中国のネットユーザーは、本当にヤバイ話にはまったく食いつかない。 | 日本のお姉さん

中国のネットユーザーは、本当にヤバイ話にはまったく食いつかない。

ユニクロはなぜ中国人に愛されるのか?
中国で「日本発」を売りにしてはいけない(上)
ビジネスにおいて、日本と中国の関係は深い。しかし、日本で伝えられる中国ビジネスの姿は、実態とズレがある。元財務官僚で、マッキンゼーで最年少パートナーとなった金田修氏。現在、中国で起業家として活躍する彼が、ネット業界、流通業界を軸にして、日本には伝わってこない中国ビジネスのリアルをつづる。
最近では少なくなりましたが、日本企業のビジネスパーソンと仕事をする際によく耳にする言葉があります。
「日本品質を打ち出していきたい」
「日本発であることが生きるセグメントで売っていきたい」
「日本ブランドに対して中国人はどういう印象を持っているのか」
私は欧州やアジア各国の会社とも中国で仕事をする機会を多く持ってきましたが、自国の良さをアピールしたいと相談されたことはほとんどありません。
加えて、中国においては、日本発であることのメリットは、数年前に比べて確実に失われつつあります。仮にまだあったとしても、日本を売りにした瞬間に、政治リスクがそのまま経済リスクにつながる。尖閣諸島の領土問題などが起きると、「日本製だからいい」が即「日本製だから悪い」に転じ、日本製品の不買運動に発展してしまいます。
尖閣問題をきっかけに、日本企業を暴く動きが
次の検索結果を見てください。

これは中国最大の検索エンジン「百度(バイドゥー)」で、「これ、日本のなの?(是日本的??)」と検索された会社のリストです。尖閣諸島の領土問題が起きた後、中国では「この会社って、実は日本の会社だったんだ!」と、ネット上で続々とリストアップされました。多くは少し茶化した感じで検索された結果ではありますが、日本発であることがむしろネガティブにとらえられたのです。


トップに出てくるのは康?傅(カンシーフー)。これは頂新グループという台湾系食品メーカーが保有するブランドで、この親会社の株式を伊藤忠が、また康?傅(カンシーフー)HD自体の株式をサンヨー食品が保有しており、またその子会社の康?傅飲料という会社には伊藤忠とアサヒが出資しています。
こうした出資背景が少し複雑だということもあり、状況がよく理解されないまま、なんとなく日本色が強いと一部で思われていました。このタイミングであたかも魔女探しをするかのようにこの複雑さが関心を集めたというわけです。
その下にある人人網(renren.com)。これはフェイスブックの中国版のようなSNSを運営する会社で、ソフトバンクが昨年末時点で株を45%所有している会社です。このSNSを中国人は日常的に使っているので、「ここからひょっとして日本に個人情報が流れているんじゃないか?」といったうわさが流れたりもしました。
「セブン-イレブンは日本の会社なのか? アメリカの会社なのか?」「中国のセブン-イレブンは合弁だよね」といった議論もありましたし、吉野家や味千ラーメン、ソニー、キヤノンが日本の会社だと知って驚く人も大勢いました。メンソレータムはもともとはアメリカの会社で、ロート製薬が買収しましたが、中国ではいまだにアメリカのブランドだと思われているので、「なんだ、よく見たら日本の会社じゃないか!」と暴かれました。
このように、日本が出資しているというだけでやり玉に挙げられるわけですから、日本を前面に出していくのは当然リスクがあります。
これからの日本企業は、中国で日本を売りにすることはできません。少なくとも、振り返って「日本発」しか売りがないような実のない日本ブランドなら、参入すべきではない。日本製だから単純に売れるという時代ではないし、また、日本の存在が世界で希薄化していくことは企業レベルでは受け入れざるをえない確実な将来であるわけですから、そういう時代に勝てるブランド・商品づくりをしなくてはいけないと思います。
日本ブランドではなく、実質的な価値で真っ向から勝負すればいい。日本における韓国製の商品について考えてみてください。サムスンのGalaxyや韓流ドラマは、韓国発だから、韓国ブランドだから、売れたのでしょうか? 日本の消費者 は、その実質的な価値を認めたから受け入れたはずです。
日本ブランドが世界に通用しなくなった今、日本企業は何が自分たちの持っている本当の強みなのかを見つめ直すいい機会だと思います。
ユニクロがトップ30ブランドに選ばれた理由
では、どんな「What」で勝負するか?
中国において、実質的な価値が認められているブランドとして、ユニクロを紹介したいと思います。ここで使用するデータは、中国の『第一財経週刊』という経済誌、日本でいうと、『週刊東洋経済』や『日経ビジネス』のような雑誌が毎年実施しているブランド認知調査です。
ここの調査手法はある意味思い切ったもので、サンプルを都市部の22~30歳のホワイトカラー3000人に絞って、ブランドへの反応を調査しています。このようなやや強引な手法にもかかわらず、この対象セグメントは正に中国の消費者の中で最も有力なリーダー層であるため、この調査は中国市場で先進的地位を築いたブランドを、最も良く浮き立たせる調査とも言われています。
その中でも、編集部が全カテゴリーをまとめて中国トップ30のブランドを選ぶのですが、今年は一社のみ、日系企業がランク・インしました。それが、ソニーでもパナソニックでもトヨタでも資生堂でもなく、「ユニクロ(中国名・?衣庫)」なのです。
中国(台湾・香港の各1ブランド含む)地域以外発祥のブランドでこのリストに載っているのはわずか12社、アジアではわずかにユニクロ1社だけです。海外勢11社というのもコカコーラ、Apple、スタバにマクドナルドといった誰が見てもグローバルブランドといったところばかりで、サムスンも選ばれなかったわけですから、この結果にどれほどの価値があるかがわかります。また、アパレル業界でみてもユニクロはZARAやH&Mを抑えて初の1位となりました。
中国では今、都市化の大きなうねりが起こっており、地下鉄や都市環状道路などの建設とともにショッピングモールが数多く建設されています。私もそのお手伝いをしていますが、ショッピングモール側は「とりあえず、ユニクロ、ZARA、H&Mの店舗は入れないとね」と言います。これらのブランドの国籍がもはやどこなのかを全然意識していません。
中国のローカルブランドと同じように愛され、生活の中に自然に組み込まれてしまえば、日本製かどうかなどはまったく関係なくなってしまう。そういう領域をこれからの日本企業は目指すべきです。その領域にすでに達しているブランドのひとつがユニクロなのです。
ではなぜとりわけユニクロがZARAやH&M以上に評価されたのか。もちろんユニクロが中国人に支持されているのは、日本発、日本ブランドだからではありません。これは大きく分けて2つの理由があると思います。
ひとつは、ユニクロの出店能力と展開地域がZARAやH&Mに追いついた、ということです。

巨大な中国でブランドとなるためには、まず顧客との接点を確保しなければなりません。これまで2級・3級都市への進出においては他のグローバルブランドに置いていかれていたユニクロですが、この1~2年、急速に出店スピードが上がりました。2020年には大中国が世界最大の市場になる、と宣言し、それに沿って強烈な資金・人材面での投資を続けていることが背景にあると言えます。
売れ筋商品が4年前とは一変
もうひとつの理由は、ヒートテックなどの素材をはじめとしたテクノロジー、ブラトップなどの機能性、販売員のサービスクオリティーの高さなどが、中国人に受け入れられるようになってきた、評価されるようになってきたからです。つまりサービスの受け手である消費者側の審美眼が磨かれたことにより、ユニクロの提供価値が受け入れられ始めたことが昨年の評価につながっているのです。
販売員は100%中国人、生産地は80%以上中国なのですから、日本や日本製をアピールしているわけではなく、ユニクロの教育システムや価値観、ビジョンが受け入れられているということになります。
これはあくまで実感値なのですが、私が中国で本格的に仕事し始めた08年ごろのユニクロの店舗では、いわゆる機能性商品の売り場はいつも閑散としていて、日本で売れるものと中国で売れるものは随分と違うものだと考えさせられたものでした。その頃中国人にインタビューすると、上海ですら、同じ機能を謳った商品が市場に行ったら4分の1、5分の1で買えるのに、なぜシンプルな商品に高い金を出さなきゃいけないのか、という答えが返ってきたのを覚えています。
しかし、この秋冬のヒートテックなどの機能性商品は大変な人気です。たった4年でこれほどまでに売れるものが変わるのかと驚きますが、この間にユニクロの商品も進化したとはいえ、それ以上にわずか4年間で1.6倍になった消費者の可処分所得の上昇(都市戸籍市民の平均)と、それに伴い見る目の向上があったというのが主因だと思います。
(構成:上田真緒)


ネガティブな発言はいっさい無視のスタンスとのことですが、実際、中国のネットユーザーは賢いので、「過去に1回も炎上したことがない」と言います。
ときどき、共産党やチベット問題などの微妙なネタを差し込んだりしているのですが、中国のネットユーザーは、本当にヤバイ話にはまったく食いつかない。どんな話題なら騒いでもいいかをよくわかっていて、ある意味、日本人以上に空気を読んでいるわけです。
日本人のネトウヨからの攻撃
逆に、日本人のネトウヨ(ネット右翼)からはたたかれているそうです。中国人が日本を批判する言葉でよく使われるのが「小日本」。これは「日本なんか国も小さいし、人も小さいし、肝っ玉も小さい」という意味が込められているのですが、昨年、民主党の細野豪志議員が発言した「石原さんが支那と呼ぶのも間違いだが、中国側も日本を蔑称である『小日本」と呼ぶのはやめてほしい」という趣旨のコメントに便乗して、それじゃ「小鬼子」にしようと朝日新聞がツイートしました。
「鬼子」も日本を侮辱する言葉ではありますが、「小鬼」という言葉は一般的に子供に対して呼びかける言葉で、悪いニュアンスはまったくありません。「小鬼子」は造語ですが、ほかの言葉の持つ悪いイメージをぐっと和らげることができ、朝日新聞のちょっとした機転でした。それを日本人のネトウヨが見つけて、「朝日新聞は中国で日本を差別用語で呼べとシュプレヒコールを上げている!」と騒ぎ立て、日本のネット上では大炎上してしまいました。しかし、中国では1回も炎上しないという不思議さ……。
日本では、このように匿名性の自由な言論風土の下で炎上リスクも高く、日本企業は「How」においても「日本品質」のコンプライアンスを適用する傾向がありますが、私は朝日新聞のように中国では中国式のコミュニケーション方法を学ぶべきだと思います。そのうえで、自分たちの「日本品質」の価値を中国式で伝えていく。これが中国での成功に必要な基本思想だと思います。
(構成:上田真緒)
http://toyokeizai.net/articles/-/12629

http://toyokeizai.net/articles/-/12431
朝日新聞のツイッター、中国で人気の理由
中国で「日本発」を売りにしてはいけない(下)
前回のコラムでは、ユニクロが日本企業という枠を超え、いかに中国で愛されるブランドとなっているかを記しました。
ユニクロが具現していることですが、中国で支持されている海外ブランドに共通するのは、普遍的でユニバーサルな価値を持っていることと、ローカルに熱狂する支持者が少なくとも1人いることです。
ユニクロ以外にもチャンスはある
中国の消費者は、急速に豊かになる中、量から質へ、ローカルがすべての発想からグローバル市民へと激変しつつあり、実質的な価値を見極める目や審美眼がついてきています。普遍的な価値を持っていることは必要条件ですが、中国消費者の進化・変化は早すぎて、その普遍的な価値を具現化している商品をどう選択するか、どのように見せるか、については外国人には理解できないことも多く、ローカルの視点が不可欠となります。
また、急速な面展開を実現するうえでもローカルのネットワークや執行力が他国以上に重要です。ただし、このローカルとは極端なことを言えば、事業パートナーあるいは事業責任者となる1人でいいのです。もちろんその人あるいはその人が率いる企業に実力があることが前提ですが。
方法論としては、社内にそういった人を取り込むこともできますし、社外にそういったファンのようなパートナーを見つける、という選択肢もあります。世間一般の「反日の風」は、BtoCで吹いているのであって、このファンになってくれるローカル人材・企業をBtoBで見つけるうえでは、ほぼ無関係ですから、自らのブランドがユニクロほど有名でなくても、チャンスは大いにあると思います。
面展開できる能力は中国ではコモディティになりつつあるため、むしろ普遍的な価値を磨き込んでいる企業・ブランドは引く手あまたです。逆説的かもしれませんが、変化が速い中国は、新規プレーヤーには取り組みやすいともいえます。
同じ調査でもZARAはすでに衰退が懸念されるブランドとして取り上げられているほどです。ピンチをチャンスに変える前向き思考で取り組む日本企業がどんどんユニクロに続くことを期待しています。
次に、どんな「How」で勝負するか?
これは「郷に入っては郷に従え」に尽きます。つまり中国式のコミュニケーションができるかできないかで差がつきます。日本企業は往々にして「What」で日本をアピールし、「How」を日本式で勝負する結果、何も伝わらず、ブランドを知ってすらもらえないという失敗をおかします。
「What」が普遍的でユニバーサルな価値を備え、本当にいいものであるなら、今度は「How」の部分を中国式に変える必要があります。
100万人を超える朝日新聞のフォロワー
ただし、中国式の「How」、つまりコミュニケーション方法は日本人にはかなりやりにくい部分が多いので、中国において中国式のコミュニケーション方法を採り、受け入れられている日本のブランドとして、朝日新聞の中国版ツイッター(ウェイボー、微博)を紹介します。2011年2月から開始して、フォロワーは12年12月現在で、新浪・QQの両ウェイボーを合わせると100万人以上います。
「フィナンシャルタイムズ(以下、FT)」と「ウォールストリートジャーナル(以下、WSJ)」の中国版ツイッターもありますが、それぞれフォロワーは120万人、135万人です。中国には、中国語版の「FT」も「WSJ」もあり、これら2誌とも日本とは比べものにならないほど読まれており、ビジネスリーダーにとっての影響力もあります。
これら2誌には及びませんが、日経新聞や共同通信の中国版ツイッターのフォロワーが1万人以下であることを考えると、朝日新聞は大健闘していると言えるでしょう。
この朝日新聞がまさに中国式のコミュニケーション方法を採っています。それは、ウェイボー(中国版ツイッター)は、結局個人同士のコミュニケーションのツールの延長線上にあるという基本原則に忠実だということです。
日本企業のウェイボーアカウントの多くは、生真面目な企業広報のような感じ、つまりテレビや雑誌などの従来型メディアに載せるような情報を、従来型メディアに載せるようなプロセスで時間をかけて推敲してから載せているものが多いのですが、朝日新聞は、従来型メディアのアカウントでありながら、思いっきりそこから逸脱しているのです。
具体的には、アカウントをキャラ立ちさせたうえで、当意即妙な個人のツイートのノリで突っ走っているのです。
中国のネットユーザーは賢い
朝日新聞ウェイボーを運営している友人の野嶋剛さんによると、実際に書き込んでいるスタッフたちに、「フォロワーを増やし、読んでもらうために、好きなように発言してもいい」と任せているそうです。
スタッフたちはまるで個人のブログのような感覚で自由に文章を書き、「今日、富士山が超きれいに見える~」と富士山の写真をアップしたり、朝日新聞の社会面に載っている面白い記事を取り上げ、自分なりに皮肉ったりする。日本に住んでいる中国人という目線で書いていて、一般的なメディアとはまったく違います。中国では日本好きな人が読むウェイボーとして受け入れられています。
好きなように発言すると炎上するのでは? と思われるかもしれませんが、野嶋さんは「ネット上の中国人は踏み越えてはいけない一線を知っているので、炎上リスクは捨てている」とか。