キプロス議会、銀行課税案を否決の見通し
キプロス議会、銀行課税案を否決の見通し
2013年 03月 19日 17:11 JST
[ニコシア 19日 ロイター] キプロスの議会は19日の採決で、預金への課税案を否決する可能性が高い。課税案が議会を通過しなければ、同国はデフォルト(債務不履行)と銀行セクターの崩壊へ近づく可能性がある。
キプロス議会は1600GMT(日本時間20日午前1時)に開会する予定だが、どの政党も過半数を確保していない議会で、課税案が可決される可能性は低い。
政府の報道官は国営ラジオで「課税案は議会を通過しないようだ」と述べた。
議会での採決は当初17日に予定されていたが、これまで既に2度延期されている。
また、報道官は、アナスタシアディス大統領がドイツのメルケル首相やレーン欧州委員と18日夜に協議したことを明らかにした。大統領は先週のユーロ圏財務相会合での合意を順守する意向を示し、欧州連合(EU)のパートナーによる支援を求めたという。19日にもメルケル首相と協議する可能性が高いという。さらに、ロシアのプーチン大統領とも19日に協議する可能性があるという。
http://jp.reuters.com/article/jpRussia/idJPTYE92I05C20130319?rpc=188
コラム:キプロス「ゲーム」はまだ続く
2013年 03月 26日
By Felix Salmon
ロシアの富豪たちにとって、先週末は心休まる日々ではなかっただろう。まず、新興財閥のボリス・ベレゾフスキー氏が英ロンドン郊外アスコットの自宅で死亡しているのが見つかった。そして、キプロス2大銀行では預金保険対象外の大口預金者(ロシアの富豪)に負担が課されることになった。この負担は、キプロス危機が表面化した時の想像をはるかに超えるものになりそうだ。
キプロスのアナスタシアディス大統領は当初、大口預金者(10万ユーロ以上)に10%以上の預金課税を課すことには断固反対する姿勢を示していた。しかし、わずかこの1週間で、状況は劇的に変化した。国内最大手バンク・オブ・キプロスの預金保険対象外の大口預金は約40%カットされる可能性があり、同2位キプロス・ポピュラー(ライキ)銀行の大口預金者なら全額を失うことになる。
キプロス政府が、欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)の3者で構成するトロイカと合意した内容は、大胆かつ荒々しい地政学的権力闘争を映し出している。
公式声明には「ユーログループは、キプロスとロシアが金融支援で合意することを期待する」との言及があるかもしれない。しかし、ロシア人が意に反して数十億ユーロもの貢献を余儀なくされることを考えると、追加支援を喜んでするとは極めて考えにくい。
キプロス支援をめぐる欧州とロシアのポーカーゲームでは、欧州が最大限攻撃的な手を打った。それは基本的に、ロシア人預金者に最大限の貢献を強いるものだ。今回の合意で一件落着となるなら、ロシアにとっては明らかな負けとなり、EUにとっては勝ちとなる。
まず、資本規制が設けられないだろうことは良いことだ。バンク・オブ・キプロスの一部預金は凍結され、これは一種の資本規制と呼べるものだが、キプロス国内および国外へ移動するユーロの「引き出し制限」はない。金融市場も概ね平静を保っている。最大の打撃を被っているのがロシア人であることから、欧州株式ではパニックは起きていない。
さらに重要なのは、小口預金者への打撃やユーロ圏離脱といった大きな問題が避けられたことだ。そして、トロイカ的観点から最も重要なのは、全てが既存の銀行整理機関のもとで構築されており、キプロス議会の採決を必要としないため、ロシアの圧力で合意がひっくり返される心配がないことだ。
しかし、もちろんゲームはここで終わりではない。キプロス経済に与える影響はあまりに甚大で、もう1度か2度の大規模な債務支援なくしては、同国が長期的にユーロ圏にとどまることは極めて困難だからだ。
キプロス政府はかつてのアイスランドのように、国内の一部銀行を破綻させる。しかし、アイスランドには銀行以外にも産業があった。何よりも、アイスランドは自国通貨を安くすることで産業に競争力を与えることができた。
本当の意味でアイスランドのようになるには、キプロスは通貨を切り下げ、デフォルトする必要がある。それができなければ、キプロスは議会が反乱して緊縮策を無効にするまで、ユーロ圏のみならずEUから脱退するまで、外部から課された緊縮策に縛られて生きていくしかないだろう。
キプロス経済は向こう数年間、かなりの苦境を味わい、国民はそれを欧州のせいにするだろう。自国経済に見合わない過大評価された通貨を背負わされ、経済はマイナス成長しか展望できなければ、キプロスが自らユーロを離脱することは全く起こり得ることだ。こうした不満が表れ始めたとき、ロシアはもう一度キプロスに手を差し伸べるだろう。
(25日 ロイター)
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