万が一アメリカ軍と衝突するような事態になれば、幹部たちは一夜にして資産の大半を失う。
領土紛争における中国の「経済カード」がさらけ出す法治国家からかけ離れた実態 日本は「勇気ある撤退」も有効
WEDGE 1月25日(金)13時3分配信
安徽大学経済学院教授の金澤虎らが、中国の政治経済評論誌「中国改革」に、領土紛争における経済・貿易手段の利用は、相手国の措置に対抗して報復的に干渉することであり、そのような経済的諸措置は先進国の専売特許ではなく、途上国も国益保護のために活用すべきものである、という趣旨の論文を発表しています。
すなわち、領土紛争など外交上の国益処理においては、経済カードを効率よく用いるのが良い。今日、中国との間で領土紛争を抱える国のうち、中国と緊密な経済関係を持たない国は一つとしてない。経済カードをうまく使うことによって、領土問題においても優位な地位を占めることが出来るだろう。経済制裁は、して先進国のみの専売特許ではなく、開発途上国が国益を守るための正義の手段として有効である。
経済カードとしては、次のようなものがある。
1)係争地域において、海外からの入札競争や外資合弁を導入する。北方領土において、ロシアが日本と領土問題を抱える中国、韓国と一緒になって経済活動を行う、というやりかたは実に巧妙である。南シナ海では、ベトナムは西側のみならず、インドの石油会社の入札を受け入れ、石油資源を独占しようとしている。中国もこの種やりかたを見習うべきである。
2)経済、貿易関係において、中国には利用すべきカードは多い。たとえば、フィリピンのバナナに対しては、バナナが長く保存できない点を利用して、質的、量的に制限を加えることが出来よう。
3)サービス貿易における制裁として、中国から海外への旅行者の数を、報復として適宜、制限する。
4)戦略物資の輸出制限を実施する。中国産のレアアースなどの鉱物資源の輸出に制限を加えるといったことである。
5)中国との間の大きな取引、交流、商談を必要に応じて制限、停止する。
6)対外援助を、政治目的に適うように活用する。
7)中国市場への参入のハードルを制限する。すなわち、輸出入制限、貿易障壁、動植物検疫、入管手続き、原産地証明などの条件を厳しくする。
ただし、これらの手段は、中国の経済資源が有限であることを考えれば、濫用すべきではない。相手国に打撃を与えるのはよいが、国際的経済貿易秩序に混乱を与えるべきではない。
尖閣(「釣魚台」)については、いかに日本を尻込みさせ、これを抑止するかが重要であり、下手をして周辺国とともに米国の懐にさらに深く逃げ込むようなことをさせてはならない。そのためには目標をはっきり定める必要がある。
日本製の自動車、家電製品を有効に数量制限したり、ボイコットすることは出来る。しかし、同時に、日本製中間部品や生産設備に対しては、慎重でなければならない。日本からのサプライチェーンがとまれば、その代替品を見つけることは難しい。昨年の東日本大震災のあと、世界の電子生産が悪影響を受けた理由はここにあった。したがって、日本製品のボイコットにあたっては、自分自身の生産、雇用などにはねかえることを知っておく必要がある、と論じています。
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「中国改革」は、中国の官僚やビジネスマンたちに多く読まれている月刊誌です。著者たちの政治的背景やその影響力については必ずしも明らかではありませんが、今日の中国政府の考え方を基本的に反映するものとして、一定の参考価値を有しています。
本論文は、「領土紛争」において中国が取るべき経済面での報復措置の具体例を記述していますが、これらの多くは既に中国がとったか、現在とっているかのものであり、特段目新しいというものではありません。
注目すべき点は、これら経済措置の濫用を戒める記述はあるものの、これら諸措置が国際ルールであるWTO協定に違反する場合があることについて一切の言及がないことです。ここでも中国は、法治国家からはかけ離れた実態をさらけ出しています。そして、これらの諸措置が、先進国側が国連決議などに基づきおこなう制裁措置に対抗するものとして、正義の手段とすら位置付けられる有様です。
また、経済・貿易活動を領土に関連した政治・外交目的のために使うことは、短期的に見て中国にとって一定の積極的効果をもたらすことはあるかもしれませんが、より長期的に見た場合、それが中国の対外活動にいかなる悪影響をおよぼすかについての考察が、本論文には決定的に欠如しています。このように経済カードを振り回すことは、WTOルールないしその精神に違反するのみならず、日本を含む周辺関係国との間での基本的信頼関係を損ねることは必定です。そして、関係国の人々は、中国との経済活動には大きなチャイナ・リスクが潜んでいるとして警戒感を強め、結果的には、中国自身の首をしめることになります。
経済カードをめぐる中国の特異な論理に対しては、WTO協定に明白に違反する場合は積極的に提訴し、そこまでは至らないが国際的慣行やモラルに反して不当な場合は、抗議を緩めるべきではありません。一方、中国からの「勇気ある撤退」というのも、中国の経済カードを無力化するよい手段の一つでしょう。現に、日本の経済界も、中国一辺倒は改めようという動きになりつつあるようですが、それは全く自然なことです。
岡崎研究所http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130125-00000303-wedge-cn
すでにやっていることばっかり書いてるわ。
中国共産党幹部 米中軍事衝突すれば莫大な在米資産を失う
NEWS ポストセブン 1月26日(土)7時6分配信
中国の軍拡は周知の事実だが、実は追い詰められない限り、中国共産党は戦争をしたくない。それにはさまざまな理由があるが、そのうち一つは共産党幹部の対外資産だという。ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。
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共産党幹部の資産の多くはアメリカにある。失脚した薄熙来は5000億円もの賄賂を受け取り、その多くを海外送金したと言われている。また温家宝首相はニューヨーク・タイムズに一族で少なくとも27億ドル(約2200億円)もの資産を貯め込んでいると報じられた。さらに習近平総書記も親族が数億ドルの資産を保有しているとブルームバーグに報じられた。
共産党幹部は中国の将来を信じていない。いざとなれば身一つで海外に逃げられるように、家族を先に海外へ移住させ、資産の多くを海外に移している。ちなみに習近平の姉夫婦の国籍はカナダ、弟はオーストラリア在住、娘はアメリカ留学中である。そして、海外に移した資産の多くがアメリカに集中していると見ていい。
仮にアメリカが共産党幹部の資産を凍結すれば、大打撃となる。尖閣諸島、台湾、南シナ海と中国が覇権主義を前面に押し出して各国と対立している領域で今後アメリカとの緊張が高まらないという保証はない。万が一アメリカ軍と衝突するような事態になれば、幹部たちは一夜にして資産の大半を失う。つまり、在米資産は抑止力となっている。
※SAPIO2013年2月号
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130126-00000009-pseven-cn