円が逃避通貨でなくなるのは日本が市場の信頼を失ったときだが、
あるヘッジファンドのマネジャーは、円が逃避通貨でなくなるのは日本が市場の信頼を失ったときだが、日本はそうなることを望まないだろうと述べた。
2013年 3月 19日 08:00 JST
日本円の逃避先安全資産としての地位はまだ健在
By TAKASHI MOCHIZUKI
【東京】下落が続く日本円だが、この数年間混乱が続いた市場の中で確立してきたリスク増大時の安全な逃避先通貨としての地位をまだ手放していないことが18日に浮き彫りとなった。円安によってインフレと輸出を押し上げ、経済成長につなげようとしている安倍晋三首相や日本銀行の経済刺激政策にとってはそれが障害となる可能性がある。
18日のアジア市場で、円は対ドルで先週金曜のニューヨーク取引所終値(1ドル=95円25銭)から約2%上昇し、6日以来の高値となる93円45銭を付けた。週末にキプロスから出たニュースによってユーロ圏の金融懸念が再燃したためだ。
キプロス政府は16日、ユーロ圏と国際通貨基金(IMF)からの金融支援と引き換えに銀行預金に一時的に課税することを発表し、他国にも懸念が広まってユーロが売られた。
円はこの4カ月間、安倍政権のもとで日銀がデフレ対策に本腰を入れるとの期待感により急落し、日本の株式市場は急騰していた。だが18日には円高が嫌気され、日経平均は2.7%下落した。このことは、経済活性化を目指す安倍政権にとって円高が大きな脅威となるリスクを浮き彫りにしている。エコノミストらは、景気回復にとって最大の特効薬は新たな総裁に率いられた日銀の積極的な金融緩和による円安とみている。
投資家らは、月曜の円上昇はポジション調整によるものだけでなく、円が今でも金融市場が荒れ模様になった場合の逃避先となっていることを示すものと考えている。
みずほコーポレート銀行のシニア・ディーラー、堅智司氏は、10年以上にわたりリスクオフ局面では逃避通貨として円を買ってきたと述べる。日本の貿易黒字がなくなったからといってその文化が簡単に捨て去られるわけではなく、逃避先としてほぼ条件反射的に円が買われるという。
トレーダーらによれば、リスク回避局面で円が長らく逃避通貨として好まれてきた1つの大きな理由は経常黒字だ。ここ数年は輸出の減少と福島原発事故後のエネルギー輸入増によって貿易収支が悪化し、経常黒字も縮小傾向にあるが、それでも黒字が続いていることは、円が需要過剰になっていることを示している。
しかし、貿易フローだけでなく、危機にあっても幅広い金融市場で迅速に低コストで取引できる円市場の流動性は逃避通貨にとって重要な要因だ。
三菱UFJ信託銀行の為替グループマネジャー、八幡高雄氏は、時間や市場の場所を問わず取引できる円は資産の避難先として使える点を指摘する。国際決済銀行(BIS)によれば、2010年時点で円は世界の通貨市場で米ドル(84.9%)とユーロ(39.1%)に次ぐ第3位(19.0%)のシェアを占める。
クレディ・アグリコル銀行為替部の斎藤裕司ディレクターは、市場の日本に対する信認が高い点も無視できないという。
最近の貿易・経常収支悪化によって逃避通貨としての円の魅力は薄れたものの、15年にわたるデフレと度重なるリセッションにもかかわらず、日本は依然として世界第3位の経済大国であり、投資家の信頼を得ている。
トレーダーらは、少なくとも当面は、金融市場に混乱が生じた場合に円が逃避先となるだろうとみている。
日本の公的債務残高は現在、国内総生産(GDP)の2倍を超えており、その債務対処能力に関する市場の見方が変われば、逃避通貨としての円の地位も変わるかもしれない。
だがそう考える投資家は今のところあまりいない。
あるヘッジファンドのマネジャーは、円が逃避通貨でなくなるのは日本が市場の信頼を失ったときだが、日本はそうなることを望まないだろうと述べた。http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324823704578368923505928156.html?mod=WSJ_hp_mostpop_read
2013年 3月 19日 08:00 JST
日本円の逃避先安全資産としての地位はまだ健在
By TAKASHI MOCHIZUKI
【東京】下落が続く日本円だが、この数年間混乱が続いた市場の中で確立してきたリスク増大時の安全な逃避先通貨としての地位をまだ手放していないことが18日に浮き彫りとなった。円安によってインフレと輸出を押し上げ、経済成長につなげようとしている安倍晋三首相や日本銀行の経済刺激政策にとってはそれが障害となる可能性がある。
18日のアジア市場で、円は対ドルで先週金曜のニューヨーク取引所終値(1ドル=95円25銭)から約2%上昇し、6日以来の高値となる93円45銭を付けた。週末にキプロスから出たニュースによってユーロ圏の金融懸念が再燃したためだ。
キプロス政府は16日、ユーロ圏と国際通貨基金(IMF)からの金融支援と引き換えに銀行預金に一時的に課税することを発表し、他国にも懸念が広まってユーロが売られた。
円はこの4カ月間、安倍政権のもとで日銀がデフレ対策に本腰を入れるとの期待感により急落し、日本の株式市場は急騰していた。だが18日には円高が嫌気され、日経平均は2.7%下落した。このことは、経済活性化を目指す安倍政権にとって円高が大きな脅威となるリスクを浮き彫りにしている。エコノミストらは、景気回復にとって最大の特効薬は新たな総裁に率いられた日銀の積極的な金融緩和による円安とみている。
投資家らは、月曜の円上昇はポジション調整によるものだけでなく、円が今でも金融市場が荒れ模様になった場合の逃避先となっていることを示すものと考えている。
みずほコーポレート銀行のシニア・ディーラー、堅智司氏は、10年以上にわたりリスクオフ局面では逃避通貨として円を買ってきたと述べる。日本の貿易黒字がなくなったからといってその文化が簡単に捨て去られるわけではなく、逃避先としてほぼ条件反射的に円が買われるという。
トレーダーらによれば、リスク回避局面で円が長らく逃避通貨として好まれてきた1つの大きな理由は経常黒字だ。ここ数年は輸出の減少と福島原発事故後のエネルギー輸入増によって貿易収支が悪化し、経常黒字も縮小傾向にあるが、それでも黒字が続いていることは、円が需要過剰になっていることを示している。
しかし、貿易フローだけでなく、危機にあっても幅広い金融市場で迅速に低コストで取引できる円市場の流動性は逃避通貨にとって重要な要因だ。
三菱UFJ信託銀行の為替グループマネジャー、八幡高雄氏は、時間や市場の場所を問わず取引できる円は資産の避難先として使える点を指摘する。国際決済銀行(BIS)によれば、2010年時点で円は世界の通貨市場で米ドル(84.9%)とユーロ(39.1%)に次ぐ第3位(19.0%)のシェアを占める。
クレディ・アグリコル銀行為替部の斎藤裕司ディレクターは、市場の日本に対する信認が高い点も無視できないという。
最近の貿易・経常収支悪化によって逃避通貨としての円の魅力は薄れたものの、15年にわたるデフレと度重なるリセッションにもかかわらず、日本は依然として世界第3位の経済大国であり、投資家の信頼を得ている。
トレーダーらは、少なくとも当面は、金融市場に混乱が生じた場合に円が逃避先となるだろうとみている。
日本の公的債務残高は現在、国内総生産(GDP)の2倍を超えており、その債務対処能力に関する市場の見方が変われば、逃避通貨としての円の地位も変わるかもしれない。
だがそう考える投資家は今のところあまりいない。
あるヘッジファンドのマネジャーは、円が逃避通貨でなくなるのは日本が市場の信頼を失ったときだが、日本はそうなることを望まないだろうと述べた。http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324823704578368923505928156.html?mod=WSJ_hp_mostpop_read