光合成細菌でセシウム回収-光合成細菌でウラン、ストロンチウム、コバルトも回収
光合成細菌でセシウム回収
『フクシマとヒロシマ』 微生物吸着 セラミック活用 土壌・水のセシウム回収
■記者 小山顕
広島国際学院大教授ら 放射性物質除去に期待
広島国際学院大(広島市安芸区)工学部長の佐々木健教授(61)の研究グループが、微生物を吸着させたセラミックを使って土壌や水中からセシウムを回収する技術を確立した。佐々木教授は、福島第1原発事故で放出された放射性セシウムの除去にも応用できるとみている。
微生物はマイナス電気を帯びた粘着物質を出す光合成細菌。佐々木教授は、微細な穴を持つ直径5センチ程度のセラミックに吸着させ、プラスイオンの性質を持つウランや重金属を引き寄せて回収する技術を開発、研究している。
福島第1原発事故後、佐々木教授は管工機材商社の大田鋼管(西区)グループとの共同研究で、セシウムを回収できるかの実験に着手。細菌がセシウムを効率よく取り込むようになる培養方法を突き止めた。
セシウム2・5グラムを含む水500リットルに細菌を吸着させたセラミック1700個を入れると、3日間で全て回収できたという。土壌中のセシウムは、土と水を混ぜてセシウムを溶かし出した上澄み水から回収できた。
放射性セシウムは実験で使用したセシウムと化学的性質はほぼ同じ。細菌が活動できる低濃度の汚染であれば、この技術を活用して被災地の土壌などから放射性セシウムを除去できる、と期待される。
佐々木教授は「広島発の技術を福島で役立てられたらうれしい。今後は福島県内の汚染土壌や水で試験を行うなどして実用化させたい」と話している。
セシウム
ウランの核分裂でできる人工放射性物質と、天然にある物質がある。放射性のセシウム137は半減期が30年と長い。体内に取り込まれると筋肉などにたまりやすく、体内被曝(ひばく)を起こし、がんを誘発するとされる。天然にあるのはセシウム133。
(2011年7月8日朝刊掲載)
http://www.hiroshimapeacemedia.jp/mediacenter/article.php?story=20110708161757253_ja
光合成細菌でウラン、ストロンチウム、コバルトも回収
放射性物質 微生物で回収 劣化ウラン弾処理 視野 広島国際学院大と関西の企業との研究グループ
08年3月 4日
■記者 平井敦子
広島国際学院大(広島市安芸区)と関西の企業との研究グループが、土壌や河川を汚染しているウランなどの放射性物質を微生物を使って回収する技術を開発したことが23日、分かった。劣化ウラン弾による放射能汚染への活用も視野に入れ、2009年の実用化を目指している。
研究グループの統括代表者の佐々木健・同大教授(生物環境化学)によると、これまで回収に成功している放射性物質は、ウラン、ストロンチウム、コバルトの3種類。
Y字型のセラミック(全長5センチ)に封じ込められた特殊な光合成細菌が帯びるマイナス電気が、プラスイオンの放射性物質を引き寄せる仕組みだ。
放射性物質20ミリグラムを含む1リットルの水に、細菌入りのセラミックを6日間入れた実験では、セラミック1個当たり2ミリグラムの放射性物質を回収できた。この実験などから、放射性物質に汚染された土壌にセラミックを埋め込むと、3―6カ月間で、1個当たり10―20ミリグラムの放射性物質を回収できると推定している。
放射性物質は、薬品で除去することができるが、高価で環境への負荷も生じる。特に、低濃度で広く汚染されている場合は、今回のバイオ技術の方が低コストで環境にやさしい、という。
研究は8年前からスタート。大学院生を中心に計6人で取り組み、1月末に特許を申請した。佐々木教授は「劣化ウラン弾の処理や、地震の時などに漏れた放射性物質の回収に活用できる技術。ヒロシマ発で世界に発信したい」と話している。
http://www.hiroshimapeacemedia.jp/mediacenter/article.php?story=2008051217501978_ja