートルから30メートルの穴を掘り、地下水を抜いて放射性物質の濃度を継続的にモニタリングする方針を打ち出しました。
ただ、タンクの増設一つとっても適した場所を探すのは難しくなっていて、場所によっては汚染水を移送するのに長い距離が必要になるなど課題は山積しています。
今後も綱渡りの保管状況が続くことになります。
解決策は
東京電力も国もタンクの増設などの長期的な保管計画の見直しを進めるとしています。
それとともに、今ある汚染水のリスクをできるだけ下げることが重要だとして、多くの放射性物質を取り除くことができる新たな処理設備を早期に導入し、万一漏れたとしても環境への影響を少なくするとしています。
しかし、増え続ける汚染水に対し、タンクを無尽蔵に増やし続けることは現実的に不可能です。
これについては、原子力規制委員会も同じ考えで、専門家を交えた検討会合で議論を進めています。
この中では、新たな処理設備が動くとトリチウム以外の放射性物質は法令で定めた放射性物質の排出基準以下にできる可能性があり、海への放出も検討課題に上がっています。
ただ、放射性物質を含む汚染水の海洋放出は、事故直後、大きな問題となっていて、地元は強く拒否しており、実現の見通しはありません。
ほかに、水を蒸発させる方式もありますが、技術的に難しいとされていて、現時点で抜本的な解決策は見いだせていません。
当面は、タンクの増設に頼らざるをえないのです。
今後求められることは
福島第一原発では、事故から2年がたったあとも水漏れ以外にもトラブルが後を絶ちません。
誤った操作や施工ミスのほか、管理態勢の甘さなども指摘されています。
貯水槽のような施設を作る際、通常の原発であれば、国の安全審査を受けて検査などに合格しなければ使うことはできません。
ところが、事故が起きた福島第一原発は、被ばくのリスクがある特殊な環境で、原子炉の冷却や汚染水の処理、それに廃炉といった作業を急ぐ必要があり、通常の法令の適用が除外されています。
国の原子力規制庁も東京電力から提出された施設運営計画などをみてチェックはしていますが、トラブルが相次いでいる結果から見ると、チェックの甘さがあった可能性はあります。
今後40年続くとされる廃炉作業。
汚染水問題の解決は、廃炉作業を迅速に進めるうえで極めて重要な要素の一つで、東京電力、国、専門家などが一体となって、地元の理解も得ながら、よりよい解決策を見いだす努力を続けていく必要があります。http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2013_0410.html
放射能を食べてくれる微生物をどんどん増やして
地道に浄化してもらうというのはどうなのかな?
微生物は、培養できるんじゃない?