きちんと仕事ができる環境を整備すること | 日本のお姉さん

きちんと仕事ができる環境を整備すること

ガラパゴス化している、日本の女性活用
東洋経済オンライン 3月14日(木)8時5分配信

女性活用がなかなか進まない日本。

大手企業は女性活用を推進しようとさまざまな制度を導入しているが、女性管理職比率などは依然低いままだ。


ダイバーシティやワークライフバランスに詳しいアパショナータ代表のパク・スックチャ氏は、優秀な女性社員が何年も育休・時短勤務などを続け、キャリアアップの妨げになっていることが、女性活用が進まない大きな原因と考える。


今後、早急に検討しなければいけないのは女性の労働時間を減らす各種社内制度を充実させるのではなく、きちんと仕事ができる環境を整備することだという。


問題の本質をとらえズバリと指摘するコンサルタントが「育休・時短勤務による課題」の原因と解決法を紹介する。


米国、アジアと比較してみると? 

2005年の出生率が過去最低を記録した「1.26ショック」を機に、政府は少子化への危機感を高め、ワークライフバランス(主に仕事と家庭の両立支援)を強く推進し始めた。


そして、従業員の子育て支援行動計画が企業に義務づけられて以来、企業での両立支援への取り組みは急速に進んだ。 


特に大手企業では、法定以上の育児休業や短時間勤務を導入する企業が大幅に増え、現在では2、3年間の育児休業や、子が小学3年まで利用できる時短勤務制度を提供する企業も珍しくない。


■ 出産で離職する女性は減ったが… 


企業が両立支援を充実させる大きな理由は「女性従業員の出産に伴う離職率を低下させること」、そして「女性活用を推進させること」にある。企業努力の結果、05年に72.3%だった女性の育児休業取得率(厚生労働省調査)は、2011年には87.8%まで高まり、従業員数500人以上の企業では91.4%。100%に近い大手企業も多くなるなど、出産で離職する女性はぐっと減った。


 さて、両立支援には、さまざまなコストがかかる。08年のリーマンショックおよび11年の東日本大震災以降、景気低迷が長引き、大手企業でさえも経済的体力が低下している。


企業は女性を定着させて活用し、貢献してもらうことを期待して両立支援を進めてきたのだ。しかし、多くの企業にとって想定外のことが起き始めた。


特定部署で子育て社員集中による周囲の負担増や、制度をフル利用することで、仕事に対するモチベーションを低下させる女性社員の増加など、育児休業と時短勤務に関係する問題が出始めるようになったのだ。


■ 日本の両立支援は、戦力化につながっていない 


大和総研の主席研究員、河口真理子氏は、現在のワークライフバランス政策は「家庭責任が主で、会社では、補助的な仕事を行う女性社員を大量に作り出した」と指摘する。 


大半の企業は、女性の活躍を期待して両立支援を充実させたにもかかわらず、女性が単に辞めなくなっただけという「定着」にとどまり、戦力化にはつながっていないのが現状だ。

女性が出産後も仕事を続けることが当たり前になりつつある過程で、育児休業者や時短勤務者が増加しており、この問題は今後より大きくなっていくだろう。

 興味深いことに、海外では日本のような育休・時短にかかわる問題は見られない。なぜだろう。

グローバル化が進む中、両立支援も女性活躍推進もグローバルな視点抜きでは語れない。ここで海外事情を見ていこう。


■ 米国では、女性が企業の両立支援を勝ち取った 


日本はしばしば欧州の両立支援の例を取り上げるが、欧州では高い国民負担率(税金)により政府が両立支援を行っているので、企業はあまり取り組んでいない。 


一方、国民負担率の低い米国は政府の支援が手薄な分、企業が両立支援を担わなくてはならない。

そのため、従業員に高い生産性などの見返りを求めるのだ。

終身雇用がなく、低パフォーマンスを理由とした解雇もありえるので、従業員は制度に甘えられない。


そのような状況下、女性たちは期待された成果を出し、両立支援を勝ち取っていったのだった。 


海外企業が両立支援に取り組む目的は「従業員が家庭責任を果たしながらも、仕事上の成果が出せるように、障害となるものを取り除くこと」。


そして、企業と従業員のWin-Win関係を達成するには双方に責任が生じる。単に「従業員が子育てをしながら仕事を続けやすくするため」ではないのである


。この認識のギャップが日本のワークライフバランスのガラパゴス化が進む要因の一つだろう。 


ここでは女性活用が進んでいる米国及び主要なアジア諸国を比較する。企業のアジア進出が加速化する中、多くの人にとってアジア人は競合相手にも同僚にもなる可能性が高く、アジアの現状を知ることは重要だ。 


出産休暇 育休 時短

日本 14週間 ○ ○

米国 12週間 △ △

香港 10週間 X X

シンガポール 16週間 X X

台湾 8週間  △ X

中国 98日間 X X 

○:あり、△:限定的、×:なし。

(注)筆者調査、作成 


米国では政府が無休の産前産後12週間の休暇を提供するのみで、育児休業は個々の企業に任せられ、一般的に産後3~6カ月前後で職場復帰する。


企業はさまざまな柔軟な勤務形態を調えているが、従業員が時短勤務を利用できるのは、あくまでも仕事に支障がない場合にのみ許可され、「全社員に平等」には提供されない。


制度は権利ではないからだ。 

また、主なアジア諸国では一般的に育児休業と時短勤務がないため、8~16週間の出産休暇後、フルタイムで復帰する。


米国やアジアでは終身雇用がないので、家庭責任があっても、企業は給与に見合ったパフォーマンスを期待し、働く側も雇用やキャリアロスを心配して、保障される出産休暇直後に復帰するのだ。


米国や主なアジア諸国は、日本の育休や時短勤務制度のような手厚い制度はない。だが、終身雇用がない分、労働市場は流動化しており、自分の能力レベルの転職市場での職場選びは、それほど難しいことではない。 


このように米国やアジアでは育児休業や時短勤務はないし、またあったとしても非常に限定的だ。だが、日本のような問題は起こっていない。


つまり「育休・時短勤務による仕事への支障」は、日本だけが抱えている特有の課題なのだ。


ちなみに上記のアジア諸国の女性管理職率は欧米並みに高く、国際競争力ランキング(IMD)も日本よりはるかに高い。 


日本はこのような状況を解決しないと、将来的に問題は拡大し、企業のグローバル競争力にも影響が出る恐れがある。直接的間接的コストが発生する両立支援を、どのようにすれば企業メリットにつながるかをしっかり問わなくてはいけない時期に来ているのだ。(撮影:梅谷 秀司)http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130314-00013268-toyo-us_all&p=1

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女性はなぜ出世すべきなのか?

出世することの2つのメリット


岡島 悦子 :ヘッドハンター、プロノバ社長筑波大学国際関係学類卒業。ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。三菱商事、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2002年グロービス・グループの経営人材紹介サービス会社であるグロービス・マネジメント・バンク事業立上げに参画。2005年より代表取締役。07年に独立し、「経営のプロ」創出のシンクタンクであるプロノバ設立、同代表取締役社長就任。ベンチャー企業、再生中の企業に対し、COO/CFO/経営企画室長を中心に、年間約100名の「経営のプロ」人材を紹介。経営チーム組成アドバイスや次世代経営者育成アドバイスなど、経営者のディスカッションパートナーとして豊富な実績を保有。キャリア、リーダーシップに関する講演多数。グロービス?フェロー・講師(リーダーシップ、ベンチャーマネジメント、サービスマネジメント領域)。経営共創基盤?アドバイザー。総務省 「ICTベンチャーの人材確保の在り方に関する研究会」委員。内閣府「地域力再生機構研究会」委員等、公職を歴任。ダボス会議運営の世界経済フォーラムから「Young Global Leader 2007(世界の若手リーダー250人)」に選出される。


ヘッドハンターとして感じること女性が生涯にわたって働くことが当たり前になってずいぶん経ちました。


「結婚した女性は寿退社するもの」という時代もあったことを思えば、ずいぶん変わったものだと思います。


しかし、わが国では女性の管理職や経営者はまだまだ少ないのが現状です。


世界経済フォーラムがまとめた2012年の男女平等ランキングによれば、日本はなんと135国中101位。


ほかの先進国に比べ、企業幹部に女性が少ないことが響いているようです。多様性が受容されている組織からはイノベーションが生まれやすいという観点から考えても、これは意識的に改善されていくべき課題だと思います。


私はもともと仕事においては男も女もないと思っていますし、「女性(男性)というのは、こうだ」というように、性別で決め付ける考え方が好きではありません。性別の差異を語る前に、ビジネスへの「プロフェッショナリズム」ということが求められていると思っています。


しかしヘッドハンターの仕事を通じて働く女性たちを見ていると、男性社会の暗黙の掟を単に知らないというだけで、機会をつかみ損ねたり、つまずいたりしているケースがあまりにも多いように感じます。


「オヤジ社会の掟」を知らない本来は女性にも、いわゆる「出世」ができるだけの能力は絶対にあります。

ただ、まだマネジメントレベルで働く女性の数が少なく歴史も浅いために、「感情が高ぶったときこそ低い声でゆっくり話すべきだ」とか、「プレゼンのときはダークスーツを着るべきだ」とか、そういう小さな決まりごとを知らないだけで損をしている方が多いようです。


こういうことは誰かが教えてくれればラッキーだけれど、周囲の人たちは「あなたが知らないということを知らない」ので、教えようがないのではないかと思います。

私自身は24年間のビジネス人生の中で、ラッキーなことに周囲にすばらしいメンターが多く、失敗しながらもたくさんのことを教えていただいてきました。


ただ、マネジメントレベルの仕事をするようになって初めて気づいた「オヤジ社会の掟」が多々あります。

そしてその知識の欠如が「ビジネス上の信頼貯金」不足を招いていたのではないかと思い当たるフシがいくつもあったのも事実です。

そこで私の知っている範囲で伝えられることは広く伝えたほうがいいと思い、この連載を始めることにしました。


私もまだまだ悩みも多く、また修行中の部分もあるわけですが、最近特に経営者の方々からのご相談の多い「なぜ女性は出世できないのか」「どうすれば出世できるのか」ということをはじめ、女性と仕事にまつわる諸問題について、皆さんと一緒に考えていければと思っています。


この連載の内容は、縦社会での付き合いが減少している若手男性の方にとっても、いくつかの気づきがあるかもしれません。加えて、「女性の活用が急務にもかかわらず、ウチの女性は出世したがらない」とお悩みのマネジメント層の方にも、何らかのヒントをご提供できれば幸いです。


出世できないのは、女性にも一因がある女性が出世できないのは、社会構造の問題もありますが、女性のほうにも一因があるように思います。優秀で仕事ができるにもかかわらず、「別に偉くならなくてもいい」「出世したくない」と思っている人が多いからです。


せっかく上司が昇進を打診してくれても、女性のほうで断ってしまうことも少なくありません。


出世したくない理由としては、いろいろなことが考えられるでしょう。たとえば以下のような理由があるのではないかと思います。「家庭と仕事の両立は無理だと思う」「下手に偉くなって、重い責任を負わされたくない」「男性並みに働いて、おじさん化するのはゴメン」「偉くなったりすると男性に敬遠されてモテなくなりそう」「部下を育てたり、マネジメントしたりすることに自信がない」「会社の中で変に目立ちたくない」


女性の社会進出先進国である米国でさえも、女性は自分の能力を過小評価しがちで、出世が遅れる傾向がある、とのことです。


でも私はあえて、「女性も出世を目指すべき」だと言いたい。これは男性も同じですが、企業の中で、自分のやりたいことをやりたいスタイルでやるには、ある程度上のポジションに就いたほうがいいからです。それに私の周りの働く女性たちを見ていると、結婚や子育てと仕事を両立させている人はいくらでもいますし、会社で高い地位にいる女性はプロフェッショナリズムを究めておられますが、皆さん非常にチャーミングです。「出世したからといって、男性化しなくてはならないことはないんだな」と納得できます。


出世すると、たくさんの情報にアクセスできる具体的にいえば、出世することの利点は2つあります。まず1つは自分が意思決定者になって、たくさんの選択肢の中からこれだというものを選べるようになるということ。


もう1つは、たくさんの情報にアクセスする権利が持てるということです。できるだけたくさんの情報を基に意思決定したほうが判断を誤りにくくなるのは当然でしょう。「意思決定ができる」とは、別の言い方をすれば、他人が下した意思決定に左右されないで済むということでもあります。多くの女性たちは、難しいことは誰かに決めてもらって、それに従うほうが楽だと思っているところがありますが、でもそれは違います。


たとえばあなたが製薬会社の研究所に勤めていて、精魂込めて新薬開発に取り組んでいるとしましょう。ところがある日突然、上層部が、「その新薬は完成したところでそれほど儲からないだろう」という理由で、開発を中止すると言ってきました。その薬をどんなに待っている人がいるか、それがどんなに世の中の役に立つかを知っていて、説明できるのはあなただけ。しかしあなたはヒラ社員なので、社内で発言権がないに等しく、それにノーと言えないとしたらどうでしょう。


上司にプロジェクト継続を訴えても、「上が決めたことだから」とスルーされてしまいます。出世すると、選挙権が得られるしかしあなたが多少なりとも、社内で高い地位にいたとしたら、話は違ってきます。


プロジェクトが中止されるかもしれないという情報は早めに耳に入ってくるし、それが本決まりになりそうになったら、経営の意思決定の場で自分の意見を言うこともできるのです。社内での地位が低いばかりに、意思決定の場にいられないとしたら、こんなに残念なことはありません。もちろん組織全体で話し合った結果、希望が通らないこともよくあります。


でも仮にそうだとしても、意に沿わない案件については反対の意を表明できるとか、その案が意思決定の俎上に載ったことを知っているというだけでも、すごく意味のあることです。つまり選挙権がなければ、政治に文句を言いたくても言う方法すらない。

しかし選挙権があれば、少なくとも一票を投じることはできます。出世をするということは、選挙権を得るようなものです。

いい仕事をするためには、まじめにコツコツやるだけではなく、権力を持って、権力者同士の話し合いの「場」に上がることもまた必要なのです。

「でもうちの会社の幹部なんて、全然うらやましくない。あの人たちの仲間にはなりたくない」と思うかもしれません。


でもいざ出世してみると、高いところに上った人にしか見えない、今までよりもっと広い世界が見えてきます。前述したように出世すると入ってくる情報の量が違いますから、「私が手掛けている薬の開発より、再生医療に注力したほうが世の中のためになる」と思い直すかもしれない。さらに言えば、今の時代はリスクを取らないことがリスクです。


もし自分たちの上に、あまりにもリスクを取らない人たちがたくさんいたら、自分たちの世代は先送りにしてきた負の遺産を押し付けられる可能性もあります。そういう経営判断をさせないためにも、「場」に上がることは重要です。


出産前に「信頼貯金」を貯めておくそのためにはやはり出世したほうがいい。ではどうすれば出世できるかといえば、前倒しでキャリアを「意識的に」構築することが必要です。終身雇用の時代は、極端にいえば、結果を出すのは50代以降でも構いませんでした。


しかし今の時代、抜擢される人になるには、人より早回しで成長する必要があります。


20代がインプットの時代だとしたら、30代からはインプットと並行しながらそれを拡張していき、遅くとも40代からは結果を出すことが求められる。しかし女性の場合、結婚・出産でキャリアが中断されますから、それをもっと早めにやっておくことです。


体力のある20代のうちに男性よりも頑張って、できれば出産前の28?32歳ごろまでに「潜在可能性を立証できるような、わかりやすい実績」を1つ2つつくっておく。


「この人はこれだけの実績を出せているのだから、今後の成長も見込めるだろう、だから投資(次の成長の機会の提供)しておかなければ」と思わせるだけの実績です。

そうやって「信頼貯金」の残高を貯めておけば、結婚・出産しても会社から戻ってきてほしいと言ってもらえますし、戻ってきてからも「子どものお迎えがあるので5時で帰ります」という働き方を認めてもらえる。


若いうちに頑張っておけば、後になって自分が仕事の内容や働くスタイルを選べる側に立て、自由度が増すのです。出世は目的ではなく、自分の人生を自分で決めるための手段です。


まずは女性たちも、「出世」を敬遠せず、「健全な」出世欲を持つことからスタートしてはいかがでしょう。


男性に比べて速いサイクルでキャリア上の意思決定を求められる女性こそ、「早回しのキャリア形成」が向いています。それこそが、生涯にわたって、自らの価値観に合致したワーク・ライフ・バランスを勝ち取る大きな武器になるのではないかと私は考えているのです。(構成:長山清子、撮影:今井康一)http://toyokeizai.net/articles/-/12536